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2016年05月04日

先生いわく、このたびわざわざ罷り出候は別義にあらず。

カテゴリ：報徳記＆二宮翁夜話

先せん生せい曰いわく、此この 度たび 態わざ 々わざ 罷まかり 出で 候そうろう は別べつ 義ぎ にあらず。去さる天てん 保ぽう 九戌いぬ 年とし 御ご 領りょう 分ぶん 御おん 立たて 直なおし 御ご 永えい 安あん の仕法しほう、先せん 君くん （石川総貨ふさとみ）御おん 直じき 書しょ 並ならびに 各かく 方ほう 迄まで 厚あつく 御おん 頼たのみ 仰おおせ 入い られ候そうろうに付つき 、止やむ を得えざる事こと 種しゅ 々じゅ 御おん 再さい 復ふく の儀ぎ 御おん 世せ 話わ 申もうし 上あげ 候そうろう 処ところ 、果はたして数すう 万まん 金きん の御おん 借しゃく 財ざい も減げん 少しょう 仕つかまつ り追おい 々おい 御おん 無む 借しゃく にも為なし 至いた さるべく、随したがって御おん 難なん 儀ぎ 御おん 凌しのぎ の道みちも相あい 立たち 、猶なお 又また 民みん 間かん 御おん 再さい 興こう の糸いと 口ぐち を相あい 開ひらき 候そうろう 為ため 、灰はい 塚づか 村むら 一村そん 御ご 一統とう 御ご 承しょう 知ち の通とおり起おき 返かえ し、邑いう 民みん 一人りも其その 処ところ を得えざるものなく安あん 心しん 仕つかまつり 候そうら 得え ば、弥いよいよ 戌いぬ 年とし 御おん 頼たのみ 入いり の砌みぎりの如ごとく、御おん 憤ふん 発ぱつ 御おん 取とり 行おこない に相あい 成なり 候そうらわ ば、急度きっと 御おん 領りょう 邑いう 御おん 再さい 復ふく は勿もち 論ろん 、積せき 年ねん の御おん 借しゃく 財ざい も御おん 皆かい 済さい 、上じょう 下げ 御おん 永えい 安あん の道みち 相あい 立たち 候そうろう は必ひつ 定じょう 仕つかまつり 候そうら 得え 共ども 、私わたくし 御おん 召めし 出だし （幕府登用）以い 来らい は以前いぜんの如ごとく御おん 世せ 話わ も行いき 届とど かず候そうろうとは乍申もうしながら、御おん一同どう 御おん 手て 堅がたく 御おん 取とり 行おこない 之これ 有あり 候そうら はば、疾とうに御ご 安あん 心しん の場ばに為なし 至いた さるべき処ところ、又また 々また 御おん 借しゃく 財ざい 相あい 嵩かさみ 御おん 当とう 惑わく の趣おもむき、過か 日じつ 衣きぬ 笠がさ 氏し より種しゅ 々じゅ 御おん 談だん 之これ 有あり 、此この 節せつ 御おん 取とり 敢あえて 致いたし 居おり 候そうろう 寸すん 暇か も之これ 無なく 候そうら 得え 共ども 、戌いぬ 年とし 以い 来らい 既すで に拾じゅう 有ゆう 余よ 年ねん に及および、一年ねん 毎ごと に御おん 安あん 堵ど 御ご 座ざ 有ある 可べき 仕し 法ほう に候そうろう 処ところ 、今いまに至いたり却かえって御おん 借しゃく 財ざい 相あい 嵩かさみ 御おん 当とう 惑わく の段だん、案あん 外がい の儀ぎ、此この 侭まま 差さし 置おき 候そうら はゞ先せん 君くん 厚あつく く御おん 頼たのみ の詮せんも御ご 座ざ 無なく 、又また一身しんを抛なげうって 御おん 世せ 話わ 仕つかまつり 候そうろう 甲斐かい も之これ 無なく 甚はなはだ 歎たん 息そく 仕つかまつり 、余儀よぎ 無なく 万ばん 事じ を差さし 置おき 罷まかり 出で 及および 御おん 相そう 談だん 候そうろう 儀ぎ に御ご 座ざ 候そうろう 。