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57.ミント・ジュレップ(Mint Julep)【現代の標準的なレシピ】 (容量単位はml)バーボン・ウイスキー(45~60)、ミントの葉(適量)、ミネラル・ウォーター(またはソーダ)(20~30)、シュガー・シロップ(またはパウダー・シュガー)2tsp、クラッシュド・アイス 【スタイル】ビルド 「ミント・ジュレップ」は、現代のバーでよく飲まれる人気カクテルのなかでも、最初期に誕生したことが確実な、古典的カクテルの一つです。ただし、その誕生の詳しい経緯や由来について伝える史料は、ほとんど伝わっていません。 「ジュレップ」というスタイルのドリンクは、古代ペルシャの「Gulab(グルアーブ)」(「バラの水」の意味)にルーツを持ち、ペルシャからフランスへ伝わり、さらに米南部へ移民したフランス人たちによって持ち込まれ、改良されていったと伝わります(出典:欧米のWeb専門サイト=複数)。「ジュレップ」とはアラビア語源の言葉で、「薬を飲みやすくするための甘い飲み物」のことですが、おそらくは移民フランス人たちが、自分たちが発音しやすい言葉として選び、定着させたのではないかと想像できます。 1800年頃には、米国内、とくにヴァージニア州北部のプランテーションでミント・ジュレップは広まっていて、1815年、英国海軍の艦長だったフレデリック・マリアット(Frederic Marryat)は「米南部の農園ではマデラワイン・ベースのミントの葉入りのドリンクが飲まれている」という記録を残しており(出典:欧米のWeb専門サイト)、この頃すでに「ミント・ジュレップ」の原型とも言えるドリンクが飲まれていたことは間違いありません。 現代では、通常バーボン・ウイスキーをベースにつくられるミント・ジュレップですが、誕生当初はポートワイン・ベースで飲まれることが多かったとも伝わります(出典:同)。その後、時代が進むとともに、ブランデー・ベース、ウイスキー・ベース、ラム・ベース、ジン・ベースなど様々なバリエーションが生まれていったようです。 「ミント・ジュレップ」が欧米のカクテルブックで初めて紹介されたのは、「カクテルの父」と言われる米国人バーテンダー、ジェリー・トーマス(Jerry Thomas)の「How To Mix Drinks」(1862年刊)です。このため、少なくとも19世紀前半頃には、酒場や一般家庭でのドリンクとしてある程度は普及していたと考えられています。トーマスのレシピは、「ブランデー1.5Wineglass、ミントの枝3~4本、シュガー(分量の言及なし)ミネラルウォーター(同)、クラッシュド・アイス、ジャマイカ・ラム1dash(最後に振る)、パウダー・シュガー(同)、飾り=ベリー類、オレンジ・スライス、生ミントの葉」となっています。 なお、上記トーマスのカクテルブックには、ミント・ジュレップのほかにも、その原型とも言われる「ジョージアン・ジュレップ(Goergian Julep)」(ジョージアン・ミント・ジュレップとも言う)というカクテルも収録されています。ベースはブランデー(コニャック)で、ピーチ・ブランデーも使いますが、基本的なコンセプトは同じです(※同書では、ほかにもジン・ジュレップ、ウイスキー・ジュレップ、パイナップル・ジュレップが収録されています)。 現代のバー業界でも意外と知られていないことですが、以下に紹介するように、19世紀~20世紀初頭までは、欧米ではミント・ジュレップと言えば、ブランデー(コニャック)・ベースが一般的でした。ウイスキー・ベースのミント・ジュレップがお目見えするようになるのは、1910年代以降です。では、1880~1950年代の主なカクテルブックは「ミント・ジュレップ」をどう取り扱っていたのか、ざっとみておきましょう。・「Bartender’s Manual」(ハリー・ジョンソン著、1882年刊)米 コニャック2分の1Wineglass、ミントの枝3~4本、水またはソーダ2分の1Wineglass、シュガー1tsp クラッシュド・アイス (※「このドリンクは米国以外の地域でも知られている」との記述あり)・「American Bartender」(ウィリアム・T・ブースビー著、1891年刊)米 コニャック1jigger(45ml)、ミント(分量の言及なし)、シュガー(同)、ミネラルウォーター(同)、クラッシュド・アイス、ジャマイカ・ラム1dash(最後に振る)、シュガーにディップしたミントを飾る。(※「Brandy Julep」の名で登場。「Mint Julep」については「Brandy Julepと同じもの」と紹介)・「Modern American Drinks」(ジョージ・J ・カペラー著、1895年刊)米 ブランデー2分の1jigger、ラム2分の1jigger、シュガー1.5tsp、ミントの枝数本、ミネラルウォーター少々、クラッシュド・アイス、フルーツやミントを飾る。(「Mint Julep Southern Style」との名で収録)。・「Dary's Bartenders' Encyclopedia」(ティム・ダリー著、1903年刊)米 ブランデー1.5Glass、シュガー1tsp、ソーダ2分の1Wineglass、ミントの枝4~5本、クラッシュド・アイス、ジャマイカ・ラム1dash(最後に振る)、パウダー・シュガー(同)・「Bartenders Guide: How To Mix Drinks」(ウェーマン・ブラザース編、1912年刊)米 ブランデー1.5Glass、パウダー・シュガー3tsp、ミネラルウォーター1.5tsp、ミントの枝3~4本、クラッシュド・アイス、ジャマイカ・ラム1dash(最後に振る)、飾り=ベリー類、オレンジ・スライス、生ミントの葉・「173 Pre-Prohibition Cocktails)」 & 「The Ideal Bartender」(トム・ブロック著、1917年刊、2001年&2006年再刊)米 ブランデー1jigger、シュガー1tsp、ミネラルウォーター4分の3Wineglass、生ミントの枝3~4本、クラッシュド・アイス、飾り=フルーツ、ミントの枝 (※「Brandy Julep」の名で収録。「Mint Julep Kentucky Style」という名のカクテルも収録しているが、バーボン・ウイスキー2jigger、角砂糖1個、ミネラルウォーター15ml、クラッシュド・アイス、生ミントというレシピ。ミントは潰さないと言及している)。・「ABC of Mixing Cocktails」(ハリー・マッケルホーン著、1919年刊)英(バーボンウイスキー・ベースのミント・ジュレップが活字になった初めての例か?)。 レシピは文章スタイルで紹介されています。原著の通り記せば、「シュガー2tsp、ミネラル・ウォーターまたはソーダ2分の1Wineglass、生ミントの小枝3~4本を(タンブラーの底で)香りが十分出るまでつぶし、ミントは取り出す。次にバーボン・ウイスキーGlass2杯分を加える(※Glassのサイズについての言及はありません)。そこに、細かく削った氷(原文では「fine shaved ice」)をタンブラーいっぱいに入れて、グラスに霜が付くまでよくステアする。最後にミントの小枝を刺し、オレンジやレモン、パイナップルのスライスとチェリーをトップに飾る」(※1986年刊の復刻改訂版では、飾りは生ミントだけになっています)。・「The Savoy Cocktail Book」(ハリー・クラドック著、1930年刊)英 ブランデー2分の1、ピーチ・ブランデー2分の1、シュガー1tsp、ミントの葉約10枚、クラッシュド・アイス (※バーボンまたはライ、カナディアン・ウイスキー・ベースのミント・ジュレップも収録されているが、名前は「Southern Mint Julep」)・「The Artistry Of Mixing Drinks」(フランク・マイアー著 1934年刊)仏 バーボン・ウイスキー1Glass、シュガー1tsp、ミントの枝5~6本、クラッシュド・アイス、飾り=スライス・レモン、生ミント・「The Official Mixer's Manual」(パトリック・ギャヴィン・ダフィー著、1934年刊行)米 バーボン2igger、パウダー・シュガー1tsp、生ミント、ソーダ、クラッシュド・アイス・「The Old Waldorf-Astoria Bar Book」(A.S.