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第二次世界大戦後、満州から家族と共に引き揚げる最中、ソ連軍によってシベリアにある収容所(ラーゲリ)に抑留された山本幡男。彼は、希望を、そして妻との約束を胸に生きていたが・・というストーリーです。原作の本を先に読んで予備知識があったのですが、活字でシベリアの抑留生活を読むのと、映画で観るのとはその衝撃が違いました。乏しい食事、不衛生な環境、非人道的な扱い・・それらの事が約79年前に起きた出来事だということを忘れず、後世に伝えていかなければならないと思いました。主題歌の「Soranji」を聴きながら、その歌詞が映画の内容にすごくリンクしていて泣きそうになりました。
Jul 31, 2024
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表紙素材は、ねつこ様からお借りしました。「YOI」「天上の愛地上の恋」二次小説です。作者様・出版社様・制作会社様とは一切関係ありません二次創作・BLが苦手な方はご注意ください。 ルドルフ達と共に渡英した勇利とヴィクトルは、滞在先である貴族の館で初めて美貌の皇妃・エリザベートと対面を果たした。「女官達から噂は色々と聞いているわ。貴方が東洋の真珠さんね?」「は、初めまして、皇妃様・・」「そんなに緊張しないで。ルドルフの事、これからも宜しくね。」エリザベートは勇利に向かって優しく微笑んだ後、彼の隣に立っているヴィクトルの方を見た。「貴方が麗しの皇帝様?」「はい、さようでございます、皇妃様。」「ウィーン中の娘達が貴方とルドルフに恋をしている事は、ご存知かしら?」「ええ、存じておりますが、今俺には何物にも代えがたい宝物がありますので・・」ヴィクトルはそう言うと、勇利を自分の方へと抱き寄せた。「まぁ、仲がいいのね。みんな、そう思わない事?」「はい、皇妃様。」「微笑ましい限りですわ。」 ほんの数日前までヴィクトルを口説こうとしていた女官達は、主の言葉を受けて口元に苦笑を浮かべながら口々にそう言った。「皇妃様、そろそろお時間でございます。」「わかったわ。ではわたしはこれからノーサントプシャーへ向かうの。二人とも、ルドルフの事を宜しくね。」 エリザベートはそう言って勇利とヴィクトルの頬にキスをすると、女官達を引き連れて狩りへと向かった。「何だか変わったお方だね、皇妃様は。」「うん、そうだね・・」 エリザベートは自由奔放かつ大変変わった性格だったと、以前読んでいた彼女の伝記にそう書かれていた事を勇利は思い出した。 彼女が皇帝フランツ=カール=ヨーゼフと姉・ゾフィーとの見合いの席で同席した際、皇帝がエリザベートに一目惚れしてしまい、母親の反対を押し切って皇帝がエリザベートと結婚し、彼女がハプスブルク家の皇后という地位に就いたのは、まだ16歳の時だったという。 厳格な姑・ゾフィーとその女官達に監視されながら慣れない宮廷生活を送ったエリザベートは、自分が産んだ三人の子供達を姑から取り上げられた所為で精神を病み、「転地療養」と称して流浪の旅を繰り返すようになった事もその本には書かれていた。 だが勇利は、先程対面したエリザベートからは、伝記に書かれていたような“繊細で神経質な女性”の姿は一切感じられず、“自由奔放で気紛れな女性”という印象をエリザベートに抱いた。「ユウリ、どうしたの、ボーっとして?」「ううん、何でもない。それよりもヴィクトル、夜まで時間があるから、ロンドン市内を観光してみない?ヴィクトリア朝時代のロンドンの街を歩くなんて、滅多にない体験だと思うよ?」「そうだね。動くかどうかわからないけど、俺とユウリのスマホを持って来たよ。」ヴィクトルはそう言うとコートのポケットから、水色にトイプードルの模様が入った勇利のスマートフォンを取り出した。「有難う、あの時に何処かに失くしたのかと思ってずっと探してたんだ!」「ユウリの笑顔がまた見られて嬉しいよ!」「お二人とも、何だか楽しそうですね。」 アルフレートがそう言いながら勇利とヴィクトルの元へと向かうと、二人は手に小さな箱の様な物を持っていた。「お二人は、何を持っていらっしゃるのですか?」「これはスマートフォンといって、気軽に世界中の人と連絡できる道具だよ。」ヴィクトルはそう言うと、アルフレートにスマートフォンを向けて彼の写真を撮った。「あの、一体何をなさったのですか?」「写真を撮ったんだよ。」ヴィクトルは少し自分を警戒しているアルフレートを安心させようと、先程スマホで撮った写真を彼に見せた。「凄い・・こんな写真が一瞬で撮れるなんて・・」「僕達はこれからロンドン市内を観光しようと思っているんですけれど、アレフレートさんもご一緒に如何ですか?」「わ、わたしは・・」「お前達、そこで何をしている?」アルフレートの背後から鋭い声が聞こえ、少し不機嫌そうな顔をしたルドルフがじろりと勇利とヴィクトルを睨んだ。「ルドルフ様、僕達はこれからロンドン市内を観光しようと思って、アルフレートさんをお誘いしていたところなのですが・・」「そうか。わたしは用事があるから、三人で観光を楽しむといい。」勇利の言葉を聞いたルドルフは、そう言うとアルフレートを抱き寄せ、彼の耳元で何かを囁いた。アルフレートが赤面しているのを見てクスリと笑ったルドルフは、彼に手を振って館から出て行った。「はぁ~、色々と歩き回って流石に疲れたね。」「そうだね・・」 ヴィクトリア朝時代のロンドン市内を歩くという大変貴重な体験をした勇利とヴィクトルだったが、バルセロナの時のように勇利はヴィクトルの買い物に付き合わされ、両腕に大量の紙袋を提げていた。「あの、お持ちしましょうか?」「有難うございます、助かります。アルフレートさん、さっきルドルフ様に何を言われたんですか?」「そ、それは・・」勇利が今朝の事をアルフレートに尋ねると、彼は赤面して俯いてしまった。「ユウリ、恋人同士の秘密を聞き出そうとするなんてナンセンスだよ。ごめんねアルフレート、ユウリは恋愛経験がないから、ちょっと無神経な所があるんだ。」ヴィクトルの毒舌に、勇利は項垂れてしまった。「あの、お二人は付き合っていらっしゃるのですか?」「ん~、恋人同士というよりも、夫婦かな。」ヴィクトルはそう言うと、右手薬指に嵌めている金色の指輪をアルフレートに見せた。「ユウリとお揃いだよ~!」「ヴィクトル、やめてさ、もう~!」「別に隠すほどの事じゃないだろう?」 ヴィクトルと勇利の会話を二人の傍で聞いていたアルフレートは、思わず吹き出してしまった。「あの、どうかされましたか?」「いえ・・お二人とも仲が良くて、何だか羨ましいなと思ってしまいまして・・」そう言ったアルフレートの翡翠の瞳には、何処か翳があった。「ねぇ、アルフレートとルドルフ様は、恋人同士なんだよね?それなのにどうして、そんな悲しそうな顔をするの?」「最近、ルドルフ様が何を考えていらっしゃるのかがわからないのです。ルドルフ様は、余り人前で弱音を吐いたりしない方なので・・」「昔の俺と何処か似ているよね、彼。恋人の前では素直に甘えればいいのになぁ。俺みたいに!」「ヴィクトルはいつも僕に甘え過ぎなんだってば!そんなにくっつかなくてもいいでしょう?」「寒いから、ユウリの温もりに少しでも包まれていたいんだよ~!」「やめてよ、人が見てるから~!」「もう、相変わらずシャイなんだから、ユウリは。ベッドの上ではあられもない姿を俺に見せている癖に。」「ちょっと、そんな事を言うのは止めてよ~!」 (羨ましいなぁ。ルドルフ様も、もっとわたしに頼ってくださったらいいのに・・わたしは、ルドルフ様の恋人としてはまだ頼りないのだろうか。) ヴィクトルと勇利が滞在先の館から戻ったのは、その日の夕方の事だった。「ちょっと遅くなってしまったね。あれ、アルフレートは?」「え、ヴィクトルと一緒じゃないの?」「俺は見ていないよ。」「じゃぁ・・誰かに拉致された?」 アルフレートが何者かに拉致された事に気づいたヴィクトルと勇利は、ルドルフにその事をどう伝えればいいのか迷っていた。「二人とも、こんな所に居たのか。すぐに支度をしろ。」「は、はい・・」 結局ヴィクトルと勇利はルドルフにアルフレートの事を言い出せずに、そのままルドルフと共に夜会へと向かった。にほんブログ村二次小説ランキング
Jul 31, 2024
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表紙素材は、ねつこ様からお借りしました。「YOI」「天上の愛地上の恋」二次小説です。作者様・出版社様・制作会社様とは一切関係ありません二次創作・BLが苦手な方はご注意ください。 突然皇女・マリア=ヴァレリーから遊び相手に任命された勇利は、彼女と小一時間遊んだ。 ロシアに移住する前、故郷・長谷津で西郡一家の三姉妹や、近所の子供達と遊ぶのが好きだった勇利は、いつしかヴァレリーと夢中になって遊んでいた。「ねぇユウリ、貴方はダンサーなのでしょう?わたくしの為に踊ってくださらない?」「ヴァレリー様、そろそろお部屋にお戻りになりませんと・・」「ねぇユウリいいでしょう、お願い!」「わかりました。」可愛い皇女からのお願いに嫌とは言えず、勇利はその場で踊り始めた。 音楽が流れていなくても、踊り始めたら勝手に勇利の中で音楽が鳴っていた。優雅な勇利の踊りを見たヴァレリーは感嘆の溜息を吐いたが、先程まで彼女を宥めていた世話係の女官達でさえも勇利の踊りに魅了されていた。「皇太子様のお気に入りだけあるわね。」「ええ・・」 中庭で勇利が踊っている姿を見たヴィクトルは、勇利の背中に天使の白い羽根が見えたような気がした。(ユウリ、君が踊る姿はとても美しい・・)『ヴィクトル様、こちらにいらしていたのですね?』『随分お探ししたのですよ?』背後から耳障りな声が聞こえて来てヴィクトルが振り向くと、そこには熱に浮かされたような顔をしている女官達が自分の顔を見つめていた。 勇利とともにウィーン宮廷へ上がってからというものの、女官達は隙あらば自分を口説こうとする。時には、色仕掛けで迫って来る者も居るが、ヴィクトルはそんな彼女達からの誘いを全て断った。 勇利の愛以外、自分にとって今必要な物は何もない。『済まないがレディー達、俺は君達に用はないんだ。そこを退いてくれるかな?』独学で身に付けた流暢なドイツ語でヴィクトルが女官達にそう言うと、彼女達は落胆の表情を浮かべながら彼に背を向けて去っていった。『色男は大変ですね?』クスクスという笑い声と共に、ヴィクトルの前に現れたのは翡翠の瞳を持つ黒髪の司祭・アルフレートだった。『俺は今、ユウリ以外の相手を愛する気にはなれないよ。』『ヴィクトル様は、本当にユウリ様の事を愛していらっしゃるのですね。』アルフレートはそう言うと、中庭で踊っている勇利の姿を見た。