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2008.06.27
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カテゴリ: takasaki
場所をアイスクリームスタンドに移す。莉花も、柚子オススメのチョコミントソフトにするようだ。パラソルの下の木のチェアに座り、ソフトクリームを舐めながら、柚子は、

「なあに?」
「子供が産めないからって、どうして、結婚、あきらめなくちゃいけないの?だって、莉花さんのこと愛してるから、結婚しようって、エンゲージリングくれたんでしょう?だったら・・・」
莉花は、また遮ろうとする僕に、先に目で微笑んでから、
「ん~・・もちろん、愛してくれてたからだと、思うけど、結婚ってなると、なかなか難しかったんだよね。私達だけの問題じゃなくなっちゃうし」
「どういう意味?わかんない」
不思議そうに、無邪気に、尋ね返す柚子。
「初恋真っ最中のユウコちゃんに、こんな現実話すのも、どうかと思うんだけど」

莉花は少し考えていたが、思いを口にすることに決めたようだ。僕はアイスコーヒーを飲みながら、黙って話の成り行きを見守る。
「私達、高校の先輩後輩で、もう5年も付き合ってきたの。それで、彼が就職して、プロポーズしてくれて。。あの日は、とっても嬉しかったわ」
彼のコト、というよりは、その瞬間を大切に思い出すように、優しい表情を浮かべる莉花。少し妬けるんだけど、もちろん何もいえない。
「それでね、彼のご両親にご挨拶に行った時に、まず最初に言われたの。『結婚しても仕事を続けるつもりだと聞いたけど本当か?』てね。私、2年前から、保育士をしているの。もちろん続けるつもりだったわ。だから、『はい、そのつもりです』って答えた。そうしたら、『そんな必要ないから、結婚するならやめなさい』といわれた。え~っ、って、、あまりに驚いて絶句してたら、そのまま続けて、『結婚したら、家にいて、夫のお世話と、子供を産み、育てることに専念しなさい。収入は息子の分で十分だろう?』なんていわれて。私、彼のほうを見たわ。これまで、結婚後の生活については、二人でそれなりに話し合ってきたし、私がこんなこと言われてるんだから、何か言ってくれるだろうと思って。でもね、彼、黙ってた」
「ええええっ、なんで~」
莉花は微笑んで、
「でも、私が、その場でご両親とけんかしちゃうわけにもいかないから、我慢して、黙ってたの。そしたら、『それと、子供が産める体かどうか、ちゃんと調べて、診断書をもらってきなさい。常識よ?』って」
「それで?」
柚子がすぐにも文句をいいたそうな口調で先を促す。
「帰り送ってもらいながら、大喧嘩よ。っていうよりも、私が、一方的に怒ってたのかな。あんな頭ごなしな言い方されると傷つくって。それに、あなたが、何も言ってくれなかったことにも傷ついたって。ただ、彼が言うには、『確かに、悪かった。だけど、あの場で言い返したりしたら、それこそややこしくなるんだ。別に同居するわけじゃないんだから、なるべく離れたところに住んで、仕事は続ければ、分かんないからいいだろ?健康診断は、別に悪いことじゃないから、僕も一緒に受けるよ。それで君の両親にも見せたら、安心してもらえるんじゃないかな?』って。なんだか、ごまかされてるような、逃げてるような気がして、気持ちは収まらなかったけど、、、折れられるところは折れようって思って。。」
「大人だなぁ・・」

「で、一緒に健康診断を受けた。結果、彼は問題なし。私は、問題あり。最終的な診断は、今日先生に話してもらったところけど、もうね、その最初の検査結果でどうも心臓の様子がおかしいって分かった時点から、彼の様子が変わったの。」
「様子が変わった?」
「うん。仕事を続ける続けないくらいなら、両親に対してかばってくれるつもりだったみたいだけど、子供を作れる作れないって話になると、手に負えないって思ったんじゃないかな。彼、一人っ子だから。それに、自分だって子供欲しいだろうしね。」
「そんなぁ」
「だから、検査がたくさん続いて、結果が出る度に、また検査が増えて、もう、きっと、悪い結果が待ってるんだろうなって分かった頃から、ほとんど、口もきいてくれなくなっちゃって。彼も、もしかして、私を心配して辛いのかな、なんてなんとか都合よく思おうともしてみたけど、違った。今日、できたら、一緒に来て欲しいって頼んだけど、来てくれなかったし。」

「多分、ね」
「そんなの、・・・哀しい」
柚子が自分のことのように顔をゆがめて言う。莉花はいたわるような目線を柚子に向け、
「そうね。私は哀しいっていうより、なんか、空しかったな。5年間も付き合ってきたのに、いったい何だったんだろう、って」
しばらく黙った後、そして莉花は、僕のほうを向き、
「先生、、さっき先生の前でリングを外したけれど、もう、とっくに終わってるんです。だけど、私、、ちゃんと、もう、ふっきります。結婚だけが人生じゃないもの」
「・・・それでいいの?」
心配そうに聞く柚子に、
「相手が終わってるのにすがっても仕方ないでしょう?それにね、私だって、今回の彼と彼のご両親の態度に、随分傷ついたし、悪い結果がでなかったとしても終わってたと思うわ。病名の宣告を受けるのが不安で、心のよりどころが欲しかったから、リングを外せなかったのかも。もう、とっくに1人だったのに」
柚子も黙る。僕にも何もいえなかった。莉花は、湿っぽくなるのを嫌うように、大きく微笑んでから、
「だけど、私、今は1人じゃないですよね?若くて可愛い同病のお友達と、頼りになる先生がいるもの。とっても仲の良いお2人の仲間に入れてもらえるかしら?」
「もちろんっ」
嬉しそうに返事を返す柚子。僕は、ただ、うなずく。

『頼りになる先生』だって。そういってもらえたことは、、もちろん、単純に・・・嬉しい。

だけど、莉花の心を思うと、、、胸が痛かったんだ。


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最終更新日  2008.06.27 02:24:59
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