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January 11, 2010
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ヴェネツィア、夜景.JPG


黄金色のサンマルコ広場でしばし、夢気分を味わった後は、再びヴァポレットに乗って、宿のあるサンタルチア駅前まで戻ることに。

カーニバル期間中は真夜中までにぎやかなサンマルコ周辺ですが、この時期は夜の9時を過ぎたらもう、人影もまばら。

ヴァポレットを待つ人もほとんどいなくて、ぽつんと一人、停留所に立って、目の前の大運河と、対岸のサン・ジョルジョ・マッジョーレ島の小さな明かりを眺めていたら、大好きな須賀敦子さんのエッセイを思い出しました。


リド島のペンションで友人とひと夏を過ごすことにした須賀さんはやがて、島での退屈な毎日から逃れようと、ある夜リド島へは戻らずに、ヴェネツィアの町に宿をとります。

せっかくヴェネツィアに宿をとったものの、一人で夜の街を出歩こうという気にもならなかったという筆者は結局、早々と床につきますが、廊下の話し声やドアを開けたてする音、シャワーの音などが気になってなかなか寝付かれずにイライラしながらも、いつの間にか浅い眠りにつく。

どれほどの時間がたったのか、筆者は今までとはまた、違った物音で目を覚まします。。。


(須賀敦子著「ミラノ 霧の風景」より ~舞台の上のヴェネツィア~から抜粋)

・・・ふと、物音で目が覚めた。暗い中で耳を済ませたが、先刻までの騒音と違って、今度の物音はおよそ見当のつかない種類のものだった。しかし、じっと聞いているうちに、それが窓の外から聞こえてくる水の音だとわかった。

それはスタンダールやアッシェンバッハの劇的なヴェネツィアとはほど遠い、そしてあの汗と喧騒に満ちた昼間のヴェネツィアには似ても似つかない、ひそやかでなつかしい音だった。
何時ごろまで、その音がつづいたのだろうか。私はその音を聴きながら、なにかほっとしてまた眠りに落ちたのだった。


読んでいて、そのときの様子が目に浮かぶような情景ですが、今こうしてヴァポレットを待ちながら、埠頭にひとり、たたずんでいると、須賀さんが体感した音とはまた違うけれど、「ひそやかでなつかしい」という表現がぴったりの波音が足元から聞こえてきます。

運河沿いの路地の突き当たりにあったという宿で聴いた水音は真夜中、ヴェネツィアという町が眠りについた時間だけに聞こえるひそやかなものであっただろうと思います。

それに対して、サンマルコの埠頭に当たる水音は、単なる水、というよりはもう、しっかりとした「波音」。チャポチャポというよりは「ザブンザブン」という音なんだけどザブンとザブンの間に、シャラシャラ・・と小さい音がまざっていて、そのシャラシャラ・・というかすかな波音もまた、真冬の、人気のない埠頭でじっと、耳を傾けないと聞こえないような小さな音です。

そして、埠頭に繋がれたたくさんのゴンドラたちがゆれるたびに奏でるギイィ・・という音が重なると、『ザブン、シャララ、ギイィ、ザブン』と、耳にやさしく響いてくるのです。


リズミカルな、『ザブン、シャララ、ギイィ、ザブン』を聴いていたら、凍えそうな空気の冷たさが少しだけ、和らぐような気がしたのでした。


・・・やがて、波音に重なるように、ヴァポレットのエンジン音が近づいてきました。

「ブォナセーラ、スィニョーラ!」かすれた声で怒鳴りながら、埠頭の杭にロープを巻きつける水上バスの車掌さん(?)に会釈をして乗り込むと、後ろから若い学生さんたちが数人、ワイワイ騒ぎながら飛び乗ってきました。

あの波音も、ラガッツィの話し声も、ヴァポレットのエンジン音も、みんなヴェネツィアの音。

ガラガラの船内で硬いベンチに腰を下ろして初めて、自分が芯から冷え切っているのを実感











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Last updated  January 11, 2010 01:47:14 AM コメントを書く
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