『アルフレートだって、あの皇太子様に愛されているじゃないか。』『そうですね・・でも、わたしとルドルフ様の関係は、貴方とユウリ様のように公になっては困るものなのです。』 アルフレートの言葉を聞いたヴィクトルは、彼とあの皇太子が自分達の関係を公に出来ない事情を理解していた。 ヴィクトルの母国・ロシアでも同性愛を禁止しているが、ローマ=カトリックでも同性愛を禁じており、聖職者であるアルフレートと、カトリックと共に国を築き上げて来たオーストリアの皇太子であるルドルフとの関係は許されぬものではない。『アルフレートは、皇太子様の事を信じているのかい?』『それは、答えるのが難しい質問ですね。』ヴィクトルの問いに、アルフレートは少し困ったような顔をしてそう言って苦笑した。『ユウリ様とヴィクトル様は、何処でお知り合いになられたのですか?』『ユウリは子供の頃から俺のファンで、ユウリとはフィギュアスケートの大会で出逢ったんだ。君達は何処で知り合ったんだい?』『わたしは流行病で両親を亡くして、バイエルンの寒村で育ちました。12歳の時、シュタルンベルク湖である男が自殺して、その現場に偶然居合わせてしまったんです。』 ヴィクトルからルドルフとの馴れ初めを聞かれ、アルフレートは敢えて事実を伏せてそのことをヴィクトルに話した。『ルドルフ様はその時9歳でした。ルドルフ様は決して人前では弱音をお吐きにならないし、弱い所を人には見せません。それはあの方が皇太子であるという存在意義を殺してしまうからです。』『そうか・・何だか、昔の俺に似ているな。』 “リビングレジェンド”、“氷上の皇帝”と呼ばれ、常に人々を驚かせることを生きがいにしてきた昔の自分の姿と、深い孤独に苛まれながらも皇太子としてあり続けようとするルドルフの姿が重なった。 だが、ヴィクトルには勇利が、そしてルドルフにはアルフレートという伴侶が居る。 ルドルフにとって、アルフレートは己の半身そのものなのだ。『ヴィクトル様?』『アルフレート、君にとってルドルフ様はどんな存在なんだい?』『あの方は、わたしにとって地上の神のような存在です。何も知らなかった幼い私に、あの方は広い世界と、深い愛を教えてくださいました。』『そう・・君は、ルドルフ様の事を誰よりも深く理解し、彼の事を心から愛しているんだね。』ヴィクトルはそう言うと、笑顔で踊っている恋人の姿を見た。 彼の笑顔を守れるのは、自分しかいない。この先どんな事があろうと、勇利には自分の傍で笑っていて欲しい―そんな事を思いながらヴィクトルは、踊り終わった勇利に拍手を送った。「ヴィクトル、いつから居たの?」「偶然ここを通りかかったら、君が踊っているのを見てね。いつもドジで泣き虫なユウリも好きだけれど、やっぱり笑顔で踊っているユウリが俺は一番好きだな。」「やめてさ~、恥ずかしか~」そんな勇利とヴィクトルの姿を見ながら、アルフレートはいつまで自分がルドルフの隣に居られるのだろうかと思いながら、深い溜息を吐いた。「本当にあの二人は隙あらばイチャついているな・・」「ルドルフ様、閣議はもう終わったのですか?」「ああ。アルフレート、近々わたしは渡英する。お前も一緒に来い。」「はい、解りました。」 ルドルフとアルフレート、そして勇利とヴィクトルが渡英したのは、ルドルフが成人を迎えて五ヶ月後の事だった。にほんブログ村二次小説ランキング
Jul 31, 2024
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表紙素材は、ねつこ様からお借りしました。「YOI」「天上の愛地上の恋」二次小説です。作者様・出版社様・制作会社様とは一切関係ありません。二次創作・BLが苦手な方はご注意ください。 翌朝、ヴィクトルは釈放された。「ユウリ=カツキ様と、ヴィクトル=ニキフォロフ様ですね?」 勇利とヴィクトルが警察署から出てくると、皇太子の紋章が入った馬車の前に、一人の老人が立っていた。「はい、そうですが・・あの、貴方は?」「お初にお目にかかります。わたくしは皇太子様の侍従長の、ロシェクと申します。どうぞ馬車にお乗りください、皇太子様がお待ちです。」 老侍従長・ロシェクと共に馬車に二人が乗り込むと、馬車はホーフブルク宮ではなく、ウィーン市内へと走り出した。「あの、何処に行くのですか?」「それは申し上げられません。」 数分後、馬車は一軒の邸宅の前で停まった。「うわぁ・・すごか~!」 馬車から降りた勇利は、目の前に建っている豪邸を見て、思わず長谷津弁が出てしまった。「お二人とも、どうぞ中へお入りください。」 ロシェクと共に邸の中へと入り、ある部屋へと二人は向かった。「皇太子様、お二人を連れて参りました。」「入れ。」 扉越しにルドルフの声が聞こえた後、二人が部屋の中に入ると、暖炉の前のソファに座っているルドルフとアルフレートの姿があった。「あの、ここはどなたのお宅なのですか?」「ここはわたしの邸だ。王宮から離れて息抜きをしたい時に買った。」サラリとそんな事を口にしたルドルフに勇利は驚きを隠せなかったが、ふと勇利がルドルフの隣に座っているアルフレートの方を見ると、彼の首筋にはうっすらとキスマークが残っていた。(あぁ、そういうことか・・) 彼女いない歴イコール年齢の勇利でも、ルドルフとアルフレートが恋人同士である事は勘で解った。 それに、アルフレートと何かを話しているルドルフの表情が、とてもリラックスしているからだ。それは、ヴィクトルが自分にだけ見せる表情とよく似ていた。「これから君達二人には、この邸に住んで貰う。君達を王宮には住まわすと、心無い噂を立てる連中が居るからな。」「有難うございます、皇太子様。あの、これから宜しくお願いします。」「こちらこそ宜しく頼むよ、ユウリ。それよりも、わたしの事は“皇太子様”ではなく、名前で呼んでくれ。」「わかりました、ルドルフ様。」勇利はルドルフと握手を交わした。 こうして、彼は正式に皇太子付の侍従となった。「ユウリ、夜になったらここに帰って来るんだろう?」「うん。だからヴィクトル、そろそろ離してくれる?」 閣議に出席する為、王宮へと戻るルドルフに勇利は同行することになったのだが、ヴィクトルは一時たりとも勇利と離れたくないようで、先程から勇利を抱き締めたまま離れようとしない。「ユウリ、俺も一緒に行っちゃ駄目?」「駄目だってば!ヴィクトルはただでさえイケメンで目立つのに、王宮なんかに行ったらすぐに噂になるって!だから、僕が帰ってくるまでここでじっとしていて!」「ユウリは俺と離れていて、平気じゃないの?」突然ヴィクトルは無理矢理勇利を自分の方へと向かせると、勇利の唇を優しく指先でなぞった。「ユウリ、答えて?」「へ、平気じゃないです!」「じゃぁ、一緒に行こうか?」すっかり主導権を握られてしまった勇利は、ヴィクトルの言葉にただ頷くことしか出来なかった。「アルフレート、わたしは少し大公の気持ちが解ったのかもしれない。」「まぁ、あんな風に見せつけられたら・・」 ヴィクトルと勇利がイチャつくところをみたルドルフがそう呟くと、アルフレートは苦笑交じりにそう言って二人の方を見た。「あの二人を王宮に連れて行くと、色々と困った事になりそうですね。」「ああ。ヴァレリーあたりが大騒ぎするのは目に見えている。」 皇太子と宮廷付司祭が見知らぬ東洋人の青年と銀髪碧眼の青年を連れて王宮に入ると、それは瞬く間に宮廷中に知れ渡った。「ねぇ、あの方よ・・」「あの顔で皇太子様よりも年上だそうよ。」「アルフレート様も素敵だけれど、ユウリ様も素敵ね・・」「素敵と言えば、いつもユウリ様のお傍にいらっしゃるヴィクトル様も素敵よね。お二人が並ぶと、まるで一幅の絵画のようだわ・・」(やっぱり噂になっているな・・) 勇利が宮廷で皇太子付の侍従として働き始めてから数日が経ち、彼は廊下で女官達の噂話を聞きながら素早くその場から離れようとした時、誰かに上着の裾を掴まれた。 何だろうと思って彼が振り返ると、そこには黒髪にカチューシャをつけた一人の少女が立っていた。「お前が、お兄様の所に最近来た東洋人ね?」「はい、そうですが貴方は・・」「ヴァレリー様、こちらにいらしゃったのですね!もうすぐお勉強のお時間ですから、お部屋にお戻りになりませんと。」 少女の元へ慌てて駆けつけた彼女の教育係の女官がそう言いながら少女を勇利から引き離そうとしたが、彼女は勇利の上着の裾を掴んだまま離そうとしない。「お前、名前は?わたくしはマリア=ヴァレリーよ。」「ユウリと申します、ヴァレリー様。お目にかかれて光栄です。」初対面のヴァレリーに対して膝をついて挨拶した勇利が立ち上がろうとした時、ヴァレリーが勇利の両手を掴んだ。「決めた、今日はお前と遊ぶ!」「え・・」 これが勇利とマリア=ヴァレリーの出逢いだった。にほんブログ村二次小説ランキング
Jul 31, 2024
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表紙素材は、ねつこ様からお借りしました。「YOI」「天上の愛地上の恋」二次小説です。作者様・出版社様・制作会社様とは一切関係ありません。二次創作・BLが苦手な方はご注意ください。「どうして・・こんな、酷い・・」「こんな傷、どうってことないさ。」そう言って勇利に微笑んだヴィクトルだが、その笑みが歪んでいる事に勇利は気づいた。「ヴィクトルをここから出してください!彼は何も悪い事はしていない!」勇利はルドルフの方に向き直ると、ヴィクトルを解放するよう彼に言った。「貴様、皇太子様に対して何という口の利き方を・・」「皇太子がどれだけ偉いのかわからないけれど、彼を傷つけることは誰であっても許さない!」 ヴィクトルの身体と存在は、勇利の宝でもあり、ロシアの宝でもある。そして何より恋人の身体が卑劣で残酷な暴力の前に晒されるのは勇利にとって我慢ならなかった。「わかった、彼をここから解放しよう。」「しかし皇太子様、この男は・・」「無駄口を叩く暇があったら、医者の手配をしろ。君達の勘違いでロシアと面倒な事を起こしたくなければな。」ルドルフにそう言われた警察署長は素っ頓狂な叫び声を上げた後、急いで地上へと駆けあがっていった。「済まなかった。貴方を尋問したのは間違いだったようだ。」「解ってくれて、助かるよ。」苦痛に顔を顰めながらヴィクトルはルドルフにそう言うと、そのまま勇利の腕の中で意識を失った。「ルドルフ様、お帰りなさいませ。」「アルフレート、どうした?こんな時間までわたしの帰りを待っていたのか?」「はい・・ユウリさんが心配でしたので。それで、ユウリさんのお連れの方はどうなったのですか?」「彼は解放した。ユウリは今彼と居る。」 ルドルフは窓の外を眺めながらそう呟くと、溜息を吐いた。“皇太子がどれだけ偉いのかわからないけれど、彼を傷つけることは誰であっても許さない!” 