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2018.01.24
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カテゴリ: 観照 [再録]
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これは湖南市域を歩いたときにウォチングした汚水ふたです。

湖南市は石部町と甲西町が合併して、平成16年(2004)10月1日に市制が施行されました このときにこの汚水ふたの中央にあるデザインの市章となったそうです 上部の大きな楕円形 が「 琵琶湖の豊かな水 を表現」し 青色 で、 下の小さな楕円形 が「そ(=琵琶湖)の南に位置する 緑の大地 を表現」し 緑色 で、という 二色による表現
 上部・下部の大小の楕円形で 「豊かな水と緑に囲まれた市の環境と、自然のやさしさに包まれた笑顔と夢のあふれる市勢を象徴」 したそうです。

その周囲は幾何学的な模様、円環連鎖の変形バージョンのように感じられます。湖南市は、名神高速道路やインターチェンジ、国道とJRなどの交通基盤により、「県下有数の工業団地が立地し」、「京阪神の都市圏への通勤に便利な立地」であるという位置にあります。「奈良時代の昔から現代に至るまで、常にこのような交通の要衝として発展しつづけ」 (資料1) てきたという歴史があることから、空間的な繋がりを連鎖イメージで表象しているのでしょうか。私にはそれ位の連想しか思い浮かびません。あるいは、この市章の周囲のデザインにはそれほど意味がないのかもしれません。

石部と甲西の史跡探訪を何度かしてきた折りに、汚水などのふたの写真を撮ってきていました。

旧甲西町で見つけたのが、このバージョンです。中央に市章がレリーフされています。
そして、

こちらが 旧甲西町でみた現役の汚水ふた です。中央に甲西町の町章がレリーフさあれています。
旧甲西町の汚水ふたのデザインの中央が旧甲西町の町章から、湖南市の市章に切り替えられた汚水ふたのバージョンが一時的、過渡的なものなのかどうかは確認していません。汚水ふたウォッチングとしては、おもしろいと感じます。

旧甲西町の汚水ふたは未だ現役で使われていますが、周辺のデザインが少し異なるバージョンも見つけました。どちらが先なのかは不詳です。

旧甲西町の町章は、「西」という文字が図案化され、全体は亀甲形にして上下どちらからみても同じに見えるデザインになっているそうです
この町章が制定された時(1955.11.1)には、「『鶴亀の齢』と同じく永遠の繁栄を念願しようとする」意図が込められていたとのことです。 (資料3)

かつての「甲西町歌」の歌詞には、こんなフレーズがあります。「緑の向こうに緑がある」「流れの向こうに流れがある」「せせらぐ野洲川」「水面にきらり映える町」「豊かな温泉は十二坊」。また、旧甲西町の木は「ウツクシマツ」で、町の花は「サツキ」でした。

そこから中央の町章の周囲の図案は、甲西町の四方にウツクシマツとその緑が重なり広がって行き、野洲川の流れがきらめき、野洲川に河川が合流する、あるいは12の幹が十二坊のイメージに重なり、水滴がきらりと光る・・・・そんなイメージを連想します。私の勝手な空想です。でも、ちょっとその広がりは楽しいですね。

甲西町の歩みを振り返ると、1955年4月に岩根村と三雲村が合併して甲西町が誕生し、1958年9月に甲西橋が開通した翌月の10月に下田村が合併しています。これが湖南市として合併する前の地域規模だったようです。JR甲西駅の開業が1981年10月です。 町史を読んでいておもしろいと思ったのは、1988年9月にステゴドンゾウ足跡化石が発見されたということ 。これは知りませんでした。 1990年に郷土芸能「湖國十二坊太鼓」が誕生している 1994年6月には伝統工芸「近江下田焼」が再興されています 。同年に温泉井の掘削が成功し、10月に 「十二坊温泉」 という名称となったそうです。このような諸事項は、今回調べていて初めて知りました。そこからまた別視点の関心が芽生えました。 (資料4)

一方、 旧石部町で見つけたのが次の2つです。

このふたに「おすい/汚水」の文字は入っていませんが たぶん汚水のふた です。

こちらは歩いていて、道路沿いの民家の軒先近くで見つけたもの。雨水のふたでしょうか。

旧石部町の木は「松」で、町の花は「さつき」でした 。これらのふたには、この松とさつきが具体的に共通の図案になっています。 石部町はかつては東海道の宿場町「石部」 でした。
現在、湖南市にある 雨山文化公園内には、「東海道石部宿歴史民俗資料館」 があります。 汚水ふたの上部に描かれた建物はこの資料館の建物前面の景色の図案化です。
ここは、昭和60年(1985)に「石部歴史民俗資料館」として開館されたのです。そこで、石部町の汚水ふたに町のシンボルとして描かれたのでしょう。石敷きの道は石部の「石」に繋がるように思います
。  
個人的には旧両町のように、郷土色がうかがえてイメージできるデザインが好みです。見ていて楽しい。

