空想世界と少しの現実

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緋褪色

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いよいよだね。親父と翠嵐先生喜んでくれるかな。傍らのシンディに話し掛ける。彼女は少し微笑んで小さな声で 喜んでくれるわ・・・きっとね。 微笑みながら答える。

草津の湯畑に向かう道は、午後三時から1時間の道路使用許可を警察に申請してある為、一般の人間は中に入れない。いるのはみんな仕掛け人ばかり。大掛かりなサプライズだな。撮影は湯畑の周りに店を構える人達の協力を得て、親父と翠嵐先生にばれないようにこっそりと。

2人が歩く様子は鞄に仕込んだピンホールカメラで撮影。俺とシンディは先にホテルの式場に着いて2人を出迎える役割だ。ホールに入ってきたらクラッカーを鳴らして祝福しよう!その提案にシンディも微笑んで同意してくれた。

右腕の腕時計を確認するともうすぐ三時。いよいよHAPPYサプライズの開始だ!(。-∀-) ニヒ♪
湯畑を一望出来るホテルの一室の中で、2人でモニターを見つめながら互いの顔を見合わせ微笑み合う。



厳、今日は人が少ないわね。寒いからかしら。 俺と腕を組む翠嵐が小さな声で囁く。

そうだな。皆寒い時には出歩きたくないもんだ。同意して頷く。サプライズを彼女に悟られないようにしないとな。人が少ない事に気がついたか。勘が鋭い頭のいい彼女らしい。俺達の周りにいるのは皆エキストラか。随分大掛かりだな、それに行動が全然不自然じゃない。
左右を見回しながら湯畑をゆっくりと歩く。

湯畑


サプライズを考えたのはシンディなんです。あの子、厳様がずっとお一人でいるのを気に掛けていましたから。 重責を1人で耐えるのって苦しいと思いませんか、社長。

厳、翠嵐

私達だけでなくお父様にも幸せになって欲しいんです。辛い想いをしてきた人ほど幸せになる権利があると考えているから・・・
電話で話した時彼女はそう言いました。

あの子はいつも人の事を気に掛ける優しい子です。そのような彼女だからこそ、海外に出ても差別されることなくやってこれたんでしょう。
大羽社長の言葉に少し俯いて聞き耳を立てていた。

そう、シンディは自身の事よりも人の事に敏感に反応する女性。いい嫁を貰ったものだ、瞑月は・・・静かに呟くと社長は嬉しそうに微笑を浮かべ、バカラのグラスを右手で掲げた。 うちの自慢の元看板女優ですからね!シンディは!(´∀`*))ァ'`,、

西の河原に向かいながら心の中で社長との会話を想い浮かべる。妻を亡くした俺には幸せになる権利などない。そう心に言い聞かせてきた。しかしいくつになっても人は人を求めてしまう。心を預けて寄り添ってくれる存在を。今の俺にとってその存在が翠嵐、お前なんだ。

手・・・繋がないか・・・ 小さな厳の囁き声。無言で頷いて組んでいた右腕を放して左手を握ると、大きく温かい手で握りしめコートのポケットに入れる。寡黙な厳。さりげない彼の優しさは自身の心を温めてくれる。こんなささやかな仕草でも嬉しいのよ。女って・・・繋がれた手を強く握ると少し強く握り返してくれた。


お父様と翠嵐さんの仲睦まじい様子に微笑むと、瞑月が私の手に左手を添える。貴方が今何を想っているか解かるわよ。彼に心の中で小さな呟き。その瞳の中に浮かぶ貴方の心が私に語りかけていた。 みんなが幸せになれるといいね って・・・本当にね。皆が幸せだったなら、きっと周りの人々も幸せが降りてくるんだわ。

瞑月、シンディ

微笑んで俺を見つめるシンディ。君の願いは皆が幸せになれる事、ただそれだけなんだよね。自分だけでなく人の幸せを祈る君の優しさと慈悲は、人嫌いの俺の心を癒し、結婚しないと誓いを立てていた父の心すら動かしてしまったんだね。

君と出逢えた事で俺の周りの人々が大きく変わっていっている。出逢う人々に幸福を与える俺の妻。不思議な力を持っているんだね、まるで魔法みたいだよ。彼女の強い想いは人の心を動かすんだろうか。モニター画面で2人を見つめながら考えていた。



雪景色が綺麗だな、翠嵐。 本当に・・・綺麗で幻想的ね。吐き出す息は白く頬を撫でる小さな風は私の体温を奪うけど、心まで冷えないのは貴方がいるからよ、厳。ずっとずっと好きだった人。心を寄せていても答えてくれなかった、切なくて苦しい長い長い私の片思い。

いつから厳に片思いしているって気がついたの?2人でティータイムを楽しんでいた時に問い掛けた。申し訳なさそうに少し俯きながら話すシンディ。
結婚して皇室に入った頃から翠嵐先生の想いに気がついていました。

厳、翠嵐

誰にも心を悟られない自信はあったのに・・・はるかに私より若い彼女。人の本心を見抜く子だって驚愕した。苦笑する私に困惑した表情を浮かべて項垂れる。

すみません・・・人を観察して心が今どういう心理状態なのか探ってしまうんです。父がDVだったので・・・いつの間にか人の表情から深層心理を探るようになってしまったんです。

秘められた彼女の過去。辛い出来事を告白するのは苦しいでしょうに・・・そうだったの・・・苦しかったでしょう。そう声を掛けると、大きな瞳にうっすらと涙を浮かばせて小さく頷く。

私は、過去の出来事に囚われたり恨んだりしたくないんです。亡くなった父を恨んでも何の解決にもなりません。どんな父親でも私の命を産み出した存在ですから。それに私の中に存在する小さな命に恨みという感情など抱いて欲しくありません。だから自身の力で過去を乗り越えます。

きっぱりと言い切る彼女の芯の強さ。成る程、厳が彼女に葵菫を重ねるのが理解出来た。芯の強さは葵菫以上だわ!私の親友の彼女にね。

サプライズの始まりへ





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Last updated  2008/01/21 11:09:41 AM
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