皇太子である自分に対し、愛する者を守る為臆することなくそう言い放ったユウリ。 あの時ルドルフは、彼の黒褐色の瞳の中に、琥珀色の炎を見たような気がした。「ルドルフ様?」はっとルドルフが我に返ると、自分の前には訝し気な表情を浮かべているアルフレートの姿があった。 その姿が、一瞬勇利と重なって見えた。「・・彼を解放しろと、ユウリがわたしに向かって警察署の地下で言った時、何故かお前の顔が浮かんだ。」「わたしの顔が?」「お前とユウリは全く違うが、何処か似ている所がある。お前とユウリは自分の守りたい物の為ならば己の命など躊躇いなく捨てる覚悟を持っている。そして、何か言い出したら聞かない頑固なところも。」「ご冗談を。わたしは貴方様より強くはありません。」そう言って柔らかな笑みを浮かべるアルフレートの美しい翡翠の瞳に、ルドルフはいつも魅了された。 ルドルフはアルフレートの唇を塞ぐと、羞恥で頬を赤く染めている彼を寝室へと誘った。 教会のミサで信者達に教えを説く司祭としての彼の顔と、寝室で自分の前だけで見せる恋人としての彼の顔を、どちらもルドルフは気に入っている。「ルドルフ様・・」甘い声でアルフレートから呼ばれると、ルドルフの理性はたちまち吹き飛んでしまう。 アルフレートは、まるで楽園でイヴに食べるように蛇から唆された禁断の果実のようだ。 甘くて、一口齧(かじ)ればもっと欲しくなる。飽くなき欲望が次から次へと泉のように湧き出て、それがとどまるところを知らない。いつかアルフレートと自分との関係が公になったら、二人とも無傷では済まないだろう。ハプスブルク家存続の危機に陥るかもしれない。それでも、ルドルフはアルフレートと別れる気は全くなかった。何故ならアルフレートは、ルドルフにとっての光だからだ。(わたしは、お前の手を放しはしない・・) 熱を帯びて潤んだ翡翠色の瞳を、ルドルフは優しく見つめた。眠りに落ちる前、ルドルフの脳裏には、瞳に琥珀をユウリの姿が何故か浮かんだ。 ヴィクトルが目を覚ますと、隣には勇利が自分に寄り添う様な形で眠っていた。泣いていたのか、目元が少し腫れているように見えた。寝返りを打とうとした時、激しく鞭打ちされた背中の傷が痛んだ。ヴィクトルはこの監獄に連行された時の事を思い出した。 有無を言わさず警察に身柄を拘束され、連れて行かれたのは取り調べ室だった。『お前が知っている情報を吐け!』『そうやってシラを切れるのも時間の問題だ。』 取り調べに当たった警察官達はそうドイツ語でヴィクトルに怒鳴り散らしながら、彼の背中を容赦なく鞭で打った。暫くすると、この国の皇太子が取調室に入って来て、ヴィクトルに英語でこう言った。「お前が知っている情報を吐かなければ、お前と同じような目にあの東洋人を遭わせてやる。」「ユウリには手を出すな!俺はどうなってもいい、だがユウリを傷つける事は、誰であっても許さない!」 ヴィクトルの言葉を聞いた皇太子―ルドルフは、彼を冷たく一瞥した後そのまま宮殿へと戻っていった。 今ルドルフは何処で誰と居るのだろう―そう思いながらヴィクトルは勇利を抱き締めて眠った。にほんブログ村二次小説ランキング
Jul 31, 2024
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表紙素材は、ねつこ様からお借りしました。「YOI」「天上の愛地上の恋」二次小説です。作者様・出版社様・制作会社様とは一切関係ありません。二次創作・BLが苦手な方はご注意ください。(本当に、この人があのルドルフ皇太子?確か、この人は謎の死を遂げるんだよね?) アイスショーに出演する為、インターネットでエリザベートとその家族の事について勇利は調べたことがあった。 その中に、エリザベートの一人息子であるルドルフ皇太子がマイヤーリンクという場所にある狩猟用の小屋で、マリー=ヴェッツラという名の男爵令嬢と謎の心中を遂げ、その死の真相が100年以上経った今となっても明らかにされていない事を彼は知った。 その事件の張本人、もとい当事者であるルドルフ皇太子が、今自分の目の前に立っているのだ。 (この人は、自分の最期を知っているのかな?それとも・・)「何を見ている?」「いえ、あの・・すいません。」「ユウリ、これからお前はわたしの侍従にする。お前の恋人の命を救いたければ、わたしの言う事を聞け、わかったな?」「はい。」 氷のようなルドルフの蒼い瞳に射るように見つめられ、勇利は思わず俯いた。これから自分とヴィクトルがどうなってしまうのか解らないが、自分達の命を握っているのはルドルフである事だけは解った。「ルドルフ様、お話の途中に失礼いたします。」「入れ。」コンコン、とためらいがちなノックの後、部屋に入って来たのはゆったりとした法衣を纏った一人の司祭だった。「先ほど大公様から、ルドルフ様にお客様がいらしているとお聞きになったので、紅茶とクッキーをお持ちいたしました。」「アルフレート、こいつには気を遣うな。」そう言ったルドルフの口調は少し尖っているものの、先程自分に向けて言ったものとは違い、何処か柔らかな感じがした。「初めまして、わたしは宮廷付司祭のアルフレート=フェリックスと申します。」「こちらこそ初めまして、僕は勝生勇利といいます。これから宜しくお願い致します、フェリックスさん。」「アルフレートと呼んでくださって結構ですよ、ユウリさん。」そう言って自分に向かって優しく微笑むアルフレートの背中に、勇利は一瞬天使の羽根の様なものが見えた。(あれ・・さっきのは気のせいかな?)「どうかなさいましたか?」「いえ。あの、アルフレートさんは皇太子様とは一体どのようなご関係で?」「わたし達の出逢いを話せば長くなりますが、わたしとルドルフ様の関係は、実の兄弟の様なものですかね。」「え、兄弟・・ですか?あの、失礼ですがアルフレートさんはお幾つでいらっしゃいますか?」「今年で22になります。ユウリさんは?」「ぼ、僕は・・24になります。」「そうでしたか。ルドルフ様とさほど変わらない歳だと思ってしまいました。17歳位かと・・」「アルフレート、いくら何でもそれは言い過ぎだろう?」そう言いながらも、ルドルフは何処か嬉しそうな表情を浮かべながらアルフレートと勇利の顔を交互に見た。「ルドルフ様はわたしよりも3つ年下なのですよ。」「え、ええ~!」JJといい、ユリオといい、10代の欧米人は大人びているのだろう。いや、ユリオはまだ幼さが残るから除外するとして・・ルドルフ皇太子が自分よりも5歳年下だという事に勇利は思わず大声で叫んでしまった。「そんなに驚くことはないだろう、ユウリ。まぁ、わたしはお前が年上だと言う事には驚いたが。東洋人は童顔だから仕方ないな。」「そうですね、はは・・」ルドルフの言葉に落ち込みながら勇利が乾いた笑みを浮かべていると、再び部屋の外からためらいがちなノックの音が聞こえた。「皇太子様、例のロシア人についてご報告したいことが・・」「わかった。ユウリ、アルフレート、二人とも席を外してくれ。」「はい。」ただならぬ雰囲気を察したのか、アルフレートはさっと座っていたソファから立ち上がると、きびきびとした足取りで部屋から出て行った。「ユウリ、どうした?」「ヴィクトルに会わせてください、お願いします!」勇気を振り絞って、勇利はそうルドルフに懇願すると、彼に向かって頭を下げた。「貴様、皇太子様に向かって無礼な!」「・・いいだろう、会わせてやろう。」「有難うございます!」気難しく、人の好き嫌いが激しい性格のルドルフが、新米の侍従に優しく接した姿を見せ、部屋に入って来た侍従はぽかんとした顔をした。「何を惚けている、馬車の準備をしろ。」「は、はい!」 数分後、勇利はルドルフに連れられ、ヴィクトルが連行された警察署へと向かった。「皇太子様、お待ちしておりました。」「例のロシア人の元へ案内しろ。」「かしこまりました。」警察署の署長はそう言ってルドルフに頭を下げると、彼と勇利を地下の監獄へと案内した。 ルドルフと共に監獄へ入った途端、生臭い血の臭いが漂い、勇利は冷たい床に倒れているヴィクトルの姿を見つけ、思わず彼の元へと駆け寄った。「ユウリ、無事だったんだね・・」そう言って慈愛に満ちたアイスブルーの瞳で勇利を見つめたヴィクトルの顔に黒い隈が浮かんでいることに気づいた。「ヴィクトル、どうしてこんな事になったの?こんな所に閉じ込められて・・」勇利が涙を流しながらヴィクトルの頬を鉄格子越しに撫でていると、彼の背後に血溜まりがあることに気づいた。「ヴィクトル、一体ここで何をされたの?」「大丈夫、何もされていないよ、安心して。」 だが勇利は、見てしまったのだ。ヴィクトルの陶磁器の様な美しくきめ細やかな白い肌に、無数につけられた鞭打ちの痕を。にほんブログ村二次小説ランキング
Jul 31, 2024
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表紙素材は、ねつこ様からお借りしました。「YOI」「天上の愛地上の恋」二次小説です。作者様・出版社様・制作会社様とは一切関係ありません。二次創作・BLが苦手な方はご注意ください。 20XX年、オーストリア・ウィーン。 “リビング・レジェンド”こと、ヴィクトル=ニキフォロフと、その婚約者である勝生勇利は、ウィーンで開催されるアイスショーに出演する為ロシアから来ていた。「ねえユウリ、アイスショーは明日だから、今日は観光しないか?」「いいね。」 アイスショー前日、練習を終えたヴィクトルと勇利は、その日一日ウィーン市内を観光した。 世界遺産となっているシェーンブルン宮殿やシュテファン寺院、そして音楽の都・ウィーンの象徴的存在でもあるウィーンオペラ座などを見て回った後、二人はオペラ座近くのカフェで昼食を取った。「流石音楽の都だね。朝から道を歩いていると音楽が自然と聞こえてくる。何だか、想像力が湧くね。」「そうだね。ねぇヴィクトル、お昼食べ終わったらどうする?」「ユウリを頂こうかな?」ヴィクトルがさらりとそんな言葉を口にしたので、勇利は思わず飲んでいたコーヒーを噴き出しそうになった。「やめてよ、そんな事言わないで、恥ずかしい・・」「どうして?俺達はもうすぐ結婚するんだろう?そんなに恥ずかしがることないじゃないか?」 勇利の耳元でヴィクトルが甘い言葉を彼に囁くと、勇利は頬を赤く染めた。「僕、先にホテルに戻ってるね!」ヴィクトルに背を向け、勇利はそそくさとカフェを後にした。「まったく、一緒に暮らしているっていうのに、ユウリは初心だな・・」世界一モテる男は、恋人の背中を愛おしそうな目で見つめながらそう呟くと、慌てて彼の後を追いかけた。「へぇ、ここがホーフブルク宮殿かぁ・・」 ハプスブルク家の宮殿・ホーフブルク宮殿内を観光していた勇利は、豪華な調度品に囲まれたエリザベートの部屋を見ながら溜息を吐いた。 100年以上前、この美しい宮殿にエリザベート達が暮らしていたのかと想像するだけでも楽しい。