クロケット著 1935年刊)米 ウイスキー(バーボンかどうかの言及なし)1jigger、シュガー0.5tsp、ミネラルウォーター1pony(30ml)、ミントの枝3本、クラッシュド・アイス、飾り=生ミント・「Mr Boston Bartender’s Guide」(1935年初版刊)米 バーボン・ウイスキー2.5onz(75ml)、パウダー・シュガー1tsp、ミントの枝4本、ミネラルウォーター2tsp、クラッシュド・アイス、飾り=オレンジ・スライス、レモン・スライス、パイナップル・スライス、チェリー、生ミント・「Café Royal Cocktail Book」(W.J.ターリング著 1937年刊)英 バーボン・ウイスキー1Glass、パウダー・シュガー1.5tsp、ミントの枝4本、クラッシュド・アイス、飾り=生ミント・「Trader Vic’s Book of Food and Drink」(ビクター・バージェロン著 1946年刊)米 バーボン・ウイスキー(分量の言及なし)、パウダー・シュガー1.5tsp、ミントの枝6~7本、クラッシュド・アイス、飾り=シュガー・コーティングした生ミント・「Esquire Drink Book」(フレデリック・バーミンガム著、1956年刊)米 バーボン・ウイスキー1measure、ミネラルウォーター2tsp、角砂糖1個、ミント数本(あらかじめグラス内でつぶしておく)、クラッシュド・アイス、飾り=生ミント ミント・ジュレップは1875年から続く伝統あるケンタッキー・ダービーで、公式ドリンクに認定されています。今日でも、会場であるチャーチルダウンズ競馬場や前夜祭では、このカクテルがこぞって飲まれているそうです。なお、このミント・ジュレップに使われるダービー公認バーボンには「アーリー・タイムズ」または「ウッドフォード・リザーブ」が指定されているそうです(出典: 欧米の専門サイト他)。 「ミント・ジュレップ」は日本にも1900年代後半に伝わりましたが、(理由ははっきりしませんが)当初はほとんど普及しませんでした。これには氷が貴重なのに加えて、生ミントも手に入りにくかったことが背景にあったと思われます(国産の生ハッカの葉で代用したレシピもあったそうですが…)。1900年代の文献で一度紹介された後は、確認できた限りでは、1950年代まで活字になることはありませんでした。 日本国内のバーで本格的に認知されるようになったのは、1960年代以降です。ただし、この当時でも生ミントが稀少で高価だったためか、当初はミント・リキュールで代用することも目立ちました。昨今のように、生ミントを使ったミント・ジュレップがバーで普通に飲めるようになったのは、うらんかんろの個人的な記憶からしても、1980年代になってからです。現代では、日本でもほぼ年間を通じて生ミントが手に入り、バーでもさほど苦労なく頼めるようになりました。私たちは本当に幸せな時代に生きていると思います。 【確認できる日本初出資料】「洋酒調合法」(高野新太郎編、1907年刊)。レシピは、「ブランデー1.5Glass、シュガー1tsp、生ミント3本、ミント3~4本、クラッシュド・アイス、オレンジの皮、ジャマイカ・ラム少々(最後にフロート)」。欧米での初期のレシピ同様、ラムを少し加えるつくり方になっています。・こちらもクリックして見てねー!→【人気ブログランキング】
2017/06/30
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Bar UKマスターからのお知らせです。****************************皆さま、すでにお伝えしていますように、本日29日(木)から1週間(2日の日曜は除く)は、バーUK開業3周年「感謝ウイーク」です。お一人様のご飲食代金に応じて、以下のような「感謝割引サービス」を実施いたします(※通常の毎月の「感謝デー」=1日、10日、20日=より、割引率はさらにアップしております)。 2000円以上=10%OFF、3000円以上=15%OFF、 4000円以上=20%OFF、5000円以上=25%OFF、 6000円以上=30%OFF、7000円以上=35%OFF皆さまのお越しを心よりお待ち申し上げます(なお、「感謝ウイーク」中は、時間帯によっては混み合うこともあるかと存じますので、3人以上のグループでのご来店の際は、事前に一度お電話を頂ければ幸いです)。【Bar UK】大阪市北区曽根崎新地1-5-20 大川ビルB1F 電話06-6342-0035 営業時間 → 平日=午後4時~10時半(金曜のみ11時まで)、土曜=午後2時~8時半、定休日=日曜・祝日、別途土曜に月2回、水曜に月1回不定休(月によっては曜日変更有り)。店内の基本キャパは、カウンター7席、テーブルが一つ(4~5席)。オープン~午後7時まではノーチャージ、午後7時以降はサービス料300円Bar
2017/06/29
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Bar UKマスターからのお知らせです。皆さま、あす28日(水)のバーUKは、「月イチ水曜店休」のためお休みさせて頂きます。勝手を申しますが、何卒ご了承ください。なお、すでにお伝えしていますように、29日(木)から1週間(2日の日曜は除く)は、バーUK開業3周年の記念企画として、お一人様のご飲食代金に応じて、以下のような「感謝割引サービス」を実施いたします(※通常の毎月の「感謝デー」=1日、10日、20日=より、割引率はさらにアップしております)。 2000円以上=10%OFF、3000円以上=15%OFF、 4000円以上=20%OFF、5000円以上=25%OFF、 6000円以上=30%OFF、7000円以上=35%OFF どうぞ、皆さまお誘いあわせのうえ、お気軽にご利用くださいませ。【Bar UK】大阪市北区曽根崎新地1-5-20 大川ビルB1F 電話06-6342-0035 営業時間 → 平日=午後4時~10時半(金曜のみ11時まで)、土曜=午後2時~8時半、定休日=日曜・祝日、別途土曜に月2回、水曜に月1回不定休(月によっては曜日変更有り)。店内の基本キャパは、カウンター7席、テーブルが一つ(4~5席)。オープン~午後7時まではノーチャージ、午後7時以降はサービス料300円
2017/06/27
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【再度のお知らせです】今週の土曜日7月1日、バーUKはお蔭様で、開業3周年を迎えます。 このため、皆さまのこれまでのご支援・ご愛顧に感謝して、6月29日(木)~7月5日(水)までの1週間、お一人様のご飲食代金に応じて、以下のような「感謝割引」を実施いたします。 (※通常の毎月の「感謝デー」=1日、10日、20日=より、割引率はさらにアップしております)。 2000円以上=10%OFF、3000円以上=15%OFF、 4000円以上=20%OFF、5000円以上=25%OFF、 6000円以上=30%OFF、7000円以上=35%OFF どうぞ、皆さまお誘いあわせのうえ、お気軽にご利用くださいませ。【Bar UK】大阪市北区曽根崎新地1-5-20 大川ビルB1F 電話06-6342-0035 営業時間 → 平日=午後4時~10時半(金曜のみ11時まで)、土曜=午後2時~8時半、定休日=日曜・祝日、別途土曜に月2回、水曜に月1回不定休(月によっては変更されることも有り)。店内の基本キャパは、カウンター7席、テーブルが一つ(4~5席)。オープン~午後7時まではノーチャージ、午後7時以降はサービス料300円
