ちょっと本を作っています

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Jan 30, 2005
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カテゴリ: 本を作る
出版業界でメシを食う方法(その二十二)




倒産、そしてラストチャンス

私にとっては、自分の出版社の二度の不渡りによる銀行取引き停止が、ある意味で、自分を取り戻すチャンスとなった。

不渡りの原因は取引き先の倒産による連鎖であり、債権者の方たちからは私が不渡りを出して迷惑をかけたにもかかわらず同情の言葉さえもらった。

しかし私は、自社の倒産の原因を、取引き先の倒産による連鎖倒産だなどと思ってはいない。事実そうではなかった。

またそのように自分を誤魔化してしまえば、債権者の人たちに対しても無責任であり、自分に対しても甘過ぎる。

本当の倒産の原因は、無謀にも事業拡大に突っ走り、日本型ともいえる借入れ金依存型経営に陥ったことにある。

その必然の結果として、借入れ金も膨らみ、資金繰りに追われる日々を迎え、当然のごとく信用不安のある取引き先にも販路を広げて、これまた当然のように回収不能に陥ったに過ぎない。



もう一つ恥を忍んで告白すると、その後一年ほどで、私の経営していたもう一つの会社も倒産させてしまった。一刻も早く本体である出版社を立て直したいと焦ったのが原因である。

事業継続のための糧として商品仕入れに子会社を使い、この程度ならいいだろうと甘さを残したまま事業を続けた結果である。

商品仕入れのための買掛け金も、借金と何ら変わりがない。周りの債権者が同情的だったことに甘えた結果が、再び倒産を招く原因となった。

当時の関係者の叱責を覚悟の上で告白すると、金持ちは金を貸さない。安定した企業ほど不安定な企業と付き合わないのだ。



『類は類を呼ぶ』のたとえどおり、青息吐息で事業再建に努力していた私に、再び仕事で協力してくれた企業は、小さなところが多かった。

力がないのに無理をして協力してくれるものだから、その会社の資金繰りも悪化する。せめて手形でもあれば助かるのだがと泣き付かれれば、その原因が自分だけに断れなくなる。

焦るものだから、仕事のほうも失敗続きだった。弱り目に祟り目で、ジタバタと喘いでいると、うろんな人物も寄ってくる。この時期の失敗談だけで本一冊にもなりそうだ。



親切すぎるサギ師たち

焦りは禁物と言うけれど、私が経営する出版社の倒産からもう一つの子会社の倒産までのほぼ一年間の失敗を思い出すと、自分でも「なんであの時?」と思うようなことを次々としでかしている。

精神的にも完全に不安定になっていたのだろう。予想もしていなかった差押えが入って、入金がすべてストップするなどのアクシデントもあったのだが、それ以上に失敗が相次いだ。

「大変ですね。でも社長なら立ち直れるよ。及ばずながら協力させて頂きますよ」と、近寄ってきた人たちがいる。

「社長は企画力と営業力があるんだから、商品は私が引っ張ってきますよ」。前述のA理工の紹介が多かった。A理工の元社長から、「迷惑をかけた穴埋めに」とビデオ業者を次々と紹介された。

あまり売れそうもない商品だ、とは思うもののほかに売る商品を仕入れる力もない。徐々に彼らからの仕入れ商品が増えてきた。



そのうちに、「こんどの商品は売れセンだよ。でも手形でも切ってもらわないと仕入れがきつい」と言い始めた。

「不渡りを出したのだから、そんなの無いよ」と言っても、「本体の会社は無理でも、俺の方で子会社の当座が開設できるようにしてあげるよ。すぐ手形帳も出させるから」と手際が良い。

倒産した会社の関連会社が、それも代表者が同じで、一年も経っていないのに、そんなこと出来るのかと思っているうちに、H信用金庫から電話がかかってきた。

「ご用意してありますので、必要書類を持って来てください」。キツネにつままれたような気分だが、商品仕入れのためにはやむを得ないだろうと当座を開設した。



最初に引っかかったのは、P社というところだった。私の事務所へ来る時は、いかにも高そうな紀ノ国屋の包装紙に包まれた大粒のイチゴを持って現われた。

「いやあ、皆さんご苦労様です。頑張りましょうね」。ニコニコしながらみんなに挨拶していたのだが、何度かの取引きの後、仕入れ代金の内金として渡した百九十万円の手形を持ったまま消えてしまった。