「ユウリ、何を見ているの?」「僕達が明日アイスショーで演じる“エリザベート”の主人公、エリザベートとその家族の肖像画と写真だよ。エリザベートの隣に展示されている写真が、彼女の一人息子のルドルフ皇太子だって・・写真を見ているだけでも惚れてしまいそうだよ~!」 ヴィクトルは勇利の言葉に少しムッとしながら、ルドルフ皇太子の写真を見た。自分と同じように美しく整った顔立ちをした金髪碧眼の軍服姿の青年は、確かに同性の勇利が見ても見惚れてしまうほどの美しさだ。「ユウリは、俺よりもこんな男の方がいいの?」「違うって・・僕が一番好きなのは、ヴィクトルだけだから。」「その言葉を聞いて安心したよ、勇利。」ヴィクトルはそう言って笑うと、勇利の唇を塞いだ。「さてと、もうホテルへ戻って休まないと。明日早いんだし。」「そ、そうだね。」 翌日、ヴィクトルと勇利が出演したアイスショーは大成功して幕を閉じた。 アイスショーが終わってゆっくりと勇利と二人きりの時間を過ごせると思っていたヴィクトルだったが、スポンサー契約をしている企業や、各国の王侯貴族からパーティーの招待状が山のように届き、ヴィクトルと勇利はそれらのパーティーに顔を出さなければならず、その上社交界の行事に出席しなければならなくなったので、ロシアに帰国するまで多忙な日々を送ることになってしまった。「ユウリ、大丈夫かい?顔色が悪いよ?」「シャンパン、少し飲みすぎちゃったかな・・」ある日の夜、ヴィクトルと勇利はホーフブルク宮殿で開かれたパーティーに出席していた。 自分と契約しているスポンサー企業の重鎮や、貴族達と軽く談笑した後、ヴィクトルはバルコニーで蹲っている勇利の姿を見つけ、彼の元へと駆け寄った。「もう挨拶は終わったし、さっさとここから離れようか?」「うん・・」 ヴィクトルに支えて貰いながらパーティー会場を彼と共に後にした勇利だったが、数歩もしない内に彼は床に崩れ落ちてしまった。「ユウリ、何処か近くで休もうか?」ヴィクトルの言葉に、勇利は静かに頷いた。 勇利の身体を横抱きにしたヴィクトルは、人気のないスイス宮へと向かった。 昼間は観光客で溢れ、賑わっているこの場所は、今はしんと静まり返っていて全く人気がなかった。 偶然空いている部屋を見つけたヴィクトルは、勇利の身体を優しくソファに寝かせた。「暫くここで一緒に休もう。」「うん・・」 ヴィクトルの手を握りながら、勇利はいつの間にか眠ってしまった。「おい、起きろ。」「ん・・まだ寝かせて、ヴィクトル。」 まどろみの中、勇利は誰かに身体を揺さ振られている事に気づいて目を開けた。自分の隣に居た筈のヴィクトルの姿は何故かなく、代わりに渋面を浮かべた金髪碧眼の青年が勇利の前に立っていた。「皇太子の部屋に大胆に忍び込むとは、大した賊だな。」青年はそう言うと、冷たい光を帯びた蒼い瞳で勇利を睨みつけた。「あの、貴方誰ですか?それに、ヴィクトルは何処に?」「お前と一緒に居たロシア人なら、今警察で尋問を受けている。」「警察?ヴィクトルがどうしてそんな・・」「黙れ。自分の名を名乗ってから、相手に名を尋ねるのが礼儀だろう。」青年の言葉を受けた勇利は、彼に自分が日本のフィギュアスケートの選手であり、ヴィクトルとはウィーンで開催されたアイスショーに出演する為に来た事を説明した。「ユウリというのか。東洋人にしては珍しい名前だな。自己紹介が遅れたな。わたしはルドルフ=フランツ=カール=ヨーゼフだ。」(ルドルフって・・もしかして、この前見たエリザベートの一人息子の、ルドルフ皇太子なの、この人が!?) 余りにも衝撃的過ぎて、勇利は自分が置かれた状況が理解できずにいた。にほんブログ村二次小説ランキング
Jul 31, 2024
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表紙は、湯弐様からお借りしました。「薄桜鬼」「天上の愛地上の恋」二次小説です。作者様・出版社様とは一切関係ありません。二次創作・BLが苦手な方は閲覧なさらないでください。「アルフレート、ここに居たのか。」 台所から賑やかな声が聞こえて来たのでルドルフがそこに入ると、そこには歳三と総司との間に挟まれて困惑しているアルフレートの姿があった。「お前、そこで何をしている?」「あ、君良い所に来たね!」総司はルドルフを見てそう言って笑うと、彼に一冊のノートを投げた。「何だ、これは?」ルドルフがノートの中身を見ると、そこには異国語で書かれた詩のようなものがあった。「てめぇ、今すぐにそれを返しやがれ!」「絶対に返しちゃ駄目だよ。」「これは何だと聞いている。」「ああ、これは土方さんが趣味で作っている俳句だよ。下手くそで笑えるでしょう?」「それ以前に、何が書いてあるのかさっぱりわからん。」「じゃぁ、君に解りやすいよう、僕が一句ずつ解説付きで朗読してあげるね!」「やめろ、やめてくれぇ~!」自分の趣味を公衆の面前で晒されそうになっている事に気づいた歳三は、“鬼副長”らしからぬ哀れな悲鳴を上げながらルドルフから句集を取り戻そうとした。だが、彼よりも背が高いルドルフは、総司の言葉を理解したのか、なかなか歳三に句集を返そうとしなかった。「ルドルフ様、ヒジカタ様を困らせてはなりませんよ?」「相手の弱みを握って何が悪い。暫くこれは預かっておこう。」ルドルフがそう言って嬉々とした表情を浮かべていると、奥から丸眼鏡を掛けた男が現れ、ルドルフの手から句集を奪った。「貴様、何をする?」「土方君、どうぞ。」「済まねえな、山南さん。」山南から句集を受け取った歳三は、そう言って安堵の表情を浮かべた。「誰だ、貴様は?」「自己紹介が遅れましたね。新選組総長の山南敬助と申します。以後お見知りおきを。」「総長?ではお前もヒジカタと同じ役職なのだな?」「まぁ、そう言うことになりますね。貴方に少し質問があるのですが、宜しいでしょうか?」「構わない。」「昨夜の貴方の身なりや立ち居振る舞いを観察した上で、貴方は高貴な身分に属する方だとお見受け致しました。僭越(せんえつ)ながら、貴方のご出身と身分をお教えいただけないでしょうか?」「・・貴方はどうやら、ヒジカタと違って話が解るようだな。」山南の言葉を聞いたルドルフはそう言って口端を上げて笑った。「わたしはルドルフ=フランツ=カール=ヨーゼフ=フォン=オーストリア、オーストリア=ハンガリー帝国の皇太子だ。日本には母上と一緒に視察へ来た。」「皇太子?こいつそんなに偉いのかよ?」「馬鹿野郎平助、山南さんの話を聞いていなかったのか?」間の抜けた言葉を発した平助の頭に、原田がすかさず拳骨を落とした。「皇太子だろうが何だろうが、“郷に入ったら郷に従え”だ。新選組に居る身なら、こちらのやり方に従って貰う。」「わたしは貴様の部下ではないのだから、わたしに命令に従う義務はない。」そう言い放ったルドルフと、彼を睨みつけている歳三との間に静かな火花が散った。「ルドルフ様、こちらでお世話になっている限り、この方達に従うべきではありませんか?」「アルフレート、お前はこいつの味方をするのか?」歳三の肩を持つかのような発言をするアルフレートの言葉に、ルドルフは少しムッとした顔をして彼の方を見た。「わたしは当たり前のことを申し上げているだけです。それとルドルフ様・・」アルフレートは一歩ルドルフの前に出ると、自分の手をルドルフの額に当てた。「お熱がありますね。」「こんなもの、どうってことない。」「いいえ、いけません。黙ってここから抜け出そうなどと思ってはいけませんよ。今日はお部屋でお休みください。」「解った、休めばいいんだろう、休めば!」 自棄をおこしたルドルフはそう言うと台所を出て部屋へと戻って行った。「おやおや、彼は貴方の言う事は何でも聞くようですね?」「ルドルフ様は、幼い頃から体調が悪くても隠そうと為さることが多いので・・」「そうですか。そういう所が土方君と少し似ていますね。」山南はそう言って笑うと、歳三が彼を睨んだ。「冗談じゃねぇぞ山南さん、あいつと俺は全然似てねぇぞ!」 副長室で歳三が山南にそう怒鳴ると、彼はニコニコ笑いながら彼の肩を叩いた。「ただの冗談にそんなに怒ることはないでしょう。それよりもわたしが気になるのは、ルドルフさんとあの黒髪の異人さんとの関係です。」「あいつとアルフレートがどうかしたのか?」「二人の関係は、単なる幼馴染といったものではないみたいですね。それよりももっと深いもの・・」「まさか山南さん、あの二人が出来てるとか言うんじゃねぇだろうな?」「その“まさか”だと思いますよ、土方君。」山南の言葉を聞いた歳三は、美しい顔を引き攣らせながら彼を見た。「まぁ、彼らの関係は我々には関係なさそうなので、放っておくことにしましょう。人の恋路を邪魔する者は何とやらといいますからね。」「あぁ、そうだな・・」「土方君、今時衆道ごときで君が驚く事はないでしょう?あの時の騒動に比べたら、二人の関係など微笑ましいものではないですか?」「うん、そうだな・・だがな山南さん、あいつらをこのまま部屋に閉じ込めておくわけにはいかねぇし、誰かの小姓にでもするか。」「それがいいですね。では土方君、お願いしますよ。」「おいちょっと待て、何で俺があいつらの面倒を見る事で決まっているんだ?」「言い出しっぺの法則ですよ。まぁ、ルドルフさんの方は貴方の小姓など到底務まりそうにないので、一度採用試験を受けさせることにしましょうか。」(何だか、面白くなりそうな気がしますね・・)にほんブログ村二次小説ランキング
Jul 31, 2024