2017/06/26
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56.ミリオネア(Millionaire) レシピは、ベースが違う様々なものが伝わっていますが、現在も生き残っているのは主に以下の3種類(ウイスキー・ベース、ラム・ベース、ジン・ベース)です(容量の単位はml。スタイルはいずれもシェイクです)。【レシピ1】バーボン(またはライ)・ウイスキー(60)、ホワイト(またはオレンジ)・キュラソー2dash、グレナディン・シロップ4dash、卵白(1個分)【レシピ2】ラム(15)、スロー・ジン(15)、アプリコット・ブランデー(15)、ライム・ジュース(15)、グレナディン・シロップ1dash【レシピ3】ジン(40)、ペルノー(またはアブサン)(20)、アニゼット1dash、卵白(1個分) 20世紀初め(1900~1910年代)に、英国で誕生したと伝わる代表的な古典的なカクテルの一つです。カクテル名は直訳すれば、「百万長者」というめでたい名前ですが、誕生の詳しい経緯や命名の由来は、残念ながら定かではありません。 欧米のカクテルブックで「ミリオネア」が紹介されたのは、現時点で確認できた限りでは、英国で1919年に出版された古典的名著「ABC of Mixing Cocktails」(ハリー・マッケルホーン<Harry MacElhone>著)が最初です。そのレシピはウイスキー・ベースで、「ライ・ウイスキー3分の2、卵白1個分、グレナディン・シロップ1tsp、オレンジ・キュラソー2dash(シェイク)」となっています。 誕生の時期については、米国の禁酒法時代<1920~33>と紹介する海外の専門サイトもいくつか見受けられますが、上記の「ABC of …」に掲載されていることからも、少なくとも1910年代後半には登場していたことは間違いありません。また誕生の場所については、「ロンドンのリッツ・ホテルのバーで考案された」とも言われていますが、裏付ける史料等は伝わっていません。 著名なカクテル研究家のデヴィッド・ワンドリッチ氏は「1925年までのある時期に(ロンドンの)リッツ・ホテルで考案された」(出典:http://www.esquire.com/food-drink/drinks/recipes/a3759/millionaire-drink-recipe/)と書いています。しかし、マッケルホーン自身が「ABC of …」の中で「ロンドンのリッツ・ホテルのバーのレシピを参考にした」と付記していることからも、少なくとも1910年代後半には、この同ホテルでウイスキー・ベースの「ミリオネア」が提供されていたことは間違いないでしょう。 さて、この「ミリオネア」は、1920~30年代から、ウイスキー・ベース以外にも、ラム・ベースや、ジン・ベースなど複数の違うベースのレシピが存在してきた変わったカクテルとしても知られています。同じ名前のカクテルなのに、なぜこのように様々なベースを使ったバリエーションが生まれていったのかはよく分かりません(今後の研究課題です)。 参考までに、「ABC Of …」以外の1920~1950年代の主なカクテルブックで「ミリオネア」のレシピがどうなっているか、ざっと見ておきましょう。・「Cocktails: How To Mix Them」(Robert Vermeire著、1922年刊)英 ライ・ウイスキー3分の1ジル(【注】1ジル=120ml)、グレナディン・シロップ6分の1ジル、キュラソー2dash、卵白1個分(シェイク)・「The Savoy Cocktail Book」(Harry Craddock著、1930年刊)英(ラム・ベース、ジン・ベースの2種を紹介。ウイスキー・ベースのものは収録せず) ミリオネアNO.1=ジャマイカ・ラム3分の1、アプリコット・ブランデー3分の1、スロー・ジン3分の1、グレナディン・シロップ1dash、ライム・ジュース1個分(シェイク) ミリオネアNO.2=ドライジン3分の2、アブサン3分の1、アニゼット1dash、卵白1個分(シェイク)・「Cocktails」(Jimmy of the Ciro's Club著、1930年刊)米 ライ・ウイスキー3分の2、グレナディン・シロップ3分の1、キュラソー2dash、卵白1個分(シェイク)・「World Drinks and How To Mix Them」(William Boothby著、1934年復刻版)米(ベースの違う「ミリオネア」3種と、「ミリオネア・ロイヤル」と称するカクテルを紹介。スタイルはいずれもシェイク) ミリオネアNO.1=ウイスキー2分の1ジガー、グレナディン・シロップ4分の1ジガー、キュラソー2dash、卵白半個分 ミリオネアNO.2=ジン2分の1ジガー、アブサン4分の1ジガー、アニゼット1dash、卵白半個分 ミリオネアNO.3=ラム3分の1、アプリコット・ブランデー3分の1、スロー・ジン3分の1、グレナディン・シロップ1dash、レモン・ジュース1tsp ミリオネア・ロイヤル=ウイスキー2分の1ジガー、グレナディン・シロップ4分の1ジガー、アブサン2dash、キュラソー1dash、卵白半個分・「The Artistry of Mixing Drinks」(Frank Meier著、1934年刊)仏 ライ・ウイスキー2分の1、ペルノー(アブサン)1dash、グレナディン・シロップ1dash、卵白半個分(シェイク)・「Mr Boston Bartender's Guide」(1935年初版刊)米 ライ(またはバーボン)・ウイスキー45ml、キュラソー15ml、グレナディン・シロップ4分の1tsp、卵白1個分(シェイク)・「The Waldorf-Astoria Bar Book」(A. S. Crockett著、1935年刊)米(※「マティーニ」のバリエーションとして紹介している珍しい例) ジン3分の2、ドライ・ベルモット3分の1、グレナディン・シロップ on Top、レモン・ピール(ステア)・「The Café Royal Cocktail Book」(W. J. Tarling著、1937年刊)英 ジャマイカ・ラム3分の1、アプリコット・ブランデー3分の1、スロー・ジン3分の1、グレナディン・シロップ1dash、ライム・ジュース1個分(シェイク)・「The Stork Club Bar Book」(Lucius Beebe著、1946年刊)米(スロー・ジンをベースとする珍しいレシピ) スロー・ジン約53ml(1+4分の3オンス)、ジャマイカ・ラム15ml、アプリコット・ブランデー15ml、グレナディン・シロップ1dash(シェイク)・「Trader Vic's Bartender's Guide」(Victor Bergeron著、1947年刊)米(※なんと6種類もの「ミリオネア」を収録。スタイルはいずれもシェイク) ミリオネアNO.1=バーボン・ウイスキー4分の3オンス、グレナディン・シロップ4分の1オンス、キュラソー2dash、卵白1個分 ミリオネアNO.2=バーボン・ウイスキー1オンス、ペルノー4分の1オンス、グレナディン・シロップ4分の1オンス、キュラソー1dash、卵白1個分 ミリオネアNO.3=ジン1オンス、ペルノー(アブサン)0.5オンス、アニゼット1dash、卵白1個分 ミリオネアNO.4=プリマス・ジン1オンス、スイート・ベルモット0.5オンス、グレナディン・シロップ1tsp、パイナップル・ジュース1tsp、卵白1個分 ミリオネアNO.5=ジャマイカ・ラム0.5オンス、アプリコット・ブランデー0.5オンス、スロー・ジン0.5オンス、グレナディン・シロップ1dash、ライム・ジュース1個分 ミリオネアNO.6=スロー・ジン1.5オンス、ジャマイカ・ラム0.5オンス、アプリコット・ブランデー0.5オンス、グレナディン・シロップ1dash・「The Official Mixer's Manual」(Patrick Gavin Duffy著、1948年刊)米(スタイルはいずれもシェイク) ミリオネアNO.1=ジン3分の2、ペルノー(アブサン)3分の1、アニゼット1dash、卵白1個分 ミリオネアNO.2=ジャマイカ・ラム3分の1、アプリコット・ブランデー3分の1、スロー・ジン3分の1、グレナディン・シロップ1dash、ライム・ジュース1個分 ミリオネアNO.3=バーボン・ウイスキー1ジガー、キュラソー3分の1ジガー、グレナディン・シロップ1dash、卵白1個分・「Esquire Drink Book」(Frederic Birmingham著、1956年刊)米 ウイスキー1.5オンス、キュラソー0.5オンス、グレナディン・シロップ1dash、卵白1個分(シェイク) 以上のように欧米では歴史的に、「ミリオネア」のベースのお酒はウイスキー・ベース、ラム・ベース、ジン・ベース他のものが乱立してきました。