海外旅行紀行・戯言日記

海外旅行紀行・戯言日記

2002.11.16
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テーマ: 本日の1冊(3685)
カテゴリ: Books
変人と言われながら、ホメロスの叙事詩を真実の話と信じてトロヤの遺跡を発掘し、西欧の古代研究学会を仰天させたハインリッヒ・シュリーマンが、その偉業を成し遂げる6年前に、清国、日本、アメリカ、メキシコの世界一週旅行をしていますが、彼の処女作であるこの本は横浜からサンフランシスコへの航海中50日間に執筆されたものの様です。

シュリーマンは1822年。北ドイツで牧師の子として生まれ、9才で母を失い、学校教育も満足に受けることが出来ず、14才から売店の小僧として働き始め、19才でアメリカ行きの帆船に乗り込んだが難破して、オランダに漂着し最初の挫折を味わいます。
しかしめげること無く、アムステルダムで糊口を凌ぐかたわら、フランス語、スペイン語、イタリア語、ポルトガル語、ロシア語をマスターして行きました。
彼には、類い希なる語学力、商才、持続する情熱が備わっていたのです。24才でアムステルダムでインディゴ(藍色染料)の商談確立し、その後ペテルスブルクでの商館開設、アメリカのゴールドラッシュに乗じた銀行設立など、国際的な大商人となって巨万の富を築いてしまうのです。
1863年、41才で経済活動を打ち切って、年来の夢であるトロヤの遺跡発掘の夢実現に舵を切り換えるです。
1865年から、1年を掛けて世界漫遊の旅を志し、インド、香港、清国、アメリカ、メキシコ、ハバナを経てパリに1866年落ち着き、改めて考古学を勉強し、1868年に博士号を取得したのです。
トロヤの遺跡発掘に成功したのは1871年のことでした。
その後1876年ミケナイ、1884年ティリマチス遺跡を次々と発掘、彼も1880年ギリシャに居を構え晩年の10年間を過ごしました。
遺跡発掘の経緯については「古代の情熱」の著作となって世に知られていますが、処女作「現代のシナと日本」については、殆ど知られていない様ですがパリ国立図書館に長い間静かに眠っていたのですか仕方のないことかも知れません。


通例の日本紹介は、欧米至上主義の観点からの著作が多い中、本書は欧米文化への反省も入れているのです。
「椅子やテーブル、長椅子・ベッドとして美しいゴザを用いることに慣れ親しんだら、同じくらい快適に生活出来る」
「器用に箸を使って、フォーク、ナイフ、スプーンでは真似の出来ない程優雅に食事する」
「日本の住宅はおしなべて清潔さのお手本となるだろう」
「玩具の仕上げは完璧、ニュルンベルクやパリの製造業者はとても太刀打ち出来ない」
勿論、混乱の幕藩体制が種々のスパイ活動にて維持されていることに苦言を呈してはいるのですが、失われてしまった嘗ての美しい日本の日常生活描写を的確に指摘しています。

江戸情景も、70%を占める大名屋敷界隈では道幅が20~40mと紹介されていますし、東海道も11mの幅で念入りに管理された世界でも屈指の街道と紹介していますし、従来ウサギ小屋と狭い未舗装道路が江戸時代の日本と思っている日本国民にとっても史料的価値の高いものと判断出来ました。





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Last updated  2005.07.12 20:25:11
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Comments

maki5417 @ Re:会食場所を下見に行く-狛江Jonathan(06/14) New! クーポン発行のファミレスですね。
maki5417 @ Re:榎津城山から蛤浜を観る-我が家に残る油彩(06/12) 老々介護ですが、ピンコロでよかったです…
maki5417 @ Re:ユネスコの世界遺産に登録されているシャルトル大聖堂(06/05) 電車で十分日帰り可能ですが、残念でした…
カーク船長4761 @ Re[1]:6月オスロ・フィヨルドで白夜体験(06/01) オジン0523さんへ 26年前に修正致します!
オジン0523 @ Re:6月オスロ・フィヨルドで白夜体験(06/01) 私も2011年7月に男二人で北欧の旅を楽しみ…

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