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表紙は、湯弐様からお借りしました。「薄桜鬼」「天上の愛地上の恋」二次小説です。作者様・出版社様とは一切関係ありません。二次創作・BLが苦手な方は閲覧なさらないでください。 翌朝、ルドルフが寝心地の悪い布団から起き上がり、自分の隣で寝ている筈のアルフレートに触れようとしたが、そこに彼の姿はなかった。「アルフレートさん、悪ぃな。朝飯の支度を手伝わせちまって。」「いいえ、こちらこそわたし達を置いてくださって有難うございます。わたしに出来ることでしたら、何でも相談してくださいね。」 新選組の屯所内にある台所で永倉新八と朝食の支度をしながら、アルフレートがそう言って彼に微笑んでいると、そこへ総司が欠伸をしながらやって来た。「あれぇ、その人昨夜土方さんがここに連れて来たっていう異人さん?」「初めまして、アルフレート=フェリックスと申します。」「こちらこそ初めまして。僕は沖田総司。そういえば君、あの金髪の方の異人さんと知り合いなの?随分と親しかったようだけど?」「ルドルフ様とわたしは、幼馴染です。物心ついた頃から、わたしはルドルフ様にお仕えしております。」「ふぅん、そう。そのルドルフとかいう人は気に入らないけれど、君とだったら仲良く出来るかな。」総司がそう言ってアルフレートの方を見ると、彼の背後に黒の着流しを着た青年がやって来た。「総司、朝稽古をサボって何をしている?」「やだなぁはじめ君、僕はこれから朝飯の支度をしようと思って・・」「嘘を吐け、あんたがここに来たのはどうせ朝飯のおかずを盗み食いするつもりで来たのだろう?」 青年の紫がかった蒼い瞳で睨まれた総司は、大袈裟な溜息を吐いた。「沖田さん、こちらの方は?」「俺は新選組三番隊組長、斎藤一だ。あんたが今日からうちに世話になる客人か?」「はい。アルフレート=フェリックスと申します。以後宜しくお願い致します。」「こちらこそ宜しく頼む。アルフレート殿、貴殿のその格好はいささか珍妙なものだが、それには何か意味があるのか?」 青年―斎藤はそう言うと、アルフレートが着ている法衣を指した。「わたしは司祭をしておりますので、今わたしが着ている法衣は制服のようなものです。皆さんには、制服のようなものはありますか?」「隊服ならあるよ。巡察の時はみんな浅葱色の羽織を着るのが決まりだけど、ちょっと色が派手過ぎるんだよね、それに模様もダサいし。いくら近藤さんと土方さんが忠臣蔵好きだからといって、赤穂浪士の真似をすることないと思うけどなぁ。」「総司、何故あんたは副長に盾突くのだ?お前の所為で副長の気苦労が絶えない・・」「朝っぱらからお説教はやめてよ、はじめ君。」「てめぇら、こんな所で何を騒いでいやがる?」ドスのきいた歳三の怒声が台所に響くと、総司と斎藤が一斉に彼の方を見た。「土方さん、もう起きてたのか?」永倉が菜箸を持ったまま歳三にそう尋ねると、彼は眉間に皺を寄せながらこう言った。「副長が朝寝坊なんざしたら、隊士達に示しがつかねぇだろう。それよりも新八、てめぇ昨夜も遅くまで島原で飲み歩いていたそうじゃねぇか?」「ひ、土方さん、あれは左之と平助が無理矢理誘って来て、断れなくてよぉ・・」「昨夜あんたは泥酔して屯所の玄関先で大騒ぎした挙句、副長の褌の上に吐いたのを忘れたのか、新八?」「さ、斎藤、何でこんな時にそう言う事を告げ口するんだよ!?」「俺は告げ口などしていない。ただ副長に昨夜の出来事をご報告しているだけだ。」「それを告げ口っていうんだよ!」そう言って慌てふためく永倉を前に、斎藤は冷静沈着な態度を崩さなかった。「新八、後でじっくりとそのことを聞かせて貰うじゃねぇか?」「土方さん、勘弁してくれよ!」「やかましい!てめぇの酒癖の悪さには今まで手を焼いてきたが、もう許さねぇ!今日からてめぇは巡察以外外出禁止だ!」「酷ぇ、それはねぇだろう!」「黙って副長の命令に従え、新八。自業自得だ。」うなだれる永倉に、斎藤が追い討ちをかけた。 歳三は自分達のやり取りを聞いていたアルフレートが、自分に向かって笑みを浮かべている事に気づいた。「何が可笑しいんだ?」「いえ・・何だか、土方さんが永倉さんを叱っていらっしゃるところを見ていると、皆さんのお母様のように見えまして・・」 アルフレートの言葉を聞いた総司が突然、腹を抱えて笑い出した。「あはは、アルフレートさんって面白い事を言うんだね!確かに、土方さんの誰にも口煩い所はお母さんみたいだけど・・」「総司、笑い過ぎだ!」斎藤が慌てて総司を宥めたが、彼は笑いながら懐からある物を取り出した。それは、歳三の句集、豊玉発句集だった。「総司、てめぇまた俺の句集を持ち出しやがったな、返せ!」「嫌ですよ。今から一番隊のみんなにこの句集の感想を聞きに行くんですから、邪魔しないでください。」「てめぇ、余程俺に斬られてぇようだなぁ?」歳三がこめかみに青筋を立てながら腰に差していた大刀へと手を伸ばすのを見た斎藤が、慌てて彼を止めた。「落ち着いてください、母上!」「俺はいつからてめぇのお袋になったんだ、斎藤!」「申し訳ありません、副長。」「あ~あ、土方さんはじめ君を朝から泣かせちゃ駄目ですよ。それじゃぁ、僕は一番隊の朝稽古に行ってきますね、お母さん!」「総司、待ちやがれぇ~!」台所から賑やかな声が聞こえ、局長室で読書をしていた近藤は思わず本から顔を上げた。「あの様子だと、また総司が何かやらかしたのか?」「そのようだね。勇さん、総司を止めないのかい?」「いつもの事だから、いずれ落ち着くさ。それよりも、トシは今日も元気だなぁ。」そう言って豪快に笑う近藤の姿を、隣で井上が少し呆れたような顔をしていた。(勇さんは相変わらず呑気だねぇ。)彼は内心そう思いながら、密かに溜息を吐いた。にほんブログ村二次小説ランキング
Jul 31, 2024
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表紙は、湯弐様からお借りしました。「薄桜鬼」「天上の愛地上の恋」二次小説です。作者様・出版社様とは一切関係ありません。二次創作・BLが苦手な方は閲覧なさらないでください。 歳三は自分の前で臆面もなく抱き合う二人の異人の姿を見ながら、眉間に皺を寄せた。「てめぇら、知り合いなのか?」「はい。わたしとルドルフ様は、幼馴染であり、友人です。あの、貴方様のお名前をまだ聞いておりませんでしたが・・」「俺は新選組副長、土方歳三だ。それと、あんたの友人に斬りかかろうとしたのが、新選組一番隊組長沖田総司だ。こっちは名乗ったんだから、てめぇらも名乗りやがれ。」「わかりました。わたしはアルフレート=フェリックスと申します。こちらの方は・・」「ルドルフ=フランツだ。初対面の相手に向かって、随分と偉そうな口を利くのだな?」「そっちこそ、自分がどういう立場に居るのかわかってねぇようだなぁ?」ルドルフの言葉に苛立った歳三がそう言って立ち上がったが、彼よりも背が高いルドルフに見下ろされてしまった。「てめぇ、この俺を見下ろすなんざいい度胸をしているじゃねぇか?」「貴様が小さいだけだろう?」「何だと!」「トシ、やめないか!」慌てて歳三とルドルフとの間に、近藤が割って入って来た。「俺は新選組局長、近藤勇だ。貴方達は何故、京の町に居たんだ?」「用事があって来た。だがホテルに戻ろうとしたら、道に迷ってしまってあの化け物に襲われたのだ。」「そうか。今日はもう遅ぇし、お前達の処分については明日決める事にする。」「わかった。」「源さん、二人を部屋へ案内してくれ。」「わかったよ。」 ルドルフとアルフレートを部屋へと案内した男は、井上源三郎と名乗った。「狭い部屋だな。それに、天井が低い。」「異人さんには居心地が悪いと思うが、この屯所には他に空いている部屋がなくてね。」「いいえ、構いません。井上さん、これからわたし達はどうなるのでしょうか?」「それはトシさん次第だね。」「あのコンドウとかいう男がここのトップではないのか?」「確かに近藤さんは新選組の局長だが、新選組の全ては副長のトシさんが仕切っているのさ。」「だから彼はあんなに偉そうな態度を取っていたのか。余り彼とは仲良くなれないな。」「ルドルフ様・・」先程のルドルフと歳三とのやり取りを見ていたアルフレートは、ルドルフの言葉を聞いて不安になった。「今日はもう遅いから、休んでくれ。布団は、あそこの押し入れにしまってあるよ。」「有難うございます。」 アルフレートが押し入れから布団を二組出すと、ルドルフはそれを見るなり顔をしかめた。「こんな薄い物で眠れるのか?」「ルドルフ様、文句を言ってはなりませんよ。こちらにお世話になる以上、あの人達と仲良くして頂かないと困ります。」「ふん、お前の頼みならば聞いてやろう。ただあのヒジカタという男とはウマが合わない。」ルドルフはそう言って布団に潜り込むと、アルフレートにそっぽを向いた。 同じ頃、副長室では歳三が山南敬助と向かい合って座っていた。「土方君、先程わたし達が会った異人、特に背が高い人の方は、身なりやあの口ぶりからして、高貴な身分に属する方のようですね。」「それがどうしたんだ、山南さん?言っとくが、あいつが高貴な身分の方だからといって仲良くしろなんて言われても仲良く出来ねぇぜ?」「そんなに彼から見下ろされた事が悔しかったのですか、土方君?」「う、うるせぇ!」にほんブログ村二次小説ランキング
Jul 31, 2024
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表紙は、湯弐様からお借りしました。「薄桜鬼」「天上の愛地上の恋」二次小説です。作者様・出版社様とは一切関係ありません。二次創作・BLが苦手な方は閲覧なさらないでください。「おい、立てるか?」「助けてくださって、有難うございます。」 新選組副長・土方歳三は、自分の前で蹲っている異人にそう声を掛けると、彼は自分に礼を言った。 歳三は、目の前に立っている珍妙な格好をした異人をじっと見ていると、彼は翡翠の双眸で自分を見つめて来た。「あの、ルドルフ様をご存知ありませんか?」「誰だ、それ?」「わたくしの大切な方なのです。先ほど一緒に居たのですが、地震で逸れてしまって・・」「詳しい話は屯所で聞こう。俺について来い。」「は、はい・・」 このまま夜の町で異人を置き去りにしたら、また変な輩に彼が絡まれる可能性が高い。それに、彼は何か訳ありのようだし、事情を屯所で聞いた方がいい―そう判断した歳三は、彼を屯所へと連れて行った。(この人は、信用してもいいかもしれない・・)アルフレートは歳三の後をついていきながら、ルドルフの身を案じた。 一方、新選組の屯所である西本願寺では、不機嫌なルドルフの様子を遠巻きに見ている数人の男達が居た。「平助、お前が話しかけろよ。」「そう言うなら、左之さんが話しかけてみろよ。」「嫌だよ、面倒な事に巻き込まれるのは御免だぜ。」(あいつらはコソコソと何を話しているんだ?)ルドルフはイライラしながら男達を睨んでいると、その中の一人と目が合った。「やべ、目が合った!」「話しかけるチャンスだ、行け平助!」「おい、左之さん・・」左之助と新八に背中を勢いよく押され、平助は勢いよくルドルフの前に飛び出してしまった。「ど、どうも・・」「お前、何をさっきから見ている?」「いやぁ~、異人さんを初めて間近で見たから、珍しくてつい・・」「そうか。」ルドルフはそう言って平助にそっぽを向いた。「あれ、どうしたの?その人、誰?」広間の入り口の方で声が聞こえたので、ルドルフがそちらの方を向くと、そこには癖のある栗色の髪をした男が、翡翠の双眸でルドルフを睨みつけていた。「貴様は誰だ?」「それはこっちが聞きたいね。それに君、自分が今どんな状況に置かれているのか解らないの?」栗色の髪をした男がそうルドルフを挑発すると、ルドルフは彼を睨みつけた。「何その目つき、気に入らないなぁ。」 栗色の髪の男―沖田総司はそう言うと、刀の鯉口へと手を伸ばした。「総司、てめぇなにしていやがる!」「土方さん、帰って来たんですか。後ろに立っている人、誰ですか?」「屯所に帰る途中で拾って来たんだ。それよりも、お前ぇを睨みつけているその異人は誰だ?」「さぁ。随分と生意気な態度を取っているので、今斬ろうと思っていたところです。」総司がそう言ってルドルフの方を見ると、彼は歳三の背後に立っているアルフレートに駆け寄った。「アルフレート!」「ルドルフ様、ご無事だったのですね!」にほんブログ村二次小説ランキング
