仙台・宮城・東北を考える おだずまジャーナル

2024.01.20
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カテゴリ: 宮城
蔵王町のお勉強シリーズの3回目は、旧宮村の林業と財産区について。

蔵王町を知る(その3 宮財産区) (2024年01月20日)
蔵王町を知る(その2 遠刈田温泉) (2024年01月19日)
蔵王町を知る(その1 永野と宮の謎) (2024年01月18日)


1 宮村の林業

『蔵王町史 通史編』(蔵王町史編さん委員会、1994年)から、当ジャーナル要約。
 宮村は総面積4,403haで郡内第三位の広大な面積中に刈田岳を主峰とする山岳地帯が占め、大部分が国有林である。山林資源を活用することが立村以来の懸案だった。
 宮村村有林は明治22年町村制実施の際に村有となったもので、しばらく粗放なる管理だったが、明治33年より地元民に区域を割り当てて林野を貸付け、さらに部分林を設定したが、造林の成績は芳しくなく天然の雑木山に放任する状況が続いた。
 明治37年の村会で、宮村字八山に十町歩の記念林を造林する戦時記念林計画が議決される。明治37-8年は日露戦争と冷害凶作で世界各国から寄せられた義捐金の配当を基に造林を実施した。また、小学校記念林として宮小学校と遠刈田小学校のため毎年植林することとした。しかし、宮村の山林開発は遅々として進まず、村有林野整備として、村直営林の造成と官行造林に提供による造林事業を推進した。
 明治41年の宮村財産記録では山林3町歩、原野15町歩と記されている。




同上資料から。
(1)財産区について
財産区は市町村と別個の特別地方公共団体として、市町村制当時から制度化されており、地方自治法施行前は、町村の一部、町村内の区、などと表現されていた。
 昭和28年の合併促進法でも、関係町村の協議で財産区を設置できるとされ、旧財産区の場合と同様に町村合併を達成するための方策であった。
 財産区制度は、所有財産が主として住民の共同生活上必要なものであり、積極的に活用するよりむしろ保存維持する目的で生成してきた過程があり、したがって新たな財産を取得できないなど権利能力は限定されている。また運営面では財産の管理処分は財産区の住民の福祉を増進するとともに町村の一体性を損なわないことが求められており、財産から生ずる収入を町村の経費に充てる場合には財産区の同意が必要とされ、また、不均一課税ができるなど、町村全体の利害と財産区の利害が相反することを避けるための制度となっている。

(2)宮財産区
蔵王町は昭和30年の合併に際して旧宮村の所有する山林について財産区を設置した。設置以来30数年を経過し、この間の財産処分収入の大部分が一般会計に繰り入れられ、町の行財政運営とおおきく関連している。
 財産区は固有の管理機関を持たないのが原則だが、例外として財産区議会、総会、または財産区管理会を置くことができるとされる(町村合併促進法による財産区規定設置に関連して昭和29地方自治法改正で設けられた)。
 蔵王町では宮財産区設置とともに、その機関として宮財産区管理会を置いた。管理会は、同意権、管理執行権、監査権の3つの機能を持ち、7人以内の委員で構成すると法定され、定数、専任、議事手続、同意事項などは条例で定めるとされている。昭和30年8月町議会で、財産区管理会条例が制定され、委員は7人(宮地域4人、遠刈田温泉地域3人)で公選制、同意権は11項目(財産の全部の処分又は廃止、管理行為、予定価格一万円以上の売買契約、予算・決算、など)が対象とされた。


3 八山裁判(宮財産区損害賠償請求訴訟)

同上資料から。
 昭和48年に八山地区の宮財産区所有山林126haを開発し観光資源として活用する計画が打ち出され、入札の結果、東京の丸尾商事株式会社(株式会社ユニバーサル都市研)との間で売買契約(7億5千6百万円)を結び、手付金として宮財産区は1億5120万円(後に変更して9120万円)を受領した。会社の計画は、ゴルフ場やリゾートマンション等であったが、オイルショックによる低成長から会社は資金調達困難となり、手付金を9120万円に減額して1億5120万円との差額6千万円を返還するよう申し出た。6千万円返還してもらえばそれを元手に20億円の資金調達ができるという理由であった。宮財産区は町議会と協議した結果、会社に応じて6千万円を返還したのだった。
 しかし、会社は後述のように無理難題を押し付け、さらに契約解除と手付金9120万円の返還を迫ってきた。
 宮財産区や議会はこれを拒否し、財産区は会社の契約不履行により契約を解除し手付金を没収すると通告した。
 会社は昭和51年6月1日、宮財産区は契約物件の瑕疵を隠して売買契約を行ったとして、手付金を含め総額3億円の損害賠償を財産区に求めて東京地裁に提訴した。会社のいう隠れたる瑕疵とは、
(1)ゴルフ場予定地の地下に東北電力遠刈田発電所に通じる隧道がある。
(2)狼沢(通称)の沢水は付近の農家が飲用や農業用に使用している。
であったが、入札以前に会社も現地調査で承知のはずで、財産区としても説明していたことであった。
 昭和57年4月19日東京地裁判決は、宮財産区の全面勝訴。会社側は4月28日東京高裁に控訴。昭和62年3月24日判決は控訴棄却で、上告なく宮財産区の勝訴確定。したがって、財産区は手付金9120万円を没収し契約を解消した。


■関連する過去の記事(蔵王町など)
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最終更新日  2024.01.20 11:11:20
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