空想世界と少しの現実

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緋褪色

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カテゴリ: オンナ心
「ね、雅夢。私ね、考えていることがあるんだ!貴方にも協力して欲しいんだけど」
「ん?俺に出来ることなら」寝転んだままの彼女の話に耳を傾ける。
「自分の軌跡を、何らかの形で残したいの。生きた証を。だからね、ブログやってみようかなって考えてるんだ。ブログって、世界中の人がネットを通して見られるでしょ?」
「私と同じように病と闘っている人、大勢いるじゃない?自分の体験を書いて、そういう人達と、交流できないかなって想ったんだ。それでね情報交換や、時にはオフ会開いたりして、元気をもらったり、与えたり出来ないかな?って」


彼女は希望を見い出した様に、瞳をきらきらと輝かせ嬉しそうに話す。「いいじゃない!是非やってみようよ!で、協力って?」

「雅夢も、同じところでブログ始めてもらえないかな?ブログってやった事なくてさ、勝手が解らないんだもん。会社のHPだって業者に頼んでるし、ネットの知識もいまいちなのよね~!」

「そういうことね。了解!構わないよ!美香はパソコン持ってるよね?ちょっと開いてみようか?」彼女の額にキスをして、白のバスローブを身体に掛けてやると、にっこりと微笑んで頷いた。
優しいね、雅夢。起き上がって、彼に掛けてもらった、バスローブを身につけながら想う。本心を出さないように、クールに振舞う私とは対照的ね。甘え上手の年下君。女ってそういう子に弱いんだよね。意地っ張りの私だけど、君になら素直に甘えられるよ!「ね?ベットからから離れる前に、もう一回キスして!」求めに微笑んで応じてくれる。
「こらー美香、そんな可愛い顔してっと、もう一回脱がしたくなる!つーか我慢できねーから襲っちゃうっ!!」ああ!駄目だ!理性に歯止めが効かねーよっ!!可愛い俺だけの女!少しでも長く、肌を触れ合わせていたいんだ!バスローブを乱暴に脱がし再び肌を重ねあう。

「もーっ!!甘えんぼ~!でもそんな君が大好きだよ!」くせっ毛の茶髪の彼。優しいキスを注ぐその表情は、とても無邪気で、見つめる私にも自然に笑みが浮かぶ。微かに漂う、私と同じ香水はBVLGARIのBLACK。いつの間にか揃えていてくれたんだね。

好きな人が同じ香りを纏わせている。女にとってこれほど秘密めいて、嬉しいことなんてきっとないよ!好きって言葉の代わりに、彼の柔らかな髪を撫でると、鎖骨に優しいキスをしてくれた。雅夢、君と一緒なら、たとえ先に死が待ち構えていても、一日一日を、希望を持って生きられるよ。だから元気なうちに何度も抱き締めて。未来に持って行けるのは、きっと人を愛し、愛された記憶だけなんだから。

二人

数日後、月一の重役会議の場に、私はいた。提案した社長退任発言ににどよめきが上がる。
「退任なんて、社長いったいどういう事なんですか?」  口々に挙手をして、私の退任理由について尋ねてくる。「何度も申し上げている通り、私的な事情の為です。それ以上もそれ以下でもありません」

「しかし」 「皆様には大変ご迷惑をお掛けする事は、重々承知です。後任の方の選抜は、皆様にお願い致します」
ざわめく声を聞きながら、席を立つ。これでいい。自分に言い聞かせながら。会議室を出ると、背中から秘書の小沢が声を掛けてきた。


「社長!!待って下さいっ!!退任なんて、いったい何故!?」
「ん?ちょっとね、疲れちゃったのよ!口煩い重役たちにも、我儘な派遣社員にも。小沢君、今までありがとうね!」
「社長・・・」
スタスタと歩く横を、まるで犬みたいに、まとわりつくように歩く小沢。「貴方みたいな優秀な秘書がいたから、女でも社長やってこれたんだよ!心底感謝してる」
「美香さん・・・俺」
気持ちを吐き出しそうな彼に、先に牽制。「ちょっと!此処は仕事場よ!私的な感情は無し!」本当は知っていた。彼の気持ち。だけど結婚していた私には、火遊びする余裕も時間もなかった。だけど唯一、本心を曝け出せる腹心は、小沢しかいなかったね。旦那にも話せない本音や、働く女の苦しみ、耳を傾けてくれたのは10歳年下の彼だった。

聡明でいい男だけど、彼だって既婚者。子どもだっている相手を、自身の寂しさを埋める為に、振り回したくなどなかったよ。だからずっと彼の気持ちに、見て見ぬ振りをしてきたんだから。傍らで黙りこくる小沢の横顔を見つめる。

「小沢君。私の会社を興した経歴とか、経営手腕とか、貴方が一番よく知ってる。最後のお願いと我儘、聞いてくれる?君にしか出来ないことだから」

「やめて下さい!縁起でもない!まるで今日明日にでも、死ぬ人間の言う言葉みたいじゃないですか!」

彼の非難に苦笑。「そう。私、長くないんだ。スキルス性胃がんで、余命半年の患者なの。若いから侵食も早いんだ~!それが退任の理由よ!他の人間には黙っててよ!信頼できる貴方だから話したんだからね~!」