東海道石部宿歴史民俗資料館
建物の外観はこんな感じです。ウィキペディアに掲載の画像を引用します。 (資料5)

ここには、「東海道五十三次図をはじめ、大名の網代駕籠や関札、宿帳など宿場町の歴史資料を展示しています。幕府直轄であった小島本陣が絵図などを手がかりに20分の1の模型で復元されています。また、旅籠、茶店、商家など江戸時代の石部宿の様子を再現した『石部宿場の里』が隣接しています。」 ​ウォーキングでこの資料館に行けなかったのが残念です。またの機会に・・・・・。
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やはり、石部宿は 歌川広重の描く「東海道五十三次 石部」 の絵が一番有名かもしれません。
現在、「田楽茶屋」が旧東海道沿いに再現されています (資料7)

一方『東海道名所図会』には「目川」という見出しを付けた絵が掲載されていますので引用します (資料8)
広重は目川の里を石部宿の一部だとして上掲の絵を描いたのでしょう。目川は石部宿よりも草津宿に近い方に位置します。現在の行政区分では栗東市の区域になっています。

汚水ふたの下部の小さな円の中に、 旧石部町の町章 がデザインされています。これは明治35年(1902)2月18日に制定されたものでした。 石部の「石」を図案化 されたのです。「力強い黒で白を包む姿は、団結・博愛を表し、雄大にして大きく飛躍発展せんとする石部町を象徴」 (資料3) したといいます。

ウォーキングした2016年は、10月22日(土)に、雨山文化運動公園で、「湖南市東海道石部宿まつり」が開催されるという案内を見ました。10月に毎年開催されているようです。​ 関連案内はこちらをご覧ください。

旧石部町は、石部村が明治36年(1903)6月に町制施行で県下12番目の町になったのです。町史を読んで 興味を持ったのは、草津線の変遷がわかったこと です。明治4年(1907)に関西鉄道が国鉄に買収されて草津線となり、民営化を経てJR草津線になったのだとか。その間に、1957年10月草津線がディーゼル化され、1972年10月には草津線からSLが姿を消したのです。そして、1980年3月に草津線が電化されたそうです。
上記の石部宿「田楽茶屋」がオープンしたのが2003年4月というのも、この町史で知りました。 (資料9)

偶然かどうか知りませんが、 石部町と甲西町の制定した木は「松」で、花もともに「サツキ」でした。鳥は石部町がキジを制定し、甲西町は制定されていなかったようです。

上掲の『東海道名所図会』には、「石部」の見出しから、「夏見、妙感寺、横田川、岩根山善水寺」などの見出しでの説明の手前に、「美松」の見出しがあります。「石部」の項目よりも詳述されているくらいです。 「夏見」は水口宿までの間に位置した立場で、藤棚を備え、心太 (ところてん) を出す店のある休憩場として知られていたようです ここがところてんに黒蜜をかけて食べることの発祥地 だとか。

そして、善水寺の説明の後に、見開きの2ページで、引用したこの絵 「平松山美松」 が紹介されています。江戸時代から、人々はこのあたりの松を愛でており、有名になっていたようです。 (資料8)

湖南市の木は「うつくし松」 となったそうです。「国の天然記念物として全国的に知られている美しい形の松である。湖南市特有の木であり、湖南市の独自性を表す。」という主旨だとか。一方、 花はそのまま「サツキ」が継承された 訳です。「サツキの仲間は種類も多く、創造性に繋がるイメージがある。また、従来から広く市民に親しまれてきた花でもある。」と説明されています。
鳥はあらたに「ウグイス」が制定されています 。「美しい声で、希望の春を告げる鳥である。いつまでもウグイスの声を身近に感じられる自然環境を残していきたい。」という主旨からだそうです。

調べてみて、ウグイスを自治体の鳥に制定しているところが、北海道の歌志内市から、九州・宮崎県の西都市までかなりの数になることを知った次第です。 ウグイスが日本全国で親しまれている鳥 だということが良くわかります。近畿地方だけみても、湖南市のほかに熊野市、名張市、福知山市、奈良市、宇陀市、宝塚市の鳥に制定されているそうです。 (資料10)

「ウグイス識別マニュアル」というのが2000年11月に発表されています 。山階鳥類研究所が環境庁委託調査として実施したものです。​ pdfファイルで入手できます。こちらからご覧ください。

