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世界的ベストセラー、アン・ホルムの同名小説を映画化。幼い時に家族と引き離され、強制収容所で育った12歳の少年が、ある日ついに脱走し、たった一人でブルガリアから祖国デンマークへ向けて旅立つ。初めて経験する様々な出来事を感動的に綴る。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ある日ある男から、脱走方法を教えられ、デンマークへ向うよう支持されるデビッド。彼は幼くして強制収容所に連れてこられ、理不尽な暴力と労働の世界しか知らずに育った12歳。命かながら収容所をあとにして、持たされた謎の封筒と共に、デンマークまでの旅が始まります。お金の使い方も、それを手に入れる術も、示された目的地に隠された秘密も、何一つ知らないままのデビッドの旅は、時に危険で驚きと発見に満ち、希望と失望の繰り返し。自分の身が安全な場所を見分けることさえ難しい外の世界は、12歳で初めて自由を得た彼には手に余ることばかりです。素性を隠して、とにかく誰も信じずにいること。見つかれば命の保証はありません。怯えながらも、子ども特有の好奇心でさまざまなことを経験しながら、着実に北へ向って進むロードムービー。明かされる感動の真実へ辿り着くまで、どきどきハラハラ、辛く切なく、最後まで目が離せませんでした。開かれた世界や人々の日常が、無垢な目を持つデビッドにはどう映るのかも見所。収容所で経験した恐怖の記憶は、いつでも彼を何かに怯えさせることになりますが、突如快活に明るく描かれるシーンも多くあります。明暗の繰り返しが上手く好感がもて、暗さから救ってくれる展開がいいです。眠ると必ず夢に見るのは収容所での出来事。容赦なく囚人を殺す看守たちの中で、自分を命がけで守ってくれた人もいました。いつも傍で助言してくれたヨハネスのことを、デビッドは忘れることができません。ヨハネスを演じているのはジム・カヴィーゼルでした。「パッション」の迫真の演技が記憶に新しいですが、こちらでも好演しています。収容所での回想シーンにしか登場しないのにかなりの存在感。その目、その行動。観る人の心になにかしら残っていくのではないかなと思います。やっとやっと、信頼できる大人に会えた時、彼に知らされなかったこの旅の真実が明かされます――素敵なお話ですね~美しいヨーロッパの景色のなかで繰り広げられるロードムービーは、派手なところはなく、じんわりした感動に包まれてます。脚本も書いたポール・フェイグ監督は、これが処女作だそうです。そうとは思えないほどの完成度、小作品ながらセンスのよさを感じました。言語はほとんど英語でしたが、舞台といい雰囲気といい、ヨーロッパ映画ようでした。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 監督・脚本 ポール・フェイグ Paul Feig 製作 ダヴィナ・ベリング Davina Belling ローレン・レヴィン Lauren Levine クライヴ・パーソンズ Clive Parsons 原作 アン・ホルム Anne Holm 撮影 ロマン・オーシン Roman Osin 音楽 スチュワート・コープランド Stewart Copeland 出演 ベン・ティバー 、ジム・カヴィーゼル ジョーン・プロウライト 、フリスト・ショポフ シルヴィア・ドゥ・サンティス 、マリア・ボネヴィー
2006.06.28
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ルーヴル美術館での殺人事件を発端に、レオナルド・ダ・ヴィンチの名画に隠された暗号を解き明かし、事件の裏に秘められたキリスト教をめぐる人類史上最大の秘密に迫る、ダン・ブラウンの同名ベストセラーを映画化したミステリー大作。 原作は未読でしたが、映画を観た人からの感想は色々聞いていました。難しくて分からない部分もある~とのことでちょっと身構えていたのですが、意外にもすんなりと楽しめて安心しました。ダ・ヴィンチの名画に隠された暗号とは・・ なんて言われると、それがいくら仮説であっても、興味が湧いて知りたくなってしまいます。ポスターや本には『モナリザ』が使われていますが、秘密があるのは『最後の晩餐』だったのですね! ルーヴル美術館で館長のソニエールが殺害される。遺体は奇妙なポーズをとり、傍には暗号が残されていた。犯人だと誤認され、司法警察のファーシュ警部(ジャン・レノ)に追われる大学教授のラングドンは、彼を助けた暗号解読官ソフィー・ヌヴーの力を借りて、大きな陰謀と謎に挑んでいくのだった…。 2時間半、サスペンスの勢いが止まらずに展開されるのは巧いと思います。きっちりちゃんとしてるイメージのロン・ハワードらしい。たいした中だるみもせず、次々と湧き上がる謎と解決とキリスト教の闇と、どれも無難に楽しむことができました。『最後の晩餐』にはイエス・キリストの秘密が描かれている――この件は、人が想像して作り上げたことでも、まんざら出鱈目でもないし不思議な説得力さえあります。単純なのでなんでも信じてしまう方だけど、イエスは神ではなく人間だって思っている以上、信じるのは簡単なのかもしれません。