やっぱり読書  おいのこぶみ

やっぱり読書 おいのこぶみ

2004年04月15日
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カテゴリ: 読書感想
この本は2001.9.11のアメリカ同時多発テロの後、ショックを受けなぜという疑問を解くためにイスラム関係の本を買った中の一冊。

専門書ではないのだが、なかなか難しい、というか複雑で当時半分ほど読んで置いてあった。
しかし、今読み終わってよかったと思う。ある側面だが理解出来たもの。
心もとないが書いてみる。

『イスラム過激派が話題になるのは戦争やテロの際に限られているため、彼らは無謀な狂信者集団だと思われている。しかし、現実には、彼らは独自の革命思想のもとに組織化され、各々の論理と目的のために冷静に手段を選択している。スポンサーとなっている国家さえある。敬虔な若者たちが、暴力的な原理主義運動に身を投じるのはなぜか。その誕生から世界を震撼させる現在まで、イスラム原理主義の思想と歴史を解明する。』

と表紙の見返しにあるように1979年に当時のソ連がアフガニスタンに軍事侵攻してから、2001年にアメリカで同時多発テロが起こるまでの「イスラム過激原理主義」の歴史、出来事、事件がまとめられている。

イスラム原理主義運動はエジプトから始まった。

『1956年、ナセル・エジプト政権がスエズ運河の国有化に成功したことで、ナセル大統領を旗手とするアラブ民族主義運動は一気にアラブ世界の支配的な潮流となった。』

しかし、『アラブ民族の統一』に失敗、イスラエルと軍事対決し、アラブ各国は軍事政権となって、大衆弾圧が続きアラブ民族の生活も向上せず、『アラブ民族主義運動』は惨憺たるものになってしまった。



初めはエジプトの政権有力者、治安要員を攻撃するテロだったが、だんだん過激原理主義運動となっていくと、エジプトからでてアフガニスタンなどを拠点に活動するようになった。

エジプトの「サダト大統領暗殺」日本人も巻き込まれた「ルクソール事件」「イスラマバードエジプト大使館襲撃事件」「ナイロビ、ダルエスサラーム米大使館同時刻爆破事件」などのテロ事件の数々。もう数え切れないくらい。私もニュースで聞いていると思うのだが、こんなにたくさんのテロがあったとは、と改めて驚く。

「イスラム集団」「ジハード団」「アフガニスタン戦争」「アラブ・アフガンズ」「ビンラーディン」「アルカイダ」「新十字軍」「スンニ派」などの言葉の意味。

「エジプト」「イラク」「イラン」「スーダン」「アフガニスタン」「エチオピア」などの国々の状況。遠巻きに関係あるのが「イスラエル・パレスチナ問題」「レバノン」「シリア」の国々のこと。

もう複雑に入り組んだイスラム教圏の歴史。
イスラム教は唯一神アッラーを崇めること。
シャーリア(イスラム法)と、カリフ制(代理人、後継者が統治するイスラム独特の政治制度)。

さて、「イスラム過激原理主義」がおぼろげに解った。で、どうか?

この本を読んで歴史、出来事、事件を見ていると「イスラム過激原理主義」の過激派がいつどのような事情で生まれたかが問題というより、中東の歴史的状況がすでに深い原因、誘引をもっていると思わされる。

どうして民族主義運動は発展しないのか、アラブ民族の統一は出来ないのか。

すなわち、ユダヤ教、キリスト教、イスラム教の発祥地の中東。宗教の交錯、民族の坩堝、民族の通り道の中東、などから考え思いおこさないと...。ああ、私の手に余る。



そしてこの本が書かれた後、アメリカはアフガニスタンに潜伏しているいわれていたイスラム過激原理主義指導者オサマ・ビンラーディンとアルカイダに報復したということになる。ニュースが飛び交ったから歴史を目の当たりにした。私もしたはず、でも、それもすっきりしたものではなかった。
テロは卑怯、しかし報復は解決ではない。

次に私たちはイラクへの介入戦争を起こしたアメリカを見た。
昨日の日経新聞「春秋」に『イラク侵攻の旗を振ったネオコン(米新保守主義者)の「イラクを手始めに中東全域を民主化する」という大構想』とあったけど、ほんとうにそう。
アメリカはだんだん深みにはまっていく。日本もはまっていく。


けれども、なぜこうなるかはおぼろげに解る。

中東アラブ民族を他の国々が民主化してあげようなどと思ったからだ。(勿論下心見え見え)

アラブ民族自身の問題はアラブ人たちの手でと思う。
それを国連なり、他のそれに代わる機関が助ければいいのではないか。
ああ、でもそんなに簡単じゃない。

ああわからない!ってこれ小泉首相もおっしゃってませんでしたか。

見すえるしかない。



長くなった上に、力が入ってしまいました。つたない文を読んで下さった方、有難う。




藤原和彦著 「イスラム過激原理主義 なぜテロに走るのか」中公新書 中央公論新社





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最終更新日  2004年04月15日 18時55分06秒
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