現在、英国や米国で発行されているカクテルブックのみならず、バーの現場でも「ミリオネア」と言えば、この主な3種類をベースにしたものがそれぞれつくられています。 これも参考までに、グーグルで「Millionaire Cocktail」で検索し1頁目に表示された10件の欧米の専門サイトでは、7件がウイスキー・ベース、3件がラム・ベースでした。しかしカクテルブック等では、今なおジン・ベースのミリオネアも紹介されています。結局のところ、どれが正しく、どれが間違いというものではなく、どのお酒をベースにするかは、そのバーテンダーやお客様の好みによるところが大きいのかもしれません。 「ミリオネア」は、日本にも比較的早く1920年代には伝わりました。当初はウイスキー・ベースの方が主流でしたが、現在のバー・シーンでは、ラム・ベースの方が比較的多くつくられているようです。 ちなみに、最新の「NBAオフィシャル・カクテルブック」(柴田書店刊)ではラム・ベースをメインとして紹介していますが、ウイスキー・ベースのものも「主に米国で飲まれている」との付記して収録しています。【確認できる日本初出資料】「コクテール」(前田米吉著、1924年刊)。※レシピはウイスキー・ベースで、「ウイスキー3分の2オンス、グレナディン・シロップ3分の1オンス、キュラソー1dash、ガム・シロップ2dash、卵白1個分。シェイクしたる後、グラスに注ぎ、アブサン少々を加えてすすめる」となっています。・こちらもクリックして見てねー!→【人気ブログランキング】
2017/06/25
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Bar UKマスターからのお知らせです。*************************** 皆さま、遅くなりましたが、バーUKの7月の店休日(予定)をお知らせいたします。 現時点では、日曜・祝日のほかに、8日(土)、25日(火)=臨時休業=にお休みを頂く予定です。 ※なお月~土は、8人以上なら貸し切り営業(原則3時間以内)も可能です。マスターまでお気軽にお問合せください。 以上、何卒よろしくお願いいたします。【Bar UK】 大阪市北区曽根崎新地1-5-20 大川ビルB1F 電話06-6342-0035 営業時間 → 平日=午後4時~10時半(金曜のみ11時まで)、土曜=午後2時~8時半、定休日=日曜・祝日、別途土曜に月2回、平日に月1回不定休。店内の基本キャパは、カウンター7席、テーブルが一つ(4~5席)。オープン~午後7時まではノーチャージ、午後7時以降はサービス料300円
2017/06/24
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Bar UKマスターからのお知らせです。 来週の土曜日7月1日、バーUKはお蔭様で、開業3周年を迎えます。 このため、皆さまのこれまでのご支援・ご愛顧に感謝して、6月29日(木)~7月5日(水)までの1週間、お一人様のご飲食代金に応じて、以下のような「感謝割引」を実施いたします。 (※通常の毎月の「感謝デー」=1日、10日、20日=より、割引率はさらにアップしております)。 2000円以上=10%OFF、3000円以上=15%OFF、 4000円以上=20%OFF、5000円以上=25%OFF、 6000円以上=30%OFF、7000円以上=35%OFF どうか、皆さまお誘いあわせのうえ、お気軽にご利用くださいませ。こちらもクリックして見てねー!→【人気ブログランキング】
2017/06/20
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一昨日に引き続き、Bar UK写真日記です(By うらんかんろ)。 「水曜日はウヰスキーを飲む日」活動に参加して約2カ月、お客様にもそれなりに定着してきたようです。近頃はこんなサービス・ボトルが登場しています。今後もいろんなボトルがお目見えするでしょう。楽しみですね。 あるお客様から誕生日のプレゼントに、こんな素敵な盆栽を頂き、マスターは大喜びです。ウイスキーと額(絵)ばかりが目立つバーUKの店内に、「和」の雰囲気と癒しを与えてくれますね。 土曜恒例の営業終了後の”お勉強”。マスターはこの日、中崎町のあるバーへ。そこで、旧知の元「The Whisky World」発行人、Wさんとばったり遭遇。Wさんは今は「Bar&Pub&Izakaya」という雑誌の編集発行人をされています。そのうちバーUKも紹介されるかもしれませんね。 世は「プレミアムジン・ブーム」とも言われていますが、バーUKにこのほど、人気の京都ジン「季の美」の限定ボトル「季のTEA」が入荷しました。ボタニカルでとくにお茶(碾茶と玉露)を利かせた超個性的なジンです。限定1本の入荷なので、お見逃しなく! 同一銘柄で年数違いの「並行テイスティング」する場合、バーUKではグレンフィディックがおすすめです。12年、15年、18年、21年、30年のほか限定の19年(赤ワイン樽熟成)もありますよ。ぜひ一度お試しを。 マスターが大切に育てているブドウ「カベルネソーヴィニョン」。今年は去年より多い5房も実が成っていますが、6月に入って実もだいぶ膨らんできました。今年はどんなお味か、収穫が楽しみですね。収穫できたら、今年も期間限定で少しお客様にもサービスでお出しするそうです。 マスターの大好きなウイスキー銘柄の一つ「ボウモア(Bowmore)」に、新しいボトルが仲間入りです。「ヴォルト(Vault)」。同蒸溜所で一番優れた原酒が生まれる「一番貯蔵庫(No.1 Vault)」にその名が由来する限定モルトです。バーボン樽熟成の、とても塩辛い味わいです。変わったボウモアが飲みたい方にお勧めですよ。 マスターはこの日、ニッカのプレミアムジン&ウオッカのセミナーに参加しました。最近ホワイト・スピリッツ市場が活気づいていますが、このニッカの新商品、マスターはとくに「トウモロコシの甘みが素晴らしい」ウオッカの方がとても気に入ったそうです。セミナー終了後には、講師の佐久間正チーフブレンダーとちゃっかり2ショット写真を撮ったマスターでした。 マスターは店休日のこの日、「テキーラ・フェスタ・イン大阪」(@ビルボードライブ大阪)にお邪魔しました。4回目となるイベントらしいですが、マスターは初めての参加です。会場は満員の盛り上がりでした。テキーラも最近は若い世代の人たちの間でとても人気が出てきているようで、嬉しいことです。バーUKではまだ6種類くらいしかテキーラを置いていませんが、飲む方が増えてくれば、今後はさらに充実してくるかもしれませんね。こちらもクリックして見てねー!→【人気ブログランキング】
2017/06/19