自宅を突き止め、東大和というところまで尋ねて行ったのだが、奥さんが、むずかる赤ん坊を抱いて現われた。

「またうちの人が何かやったのでしょうか。毎日、街金の人が尋ねて来るものだから、あの人、家に寄りつかないんです。一日に一度は電話はかかってくるのですが」

赤ん坊の泣き声を背に、立ち去るしかなかった。奥さんには「いえ、近くへ来たものですから、居るかなと思って立ち寄っただけです」としか言いようがなかった。



次に引っかかった件は、本当に腹立たしかった。売上げ伝票を見ていて気がついたのだが、スキー関係の二点のビデオの返品が異常に多い。

出版流通ルートでは委託販売が基本なので返品は避けられないのだが、それにしても余りにも多すぎる。

返品率が六百パーセントにもなっている。いくら何でもそんな馬鹿げたことが起こるわけがない。五百本ほどしか出荷していないのに三千本近い返品が返ってきたのだ。

倉庫へ出向いて商品をチェックすると、ビデオジャケットの色がわずかに違う。海賊版だった。手立てをつくして販売していたところを付き止めた。

全国でも一、二を争う大手のコンビニエンスストアで売られていたのだ。コンビニエンスストアの本部へ出向き、抗議と事情徴収をおこなったのだが、

「うちは雑貨の卸問屋から仕入れたので一切責任がない。契約書もこのように整っている」

次に卸問屋へ訪ねて行くと、コンビニエンスストアと同じような答えが返ってきた。しかし、そこで見せられた契約書の署名を見てショックを受けた。

なんと私の会社の倒産の原因となった、前述のA理工の元社長の名前がそこにあったのだ。

本人に連絡すると、「アレ、ばれた? ゴメン、金が無くってサア。でも儲かったら、社長のところへ版権使用料をもっていこうと思ってたんだ」。あっけらかんとしたものだ。

返品の分はほかの売上げと相殺されるので、結局一千万円近い損害を被ってしまった。「損害の分だけでも穴埋めしてくれ」と言い続けたが、いまだにそのままになっている。



ほかにも金額はそれほど大きくはないのだが、情けなくなるほど引っかかった。そのような『サギ師たち』に共通していることだが、最初はダマす気はない。

あるいは、自分は相手のために良かれと思って仕事を紹介しているのだと、まず自分に言い聞かせてから話を振ってくる。

誰しも「ダマそう」として寄ってくる人間には、態度にそれとはなしに表れるので、警戒心が働く。生まれつきのサギ師、天才的なサギ師は、自分をダマしてから近寄ってくる。

その上で、最後になってからドンデン返しとなる。「ゴメン。仕方なかったんだ」という言い訳を何度聞かされたことか。

「ダマすなら、アブク銭を持っている相手から取れよ」と言いたくもなるが、ハゲタカと同じで、弱っている人間の匂いを嗅ぎ付けて寄ってくる。

ダマし盗られた分を取り返そうとすると、また引っかかる。



焦って、心に隙間を作ることほど危険なことはない。今では、取り返すことを考えるより、彼らには近づかないようにしている。

わざわざエサを、キツネの口の近くまで持っていくこともないだろう。





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Last updated  Jan 30, 2005 06:18:22 PM
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聖書預言@ Re:ネットを再開するぞーっ! と思ったとたん(04/28) 神の御子イエス・キリストを信じる者は永…
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マリア4415 @ Re:会おうね。関西の人、中国地方の人(08/05) はじめまして。突然お邪魔して申し訳ない…
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第一章 もっと手軽に自分の本を作れたら


第二章 協力出版と懸賞募集の甘い罠


第三章 自分の本を作りたい理由を考えよう


第四章 本にする原稿をまとめよう


第五章 自分の本を売ってみよう


第六章 安く本を作る方法を考えよう


第七章 物書き稼業と編集者稼業の裏表


第八章 昨今の出版業界のお寒い事情


第九章 いまどきの本屋さんと物流事情


第十章 出版業界こぼれ話


【出版後記】


負けてたまるか


その1


その2


その3


その4


その5


その6


舞台裏からの独白


すぐそこの田舎暮らし


第一章 先住民/黒猫の『タンゴ』


第二章 山里「コンタ」発見


第三章 知らないってことは


第四章 竹の子で仲間を釣り上げる


第五章 森の天使の小さな落し物


第六章 小悪魔『チビクロ』参上


第七章 チビクロ砦とチビクロ王国


第八章 まったくもう、田舎暮しってヤツは


第九章 チビクロ、チビコゲへ変身中


第十章 隠れビーチで日向ぼっこ


第十一章 チビクロ、何処へ行こうか


第十二章 何で、お前まで行ってしまうの


第十三章 ムジナに見送られ、街へ帰る


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