Jul 31, 2024
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素材は、湯弐様からお借りしました。「薄桜鬼」「天上の愛地上の恋」二次小説です。作者様・出版社様とは一切関係ありません。二次創作・BLが苦手な方は閲覧なさらないでください。 1878年1月、ルドルフは母・エリザベート皇后と共に来日した。来日の目的は、日本との親睦を深めることであったが、ウィーン万博で日本の芸術品に目を奪われ、その虜となったエリザベートが熱望した為であった。 日本滞在中に京都を自由に散策するエリザベートとは違い、ルドルフは内戦から10年経った日本がどのように近代国家として発展しているのかを視察するため、学校や工場などを訪れた。「ルドルフ様、お疲れではありませんか?」「アルフレート、お前の方こそ疲れていないのか?」 帰国が明日に迫った日の夜、宮廷付司祭・アルフレートがルドルフの部屋を訪れ、彼を労うと、逆にアルフレートは彼から労われてしまった。「母上の我儘に振り回されて、音を上げない者はお前だけだとさっきエスターライヒ伯爵夫人がお前の事を褒めていたぞ。」ルドルフは半ば呆れたような口調でそう言うと、恋人を見つめた。「ヴァレリー様で、慣れておりますから・・」「そうか。」「あのルドルフ様、そんなに見つめないでください・・恥ずかしいです。」ルドルフの蒼い瞳で穴が開くほど見つめられ、アルフレートは恥ずかしさのあまり思わず俯いた。「別にいいだろう、減るものでもないし。」ルドルフはソファから立ち上がると、アルフレートの手を掴んで自分の方へと彼を引き寄せ、自分の膝の上に彼を座らせた。「ルドルフ様、何を・・」「漸く二人きりになれたんだ、そうかたくなるな。」ルドルフはそう言った後、アルフレートの唇を塞いだ。アルフレートが彼のキスに応えると、ルドルフはおもむろにアルフレートのズボンの中に手を入れて来た。「ルドルフ様・・」「アルフレート・・」熱を孕んだ翡翠の双眸を見つめたルドルフは、そのまま彼をソファの上で抱いた。「わたしから、離れるな・・」ルドルフはそう言うと、アルフレートの左頬に残る傷を指先でなぞった。アルフレートは彼の言葉に静かに頷き、ルドルフと再び唇を合わせた。「こうしてお前と二人きりでいられるのは、いつまでなのだろうな?」「ルドルフ様・・」「心配するな。結婚してもわたしはお前を傍に置く。」「そう・・ですか。」 褥の中で寝返りを打ちながら、アルフレートは彼の言葉を聞いて少し胸が痛んだ。ルドルフはオーストリアの皇太子―いずれは結婚し、跡継ぎを儲けなければいけない身だ。それに対し、自分は何の後ろ盾のない孤児―女であったのなら愛人として彼に囲われ、彼の子を産める。だが、アルフレートは男で、そんな事は一生出来ないことくらい己でも解っている。だからこそ―ルドルフの傍に居られるこの時が、何よりも愛おしかった。「アルフレート、何を考えている?」「いいえ、何でもありません・・」「そうか。」ルドルフに黒髪を優しく梳かれ、アルフレートはゆっくりと目を閉じて眠った。 帰国する日の朝、ルドルフはアルフレートと共に京都市内を散策した。長身の彼と、法衣姿のアルフレートは日本では珍しいらしく、擦れ違う通行人達の視線が自分達に向けられている事にアルフレートは気づいた。「アルフレート、どうした?」「先ほどから、通行人の視線を感じるのですが・・」「外国人の姿は京都では珍しいからな。さてと、ヴァレリーに土産のひとつでも買ってやるか。」 ルドルフがアルフレートと共に入ったのは、櫛や簪を扱っている店だった。「これは如何ですか?ヴァレリー様に似合うと思います。」アルフレートがそう言って手に取ったのは、花の飾りがついた簪だった。「お前も何か欲しい物があれば、言え。」「ルドルフ様、ご冗談を・・」アルフレートがそう言ってルドルフの方を見ると、彼は手に持っていた櫛をアルフレートの黒髪に翳した。「似合うな。」「ルドルフ様・・」「何だ、気に入らないのか?」「いいえ・・」 会計を済ませ、店から出ようとした二人を、突如激しい揺れが襲った。「う・・」 揺れが収まり、アルフレートがゆっくりと目を開けると、そこには自分の隣に立っていた筈のルドルフの姿がなかった。「ルドルフ様、ルドルフ様!?」アルフレートが半狂乱になりながらルドルフの姿を探していると、自分の目の前に広がっている町の風景が先程とは違っている事に気づいた。 あの店にルドルフと共に入った時は昼だったのに、今町は宵闇と霧に包まれている。(ここは・・)あてもなくアルフレートが町を歩いていると、霧の向こうから人影が見えた。「ルドルフ様?」アルフレートが霧の中から人影に呼び掛けると、それはルドルフではなく、紅い目をした化け物だった。恐怖で動けずにいるアルフレートに向かって、化け物は涎を垂らしながら突進してきた。「血をよこせぇ!」 アルフレートが死を覚悟した時、彼の前で血飛沫が飛び、化け物が倒れた。「ったく、油断も隙もありゃしねぇ。」自分の前に立った男はそう言うと、ゆっくりとアルフレートの方を見た。にほんブログ村二次小説ランキング
Jul 31, 2024
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素材は、湯弐様からお借りしました。「天上の愛 地上の恋」二次小説です。作者様・出版社様とは一切関係ありません。二次創作・BLが苦手な方はご注意ください。「そんな所でいつまでも突っ立っているつもりか?こちらへ来い。」「あ、はい・・」ルドルフからそう言われ、アルフレートは慌てて彼の元へと駆け寄った。「あの、僕をどうしてここへ呼んだのですか?」「お前に興味があるからに決まっているだろう。鈍いな。」ルドルフは椅子を引いて立ち上がり、アルフレートの顔をじっと見つめた。「僕に、興味を?」「この学校は貴族の子息だけが通える名門校だ。本来ならば、お前のような平民が入れるような所じゃない。どうしてお前がこの学校に入れたのか、わたしは不思議でならないんだ。」「だから、その理由を直接僕に聞きたくてこうして呼び出したのですか?」「意外と鋭いところがあるな、お前。」ルドルフはアルフレートの言葉を聞くと、口端を上げて笑った。「僕がこの学校に入れたのは、ある人の推薦状のお蔭なんです。」「そうか。誰がお前を推薦したんだ?」「それが、僕にも誰なのか解らないんです。僕の誕生日に一度、その人から手紙が届くだけで・・」アルフレートはそう言うと、ガウンのポケットから一枚の封筒を取り出した。「見せてみろ。」「はい・・」ルドルフは封筒の封をペーパーナイフで切ると、流麗な文字で認められた手紙に目を通した。「どうやら、お前を陰から支援しているミスター・Xは、高貴な身分に属している者のようだ。この封筒と便箋は、輸入品でかなり高価な物だからな。それを購入できる人間はおのずと限られている。」「そうですか・・あのルドルフ様、もう僕失礼しても宜しいでしょうか?」「馬鹿な事を言うな。」「え、でも・・」「アルフレート、わたしの事は同室の奴から聞いているだろう?」「ええ。ルドルフ様は気難しい性格で、お部屋に呼ばれる事自体大変名誉な事だと・・」「お前がわたしの部屋に呼ばれたことは、大変名誉な事―その意味は、鈍いお前でも解るな?」「あっ・・」ルドルフの言葉を聞いたアルフレートは、彼が何故自分を部屋に呼んだ真意が解った。貴族の子息達しか通えない名門寄宿学校に、特待生として平民のアルフレートが入学したことにより、これから他の生徒達から注目される事を見越したルドルフが、アルフレートを自分の“学友”である事を周囲に認知させようとしているのだ。「僕を守る為に、ですか?」「ここの生徒達は、自らの身分と家柄に誇りを持っていて、友情を示す人間は自分と同じ身分の者だけだ。彼らにとって、平民のお前は使用人かそれ以下の存在、ということになる。だが、わたしがお前を“学友”として認めた限りお前はこの学校で有意義な生活が送れるということだ。」「そうなんですか・・」「だが、完全にわたしがお前を守るとは言い切れない。アルフレート、強くなりたければわたしの“学友”となるのに相応しい教養を身に付けろ。」「はい、解りました。」ルドルフの部屋から辞したアルフレートが自室へと戻ると、そこにはロミオ達が彼の帰りを待っていた。「どうだった、ルドルフ様から何か言われたかい?」「ルドルフ様からは、これから仲良くなろうって言われたよ。でも、それには条件が必要だって・・」「条件?」「自分の“学友”である事に相応しい教養を身に付けろって。何だか僕、ルドルフ様から試されているんじゃないかなぁ?」「大丈夫さ、アルフレート。僕達がついているんだから。」「そうだよ、解らない事があれば、僕達が教えてあげるよ。」アルフレドとロミオからそう励まされたアルフレートは、自分のベッドに入ってゆっくりと目を閉じた。にほんブログ村二次小説ランキング
Jul 30, 2024