秘密を守り続けてきた血塗られた歴史。そのスケールの大きさは、宗教と共にある西洋史をも変えてきたという...魔女狩りについては、本当に信じかけてしまいました。というか事実なんじゃないだろうか。映画がこれだけ楽しいなら、原作はどんなに良いんだろう。是非読みたいと思える作品でした。でも読んでからなら、こんなに楽しめなかったろう。機会があれば買ってみようかな。トム・ハンクスは流石に巧く、オドレイも大きな秘密と運命を抱えた女性を好演していたと思います。世間の酷評がちょっと意外。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・監督 ロン・ハワード Ron Howard 製作 ブライアン・グレイザー 、ジョン・コーリー 原作 ダン・ブラウン 『ダ・ヴィンチ・コード』 脚本 アキヴァ・ゴールズマン 撮影 サルヴァトーレ・トチノ 音楽 ハンス・ジマー 出演 トム・ハンクス 、オドレイ・トトゥ 、イアン・マッケラン アルフレッド・モリナ 、ジャン・レノ 、ポール・ベタニー ジャン=ピエール・マリエール
2006.06.27
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1945年8月。米国軍の日本に対する攻撃は激しさを増し、ついには広島に最初の原爆が投下された。窮地に立たされた日本軍は、特殊な性能を備えた潜水艦・伊507に最後の望みを託すが...。様々な事情を抱え乗り合わせた男たちの正義と命を懸けた闘いを描く。 「亡国のイージス」「戦国自衛隊1549」と共に、同じ年に福井晴敏氏の原作が三本も映画化されたことになります。どれも読んだことがなく比べられませんが、知っている内容だけでも面白そうでイマジネーションに溢れた作品ばかりですね。それを映画で観てみようと思えるのは稀ですが、なんとなくこちらには惹かれレンタルしてみました。第二次大戦を舞台に描かれる、全くのフィクションというのは、とにかく新鮮でした。フィクションというか、奇抜な架空のお話。ありえなさの中に次第に見え始める面白味もまた、意外で新鮮です。ローレライ(伊507)の外見が映るといきなりアニメ-ションになってしまうようなところも、この内容ならありなのかもしれません。不思議な感覚。こういう日本映画もありかも。引き気味だったけれど、最後には悪くないと思える映画でした。「くせもの艦長を役所広司が熱演」アメリカに寝返った浅倉大佐(堤真一)の意図で、突如東京が広島に続く原子爆弾の標的となった...!艦長はこの危機を救うため、戦争を生き延びてきた曲者の乗組員たちとともに、命がけの作戦を決行するのです。臭い人間模様はお決まりですが、独特の世界観によって救われているよう。ローレライの秘密兵器であるパウラの衣装などは、近未来ものとも取れる感じで、いつの時代の話かなんてあまり関係がないようにも思えました。彼女の過去や賛美歌のような歌声は異国のものであり、なんともSFちっくな大戦もの。それでも酷いとは思えないし、やっぱりありなのではないでしょうか。後味も悪くないです。 「若き兵士 折笠(妻夫木聡)とローレライの秘密兵器パウラ(香椎由宇)。次第に心通わせていくが...」妻夫木君の好青年役は、いつ見てもほんとよく似合いますね。どんな役も巧くこなして、彼の作品は安心して観られます。樋口真嗣監督の最新作は夏公開の話題作「日本沈没」。CGやアニメーションに近い雰囲気は、経歴をみると納得でした。「王立宇宙軍 オネアミスの翼」の助監督もなさっていたのには驚きです。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・監督 樋口真嗣 製作 亀山千広 原作 福井晴敏 『終戦のローレライ』脚本 鈴木智 音楽 佐藤直紀 出演 役所広司 、妻夫木聡 、柳葉敏郎 、香椎由宇 、石黒賢
2006.06.26
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ジョンは無名のバイオリニスト(金城)、イブは売れない翻訳家(ジジ)。アパートの隣同士ながら、運命のいたずらですれ違いを繰り返す男女を描く。 金城武主演の恋愛映画は好きで、ウォン・カーウァイ監督の「恋する惑星」「天使の涙」はスタイリッシュさがとても好みでした。こちらは、すれ違う男女の恋模様を描いたラブコメディ。笑うに笑えず、ちょっと古臭い感じがしましたが、徹底してニアミスし続ける様子はマンガのように楽しめます。それもそのはず、原作は台湾の大人向け絵本だそう。脇のキャラが凄く濃いのも、ベタな感じなのもそのせいだったんですね。期待してた切なさは味わえなかったけれど、なかなか楽しめました。 偶然知り合った二人。ところがお互いに12年前に一目ぼれしていた相手だったことを知り意気投合。別れ際に電話番号を交換しますが、降りだした大雨でインクが滲んで、そこから再会する機会を失ってしまうのです...なにかかが始まる予感に笑いが止まらないほど幸福だった男女が、一夜明けたらお先真っ暗闇。電話番号が読めず、相手からも一向に掛かってこないし、どんなに会いたさが募っても、その術がないのです。実はいつもすぐ傍で、通り過ぎたり、佇んだりしているのに...