銀座カンカン娘 | メタボの気まぐれ

戦後の暗い世相を嘆いていた日本
その不安に明るい兆しをさす為
ひとつの映画が国民に放たれた。
1949年、東宝が制作した「銀座カンカン娘」である。

落語家の新笑（5代目：古今亭志ん生）は
今は引退している妻・おだい（浦辺粂子）と子供と
ささやかな生活を営んでいた。

そこへ居候として入ってきたのが新笑が
昔世話になった恩人の娘・お秋（高峰秀子）と

新笑の甥の武助（灰田勝彦）は
会社の合唱隊を組織して歌に精進しており
お春は声楽家、お秋は画家と
いずれも芸術家としての意欲に燃えていた。

しかし一文なしの娘達には絵の具もピアノも買う事は出来ず
そうかと言ってブラブラと遊んでいる訳にも行かなかった。

お秋が職探しに出かけようとすると
おだいに犬を捨ててきてくれと頼まれてしまった。

犬を連れたお秋が捨場に迷っていると
ある映画会社のロケ隊に出会った。
しかもその撮影に犬と一緒に出てくれという話になり

しかし女優の山田美恵（三村秀子）が
池の中に放り込まれるシーンになって
山田はこのシーンをガンとして承知しないのである。

そこで代役を使う事になり、お秋は早速お春を呼んで
代行させ、おかげで二人は千円という大金を手にした。

二人はバーで歌を唄う事になり
バーからバーへ毎夜銀座の裏から裏へ
白井の伴奏で三人は働いた。

おかげでお秋もお春も小ざっぱりした洋服と
いくらかの貯金も出来るようになり
新笑の家では生活も苦しく、しかも今月一杯に
十万円払い込まないと家を追いたてられると聞いて
恩返しはこの時とばかりに、三人は十万円を送って
新笑の苦境を救ったのだった。

その頃、武助も会社をクビになったので
三人の中に加って武助とお秋、白井とお春は
カンカンブギウギのリズムと共に
世の不安に光を与えるのであった。

この映画は大不況の日本に努力があれば
きっと豊かになるという幸せを唱える事に成功し
特に主題歌の「銀座カンカン娘」は
レコード売上42万枚であるものの
4番の歌詞に商標である「カルピス」という語句が
入っている事から、NHKの放送番組では
3番でフェードアウトされるケースが多い。

ちなみに当時の高峰秀子はアイドル女優で
笠置シヅ子、灰田勝彦はアイドル歌手
岸井明は人気お笑い芸人という
人気のある人材を起用しての映画であった。

また口演映像がほとんど残っていない
5代目・古今亭志ん生の高座姿を偲ばせる
貴重な記録としても名高い映画である。