先せん 般ぱん 御おん 料りょう 所しょ 村むら 々むら 存ぞん 分ぶん 再さい 復ふく の道みち 取とり 行おこな う べき旨むね 仰おおせ 付つけ られ候そうろう 儀ぎ も、従じゅう 来らい 諸しょ 家け 方かた 御おん 領りょう 邑いう 立たち 直なおり の実じつ 業ぎょう 相あい 貫つらぬき 候そうろう 故ゆえ に候そうろう 処ところ 、何なに 方かた も押おし 立たて ざる候そうろうては何なに 程ほど 仰おおせ を蒙こうむり 候そうろう 共とも 辞じ 退たい 仕つかまつ るべく儀ぎに付つき、当とう 方ほう 御おん 仕し 法ほう の成せい 不ふ 成せい 聢しか と治ち 定じょう 仕つかまつ り、弥いよいよ 御おん 成じょう 就じゅ 相あい 成なり 兼かね 候そうろう 儀ぎ ならば、初しょ 発はつ よりの諸しょ 帳ちょう 面めん 類るい 残のこ らず焼やき 捨すて 、下しも 館だて の仕し 法ほう も出で 来き ざる次し 第だい 斯かくの 如ごとき に候そうら 得え ば、御おん 取とり 用よう にては御おん 為ため に相あい 成なる 間ま 敷じき 段だん 届とどけ 差さし 出だし 退たい 隠いん 仕つかまつ るべし。若もし 又また 弥いよいよ 押おし 立たつ べき道みち に候そうら 得え 共ども 、何なんとなく相あい 流ながれ 居おり 候そうろう 故ゆえ 、次し 第だい に御おん 借しゃく 財ざい も相あい 増まし 候そうろう 儀ぎ に御ご 座ざ 候そうら はば、致いたし 方かた により御おん 皆かい 済さい の道みちも相あい 立たつ べし。左さ 候そうら はば是これ 迄まで 相あい 流なが れ候そうろう 処ところ は是ぜ 非ひ 無なき 儀ぎ に付つき、戌いぬ 年とし 御おん 頼たのみ の節せつに立たち 戻もど り取とり 調しらべ 、如い 何か 様よう に も御おん 皆かい 済さい 御おん 安あん 心しん の事こと に取とり 計はからい 差さし 上あぐ し。去きり 乍ながら 元もと 々もと 私わたし 方かた より御おん 難なん 渋じゅう 御おん 立たて 直なおし の儀ぎ、求もとめて取とり 計はからい 候そうろう 儀ぎ に之これ 無なく 、頻しきりに御おん 頼たのみ に依よって余よ 儀ぎ 無なく 御おん 世せ 話わ 仕つかまつり 候そうろう 事こと 故ゆえ 、私わたくし 存そん 意い にて取とり 計はから うべき筋すじに御ご 座ざ 無なく 候そうろう 間あいだ 御ご 相そう 談だん に及および 候そうろう 。去さる 戌いぬ 年とし 御おん 頼たのみ の砌みぎりも外ほかに致いたし 方かた 御ご 座ざ 無な く、当とう 表おもて 御おん 暮くらし 向むき 過すぎ 去さり 候そうろう 有あり 形かた の実じつ 事じ 取とり 調しらべ 見み 、過か 不ふ 及きゅう 平へい 均きん を以もつて 御おん 規き 則そく を相あい 定さだめ 、御おん 再さい 興こう の道みち 仕し 法ほう 付つけ 仕つかまつり 候そうら へ ば、此この 度たび 成せい 不ふ 成せい の根こん 元げん を明あきらかに致いたし、御おん 押おし 立たて 成な され候そうろう 共とも 、御おん 畳たたみ 置おき に相あい 成なり 候そうろう 共とも 、拾じっヶ年ねん 以い 来らい の成なり 行ゆき 、篤しかと取とり 調しらべ 見み 候そうら はば、論ろんを待またずして明めい 白はく に相あい 分わか り申もう すべし。