気付かない。若者と言われる歳を通り過ぎて、人生の転換期を迎えた年頃のふたりが、いい味出してました。マンガの中のような恋をしてるんだけど、ひたむきさには好感持てて、つい応援したくなります。ラストなどはありえないくらいの演出で驚いちゃいましたが、ラブコメゆえに笑って許せてしまいますね。劇中登場するポーランドの女流詩人の詩は、美しくてしっとり気分にさせてくれました。観ながらなんとなく岩井俊二の「Love Letter」に似てるな~って思ったのはわたしだけかな。主人公の女性が着ているニットの柄物を合わせたコーディネートの仕方とか、風邪をこじらせるくだりとか。「Love Letter」が大好きだからこそ、結びつけて観てしまうのでしょうか~。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・製作・監督 ジョニー・トー Johnny To ワイ・カーファイ Wai Ka-Fai 原作 ジミー・リャオ 『Separate Ways』脚本 ワイ・カーファイ 撮影 チェン・チュウキョン 出演 金城武 、ジジ・リョン 、エドマンド・チャン 、テリー・クワン
2006.06.26
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こちらもサンダンス映画祭の作品で、低予算ながら話題となったサスペンスです。‘実話’と冒頭にテロップが流れますが、ありえないことではないでしょうね~だたジェスチャー的なものでもありそうな気がします。バカンスでカリブ海に来ていた夫婦が、ツアー客で満員のダイビングボートに乗り海へ出ます。しかし満喫して戻ると、スタッフのミスで既にボートはいません‥‥。足の届かない、360度岸の見えない大海原で置き去りにされた二人の周りには、サメが現れ始めます!上映当初から結構な怖さを期待していたのですが、実際は意外と地味でした。オープン・ウォーターとは大海原のことだそうです。置き去りにされた二人は、ダイビングポイントから潮に流され、いつしかサメのうごめく外海へ出ます。何時間も水に浸かり続けるうちに起こる、疲労、寒さ、波酔い、空腹、そして助けの来ない恐怖、希望と落胆...予想のつく範囲内で、こじんまりと展開されていく感がありました。お決まりの仲たがい、そしてじんわりと忍び来るサメの恐怖。水深の深い海域で、水面下が見えず、足に何かが触れたら…?海で泳ぐことのある方には、想像して余りある怖さだと思います。しかも置き去りにされて助けがこないまま、辺りにサメが居るとわかったら、それはもう尋常じゃないほどのパニック!主人公夫婦に感情移入すればするほど、震え上がる感覚に置かれる作品かもしれません。個人的には、なぜか怖さを満喫できなかったのですが、足のつかない海で泳ぐことと縁遠い生活をしているからかもしれませんね。それと恐怖をわざと煽るような作り方をあまりしていないこともあります。例えばあまり水中内を見せないことで、観るものの想像力に任せる部分も多いのです。海と関係深い人ほど色々感じるのかな~と思ったりしました。CGなど一切なしで、すべて本物のサメの中に入って撮影したという映像は、たしかにすごいです。主演のふたりははんぱじゃなく怖かったでしょうね。よく頑張った! って言いたくなります。怯えた表情もきっと本物なのでしょう。「負傷し消耗し憔悴しきるふたり…」終盤までほとんどオーソドックスな展開に、ただラストだけは「あっ」と驚きました。賛否両論で後味悪いという感想もあるようでしたが、好きかも。でもこうなると、やっぱり‘実話’というのはジャスチャーなんでしょうか。地味で低予算ですが、ゾクゾクくる恐怖を味わいたい方には良いかも。これからの季節にぴったりですね。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 監督・脚本・撮影・編集 クリス・ケンティス 製作・撮影 ローラ・ラウ 音楽 グレーム・レヴェル 出演 ブランチャード・ライアン ダニエル・トラヴィス
2006.06.24
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ジョン・ボールの原作『夜の熱気の中で』を映画化した、刑事映画の傑作。偏見と差別の根強い南部の田舎町を舞台に、殺人事件を追う都会の黒人刑事と、地元の白人警察署長のにわかコンビを描く―――。 期待を裏切らない良作でした。アメリカ南部のうだるような雰囲気に、田舎町特有の閉塞感。よそ者に対する町の人間の冷たさや、そして何より人物に惚れぼれしました。偶然居合せた町で殺人事件の容疑者として連行された、殺人課の刑事である黒人青年バージルと、凶悪事件の捜査に疎い地元の中年の白人警部署長ビル。ふたりは人種差別のまだ残るその土地で、反目しあいながらもバージルの近代的な捜査進行のおかげで犯人に迫ってゆくのです。 見当違いな人物を逮捕するたび、バージルから「そいつは無罪」と言われ続ける、ビルの情けないような寂しい顔がいい。皆が恐れるワンマン署長が、黒人であるバージルに一目置くようになるまでを、見事なタッチで描きます。ともすれば、黒人嫌いの若者たちに滅多打ちにされ殺されてもおかしくない場所で、誠実な青年バージルの真っ直ぐな目が印象に残る。 