ウィキペディアの項目を読むと、ウグイスを詠んだ和歌が紹介されています。
そこで、ここでは 俳句に詠まれたものを少し、引用しご紹介します 。数多く詠まれた句から、私好みのものを抽出してみました。 (資料11)

 鶯や柳のうしろ藪の前      芭蕉
 鶯や竹の子藪に老いを鳴     芭蕉
 鶯の身をさかさまにはつねかな  其角
 鶯の鳴けばなにやらなつかしゆう 鬼貫
 鶯に終日遠し畑の人       蕪村
 うぐひすの人より低くなく日かな 一茶
 鶯や天険にして海の景      酒井黙禅
 鶯のけはひ興りて鳴きにけり   仲村草田男
 鶯や島の夕日は海に落つ     宮田蕪春
 鶯や前山いよよ雨の中      水原秋櫻子
 鶯や尼と老いゆく寺男      勝又一透
 鶯や障子にうつる水の紋(あや) 永井荷風
 うぐひすの次の声待つ吉祥天   加藤知世子
 鶯や御幸の輿もゆるめけん    高浜虚子


これで今までにまとめて以前に拙ブログでご紹介していた分の再録を終えました。
次回からは、その続きとして新たに「汚水ふた」のご紹介を折々に綴っていきたいと思います。

ご一読ありがとうございます。

参照資料
1) ​ 市のプロフィール ​ :「湖南市」
2) ​ 滋賀県の市章一覧 ​ :ウィキペディア
3) 石部・甲西合併協議会 調整内容 :「湖南市」 ← 2018.1.23時点アクセス不可
4) ​ 旧甲西町のあゆみ ​ :「湖南市」
5) ​ 東海道石部宿歴史民俗資料館
6) ​ 東海道石部宿歴史民俗資料館 市内の施設 ​ :「湖南市」
7) ​ 石部宿 ​  :ウィキペディア
8) ​ 東海道名所図会. 巻之2 / 秋里籬嶌 [編]
     :「古典籍総合セータベース」(早稲田大学図書館)
   「目川」は35コマめ、「平松山美松」は40コマめです。
9) ​ 旧石部町の歩み ​  :「湖南市」
10) ​ ウグイス ​  :ウィキペディア
11) 『芭蕉俳句集』 中村俊定校注  岩波文庫
  『改訂版 ホトトギス新歳時記』 稲畑汀子編  三省堂
  『合本 現代俳句歳時記』 角川春樹編   角川春樹事務所

【 付記 】 
「遊心六中記」と題しブログを開設していた「eo blog」が2017.3.31で終了しました。
ある日、ある場所を探訪したときの記録です。私の記憶の引き出しを維持したいという目的でこちらに適宜再録を続けています。
再録を兼ねた探訪記等のご紹介です。再読して適宜修正加筆、再編集も加えています。
少しはお役に立つかも・・・・・。他の記録もご一読いただけるとうれしいです。

補遺
湖南市 ​ ホームページ
湖南市 ​  :ウィキペディア
甲西町 ​  :ウィキペディア
石部町 ​  :ウィキペディア
東海道石部宿歴史民俗資料館(石部宿場の里 東海道歴史資料館) ​:「しが県博協」
石部宿の里 ​ :「ぶらりこなん」(湖南市観光ガイド)
地域の紹介 ~うつくし松~ ​  多田 肇氏 
うつくし松 日本でここだけの扇型をした不思議な松の群生
   :「民話でたどる滋賀の風景」(滋賀県)
ウツクシマツ(美し松)とタギョウショウ(多行松)は何が違うのか ​:「木のメモ帳」
ウグイスの鳴き声 Singing Bird (Japanese Bush Warbler) ​ :YouTube
ウグイス ​  :「日本野鳥の会」
ステゴドンゾウ ​  :「コトバンク」
ステゴドン ​  :「古世界の住人」オフィシャル・ブログ

   ネットに情報を掲載された皆様に感謝!

(情報提供サイトへのリンクのアクセスがネット事情でいつか途切れるかもしれません
その節には、直接に検索してアクセスしてみてください。掲載時点の後のフォローは致しません。
その点、ご寛恕ください。)

マンホールのふた見聞考  ウォッチング掲載記事一覧

こちらもご覧いただけるとうれしいです。湖南市域関連でまとめたものです。
歩く&探訪 [再録] 滋賀 湖南三山への道 -1 JR石部駅から常楽寺に
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探訪 [再録] 滋賀・湖東 三雲城址と八丈岩、夏見城遺跡



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Last updated  2018.09.13 19:06:41
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