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55.ミリオン・ダラー(Million Dollar)【現代の標準的なレシピ】(容量単位はml)ジン(45)、スイート・ベルモット(15)、パイナップル・ジュース(15)、グレナディン・シロップ2tsp、卵白(1個分)、飾り=パイナップル・スライス&チェリー 【スタイル】シェイク 「ミリオン・ダラー」は、少なくとも1920年までには誕生していた古典的カクテルの一つです。欧米の古いカクテルブックでもよく収録されていますが、残念ながら、誕生の経緯や考案者などは、現在でもよく分かっていません。 日本のカクテルブックではよく、「(ミリオン・ダラーは)1894年頃、横浜グランドホテルのバーで誕生した。考案者はカクテル『バンブー』を考案したことで知られる同ホテルの支配人&バーテンダー、ルイス・エッピンガー氏(Louis Eppinger)」と紹介されていますが、これを裏付ける文献史料は伝わっておらず、真偽の程はよく分かりません。 一方で、海外の専門サイト等では「1915年頃、シンガポールのラッフルズ・ホテルのメニューには登場していた。作者はあのシンガポール・スリングを考案したニャン・トン・ブーン氏」(出典:欧米のWeb専門サイト: diffordsguide.com/cocktails/récipe/1319/million-dollar-cocktail/ ほか)と紹介している例も見受けられますが、(海外でも)エッピンガー氏考案説を支持する見解も多く、決着はついていません。 ただ、様々な文献によれば、少なくとも1910年代にはアジア地域でそれなりに普及していたようです(ただし、ラッフルズ・ホテルのレシピには、冒頭の材料に加えて、ドライ・ベルモット、アンゴスチュラ・ビタースが加わります)。欧州へは、おそらくはアジアから外国航路の船(で働くバーテンダーや乗客)を通じて伝わったのではないかと想像されます。 「ミリオン・ダラー」が欧米のカクテルブックで初めて紹介されたのは、現時点で確認できた限りでは、1930年に出版された「サヴォイ・カクテルブック(The Savoy Cocktail Book)」(ハリー・クラドック著)です。なので、少なくとも20年代には欧州に伝わっていたことは間違いありません。サヴォイのレシピは、「プリマス・ジン3分の2、スイート・ベルモット3分の1、卵白1個分、パイナップル・ジュース1tsp、グレナディン・シロップ1tsp(シェイク)」となっています。 参考までに、「サヴォイ・カクテルブック」以外の1930~40年代のカクテルブックに登場する「ミリオン・ダラー」のレシピをざっと見ておきましょう。・「The Artistry Of Mixing Drinks」(フランク・マイアー著 1934年刊)仏 ジン2分の1、卵白半個分、パイナップル・ジュース1tsp、グレナディン・シロップ1dash(シェイク) ※ベルモットは使わないレシピになっています。・「The Official Mixer's Manual」(パトリック・ダフィー著、1934年刊)米 イングリッシュ・ジン3分の2、スイート・ベルモット3分の1、卵白1個分、パイナップル・ジュース1tsp、グレナディン・シロップ1tsp(シェイク)・「Mr Boston Bartender’s Guide」(1935年初版刊)米 ジン1.5オンス、スイート・ベルモット4分の3オンス、卵白1個分、パイナップル・ジュース2tsp、グレナディン・シロップ1tsp(シェイク)・「Café Royal Cocktail Book」(W.J.ターリング著 1937年刊)英 サヴォイ・レシピと同じ。・「Trader Vic’s Book of Food and Drink」(ビクター・バージェロン著 1946年刊)米 ジン1.5オンス、スイート・ベルモット4分の3オンス、卵白1個分、パイナップル・ジュース2tsp、グレナディン・シロップ1tsp(シェイク) 「ミリオン・ダラー」は、日本では1920年代にはすでにメジャーなカクテルになっていて、当時のカクテルブックにも登場しています。なお横浜グランドホテルは、1923年の関東大震災で大きな被害を受けたため廃業しましたが、その流れをくむ現在の横浜ニューグランド・ホテルのバー「シーガディアン2」では、「ミリオン・ダラー」は今日でもなお、定番の人気カクテルとなっています。 余談ですが、横浜グランドホテル出身で、その後銀座・ライオンでバーテンダーをつとめた業界の大先輩、浜田昌吾氏(1971年に出版された「図解カクテル」の著者。※名前は「晶吾」という表記も)は、このミリオン・ダラーの普及に貢献したことで有名です。浜田氏はその自著で、「カフェー華やかなりし頃、大正時代の文化人が盛んにこのカクテルを飲み、花柳界でも話題になりほどの流行ぶりだった」と綴っています。 ただし、浜田氏のレシピは、「オールドトム・ジン3分の1、パイナップル・ジュース3分の1、卵白1個分、グレナディン・シロップ2tsp、レモン・ジュース1tsp、パイナップル・スライスを飾る(シェイク)」で、なぜか(上記フランク・マイヤーの著書と同様)ベルモットは使わないレシピとなっています(その後の国内外でのレシピの変遷を見ると、やはり定着していったのは「サヴォイ・レシピ」です)。【確認できる日本初出資料】「カックテール」(安土禮夫著、1929年刊)。そのレシピは、「オールドトム・ジン2分の1、スイート・ベルモット2分の1、卵白1個分、パイナップル・ジュース2dash、グレナディン・シロップ2dash(シェイク)」となっています。・こちらもクリックして見てねー!→【人気ブログランキング】
2017/06/18
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3週間ぶりのBar UK写真日記です(By うらんかんろ)。 マスターはこの日、バーUKの”ハウス・ウイスキー”でもあるデュワーズ(Dewar's)のセミナーに参加しました。いろいろと収穫はあったそうですが、店のバックバーの棚のデュワーズ・コレクションの写真を見せ、講師のお二人(Euan Auldさん、Goergie Bellさん)とも2ショット写真を撮れたことに、とても満足そうでした。 ビートルズの傑作アルバム「サージェント・ペパーズ・ロンリーハーツクラブ・バンド」発売50周年の6月1日、バーUKでも「サージェント・ペパーズ・デイ」のイベントを開催。BGMは終日、このアルバムをエンドレスで流しました。 マスターは日曜日のこの日、年に一度の大イベント「ウイスキー・フェスティバル・イン大阪」へ。お気に入りのモルト「ベンネビス185周年記念ボトル」も見つけられたようです。ボトルは早速、店で提供されています。 バーUKのお隣にこのほど、スープ・カレーの店がランチタイム限定でオープンしました(夜はスペイン・バルのパーティー・ルームになっています)。マスターも早速味見にお邪魔しましたが、「コクがたっぷりあって、後を引く辛さと旨さ」だったそうです。という訳で、カレー店のお客様にもバーUKをアピールしよう(笑)と、宣伝チラシ&名刺の入った袋を店のドアにぶら下げることにしました。さて効果のほどは? バーUKのジャパニーズウイスキー・コレクションの一角を占める「あかし」に新しいボトルが仲間入りしました。シェリー樽熟成の8年ものです。最近、急速に人気が高まっている「あかし」のモルトは、熟成年数が若くてもボディがしっかりして、豊潤なのが特徴です。ぜひお試しください。 お客様のいない、比較的ヒマな時間、最近のマスターは本で勉強に励んでいます。いま読んでいるのは、この2冊。どちらもとても仕事の参考になるそうです。ちなみに、ウイスキーがメインのバーUKですが、シェリーも5種類置いていますし、マスターは、カクテルも(店に材料があるものは)出来るだけお客様の要望に応じています。ぜひ、バーUKをその日の気分でいろんな使い方をしてください。こちらもクリックして見てねー!→【人気ブログランキング】
2017/06/17