あんなにぶつかり合っていた二人が、曇りのない笑顔を交わす爽快感なラストに後味良好。当然と言うべきか、この年のアカデミー賞授賞作品となっています。レイ・チャールズの歌をはじめ、全体を包んでいる音楽が素晴らしかったです。 ● ● ● ●監督 ノーマン・ジュイソン Norman Jewison 製作 ウォルター・ミリッシュ Walter Mirisch 原作 ジョン・ボール John Ball 脚本 スターリング・シリファント Stirling Silliphant 音楽 クインシー・ジョーンズ Quincy Jones 出演 ロッド・スタイガー Rod Steiger シドニー・ポワチエ Sidney Poitier ウォーレン・オーツ 、リー・グラント スコット・ウィルソン 、ジェームズ・パターソン
2006.06.22
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H・G・ウェルズ原作『透明人間』の初の映画化。透明薬を発明した科学者が、薬の副作用で凶暴化して殺人を犯し、町の人々に追い詰められていく... 何度も映画化されてきた「透明人間」。こちらはその元祖で、映画ファンならずとも、ぐるぐる巻いた包帯をほどく名シーンは、ご存知の方も多いと思います。H・G・ウェルズ原作のSFといえば、こちらも何度か映画化されている「タイムマシン」。そして昨年リメイクされた「宇宙戦争」もそうでした。きっと他にも色々あるのでしょうね。どれも発想がすごい!当時の読者にとっては、度肝を抜かれる物語ばかりだったはず。この映画もかなり前のモノクロ映画ですが、70分という尺の短さもあって楽しく観られました。「はじめの頃はまだ元に戻る薬の開発に必死だった…」 実験室から行方をくらましたひとりの科学者。彼は透明になる薬を遂に作ることに成功したのだった。しかし、元に戻る薬ができないまま、次第に副作用から凶暴になりはじめ、やがては世界征服を目論む卑劣漢へと変貌してゆく――警官たちの捜査の模様は、かなりちんたらして見えますが、それが逆にコメディチックでもあって面白いのかもしれませんね。悪事はエスカレートして、殺人を犯す辺りからは独特なサスペンス調の怖さが味わえます。当然のことながら特撮シーンでいっぱいですが、やはりこの名シーンはいいですね~くるくると布を解いていくと...するりするり...消えていく...これだけ昔の作品でも「インビジブル」より遥かに楽しめました。ラスト遂に追い詰められて万事窮す。…と、ここから先、ベッドで目覚め、体が元に戻るラストシーンに録画が止まっていて大ショック!最後の最後まで、透明人間を演じたクロード・レインズ氏の顔は一度も観られないで終わってしまいました・・ざんねん。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・監督 ジェームズ・ホエール James Whale 製作 カール・レムリ・Jr 原作 H・G・ウェルズ H.G. Wells 脚本 R・C・シェリフ フィリップ・ワイリー 特撮: ジョン・フルトン 出演 クロード・レインズ Claude Rains グロリア・スチュアート 、ウィリアム・ハリガン ウナ・オコナー 、E・E・クライヴ
2006.06.19
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19世紀末、北部イタリア・ベルガモ近郊の貧しい農村を舞台に、封建的社会の犠牲者である農民たちの生活を、ドキュメンタリータッチで淡々と描き出したエルマンノ・オルミの傑作。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ カンヌ映画祭最高賞 パルムドールを受賞した、3時間に及ぶ長編。すべてベルガモ地方でロケを行い、演じているのは素人の農民たち。人口照明は一切使わず、自然光のみで撮影された映像のリアリティーは、ドキュメンタリーかと思えるほどでした。まず浮かんだ感想は、ミレーの絵に似てる~ということでした。それもそのはず、ミレーはこの時代に生きた画家なんでした。農民の姿がそのまま絵画と重なるなんて、そうとうなリアリティーだと感じていただけると思います。 土地の全ては地主のものであった頃、そこで働く小作人たちは、貧しくても懸命にその日その日を生きています。淡々としたドラマは、3時間を長く感じさせるかもしれませんが、こういった類の感動は他の作品からはなかなか得られないものだと感じます。必要な時に必要な分だけ、家畜を殺して食べること。畑に種を蒔き、成長に合わせた農作業を暇なく続けること。大地の実りに感謝して、神を敬うこと。大地に根付いた彼らの生活は、相当に過酷です。けれど本来あるべき豊かさは現在よりも遥かに上なのかもしれない。そう知るとき、なんともいえない感動が溢れてくるようです。タイトルの木靴についてが展開されるのは、意外にも後半部からでした。沢山ある厳しい生活のエピソードの中の一つとして。小作人一家から、たったひとり学校へ通い始めた少年は、片道6キロの距離を小さな体で毎日歩きます。ある日、くたびれて割れてしまった木靴を見た父親は、地主の木を切り倒し、こっそり新しいものをこしらえるのですが....