音楽日記 ~ロックやジャズの名盤・名曲の紹介とその他の独り言~

音楽日記 ~ロックやジャズの名盤・名曲の紹介とその他の独り言~

2009年09月25日
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テーマ: Jazz(1968)
カテゴリ: ジャズ
エリントンの包み込むようなやさしさとコルトレーンの品のある敬愛の念の邂逅


 一方のデューク・エリントンは、1899年生まれ。言わずと知れたビッグ・バンド、スイング・ジャズの代名詞的存在のピアノ奏者である。他方のジョン・コルトレーンは、1926年生まれのサックス奏者。モード奏法やシーツ・オブ・サウンドなどジャズ界の革新的プレイヤーである。四半世紀以上、つまりは親子になり得るほど世代が離れたこれら二人は、生涯に一度、正面から組み合っての共演を果たした。それが、1962年に録音された本作『デューク・エリントン&ジョン・コルトレーン(Duke Ellington & John Coltrane)』である。

 世代の違いはもとより、その音楽性の違いから、異色の顔合わせであるということに異論はないだろう。無論、異色の顔合わせでの共演には、"すれ違い"の恐れ、早い話、さっぱりかみ合わずに失敗作だけが残るという可能性が高い。けれども、本盤は歴史的な名共演となった。その理由は何だったのだろうか。

 まずはエリントンである。録音が行われた1962年の段階では、名を成し功を築き上げ、何十年ものキャリアを誇り、既に60歳を超えた巨匠である。にもかかわらず(否、「だからこそと」言うべきか)、エリントンは、"現代的な"演奏を繰り広げている。象徴的な例を挙げれば、1曲目のイントロのピアノ演奏からしてそうである。このような調子で、25歳以上離れたコルトレーン相手に、やさしく包み込むかのような包容力ある懐の深さを全編にわたって見せている。

 コルトレーンの演奏もまた、不思議なものである。当時の彼が目指していた音楽的革新性というのを前面に出すのではなく、むしろ基本的にスタンダードな奏法を通している(しかし、出てくる音はまぎれもなくコルトレーンのそれである)。これは、コルトレーンが大御所を相手に萎縮したわけでも、遠慮をしたわけでもない。それどころか、その丁寧なプレイを聴くにつけ、巨匠エリントンへの深い尊敬の念を感じさせるものである。1曲(3.「ビッグ・ニック」)を除き、全曲がエリントンの楽曲で占められている事実も、そのようなコルトレーンの敬意を反映してのことなのかも知れない。

 結果的に、両者の歩み寄りが本盤の出来のよさにつながったのだと思う。エリントンがその名声を鼻にかけてプレイしたならばこうはならなかったし、コルトレーンが挑戦的に挑んでも、本盤は名作になり得なかった。しかし、現実には、そのいずれでもなく、両者がいい意味で互いを意識しての演奏となった。暖かく包み込むエリントンの胸元の深さを感じさせる包容力と、コルトレーンによる偉大なる先達への敬愛の念の両方があったからこそ、このセッションは成功を収め、異色の名盤が生まれることになったのだろう。わずか30分強の短いアルバムだが、そんなことを考えながら、歴史的な出会いというのを噛みしめて聴くのもいいのではないかと思う次第である。


[収録曲]
1. In A Sentimental Mood
2. Take The Coltrane

4. Stevie
5. My Little Brown Book
6. Angelica
7. The Feeling Of Jazz

John Coltrane (ts, ss)
Duke Ellington (p)
Jimmy Garrison (b)
Aaron Bell (b)
Elvin Jones (ds)
Sam Woodyard (ds)

録音: 1962年9月26日






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Last updated  2009年09月25日 07時36分43秒
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