音楽日記 ~ロックやジャズの名盤・名曲の紹介とその他の独り言~

音楽日記 ~ロックやジャズの名盤・名曲の紹介とその他の独り言~

2011年07月22日
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ボスの出世作にして70年代アメリカン・ロックの名盤 ~後編~


前編 ではアルバムの位置づけとバンドの話に触れた。続いて、この後編では、収録曲を順に見ていきたい。

 冒頭の1. 「涙のサンダーロード」 は、ハーモニカとピアノの静かなイントロから始まり、最後のサックス・ソロにいたるまで次第に盛り上がりを見せる曲。ライブの出だしにも定番としてよく使われた。個人的な好みでは、本盤のみならず、B・スプリングスティーンのキャリアの中でもベスト・トラックの一つだと思う。

 2.「凍てついた十番街」と3.「夜に叫ぶ」は、クラレンス・クレモンズのサックスのフィーチャーの仕方が印象的で、このバンドにとって彼が欠かせないメンバーであったことがよくわかる。2.ではホーンセクション(フリューゲルホルン、テナー・サックス、バリトン・サックス、トロンボーン)が導入されているが、最後にものを言うのはクレモンズのテナーで、3.では曲の開始と同時に、のっけからクラレンスのサックスの存在感がはっきりしている。

 4.「裏通り」はやや長め(6分半)の曲。この手の曲は、連続演奏となるCDで中ほどに置かれると間延びしてしまう印象だが、LP時代には、A面を締めくくる曲という位置づけだった。ゆったりと始まり、段々と壮大な感じに盛り上げていくタイプの曲で、聴き手側の勝手な都合で言うと、若い頃に聴いてたのよりも、今の方が好きな度合いが増している。きっとこの手のカッコよさは、ロック音楽に疾走感や勢いをより強く求めていた若い頃の筆者には理解できていなかったのだろう。

 5.「明日なき暴走」は言わずと知れた有名曲にして、本盤のタイトル・チューン( 過去記事 )。“走るために生まれてきた”という曲名が示すように、20歳代後半のスプリングスティーンとバンド・メンバーが一丸になって人生を走っているのが印象的。人気絶頂だった80年代のライブのハイライト・シーンでもこの勢いがそのまま反映されていてよかった(同時期の様子はライブ盤『 ザ・ライブ1975-85

 6.「彼女でなけりゃ」も、バンドの勢いと一体感がストレートに表現された曲。サックスと並んでピアノが重要な役割を果たしていることが、1.や8.などと同様によくわかるナンバーでもある。LP時代の曲順で言うと、B面最初の2曲を盛り上げた後、7.「ミーティング・アクロス・ザ・リバー」という静かなナンバーで一息つかせるというのも、なかなか気のきいた曲の配置。この7.は、バックのトランペットが郷愁を誘う。

 本盤を締めくくる8.「ジャングルランド」は、10分近い長編作。ゆるやかに始まり、次第に激しく盛り上がっていく壮大な構成は4.とやや似ている。ピアノのイントロでゆっくりとした(しかしボーカルのテンションは結構高い)始まり方で最初のヴァースを歌い、次のヴァースではバンド・サウンドになり、盛り上がる中でスプリングスティーン自身のギター・ソロ。続いて、少しテンポを落として長めのサックス・ソロがあり、そのゆったりとした雰囲気の中、曲が終わるかと思いきや、ピアノ伴奏と共に再び抑えの利いたボーカル。そのボーカルはやがて再度の盛り上がりを作り出し、ドラムレスのまま荘厳な雰囲気を作り出して終わる。一般論的には、“もう少し聴いていたい”という感覚をリスナーに与えつつ演奏が終わるという名曲というものが存在する。ところが、この「ジャングルランド」はその逆を突いたようなナンバーで、ちゃんと満足するまで聴かせてくれるという、シングルでは決して出来ない技を実現したもので、なかなかの名曲だと思う。



[収録曲]   *( ) 内に邦題も挙げておきます。

1. Thunder Road (涙のサンダーロード)
2. Tenth Avenue Freez-Out (凍てついた十番街)
3. Night (夜に叫ぶ)
4. Backstreets (裏通り)
5. Born To Run (明日なき暴走)
6. She’s The One (彼女でなけりゃ)
7. Meeting Across The River (ミーティング・アクロス・ザ・リバー)


1975年リリース。



[関連過去記事]

ブルース・スプリングスティーン『明日なき暴走(Born To Run)』~前編~





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