そうするしか解決方のない貧しさの中、地主に知られた時の冷酷な仕打ちは、またあまりにも厳しいものでした。辛く、悲しく、救いがない。それでも、古いイタリア映画にある悲壮感は独特の魅力があって、こちらも例外ではありませんでした。鑑賞中もその後も、暗い気持が漂います。どんよりとした重苦しさに飲み込まれそうだけど、力強い生命力も同時に感じました。きっと、これから何度観ても、同じように深く感じ入ることができそうな作品で、大好きになりました。時間を掛けてゆっくりと、ゆとりのある時に観るのがおすすめです。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・監督 エルマンノ・オルミ 製作 アッティリオ・トリチェッリ 脚本 エルマンノ・オルミ 撮影 エルマンノ・オルミ 音楽 ヨハン・セバスチャン・バッハ 出演 ルイジ・オルナーギ 、フランチェスカ・モリッジ 、オマール・ブリニョッリ ルチア・ペツォーリ 、フランコ・ピレンガ 、ロレンツォ・ペドローニ
2006.06.18
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1961年刊行以来のベストセラー。評する言葉もないほどの感動―と絶賛された。精神科医フランクルが、ドイツ強制収容所で体験したことの記録は、アウシュヴィッツの悲劇と悲惨を伝え人間の偉大と悲惨を静かに描き出す。 この本で語られた実話は、全く知らないでいたことばかりでした。そもそもわたしの知識といえば、映画や少しのドキュメンタリーで知りえたことだけで、ホロコーストに関する書籍を読むのも今回が初めてでした。発疹チブスの猛威、粗末過ぎる食事、生きる気力を無くした者が自らそれを止る...ガスかまどと銃殺が幾万の命を奪ったことは知っていても、こうして他の理由で死んでいった者も驚くほど多かったことは、驚愕の思いでした。本当に人間にできることなんだろうか...人が耐ええたことなんだろうか...痛んでくる内臓を抱えて、ただ読み進めるので精一杯です。精神科医である著者が洞察した、収容所内で繰り広げられた出来事が人に与えたショックと影響。どれもそうだったのかと動揺しながら、納得することばかりでした。アウシュビッツへ連れてこられる以前に、どんなに強靭な肉体を持った人でも、生きる意味と希望を得られない環境では、折れて負けてしまう。そのかわり、精神を強く保っていけた者は、生き延びることができた。生きて帰った著者が、どんなモチベーションで想像を絶する環境から帰還することができたのかを語るあたりは圧巻でした。監督する側にも善良な者はいて、囚人にも悪意に満ちた者がいた。いかなるグループも「純血」ではない...この言葉はドキッとさせられました。こういった部分が、映画や物語にされてくことも多いのでしょうね。フランクル氏の書いた本文へ向う前に、かなり長い解説があります。それは、ドイツで起こった組織的集団虐殺の実態を詳しく述べたもので、ここを読むことによって、本文がなお更理解しやすいものになります。そして巻末には、当時の生々しい写真も収められています。表紙の中村光夫氏評では「…不思議な明るさを持ち、読後感はむしろさわやか」とありましたが、実際私自身はさわやかにはなれませんでした。ただ、これだけおぞましいことをやってのけた人間のどす黒い部分はさておき、生と死の狭間に置かれてなお、精神の自由と清らかさを保つことができたのも人間だということに対しては、わずかでも希望を抱かずにいれませんね。そして人生にはユーモアが必要だと。
2006.06.17
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心の病がきっかけで、夫の孝夫と共に彼の故郷である信州の山間にある村に診療医としてやってきた美智子。2人は町の人々との触れあいの中で、質素に生きる喜びを知り、人生について再確認するのだった…。 晩年の黒澤明作品で、助監督を務めていた小泉監督。初監督作「雨あがる」は、巨匠黒澤の遺した遺稿を元にしたもので、日本の情景と浪人の生き方が美しく、とてもジンとしたのを覚えています。この時主演を演じた寺尾聰は、今回の「阿弥陀堂だより」、そして最新作「博士の愛した数式」でも小泉監督作品に起用されて、穏やかな人柄を演じています。 パニック障害を発病し、都会から夫の生まれ故郷である信州の山間の村へやってきた、医者の美智子。診療所で週に三日働き、主夫である売れない作家の夫と共に、村の人々と接しながら次第に心を癒していくまでを描きます。徹底して日本の美を映像化した印象でした。美しい情景、美しい言葉、美しい人間模様――どれもこれも、日本人なら一度は心惹かれる和まされるシーンに溢れています。とにかくいいお話です。反面、意図的なものを感じてしまったのは残念でした。田舎暮らしはいいことばかりではなく、厳しさもあるはずですが、そういった陰の部分がまったくないのは、お話の域を出ない感じでナチュラルさにも欠けていたのが残念です。村の死者を祀る阿弥陀堂に暮らすおうめ婆さんは、そんな中、本当に素晴らしかったです。演じたのは北林谷栄さん。「ビルマの竪琴」や「となりのトトロ」でおばあちゃんの声を担当した方です。