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Bar UKマスターからのお知らせです。****************************** Bar UK店内では、故・成田一徹氏の切り絵原画小作品を、引き続き期間限定で好評販売中(Office Ittetsu主催)です。 作家没後、原画が販売されるのは事実上初めてで、かつ最後の機会になるかと思います。言うまでもありませんが、切り絵の原画なので、すべて1点ものです。この貴重な機会をお見逃しなく! 店内には約70点の在庫がございます(今後も作品は随時追加されていきます)。ぜひ現物を直接ご覧くださいませ。 現時点での販売作品のリストや価格等は、こちらに。 ※なお、今回販売される小作品は、概ねB5サイズ以下のものが中心です。内容は、小説やエッセイの挿絵をはじめとして、静物、人物、風景、動植物、祭事、時代もの等多岐に渡っていますが、バーやお酒をテーマにしたものはごく一部となっております。何卒ご了承ください。 また、遠方の方で、「お店には行けないけれど、WEBでの販売原画リストを見たうえで購入したい」という方は発送もいたします(発送費別途頂きます)。マスターまでメールでお気軽にお尋ねください( アドレスは→ arkwez@gmail.com )。
2017/06/16
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54.マティーニ(Martini)【現代の標準的なレシピ】(単位はml ) ジン(45〜60)、ドライ・ベルモット(5~15)、アンゴスチュラ・ビタース1dash、レモンピール、オリーブ(飾り) 【スタイル】ステア ※誕生当初はスイート・ベルモットを使う甘口レシピが主流でした。ジンとベルモットの比率は時代とともにドライ化の傾向が強まり、かつては3:1~4:1くらいが主流だったのが、今日では、5:1~9:1のようなエクストラ・ドライが好まれるような時代になっています。 ◆当初は ジン+スイート・ベルモット マティーニは「カクテルの王様(The King Of Cocktails)」と称されるほど有名なカクテルです。しかし、誰がいつごろ考案したかについては、確実な資料はほとんど伝わっておらず、どう発展していったのか(改良されていったか)についても、今日でもなお多くの論争があります。 「バーテンダーが100人いれば100通りのレシピがある」とも言われるマティーニには、現代でも「絶対的なレシピ」というものは存在しません。いちおう、「NBAバーテンダーズ・バイブル」と「HBAバーテンダーズ・マニュアル」で現代の標準的なレシピを確認しておきますと、レシピは、「ジン(45~50ml)、ドライ・ベルモット(10~15ml)、オレンジ・ビタース1dash、レモンピール、オリーブ(飾り)、ステア・スタイル」となっています(オレンジ・ビターズの代わりにアンゴスチュラ・ビターズを使うレシピも)。 さて、マティーニの原型となったドリンクとしては、数多くの文献は、1860年代初頭、サンフランシスコのオクシデンタル・ホテル(The Occidental Hotel)のバーで伝説的なバーテンダーだった、ジェリー・トーマス(Jerry Thomas)による「マルチネス(Martinez)・カクテル」を挙げます。このカクテルをベースにして、その後さまざまなバーテンダーが関わり、発展してきたと伝わっています(出典:Wikipedia英語版)。 ちなみに、トーマスによる「マルチネス・カクテル」のオリジナル・レシピは、「オールドトム・ジン1pony(30ml)、スイート・ベルモット1Grass(分量不明)、マラスキーノ2dash、シロップ2dash、ビターズ1dash、小さい角氷2個、シェイクしてカクテルグラスに注ぎ、4分の1サイズのレモンスライスを入れて提供する」となっています。 一方で、原型になったのは「ジン&イット(Gin and It)」というカクテルだという説もあります。ジンとイタリアン(スイート)・ベルモットを使うこのカクテルは、ベルモットにイタリア「マルティーニ(Martini)」社の製品が指定されていたため、この「ジン&イット」から発展したカクテルが「マティーニ」と呼ばれるようになったといいます(出典:http://www.geocities.jp/bargold2004/martini.html)。だが、欧米の文献やWeb専門サイトを見る限り、この説を肯定しているは少数派です。 誕生当初から20世紀初め頃まで、マティーニはジンとスイート・ベルモットでつくるのが主流(標準的なレシピ)でした。その後、スイートとドライの両方のベルモットを使うレシピが登場し、さらにジンとドライ・ベルモットでのレシピも考案され、現代の標準レシピにつながっていきます(現代では、超ドライ化の流れに従って、ベルモットの割合は減る一方です)。手元にある欧米のカクテルブックを見る限り、ドライ・ベルモットを使うレシピが主流になったのは、1930年代以降のことと思われます。 ◆文献初登場は1888年か 「マティーニ(・カクテル)」の名が初めて活字で登場するのは、国内外の文献では従来しばしば、パリで1904年に出版されたフランク・ニューマン(Frank Newman)著のカクテルブック『アメリカン・バー(American Bar)』、あるいは、米国で1906年に出版されたルイス・マッケンストゥラム(Louis Muckenstrum)著の『ルイスズ・ミクスド・ドリンクス(Louis' Mixed Drinks)』がもっとも早いと紹介されてきました。 しかし、近年の研究では、米国のバーテンダー、ハリー・ジョンソン(Harry Johnson)が米国で出版した『バーテンダーズ・マニュアル(The Bartender's Manual)』(初版は1882年)の1888年に出た第2版にすでに登場していることが分かっており、これが活字となった初めての文献と言えるでしょう。ジョンソンの本では、「オールドトム・ジンとベルモット(スイートかドライかは不明)各ワイングラス0.5杯、シロップ2~3dash、ボウカーズ・ビター2~3dash、オレンジ・キュラソーまたはアブサン1dashをステア、マラスキーノ・チェリーまたはオリーブを沈めて最後にレモン・ピール」というレシピになっています。 一方で、ニューマンやマッケンストゥラムの本では、従来のイタリアン・ベルモットを使うスタイルとともに、フレンチ(ドライ)・ベルモットを使う新しい辛口スタイルの「マティーニ・カクテル」が併せてはっきりと紹介されていて、1900年頃には、現在のマティーニに近いものが飲まれていたことが分かります。 スイート・ベルモットを使うレシピが主流だった時代、ベルモットは「マルティーニ」社の製品を使うことが主流でした。カクテル史に詳しい米国のバーテンダー、ジム・ミーハン氏は「このマルティーニ社のベルモットの評判が、『マティーニ』=綴りは「マルティーニ」と同じ=という名でカクテルが普及・定着していくのに影響を与えたのではないか」と語っています。 しかしドライ化の流れで、マティーニにはドライ・ベルモットを使うのが主流になってゆくと、同じドライ・ベルモットでも「ノイリー・プラット(Noilly Prat)」社に人気がシフトしていきます(ちなみに、現代のバーでは「ノイリー・プラット」「チンザノ」「マルティーニ」の大手3ブランドがしのぎを削り、「ドラン」「ガンチア」などもよく使われていますが、ノイリー・プラット社は、その後バカルディ・マルティーニ社に買収され、その傘下に入っているのは皮肉なことです)。 ちなみに意外な事実かもしれませんが、1920年頃までは、マティーニにオリーブを添えるスタイルはほとんどありませんでした。オリーブを添えたマティーニが初めてカクテルブックで確認できるのは、1903年に出たティム・ダリー(Tim Dary)著の「Dary's Bartenders' Encyclopedia」です。オリーブを添える(または沈める)現代レシピが定着してくるのは、米禁酒法が廃止となった1933年以降です。 ◆ドライ化への流れをつくったマッケルホーン 甘口が主流だったマティーニはいつ頃から辛口へ方向転換を始めたのかは、すでに前述のニューマンの本(1904年)やマッケンストゥラムの本(1906年)にその萌芽が見えますが、影響力という意味で言えば、やはり、歴史上重要な三大カクテルブックの一つ、ハリー・マッケルホーン(Harry MacElhone)の「ABC of Mixing Cocktails」(1919年刊)が転換点だったのではないかと思います。 注目すべきは、マッケルホーンは「マティーニ・カクテル」としては、ドライ・ベルモットを選択していることです。そのレシピは「ジン3分の2、ドライ・ベルモット3分の1、オレンジ(またはアンゴスチュラ)・ビターズ1dash(シェイクしてカクテルグラスに注ぎ、チェリーを飾る)」となっています。当時としてもバー業界やバーテンダーに大きな影響を与えたであろうマッケルホーンの本が「ドライを選択した」ことが、後のドライ(辛口)化への流れをつくったと言えるかもしれません。 (※ただし、マッケルホーンは「マティーニ・スイート」=ジン3分の1、スイート・ベルモット3分の2、ガムシロップ1dash、飾り=チェリー(シェイク)、「マティーニ・ミディアム」=ジン3分の1、ドライ・ベルモット3分の1、スイート・ベルモット3分の1(シェイク)というレシピも併せて収録しています)。 マッケルホーンはつくり方も、それまでもあったステア・スタイルではなく、シェイク・スタイルを指定しています。下記にも紹介していますが、「サボイ・カクテルブック」の著者、ハリー・クラドックも同じくシェイクを指定しています。1920〜30年代のカクテルの両巨頭が、ともに「シェイク・スタイル」を選択しているのは、とても興味深いことです。 ◆カクテルブックにみるレシピの変遷 では、1880~1950年代の欧米の主なカクテルブック(「ABC Of …」以外)は「マティーニ」をどう取り扱っていたのか、どういうレシピだったのか、ひと通りみておきましょう。・「Modern Bartender's Guide」(O.H. バイロン著、1884年刊)米 掲載なし・「American Bartender」(ウィリアム・T・ブースビー著、1891年刊)米 オールドトム・ジン2分の1、スイート・ベルモット2分の1、アンゴスチュラ・ビターズ4drops、レモンピール(ステア)・「Modern American Drinks」(ジョージ・J ・カペラー著、1895年刊)米 オールドトム・ジン2分の1、スイート・ベルモット2分の1、オレンジ・ビターズ3dash、レモンピール、マラスキーノ・チェリー=飾り(お好みで)(ステア)・「Dary's Bartenders' Encyclopedia」(ティム・ダリー著、1903年刊)米 オールドトム・ジン2分の1、ベルモット(スイートかドライか不明)2分の1、オレンジ・ビターズ2dash、オリーブを沈める(ステア)・「American Bar」(フランク・ニューマン著、1904年刊の第2版、1900年初版には掲載されず)仏 ジン4分の3、ドライ・ベルモット4分の1、アンゴスチュラ・ビターズ(またはオレンジ・ビターズ)3dash、レモン・ピール(ステア)※スイート・ベルモットのマティーニも紹介・「Louis' Mixed Drinks」(ルイス・マッケンストゥラム著、1906年刊)米 ジン2リキュール・グラス、ドライ・ベルモット1リキュール・グラス、キュラソー1dash、レモン・ピール(ステア)※スイート・ベルモットのマティーニも紹介・「Bartenders Guide: How To Mix Drinks」(ウェーマン・ブラザース編、1912年刊)米 ジン2分の1、ベルモット(スイートかドライか不明)2分の1、キュラソー(またはアブサン)1dash、ビターズ1~2dash、ガム・シロップ2~3dash、レモンピール(ステア)・「173 Pre-Prohibition Cocktails)」 & 「The Ideal Bartender」(トム・ブロック著、1917年刊)米 掲載なし・「Cocktails: How To Mix Them」(ロバート・ヴァーマイヤー著、1922年刊)英 ドライ・ジン3分の2、スイート・ベルモット3分の1、オレンジ・ビターズ1dash、レモンピール(ステア)・「The Savoy Cocktail Book」(ハリー・クラドック著、1930年刊)英 ドライ=ジン3分の2、ドライ・ベルモット3分の1、ミディアム=ジン2分の1、ドライ・ベルモット4分の1、スイート・ベルモット4分の1、スイート=ジン3分の2、スイート・ベルモット3分の1(いずれもシェイク・スタイル)・「Cocktails by “Jimmy” late of Ciro's」(1930年刊)米 ジン2分の1、ドライ・ベルモット2分の1、アンゴスチュラ・ビターズ2dash、レモンピール、オリーブとともに・「The Artistry Of Mixing Drinks」(フランク・マイアー著 1934年刊)仏 ドライ=ジン2分の1、ドライ・ベルモット2分の1、ミディアム=ジン2分の1、ドライ・ベルモット4分の1、スイート・ベルモット4分の1、スイート=ジン2分の1、スイート・ベルモット2分の1(いずれもステア・スタイル)・「World Drinks and How To Mix Them」(ウィリアム・T・ブースビー著、1934年刊)米 ジン2分の1、ドライ・ベルモット2分の1、オレンジ・ビターズ2dash、レモンピール、オリーブ(ステア)・「The Official Mixer's Manual」(パトリック・ダフィー著、1934年刊)米 ジン5分の4、ドライ・ベルモット5分の1、レモンピール、オリーブ(ステア)・「The Old Waldorf-Astoria Bar Book」(A.S.クロケット著 1935年刊)米 スタンダード=ジン2分の1、スイート・ベルモット2分の1、オレンジ・ビターズ1dash、レモンピール、オリーブ、ドライ=ジン3分の2、ドライ・ベルモット3分の1、スイート・ベルモット4分の1、レモンピール、オリーブ、ミディアム=ジン3分の2、ドライ・ベルモット6分の1、スイート・ベルモット6分の1、レモピール、オリーブ、スイート=ジン2分の1、スイート・ベルモット2分の1(いずれもステア・スタイル。シェイクも可)・「Mr Boston Bartender’s Guide」(1935年初版刊)米 ドライ=ジン45ml、ドライ・ベルモット23ml、ビターズ1dash、オリーブ、ミディアム=ジン45ml、ドライ・ベルモット15ml、スイート・ベルモット15ml、オレンジ・ビターズ1dash、オリーブ、スイート=ジン45ml、スイート・ベルモット23ml、オレンジ・ビターズ1dash、チェリー(いずれもステア)・「Café Royal Cocktail Book」(W.J.ターリング著 1937年刊)英 ドライ=ジン2分の1、ドライ・ベルモット2分の1、ミディアム=ジン2分の1、ドライ・ベルモット4分の1、スイート・ベルモット4分の1、スイート=ジン3分の2、スイート・ベルモット3分の1(いずれもシェイク)・「Trader Vic’s Book of Food and Drink」(ビクター・バージェロン著 1946年刊)米 スタンダード1=ジン45ml、ドライ・ベルモット1dash、オリーブ、スタンダード2=ジン45ml、ドライ・ベルモット15ml、オレンジ・ビターズ1dash、オリーブ、ミディアム・ドライ=ジン30ml、ドライ・ベルモット7.5ml、スイート・ベルモット7.5ml、オリーブ(いずれもステア)・「Esquire Drink Book」(フレデリック・バーミンガム著 1956年刊)米 ジン4分の3(または3分2)、ドライ・ベルモット4分1(または3分の1)、オレンジ・ビターズ1dash、レモンピール(ステア) 余談ですが、マティーニを愛した著名人は枚挙にいとまがありません。