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素材は、湯弐様からお借りしました。「天上の愛 地上の恋」二次小説です。作者様・出版社様とは一切関係ありません。二次創作・BLが苦手な方はご注意ください。「アルフレート、空いている席にお座りなさい。」「は、はい・・」アルフレートはそう言って空いているテーブルを探したが、少年達はアルフレートが近づくと席を詰め、彼を座らせないようにした。「ここが空いているよ。」アルフレートが困り果てていた時、奥のテーブルから澄んだ声が聞こえた。彼が声のした方を見ると、そこには金髪碧眼の少年が二人座っており、彼らの傍には、栗毛の髪をした少年が一人座っていた。「すいません、有難うございます。」「君がアルフレートだね?僕はアルフレド。宜しくね。」「こちらこそ、宜しくお願いいたします。」「そんなに固くならなくてもいいよ、これから一緒にひとつ屋根の下で暮らす兄弟になるんだから。」「は、はい・・」アルフレドと名乗った少年は、そう言ってアルフレートに微笑むと、右手を差し出した。アルフレートは、アルフレドの手を握った。「アルフレートっていうんだね?イタリア語だとアルフレドと同じ名前だ!」アルフレドの隣に座っていた栗毛の少年は、そう言ってアルフレートを見た。「君は?」「僕はロミオ、イタリアから来たんだ!宜しくね、アルフレート!」「宜しく、ロミオ。」「君、何処から来たの?」「ミュンヘンから来たんだ。ロミオ、君はイタリアの何処から来たの?」「ミラノからさ。アルフレドと一緒に来たんだ。」「そうなんだ。ミラノって、どんな所なの?」「とても綺麗な所さ。」ロミオとアルフレートが互いの故郷の事を話していると、奥の席に座っていた金髪碧眼の少年とアルフレートの目が合った。「君、名前は?」「アルフレート=フェリックスです。貴方は?」「わたしはルドルフだ。アルフレート、今夜7時にこの部屋に来い。」ルドルフはそう言うと、アルフレートに一枚のメモを手渡した。「アルフレート、初日からルドルフ様に呼ばれるなんて凄いや。」「何が凄いの?」「ルドルフ様は気難しくて、彼の部屋に呼ばれるのは、大変名誉な事なんだよ!」「へぇ、そうなんだ・・」「君が驚くのも仕方がないさ。だって君は、ここに来たばっかりだからね。」アルフレドはそう言うと、紅茶を一口飲んだ。「アルフレート、この学校は、君の目から見ると特殊な場所なのかもしれない。この先色々と大変な事があると思うけれど、困った事があったら僕達にいつでも言ってくれ。」「有難う、アルフレド。」昼食を終えたアルフレートが寮の部屋に入ると、そこにはロミオが居た。「良かった、アルフレート。君と同じ部屋なんて、運がいいよ。」「うん。僕、これから上手くやっていけるかな?」「大丈夫、君には僕達がついているさ!」その日の夜、指定された時刻にアルフレートがルドルフの部屋へと向かうと、そこは寮の中でも高貴な身分の子息にのみ与えられる特別室だった。「ルドルフ様、アルフレートです。」「入れ。」美しい装飾が施されたドアをアルフレートがノックすると、ルドルフの声が中から聞こえた。「失礼します。」「そこへ座れ。」素肌にガウンを纏っただけのルドルフは、ドアの近くに立ったまま動かないアルフレートを少し苛立った表情を浮かべながら見た。にほんブログ村二次小説ランキング
Jul 30, 2024
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素材は、こちらからお借りしました。「天上の愛 地上の恋」二次小説です。作者様・出版社様とは一切関係ありません。二次創作・BLが苦手な方はご注意ください。「さぁアルフレート、ここが今日からお前が通う学校だ。」 両親を何者かに殺害され、遠縁の叔父に連れられてアルフレート=フェリックスがやって来たのは、まるで中世の城のような美しい建物だった。叔父に聞けば、そこは由緒ある寄宿学校で、本来ならば貴族や富豪の子息だけが入学を許される場所で、成績優秀なアルフレートは特待生として特別に入学を許されたのだという。「ここでしっかりと学んで来い。」「あ・・」 建物の入り口の前で叔父はそう言うと、そのままアルフレートに背を向け、荷馬車で去っていってしまった。(これから、どうしようかなぁ・・)アルフレートが両手にトランクを抱えながら呆然としていると、不意に扉が開いて中から髪をお団子にしていかにも厳格そうな顔をした女性が出て来た。「貴方が、アルフレート=フェリックスですね?」「はい。あの・・貴方は?」「わたくしはミリセント、この学校の教頭を務めるものです。わたくしについてきなさい。」 ミリセントは、銀縁眼鏡越しにアルフレートを見つめた後、やや早足で建物の中へと戻った。アルフレートは、慌てて彼女の後を追った。「貴方は大変優秀な生徒だと聞いています。しかし、我が校には優秀な生徒が沢山居ますし、品行方正な生徒もいます。ライバル達に負けないで勉学に励みなさい。」「はい!」「元気がいいこと。」ミリセントはそう言って呆れ顔でアルフレートを見ると、学生寮へと向かった。「ここは?」「今日から貴方が生活する寮です。」そこは、細部に渡るまで美しい装飾が施された、まるで宮殿のような場所だった。「ここが、貴方の部屋です。」 ミリセントと共にアルフレートが部屋に入ると、そこには四台の天蓋付きのベッドが置かれていた。「窓際のベッドが、貴方のベッドです。」「は、はい・・」アルフレートが窓際に近いベッドへと向かうと、そこには“アルフレート=フェリックス”という名前が彫られていた。「荷物を置いたら、食堂にいらっしゃい。」「はい・・」 アルフレートはトランクをベッドの傍に置いた後、ミリセントと共に食堂と入った。 そこには、生徒達が丁度昼食を楽しんでいた。「皆さん、お食事の最中ですが、皆さんにお話があります。」食事をしていた生徒達は、ミリセントの言葉を聞いた途端フォークとナイフを食器の横に置いた。「今日から皆さんと一緒に学ぶことになった、アルフレート=フェリックス君です。」「アルフレート=フェリックスです。どうか宜しくお願いいたします。」 アルフレートがそう言って生徒達に挨拶すると、パラパラと小さな拍手が返って来た。少し離れたテーブルに座っていた少年が自分の事を見つめていることに、アルフレートは気づかずにいた。にほんブログ村二次小説ランキング
Jul 30, 2024
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※BGMと共にお楽しみください。「天上の愛 地上の恋」二次小説です。作者様・出版社様とは一切関係ありません。両性具有・男性妊娠設定あり、苦手な方はご注意ください。二次創作・オメガバースが苦手な方はご注意ください。2020年、アメリカ・NY。世界中で謎のウィルスが猛威をふるい、ロックダウンされた地区で暮しているアルフレート=フェリックスは、忙しなくパソコンのキーボードを叩きながら、ある小説を仕上げようとしていた。それは、自分の高祖父にあたる同姓同名の司祭―厳密に言えば元司祭だが―が、第一次世界大戦後、身寄りのない孤児達にその生涯を捧げた彼の足跡と功績を描いたものであった。「ふぅ・・」アルフレートはブルーライトカットの眼鏡を外して溜息を吐いた後、すっかり冷めてしまったコーヒーを流しに捨てた。空腹を覚えた彼は、冷蔵庫の中からパンとチーズを取り出して簡単なサンドイッチを作ると、それを一口齧った。数日前に近くのスーパーで買い物を済ませたばかりだというのに、冷蔵庫の中にはワインとパン、そしてチーズしか残っていない。この僅かな食糧でこのロックダウン期間中を乗り切る事が出来るのか―アルフレートがそんな事を考えていた時、誰かがアパートの呼び鈴を鳴らした。「どちら様ですか?」自衛の為に所持している拳銃をデスクの引き出しから取り出したアルフレートは、恐る恐る拳銃を構えながらドアチェーンを解除した。「わたしだ、アルフレート。」「ルドルフ様・・」恋人の顔を見た途端、安堵の表情を浮かべた。「物騒なものを下ろせ。」「すいません・・」「最近、連絡が来ないから、心配してみたが・・元気そうで安心した。」「ルドルフ様、どうしてこちらへ?」「そろそろ、抑制剤が切れる頃だと思ってな。」ルドルフはそう言うと、アルフレートに抑制剤が入った袋を手渡した。「ありがとうございます。」「今、何をしていたんだ?」「高祖父の生涯を題材に小説を書いていたんです。」「そうか。」ルドルフは、アルフレートの為に持って来た食糧を冷蔵庫に入れていると、ワインボトルが一本入っている事に気づいた。「これ、空けていいか?」「いいですよ。今夜は、飲みたい気分なんです。」アルフレートは小説の執筆を中断すると、ルドルフと共に軽い夕食を取った。「その本は?」「これは、高祖父の日記です。」古い革張りの日記帳をアルフレートから受け取ったルドルフは、日記帳の内表紙に一枚の写真が貼られている事に気づいた。その写真には、司祭服姿のアルフレートの高祖父と、軍服姿の自分の高祖父の姿が写っていた。「これは・・」「高祖父がかつて勤務していたアウグスティーナ教会で見つけました。まさか、隣に写っておられるのがルドルフ様の高祖父様だったなんて、驚きました。」「わたしもだ。」ルドルフは、そう言うと写真に写っている自分の高祖父―ルドルフ=フランツ=カール=ヨーゼフ=フォン=オーストリア、オーストリア=ハンガリー帝国皇太子を見た。「アルフレート、明日付き合って欲しい所があるんだが、いいか?」「はい。」翌日、アルフレートがルドルフと共に向かったのは、ルドルフの自宅にある書斎だった。「高祖父の書斎に、こんな本があった。」「“Ω迫害の歴史”・・ルドルフ様の高祖父様は、αだったのですか?」「あぁ。それに、お前の高祖父とわたしの高祖父は、恋人同士だったのかもしれないな。」「何故、それがわかったのですか?」「高祖父が南米で農園を経営していた事は知っているだろう?その頃の写真に、君の高祖父と写っている写真が多いし、それに、ペアリングが見つかった。」ルドルフがアルフレートに見せたペアリングは、互いの誕生石が嵌め込まれ、“from R to A”と裏に彫られていた。「アルフレート、わたしの高祖父とお前の高祖父との関係を軸に書いてみたらどうだ?」「面白そうですね。」ルドルフの助言を受け、アルフレートはルドルフの書斎を時折借りながら、小説の執筆に励んだ。だが―「わからない・・」「何が、わからないんだ?」「何故、あなたの高祖父が、身分を捨て、わたしの高祖父と暮らしたのだろうと・・」「そこが最大のミステリーだな。少し休め、根詰めると疲れるぞ。」「わかりました。」アルフレートは、暫く小説の執筆を休み、ルドルフと共に高祖父達の故郷であるウィーンで休暇を取る事にした。「何だか、この街は100年以上経っても変わらないな。」「ええ・・」にほんブログ村二次小説ランキング
Jul 30, 2024
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ブラックサンダーのチョコのザクザクとした食感と、チョコミントのさっぱりした味との相性が抜群でした。
Jul 26, 2024
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初めて食べましたが、食べごたえがあり、シーソルトが後味のしつこさを感じませんでした。ただ、本体が固くて食べづらいので、歯が弱いかたにはお勧めできません。それと、何か飲み物と一緒に頂く事をお勧めします。
Jul 26, 2024
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ブイヤベースでしたが、あっさりとしていて旨味があり、尚且つ麺との相性が抜群でした。
Jul 25, 2024
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母がスーパーでうな重を買ってきてくれました、美味しかったです。
Jul 24, 2024
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チキンとトリュフ風味のソースと、麺との相性が良くて美味しかったです。
Jul 24, 2024
