マイルス・デイヴィス(Miles Davis)という人は、ある意味、不幸な人である。革新的であったがゆえに、常に厳しい批評の眼差しで見られ、何か斬新な、あるいはジャズ史にとって革命的なことをしないといけないかのような目で見られてしまう。その結果、この『ザ・ミュージング・オブ・マイルス(The Musing of Miles)』のようなアルバムにはあまり衆目が向かないという事態になってしまう。実際、本盤『ザ・ミュージング・オブ・マイルス』は、そういう観点からすれば、コルトレーン加入前(なおかつベーシストがポール・チェンバースに定まる前)の、“ちょっと一休み”的な、あるいは“過渡期の”アルバムなどと称されてしまう。その結果、間違っても“マイルスの代表作”などとはまず呼ばれない。