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2016年08月09日
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カテゴリ: 鈴木藤三郎
余が菓子商として五年間に売上高を十倍にしたる営業法
(大日本醤油醸造会社長鈴木藤三郎「実業日本」一一(二〇))
十年の元旦から生れ返って大奮発
 私はふとした機会で報徳教を耳にすることになった。そうすると私が今まで是(ぜ)であると信じていた考えは甚だ人道にそむいているということが解ったので、爾来四、五年間は必死になって報徳を研究した。元来私は物に熱しやすい性質であったから、自然人よりも多く疑問を抱き、またこの疑問が腑に落ちるまでは、どこでもうるさく尋ね、時には議論さえしたことも少なくない。報徳主義の人には謙譲の美徳を尊敬して、人と議論するなどということは少しもない。それを私が目上の人であろうが、さしつかえあることがあるにも係らずにやるので、自然私のことを『論客』とあだ名されるようになった。
 当時私は製茶の販売をやっていたので、相当に稼いではいたが、出盛りの時は外は用もないので朝寝をすることがある。養父は報徳主義を聴いた人ではないが職業には熱心勤勉な方で、朝早く一仕事してからも未だ私が寝ているのを見、私の枕元へ来て『何だ、朝寝の報徳というがあるか』と責める。私も理論を研究している時である。なかなか口は達者なもので、即座に「朝寝の報徳もあります。物事には順序というものがあります。大工が板を削る前には必ず鉋(かんな)を磨いてからかかる、理髪主(とこや)が顔を剃るにも必ずその前にかみそりを磨きます。それが物の順序というのです。諺にも寝勘弁というではありませんか。一通り将来の新計画を立てて段々に実行に着手する。私は大工鉋を磨き、理髪主がかみそりを磨いてるのと同じく、今は実行に着手する準備です。今は年の半ばですから、明年の一月一日を紀元として新しい人間になって働くつもりです。それまでは容赦しておいて下さい。その代り来年からは余り働き過ぎるななどとご心配をなさらないようにして下さい」と言った。

先ず買って来たのは目覚し時計
 報徳の教えを聞いてから職業の大切なこと、人間に尊卑の区別あるは誠心のいかんによるので、その執る職業には少しも関係せぬことを悟ったので、今まで独立してやっていた製茶事業をやめて再び家業の菓子製造業に従事することにした。
 そして第一に朝は五時に起きることに決めた。しかし困ったことには今までは朝寝の癖がついたので、なかなか目がさめない。人に起こして貰うのは嫌だし、何か機械的に自分で慣習を改める法はあるまいかと考えていた。その頃目覚し時計というものがあるとは聞いていたが、まだ見た人も少ない。然るに浜松の宮代屋という小間物屋が名古屋から買って来て持っていると聞いたので、無理に七円五十銭かで譲って貰い、いよいよ明治十年一月一日からこの目覚し時計で五時には必ず起きて仕事に着手した。今まで朝寝さえしたこののある私が五時にはキチンと起き、しかも元日から仕事をするので家の人はビックリしている。





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最終更新日  2016年08月09日 05時40分02秒


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