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濃厚で、スープと麺との相性が抜群で美味しかったです。
Jul 23, 2024
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濃厚で美味しかったです。暑さでヘトヘトでしたが、これを食べて元気になりました。明日、体重計に乗るのが怖いですが(笑)
Jul 21, 2024
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セブンイレブンで売っていたので、早速買って食べました。トマトとニンニクの味が美味しかったです。近くにカプリチョーザがないので、売ってて良かったです。
Jul 21, 2024
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南部に蔓延る人種差別を描いた作品。最後まで読んだ後、タイトルの意味がわかりました。
Jul 20, 2024
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オリジナルチキン味とレッドホットチキン味。レッドホットチキン味は、辛くて刺激的な味で、オリジナルチキン味は、香ばしい味でした。
Jul 19, 2024
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激辛ではなかったですが、ピリッとした辛さで美味しかったです。
Jul 19, 2024
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昨年この本をXで知り、文庫を近所の書店で見つけて購入し、一気に読了しました。皇族といったら、浮世離れした方のイメージでしたが、彬子女王の留学生活のいきいきとした語り口が親しみやすく、かつ読みやすくて面白かったです。
Jul 17, 2024
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久しぶりにスティーヴン・キング作品を読みましたが、ホラーとミステリーが融合していて面白かったです。
Jul 12, 2024
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キャラメルの甘さが引き立ち、しっとりとしたお味で美味しかったです。
Jul 10, 2024
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今回も二転三転する展開にページを捲る手が止まりませんでした。
Jul 6, 2024
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表紙素材は、装丁カフェからお借りしました。「薄桜鬼」「天官賜福」「火宵の月」二次小説です。作者様・出版社様とは一切関係ありません。二次創作・BLが苦手な方はご注意ください。「ん・・」「兄さん、気がついた?」 謝憐が目を開けると、隣には心配そうに自分を見つめる花城の姿があった。「三郎、わたしは・・」「兄さんは、熱中症に罹ってこのホテルのお世話になったんだよ、憶えていない?」「あ・・」 謝憐は勢い良く起き上がろうとしたが、酷い眩暈に襲われ、また布団の中で横になった。「余り無理しないで、兄さん。そうだ、お腹空いていない?」「いや・・余りお腹は空いていないんだ。」「そう。兄さん、俺は先に温泉に入って来るから、兄さんはゆっくり休んでいて。」「あぁ、わかった。」 花城は謝憐を部屋に残し、大浴場へと向かった。 脱衣所で浴衣を脱いで彼が中へ入ると、たちまち彼は好奇の視線を向けられた。 そんな事を気に掛けず花城が温泉を満喫していると、そこへ騒がしく話しながら大浴場に数人の男達が入って来た。『全く、法事の間あいつは俺達に愛想笑いすら浮かべなかったな。』『そうだな、相変わらず愛想がない奴だ。よくあんな性格で客商売が出来るものだな。』『まぁいいさ、あぁいうのはこういう所で暮らすのが性に合っているだろうよ。』 男達の会話を聞いていた花城だったが、彼らが何を話していたのかはわからなかった。 花城が大浴場から出て部屋に戻る途中、廊下を仲居達が忙しく走り回っている姿を見た。「はぁ~、やっとあいつらが帰るっていうのに、今度は花火大会見たさに飛び込みで泊まりに来る客の所為で忙しくて嫌になっちゃうわ。」「宴会場でうるさく騒いでいたし、擦れ違いざまにあたし達の尻を触ろうとするし・・」「ま、一晩だけなんだからいいんじゃない?」 厨房で種香と小里がそんな事を愚痴り合っていると、そこへ渋面を浮かべた有匡が入って来た。「あら女将、どうされたのです?」「どうしたもこうしたもあるか。本家の爺共がしつこく東京に戻れと付きまとって来た。」 有匡はそう言うと、空のビール瓶が入ったカゴを持って外に出た。 昼間の茹だるような暑さは少しマシになったものの、夜になってもまとわりつくような暑さが続き、有匡は思わず溜息を吐いてしまった。「先生、こんな所に居たんですか?」「火月、どうした?何かトラブルでもあったのか?」「はい、実は・・」 火月は、先程フロントであった出来事を有匡に話した。 それは、花火大会が始まる二時間前の事だった。「いらっしゃいませ。」 火月はいつものようにフロントで仕事をしていると、そこへ一人の女性客がやって来た。 彼女は開口一番、今夜泊まりたいから部屋を用意して欲しいと火月が言ったが、彼女は満室なので部屋を用意できないと断った。 するとその女性客は、激昂して火月に絡んで来た。「お客様は神様なんでしょう、早く部屋を用意しなさいよ!」「申し訳ありません、それは出来ません。」「もういい!」 女性客はそう叫ぶと、ホテルから出て行った。「そうか。報告してくれてありがとう。」「女将・・」「花火大会はもう終わるし、あの迷惑な連中に接客するのは今夜限りだから、後少しの辛抱だ。」「はい・・」「わたしが暫くフロント業務につくから、お前は少し休んでいろ。」「わかりました。」 火月と入れかわりにフロント業務についた有匡は、淡々とそれをこなしていった。 花火大会が終わり、有匡が仕事を一段落させようとしていると、火月が話していた女性客がフロントにやって来た。「ちょっと、あんたが部屋を用意してくれなかった所為で花火が見られなかったじゃない!どうしてくれるのよ!」「お客様、申し訳ありませんが、当ホテルではそのような責任は負えません。先程若女将から話を伺っておりましたが、そんなに花火をご覧になりたかったのなら、早めに当ホテルをご予約して頂ければ良かったものを・・」 有匡がそう言いながら女性客を見ると、彼女は怒りで顔を赤く染め、無言でホテルから出て行った。「とんだ災難だったね。」「いいえ、あれ位のクレームを上手くあしらえませんと、この商売は務まりません。」 常連客と有匡がホテルのフロントでそんな話をしていた時、厨房の方から悲鳴が聞こえて来た。「女将、大変です・・」「どうした?」「それが・・」 有匡が厨房に入ると、そこには顔中煤塗れになった昼の客―謝憐の姿があった。『お客様、何をなさっているのですか?』『すいません、皆さんのお手伝いをしたくて、パイを焼こうと・・』 オーブンの中には、パイの残骸が散らばっていた。「板長、パイの在庫は?」「まだ、冷蔵庫にあります。数日分の朝食ビュッフェ分まであるかと・・」 有匡が冷蔵庫の中を確めると、朝食ビュッフェ用として数日分のブルーベリーパイがまだ残っていた。『あの、これは・・』『お客様は、このままお部屋にお戻り下さい。』 謝憐は有匡の圧に負け、部屋へと戻っていった。「疲れた・・」「先生、お疲れ様です。」 有匡は溜息を吐きながら、ノートパソコンのキーボードを叩いていた。彼は“女将”として結い上げていた髪を下ろし、軽く編み込みにして邪魔にならないように横に垂らしていた。「まぁ、明日からはゆっくり出来る。」「そうですね。」 翌朝、チェックアウトする宿泊客達を玄関先で見送った後、有匡と火月は遅めの朝食を自室でとった。「火月、今度の週末、何処かへ出掛けないか?」「えっ、いいんですか?」「あぁ。このところ、働き過ぎたからな。たまに休むのもいいだろう。」「楽しみだなぁ~」 二人がそんな事を話していると、有匡のスマートフォンが鳴った。「もしもし。」『あぁ、やっと出て下さいましたね、有匡殿。』 まるで神経を逆撫でするかのような男の声を聞き、有匡の顔は思わず険しくなった。「先生?」「・・誰から、この番号を知った?」『そんなに怖い声を出さないでください。あなたのご親戚筋の方からこの番号をわたしに教えて下さったのですよ。今こうしてあなたにお電話を差し上げたのは、“ある事”で、お話したい事ががるのですよ。』「わかった・・」 有匡はそう言うと、スマートフォンの通話ボタンをタップした。「先生、どうかされたんですか?」「少し、出掛けて来る。夜までには戻るから、心配するな。」「わかりました・・」「では、行って来る。」 着替えを済ませた有匡は、電車で東京へと向かった。 海岸沿いの風景から高層ビル群へと風景が変わる頃、彼は自宅から暇潰しに持って来た単行本を読み終えてしまった。 長髪でスーツ姿の彼の姿が珍しいのか、時折擦れ違う通行人達が彼に好色な視線を向け、悲鳴のような歓声を上げて去っていった。「有匡殿、わざわざお呼び立てしてしまってすいません。」 都内の一等地にあるホテル内のカフェに有匡がやって来ると、先に来ていた男―文観が彼に気づいて嬉しそうに手を振った。「わたしをこんな所に呼び出した理由は何だ?」「そんなに怖い顔をして睨まないで下さい。実は、あなたが昔担当した事件について、大きな動きがありましてね。」 文観はそう言った後、持っていた鞄の中から分厚い茶封筒を取り出した。「これは?」「あなたが法曹界から去った後、わたしが見つけた事件の証拠ですよ。」 文観の言葉を聞いた有匡の眉間に皺が寄った。「それで?これをわたしにどうしろと?」「別に。わたしはこれを裁判所に提出し、あの事件の再審請求を致します。そのご報告だけをしたくて、あなたをここへ呼び出したのですよ。」「そうか。では、長居は無用だな。」 有匡は自分のコーヒー代だけ払うと、カフェから出て行った。 そのまま火宵グランドホテルへと有匡は戻ろうとしたが、大雨洪水警報が鎌倉に発令され、電車が通行止めになってしまったので、彼は駅の近くにあるビジネスホテルに一泊する事になった。『そうですか。気を付けて帰って来てくださいね。』「わかった、お休み。」にほんブログ村二次小説ランキング
Jul 3, 2024
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