演じたとはいいますが、演技とは到底思えないナチュラルな姿は、彼女を観れただけでも鑑賞の価値が充分あった~と思えるほどでした。素晴らしい~ 村の人々は、死者と語らって生きています。死と隣りあわせで今生きていることを知っています。「目の前のことばかりに気をとられ、悩み事を増やさなかったのが長寿の秘訣かもしれません」「畑から食べたいものを摂って質素に生きるてきたことが、長生きに繋がったのだとしたら、それは貧しさのおかげです」そんなふうに、村の広報の後記「阿弥陀堂だより」に載せられるお年寄りの言葉は、いろんなことを内包していて素直にジンときてしまいました。阿弥陀様を信心して、死者と共に生きる。自然を始めとする全てのものに感謝しながら――それは日本人の美徳で、現代人は忘れかけていることのように思います。病に倒れる者、死期の近づいた者、それぞれに死と向き合う人たちのエピソードもまた、味があります。死を覚悟して静かに生きる孝夫の恩師を演じたのは田村高廣氏で、一月前に亡くなったことが偲ばれました。死を目前にして、あれだけ穏やかな心でいらたら、それは良く生きたことなのでしょう。自分もそうやって生きていきたいし、そのためには目先のことから、毎日をちゃんと暮らしていきたいな~と静かに思えてきた作品でした。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 監督 小泉堯史 原作 南木佳士 『阿弥陀堂だより』 撮影 上田正治 音楽 加古隆 出演 寺尾聰 、樋口可南子 、北林谷栄 、小西真奈美 、吉岡秀隆 、田村高廣
2006.06.15
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撮影に3年、製作費に20億円を費やし、100種類以上の渡り鳥たちとともに地球全土を旅して完成した、かつてない鳥の目線による驚異の映像ドキュメンタリー。彼らは北半球が新しい春を迎えるたびに、苦難を乗り越えながら数千キロにも及ぶ果てしない空の道を辿って“必ず戻ってくる”のだった…。 未だかつて観たことのない――そんな言葉が一番しっくりとくる、驚きの映像がいっぱいでした。大自然と鳥、人間と鳥。地球上で最も天に近い場所で生きている鳥たちが、とても神秘的に見えてきました。いままで感じたことのないこの感覚。監督らが魅せられた理由も分かる気がします。圧倒的な映像美と、自然の神々しさを見事に表現したボーイソプラノ。その他の音楽も、琴線に触れる箇所が私的にとても多かったです。彼らの目線になって大空を滑空したり、力強く羽ばたいたりしているうちに、鳥になりたいと何度も思ってしまう…もちろん自然に生きる厳しさも取り上げられていますが、わずかに登場する‘人間’との関わりなどが、ささやかなドラマ性を持っているのも好感が持てました。公開時のコピー『それは、“必ず戻ってくる”という約束の物語』この通り。浪漫さえ感じてきますね~海洋生物のドキュメンタリーで有名になった、2003年の「ディープ・ブルー」と少し違うのは、こういったドラマ性かもしれません。どちらも映像の素晴らしさには圧倒されましたね~次はジャック・ペランも携っていたという「ミクロコスモス」が観たいです。製作・監督・ナレーションを務めたジャック・ペランは、「ニュー・シネマ・パラダイス」の大人になった主人公を演じた方で有名ですね。ずいぶん前から製作にも携っていたそうで、最近では「コーラス」を製作・主演しています。こちらも是非観たい作品です。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・共同監督 ジャック・クルーゾ Jacques Cluzaud ミッシェル・デバ Michel Debats 総監督 ジャック・ペラン Jacques Perrin 製作 ジャック・ペラン クリストフ・バラティエ Christophe Barratier 製作総指揮 ジャン・ドゥ・トレゴマン Jean de Tregomain 音楽 ブリュノ・クーレ Bruno Coulais ナレーション ジャック・ペラン
2006.06.14
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パン屋の娘婿ロジェ(アズナブール)と新聞記者ジャン(リビエール)は、ドイツ軍の捕虜となり、ライン河の軍用仮橋の上で出会う。ジャンは村娘を利用し脱走、レジスタンスに加わる。ロジェは敵国への敵愾心もなく、村長代理になり娘を愛する…。対立を超えるヒューマンな協調への道を探るカヤット監督作。 性格も生き方も違うふたりの男が、それぞれに選んだ道に待ち受けるドラマ、そして友情。見応えのある作品でした。優しくて情に篤いロジェと、新聞記者で世あたり上手なジャン。二人は共にドイツ軍の捕虜として、小さな村で労働させられることになりますが、性格の違うふたりが選んだ未来はまったく別のものとなっていきます。脱走することで頭がいっぱいの元新聞記者ジャンは、村長の娘を密かに誘惑し脱走に利用することを企てるのです。村長の元で親身になって働き、村の人々とも仲良くなった元パン屋のロジェは、娘に惹かれながらも、ジャンの計画を壊すことが出来ず、かといって一緒に逃げることもできません。