空想世界と少しの現実

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緋褪色

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どの位の時間が過ぎたのだろう。ルークに抱きしめられながら、頭の隅で考えている。酷いわね、好きな人に抱かれているのに別な事を考えているなんて・・・

暗闇のルークの表情が、蝋燭の灯りと共に揺らいで見える。陰影が更に神秘的な雰囲気を醸し出し、彼の存在が此処にない事を嫌でも意識させる。ならば私を抱いているのは一体誰なのだろう。


ノエル、俺の存在が信じられないの・・・ 彼の問いかけに心を見透かされた気がして、小さく溜息をついて瞳を伏せる。

この人には一切偽りが効かない事、過去の経験上解かっている。
どんな些細な嘘も彼は見抜いてしまう。真実を見抜く眼を養う為に、人を細かく観察する癖を持つ。裸にされた私の心はルークに抗う事など出来はしない。

ごめんね・・・貴方に抱きしめられているのにね。正直に告白すると、
意地っ張りで頑固だけど、素直に認める潔さ今でも大好きだよ。自身に正直で出来るならば嘘、偽りは最小限で留めたいと願う君の姿勢、俺が惹かれたのは真っ直ぐで人に媚びない生き方なんだ。

それって褒めてくれているの・・・ もちろん!俺にしては最高の賛辞だぜ!そして最初で最後の愛の告白さ。 彼の言った言葉に含まれる別れのキーワードに不安を抱く。

髪を撫でられ何度もくちづけを交わしながら、いっその事このまま命を奪って欲しい・・・自身に迷いが浮かばないうちに、貴方と共に時空の狭間へと吸い込まれていきたい。心に強く願うのに。

それなのに未練という感情が心を支配する。本当にこれでいいのか、もう1人の自分が問いかける。お願いだから決めた事に異議を唱えないで。内なる声に必死で抗う。彼に知られたら決して共に連れて行ってはもらえないのだから・・・


ノエル、君の感情の動きが手に取るように判る。どんなに自身の感情に抗おうとも、心からの決意が出来ていないと、いつか感情に綻びが生じ最終的には、後悔に苛まれることになるよ。

静かな彼の言葉・・・固く眼を閉じる。もう既に見抜かれていたのね。やはり彼に嘘は通じない。ごめんね・・・声にならない私の謝罪が彼のくちづけで遮られる。

全部解かっていたさ。最初からね。ノエルの覚悟がどの程度なのか知りたくて、試すような事をしてごめん。俺を想う君の気持ちしっかりと受け止めたよ。今はねとても幸せな気分なんだ。ようやく君の元から旅立つ決意ができたよ。

穏やかな微笑を浮かべる彼の表情、私がずっと心に願っていた表情をしていた。彼を忘れられなかったのは、遠い異国で誰にも看取られる事なく亡くなった、貴方に対する自身の後悔。
どんなに納得させようとしても、愛する人を見送ってあげる事が出来なかった後悔が、結果的に貴方を縛り付ける破目になっていたなんて・・・

自身の覚悟の無さが、ルークもフランツも傷をつける事になるんだわ。もう決めなくちゃいけない。しっかりしなきゃ・・・中途半端な覚悟は全てを振り回し、傷つく人を増やすだけなのにね。


君の気持ちが俺の心に流れ込んでくるよ。もう大丈夫だね。俺の現世での役割はもう終わりだよ。君を抱きしめたのは命を吹き込む為。抱きしめられると幸福感で生きるエネルギーが増すだろ、死に傾きつつあったノエルの命を救いたかった。未練を残して俺と旅立つ事、一番して欲しくなかったから。

それに産まれたばかりの流生久を残して旅立つなんて、母親として苦しいだろう?沢山の想い出を彼に残してあげたいでしょ。幼い彼から母親を奪うなんて残酷すぎてできないよ。

現世で結ばれなくとも、来世がある。俺は君と来世で結ばれる運命なんだって心から信じ抜く。先に逝くけど悲しまないでくれよ。

皆は若くして、銃弾に倒れた事を不幸だと思っているみたいだけど、俺は自分の決めた道を貫き通せた事に、今でも心から感謝しているんだぜ。
散弾銃が急所に一発、ほんの一瞬の出来事で苦しまなかったしな。

銃弾に倒れた自身の姿を上から見下ろして、なにが起きたのかしばらく理解できなかったくらいだった。最初に思ったのは、君の元に行かなくちゃだったんだ。君に逢いたい。そう願うだけで心がノエルの元へと運んでくれた。
死して初めて自由を手に入れることが出来たんだ。生も死も万人に対して全て平等に訪れる出来事。俺の生死感が間違っていなかったって思えたんだよ。


ルークの言葉に耳を傾けながら、銃弾に倒れた死が、彼にとって不幸な出来事であった訳ではない事実に、心が救われる気がした。

私はもう苦しまなくていいの?
もちろんさ。死=不幸と考えるのは誤りだぜ。生は歓喜、死も歓喜。生と死は常に背中合わせの対極にあるようで、実は紙の裏表のように近い現象の一つ。
見えない世界に勝手な幻想を抱いて、恐怖感を抱くのは人間の無知さゆえ。そんな下らない幻想に惑わされては駄目だよ、君は賢明な女性なんだからさ。


微笑みながら体を抱き起こされる。何をするの?問いかけにいたずらっぽく笑って、 内緒だよ。 小さく頬にキスをする。 その前に服を着なくちゃね。 呟きの後ルークが指を鳴らすと、裸だった体に服が纏う。

此処はきっと願い事が何でも叶う空間なのね。初めての経験に心が躍る。自然と笑みが浮かぶ。その様子を見て彼も微笑を浮かべた。



来世へ





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Last updated  2007/11/16 01:22:25 PM
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