支えてくれる雅夢がいるから、今の私、待ち受ける死ってものを、冷静に受け止められるんだね。改めて恋人に感謝。愛しい彼を想い浮かべ微笑んでいると、小沢は絶句して立ち止まる。気がついて振り返った。


「美香・・さん?嘘、・・・ですよね?」
「嘘じゃない。本当のほんと。腹心に嘘ついてどうすんのよ~!詳しい事情は社長室で話そう!退任理由、他の人間に知られたくないから、重役達に曖昧に返事したんだからね!」言葉に狼狽して、眼鏡を掛け直す彼。

「そんな・・・信じられません・・・」
「ちょっと~!私の事情なんだから、そんなに落ち込んだ顔しないでよ~!有能な秘書なんだから、しっかりして!貴方にお願いしたいこと沢山あるのよ!小沢!」言葉を交わし、再び社長室へと歩みを進める。

そう、彼にも手伝ってもらわなくちゃ。私の生きた証を残す為に。


美香の想いを残す為に、俺は時間がある時にブログに向かう。俺の更新は殆んど昼間で、彼女は夜。彼女が更新すると、携帯にメールが届く。それを見て、客に気づかれぬよう、適当な理由を言っては席を外し、厨房で携帯を覗く。

今までも客とのやり取りは携帯だから、誰も不審に思わない。唯一気がついたのは皇牙だった。


「雅夢さん。最近美香さんと会っているんですか?あまり此処にも顔を出さなくなって、僕も寂しいな。彼女楽しい人だから、お客じゃなく、友人とか恋人になって欲しいタイプですよね~!」
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「なんだよ、お前。美香に惚れてんの?客に惚れたら駄目だぜ?俺ら、女を楽しませるプロなんだからな!」ちょっぴりやきもちも入っている、俺の牽制。こいつも結構いい男だからな、美香の気持ちが揺らがないって解ってても、結構不安。

俳優を目指して、オーディションを受けまくっても、落ちるばかりで自信を無くしてた十代。演技の勉強のために入ったのが、此処「Blue moon」だ。オーナーは女で元女優、鳳 詠美。そんな人の下なら、人間の心の機微を学べるって考えた。

実際に働き出して、鳳オーナーの女心のレクチャーを受けるたび、成績は伸びていく。マジすげーって想った。それが面白くて、だったらこの世界で、ナンバーワンになってやるって考えたんだ。「単純だよな、我ながら」苦笑して呟く。


「どうしたんです?雅夢さん。ぼーっとして?美香さんは僕には高嶺の花ですよ~!頭いいし、男の心理よく知ってますもん!あんな聡明な女を口説けるのって、そうはいないんじゃないですか?」

「そーかもな」同意して頷く。美香、俺、あんまり頭良くないけど、お前に出逢ってから、経済新聞と一般紙三社、契約したんだぜ!大好きなお前につり合う男になるために。この業界でだって、プロになるなら相応の投資と努力が必要だもんな。

説教めいたことなど、美香は言わないけど、彼女も事業主。

「どの業界でもプロに徹するって大事よね。雅夢もホストの中でナンバーワンになったら、私、客としてこんなに誇らしいことないよ!」

彼女の言葉は、強く向上心を煽るんだ。想いあっているからだけじゃなく、美香の生き方や人生観は、人の心を強く揺さぶるだけの力があった。そういう女に、今まで出逢った事なかったな。

病と戦いながらも、自分のスタイルを一切妥協しない女。それが美香。そんな彼女でも、俺の前ではまるで猫みたいな表情を見せてくれる。大好きだったタバコも、俺の咎めに
「雅夢が、毎日愛してるって言ってくれるなら止める」
なんて可愛い事を言う。「そんなのは普通に言うよ。君の身体が心配なの。ただそれだけなんだ」
その一言で、持っていたタバコの箱を俺に手渡した。

「そうだよね、ありがと、雅夢。何となく吸い始めたタバコ、止められなくて本当は困ってたんだ!君のお陰で止めるきっかけが出来たよ!でも、口寂しいな~!」
「我慢出来なくなったら、その時は俺がキスしてやる!だから堪えろよ!」不器用な励ましにも、笑顔の彼女。

「ほんと?じゃ、絶対止める!これでも私、意思強いんだよ!雅夢、だーいすき!」

店とプライベートで、全く異なる表情の美香。演じ分けてるとよく解る。束の間の素の自分に戻った時、君との会話を想い出すんだよ。携帯の画面を通しブログを見る。
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どーも!美香でーす!皆様お元気?
今日はね、美香にとって大きな出来事がありました~!

詳しいことは書けないけど、会社辞める事にしました!
結構頑張ってきたし、もういいかな?って感じです!

自分が起した会社だけに、愛着がないわけじゃないけど、引き際って大事じゃないかな。
それに代表が健康に不安があったら、裾野の人まで迷惑掛かっちゃうじゃない?
だから、もう終わり。

今まで我慢してきたことや、出来なかったこと。残りの時間めい一杯使って、楽しむよ~!
大好きな雅夢!最後まで、私にお付き合い下さいね!

あはは!これじゃほぼ私信じゃん!ブログ初心者だから、見た人許してね~!


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これを、どんな顔でブログに書いていたんだろうね?はにかんだ表情?それとも照れくさそうな表情?どちらにしても可愛いだろうね!美香の顔。
携帯画面を見ながら笑う俺を、皇牙がきょとんとした表情で見つめていた。


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Last updated  2008/09/02 01:21:56 PM
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