ひとりはドイツからまんまと去り、残された一人は戦況の傾いたドイツで村長の代わりに家族と村を支えていく――同じフランス人でありながら、捕虜である状況をどう乗り切るか、その術のまったく違うふたりからは人生の面白さと皮肉をいっぱいに感じました。人情味のあるロジェは、敵国にいながらも皆に愛され、そして生き甲斐さえ感じていきます。一方、祖国に戻って新聞社を取り仕切るほどとなったやり手のジャンは、レジスタンスに加わり、彼らしい方法でパリの解放を叫び続けるのです。戦争に対する態度の違いはそのまま生き方の違いとなって表れる、なんとなく男のロマンのようなものを感じました。「ロジェと村長の娘」ふたりを取り巻く女性たちも素晴らしいです。ジャンを愛した女記者フロランス(ニコール・クールセル)との付かず離れずの恋は、彼の野心の陰で傷ついたり燃え上がったり。悲しい幕切れとなるのは、その人生にみ合った結末と言わざるをえないのが物悲しいですね...そして優しいロジェの娘に対する思いは、祖国に残してきた妻に対するそれよりもずっと大きくなり、やがて成就をむかえるのです。こちらも人生にみ合った結末です。人ってどんなふうにも生きられる。ジャンとロジェ、幸せになれたのはどちらかといえばロジェだったわけですが、どちらが正しいというわけではありません。人生に正解はない。ふたりが再会し、言葉を交わす時、似つかない人生を選んだはずなのに、そこに脈々と流れている友情にはっとさせられました。こういう関係は、男性同士の間でしか生まれにくいものと思えて、羨ましくなりました。モノクロの古い作品でしたが、とても楽しめました。「映画大全集」で拝借したあらすじの「ヒューマンな協調」という言葉そのまま、素晴らしい作品でした。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・監督 アンドレ・カイヤット Andre Cayatte 製作 ラルフ・バウム 原案 アンドレ・カイヤット 脚本 アンドレ・カイヤット 、アーマンド・ジャモット パスカル・ジャルダン 、モーリス・オーベルジュ 撮影 ロベール・クラベル 音楽 ピエール・ルイギ Pierre Louiguy 出演 シャルル・アズナヴール Charles Aznavour ジョルジュ・リヴィエール George Riviere ニコール・クールセル Nicole Courcel
2006.06.06
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1998年に住む青年のもとに届いた手紙は、なんと2000年に住む見知らぬ女性からのものだった・・・。不思議な時間のねじれによって生まれた恋の行方は・・・?・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2年という‘時’に隔てられたふたりが、不思議なポストを媒介にして心を通わせていく――なんとも瑞々しくて、気持が洗われるような恋。そしてロングショットや静けさが断然美しい作品でした。2000年の現在を生きるウンジュを演じるのは、この翌年製作された「猟奇的な彼女」で人気となったチョン・ジヒョン。1998年の過去に生きる男性ソンヒョ役はイ・ジョンジェです。イルマーレ(浜辺の家)を舞台に始まる、手紙のやりとり。過去にいる利点と、未来を知っている利点を持ったふたりが、互いに傷ついた心を自然と癒しあってゆくのですが...惹かれていくごとに会いたさが募るけれど、なかなか会えないもどかしさ。なんとも切ない関係が、時間軸の交差巧みに展開されていくので目が離せません。主演ふたりが、とにかく素敵。そこに淡い景色と構図の美しさもプラスされると、非の打ち所がないほど絵になる映画が出来上がりますね~ウンジュが過去を変えたいと思ってしまったがために、二人の恋は急展開を向かえ、ソンヒュの存在さえも脅かされることとなる後半。劇的すぎてしまった感のあるこのあたり、なにかしっくりこない部分もでてきます。ふたりの間にある2年という隔たりの解決の仕方は、好みな作品だっただけにちょっと残念でした。それはタブーでは? とか、未来は?今までは?と考えずにいれなくなるんですよ...性格でしょうか。全体としては好きでした。話の流れもスムーズで、雰囲気もしっとりしていて浸れます。イルマーレの佇まいがたまらなく魅力的なのも、作品の好感度を倍増させていますね~韓国映画の恋愛ものはやっぱ好きかも。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 監督 イ・ヒョンスン 製作 チャ・スンジェ 脚本 ヨ・ジナ 撮影 ホン・ギョンボ 音楽 キム・ヒョンチョル 出演 イ・ジョンジェ 、チョン・ジヒョン 、チョ・スンヨン ミン・ユンジェ 、キム・ジム 、チェ・ユニョン
2006.06.04
