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2005年02月13日

「グロテスク」桐野夏生（文藝春秋社）

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テーマ：最近、読んだ本を教えて！(24289)

カテゴリ：読書感想

『一流企業に勤めるＯＬが、夜の街に立つようになった理由は何だったのか？』

美醜、貧富、賢愚、出自、階級、差別について、鋭くえぐる。
あいかわらず、圧倒されてしまう桐野夏生さんの作品だった。
ミステリーな部分もあるし、ぐいぐい読ませていく。ただし後味が悪いかもしれない。

人間の奥深くに潜んでいる真っ黒な悪を引き出そうというのか。
たまらない、これが人間の真実だからか。
だからグロテスクというのだろうか。

一人称で書いてある、誰だか特定できないひとの心の闇。最後までこの語り手の名前はわからない。特定できないことで、本文にもあるように、妹「ユリ」は「わたし」と表裏の関係、「佐藤和江」「チャン」「高志」「ミツル」も「わたし」になるのだろう。

勿論この語り手も嘘を吐いているのかもしれず、（そこが作者のにくい手かも）挿入してある各人の手記も嘘かもしれず、語り口にだまされてはいけない、一人の人間の行動は見る人によって違うし、本人が語ってもそれが本当のことを言っているとは限らない。

「グロテスク」は冷静に離して読めないところが怖ろしい。ぐっとはいりこんでしまうのだ。
コンプレックスが悪意へ走るのだというのも真実。ねたみ、ひがみ、そねみ、うらみ。

だがこれほどの悪魔的な心の闇は救いがない。啓示がない、希望がない気がする。
作者は書かなかったのだろうか？
いや、ひとつ。カルト宗教に走って脱会した「ミツル」が意外にもまともで救いではないかと思えてくるから不思議なものだ。

小説の語り口が異様だからか、内容が凄いからだろうか。
読み手の私が読み取らない部分があるのではないかという余韻が残る。

*******

上記を書いて後、☆かよさんの読後感想に心動かされていたので、トラックバックと再読させていただいた。

かよさんは『日本人の物に溢れた生活の甘さ、愚かさ。』とお書きになっている。

有っても地獄、無くても地獄なのだろうか

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