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結婚後四年、亮太郎と妻・文子の間には冷い倦怠の空気が流れている。些細なことでも諍いの耐えない毎日。そこに、新婚旅行に出かけた筈の姪のあや子が、突然尋ねてくるのだった―――。 倦怠期を迎えた夫婦の日常を淡々と描いた人情喜劇。タイトルの「驟雨」とはにわか雨のことだそうです。突然始まりすぐに終わる夫婦の喧嘩を、にわか雨に例えているのでしょうね。ある日、日曜日の過ごし方で言い争っていた夫婦のもとに、新婚旅行に行っているはずの姪が突然やってきて、旅先での夫の行動がどうしても許せないと愚痴を溢します。この先上手くやっていく自信がないと、泣きながら、、。いままさに喧嘩していた夫婦は、幻滅してもなにしても、結局は上手く機能していくものだとわかっているのですが。姪が帰ったあと、釈然としないままの生活が続きます。ご近所とのトラブルや、亭主のリストラ問題など、半世紀も前の作品ですが、今の時代にも充分通用する切なさやもどかしさがありました。とても余裕があるとはいえない暮らしに、先のことを考えると夫の胃は痛むばかり。家業を継いで裕福に暮らす級友に再会して、惨めな気分を味わうのにも、もう嫌気が差している。「田舎へ帰りたい、そうすれば希望が持てる――」その思いは日に日に募っていきますが、妻は反対。意見は食い違うばかり。社交的な夫と、篭りがちな大人しい妻。性格の違うふたりは、それゆえ喧嘩ばかりだけれど、自分にない部分を持っている相手だからこそ補ってもらえる面もいっぱいあります。この夫婦もまさにそう。今は少しずれているけど、またちゃんと上手くやっていける日がくるのがよくわかる。夫婦って難しいなぁ、、とつくづく感じます。おもしろいけど。ちょっとユーモラスに、切なく、温かく。観る者をその場に引きずり込んでいくような、魅力たっぷりの成瀬巳喜男ワールドは素晴らしいです。結局、新婚旅行で絶望を感じたはずの姪も元鞘に納まり、円満にやっていることを手紙で知らせてくる。監督の感じる夫婦の絆の深さを、さりげなくしっかり感じるラストなのでした。● ● ● ●監督 成瀬巳喜男 原作 岸田國士 脚本 水木洋子 音楽 斎藤一郎 出演 佐野周二 原節子 香川京子 小林桂樹 根岸明美 恩田清二郎
2006.06.02
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過去のトラウマから、マンネリで愛が醒めていくのを恐れプラクトニックを守ろうとする男と、自由奔放な女。パリを舞台に、魅かれ合いすれ違う若い男女の切なくも狂おしい愛を描く。 幼い頃、愛の続かない母親を見て育ったトラウマから、永遠の愛を信じることのできない青年アレクサンドル。彼にはもう5年も付き合っているフィアンセがいるのですが、そのトキメキのない惰性の付き合いに嫌気が差しながらも、式の準備は着々と進んでいる、そんなある日。大家の孫娘ファンファンと運命的な出会いを果たしたアレクサンドルは、激しく惹かれあうようになるのですが・・・フィアンセがいながら、「彼女(ファンファン)を永遠に愛したい。だからプラトニックを守る!」そう言い切ってしまう青年に、それはちょっと身勝手すぎやしませんか~なんて思うのですが、コメディチックな雰囲気なので許容範囲でしょうか。互いに愛し合っているのに、アレクサンドルの頑なな決意のせいで、ファンファンはキスさえしてもらえません。恋人同士のようにロマンチックなデートをしても、別れ際には「素晴らしい友情だ」なんていわれてしまう。。待てども待てども進展の無い関係に痺れをきらした頃、婚約者の存在まで知らされ、ふたりの仲は当然のことながらこじれる一方です。‘関係を持つと情熱が消えてしまう’そんなバカらしい強迫観念に捉われて、触れたくても決して触れない努力をするアレクサンドルの姿は、なんだか滑稽。キスさえしない彼に対して、苛立ちを隠せないファンファンは、いつしか大胆に挑発し始めるのですが...一向に変わらない彼の決意は鋼鉄の如し。物語が進むうちに、大切に思うからこそ一線を越えまいとする強い気持が、微笑ましくなるのが良いですね。ついに婚約を解消して(ここでもかなり身勝手!)、ファンファンの住むアパートの隣の部屋へ越してきたアレクサンドル。留守をいいことに、なんと! 壁をぶち壊し、壁をマジックミラーに換えてしまうのです。奔放で魅力的なファンファンの毎日を覗き見る奇妙な生活は、行き過ぎですが、愛し合っていればこそ、こちらも許容範囲でしょうか。ちょっとセクシーで可愛らしいソフィー・マルソー演じるファンファンには、女性でも目を奪われるんじゃないかなと思います。とてもチャーミング。「口づけそうで触れない・・なんとももどかしいふたり」監督は原作者である、作家のアレクサンドル・ジャルダン。もちろん処女作です。そのわりにはなかなか良くできていて、尺も短いので好ましく楽しく観られました。鏡越しの生活、二人を見守る祖母たちの優しいまなざしなど、全体的にほのぼのふんわりとした感じがいいですね~ラストのなが~い接吻は、さすがフランス ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・監督・原作・脚本 アレクサンドル・ジャルダン 製作 アラン・テルジアン 撮影 ジャン=イヴ・ル・メネール 音楽 ニコラ・ジョレル 出演 ソフィー・マルソー ヴァンサン・ペレーズ マリーヌ・デルテレム ジェラール・セティ ブルーノ・トデスキーニ
2006.06.01
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