有名なところだけでも、元・英首相ウィンストン・チャーチル(超辛口を好み、ベルモットを眺めながら呑んだという逸話も)、俳優クラーク・ゲーブル(ベルモットのコルクでグラスを拭き、冷えたジンを注いで呑んだという逸話が)、俳優ハンフリー・ボガート、元・米大統領フランクリン・ルーズベルト、作家アーネスト・ヘミングウェイ、作家サマセット・モーム、元・米大統領ジョン・F・ケネディ、実業家ジョン・D・ロックフェラー、元・英首相マーガレット・サッチャーほか、数えきれないほどです。 ◆日本にも早い時期に伝わる さて、日本におけるマティーニの歴史はどうだったかと言えば、欧米とそう大きな時間差はなく伝わっています。確認できる史料によれば、日本で初めて活字でマティーニが紹介されたのは、1907年(明治40年)刊行の「洋酒調合法」(高野新太郎編)ですが、おそらくは日本が開国して外国人居留地が横浜や神戸に誕生して以降、少なくとも1890〜1900年代には外国人向けホテル等では提供されていたのではないかと想像されます。 この「洋酒調合法」で紹介されたレシピ(本稿末尾)では、ベルモットはドライかスイートかには触れていません。その6年後に刊行された「飲料商報・西洋酒調合法」(伊藤耕之進編)では「ジン3分の2、ドライ・ベルモット3分の1、オレンジ・ビターズ2dash、レモン皮(ピール)」と辛口のレシピでしたが、その後日本で1924年に出版された日本最初期のカクテルブックでは「ベルモットはイタリアン(スイート)ベルモットを使う」と記されており、初期の頃は、ベルモットの種類は依然揺れていたようです。 ちなみに、日本で「ミスター・マティーニ」とも言われたパレス・ホテルのチーフ・バーテンダー、故・今井清さん(1924~1999)のレシピは、「ジン(銘柄は「ゴードン」)55ml、ドライ・ベルモット15ml、オレンジ・ビターズ1dash、レモンピール、オリーブ(飾り)」でした(※1960年代後半のレシピ。晩年はより辛口へ変化)。 近年では、銀座「モーリ・バー」毛利隆雄さんのマティーニが有名です。毛利さんと言えば、かつては「ジンはブートルズ」が定番でした。そのレシピは(10年ほど前に出された著書によれば)「ブードルズ・ジン60ml、ドライベルモット2.5ml、オレンジ・ビターズ1dash、レモンピール、オリーブ(飾り)」(超ドライな味わい)でしたが、ブードルズが終売になってしまったため、現在は別のジン(「BBRのNo.3」と「シップスミス」のブレンド)をベースにされているとのことです。 たかがマティーニ、されどマティーニ。マティーニはこれからもバーのカウンターを挟んで、マスター(バーテンダー)と客側の双方で、さまざまな話題となり、伝説を生み出して行ってくれるでしょう。 【確認できる日本初出資料】「洋酒調合法」(高野新太郎編、1907年刊)※欧米料理法全書附録という文献。レシピは「オールドトム・ジン2分の1、ベルモット(※ドライかスイートかの言及なし)2分の1、ビターズ2~3dash、ガム・シロップ2dash、オリーブ(またはチェリー)、レモンの皮(ピール)」となっています。 ※この項の作成にあたっては、石垣憲一氏の労作(上記)にひとかたならぬお世話になりました。改めて心から感謝申し上げます。・こちらもクリックして見てねー!→【人気ブログランキング】
2017/06/13
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53.マルチネス・カクテル(Martinez Cocktail)【現代のレシピ】(※このカクテルに関しては現代においても「標準的」なものがなく、かなりレシピの幅が広いです) ジン(20~50ml)、スイート・ベルモット(20~50ml)、ドライ・ベルモット(0~20ml)マラスキーノ(またはオレンジ・キュラソー)1~3dash、オレンジ・ビターズ(またはアンゴスチュラ・ビターズ)1~3dash、レモン・ピール ※ただし、うらんかんろ個人として作る場合は、ジン30ml、スイート・ベルモット40ml、マラスキーノ2dash、オレンジ・ビターズ2dash、レモン・ピールというレシピでつくっています 【スタイル】ステア(またはシェイク) 「マルチネス・カクテル」は19世紀半ば~後半の米国で誕生したと伝わり、マティーニの原型とも言われる代表的な古典的カクテルです。その後に誕生したマンハッタンやマティーニへの「橋渡し的な役割」を担ったカクテルとも位置づけられています。 「マルチネス・カクテル」が初めて活字で紹介されたのは、”カクテルの父”とも言われる、かのジェリー・トーマス(Jerry Thomas 1830~1885)が著した世界初の体系的カクテルブック「How To Mix Drinks」(1862年初版刊)の改訂版(1867年刊)です。従来は以下のような、真偽不明の「誕生にまつわる逸話」が、たびたび文献や専門サイトで紹介されてきました。 「カクテル名の『マルチネス』は、米国カリフォルニア州の都市名(サンフランシスコの東約40マイル)に由来する。ゴールドラッシュ時代(1848~55年)のサンフランシスコ、同地のオクシデンタル・ホテルでバーテンダーをしていたジェリー・トーマスが、金鉱探しにやって来た男の客から『マルチネスへの旅立ちのために、元気になる一杯を』と頼まれ、つくったのがこのカクテルである」 しかし現時点で言えることは、「考案者は伝わっておらず、誕生の経緯・由来も残念ながら不明な部分が多い」ということだけです(トーマス自身もその著書では、由来については何も触れていません)。 一方で、当時よく使用されていたベルモットが、イタリアのマルティニ社製だったことから、その社名にちなんで「マルチネス」と呼ばれるようになったという説もあります。しかし、これも根拠資料やデータは伝わっていません。余談ですが、カリフォルニア州のマルチネス市には現在、「マティーニ発祥の地」を記念する石碑(いささかこじつけ気味だと思うのですが…)が建てられているといいます(出典:http://blog.livedoor.jp/bar_kimura/archives/8747718.html )。 ところで、ジェリー・トーマスが「How To Mix Drinks」(1862年初版刊)の1867年の改訂版で初めて紹介したマルチネス・カクテルのレシピは、以下の通りです。「オールドトム・ジン1pony =【注1】ご参照、スイート・ベルモット1wineglass=【注2】ご参照、マラスキーノ2dash、アロマチック・ビターズ1dash。しっかりとシェイクし、大きめのカクテルグラスに注ぐ。4分の1の大きさのスライス・レモンをグラスに入れる。もしゲストが甘口の味わいを望むのであれば、ガム・シロップ2dashを加える」。 【注1】ponyは当時の液量単位で1ponyはほぼ1mlに相当。【注2】このwineglassの容量についてトーマスは明記していませんが、同著の挿絵に描かれたwineglassの絵を見ると、約60~90mlくらいと想像できます。 さらに今回、改めて様々な情報を集めていると、とても興味ある見解に出合いました。現在では英国のドライジン・ベースが当たり前となっているマルチネス・カクテルですが、誕生当時はオランダジンである「ジュネヴァー」を使っていたというのです(出典:diffordsguide.com/encyclopedia/1066/cocktails/martinez-cocktail)。確かに、19世紀後半だと、米国においてはジンは英国産よりオランダ産の方が主流だったでしょうし、あり得ない話ではないと思います。 ちなみに紹介されていたレシピは「ジュネヴァー50ml、スイート・ベルモット30ml、ドライ・ベルモット10ml、オレンジ・キュラソー8ml、アンゴスチュラ・ビターズ1dash」となっていました。時の流れで、ジンの主流がオランダから英国へ移行する過程で、こうした「過去」も忘れさられていったのかもしれませんが、ただしこの「ベース=ジュネヴァー起源説」が正しいのかどうかも、根拠資料が示されていないので現時点では何とも言えません。 ご参考までに、トーマスの本以降に出版された主なカクテルブックで、「マルチネス・カクテル」のレシピをざっと見ておきましょう。注目すべきは、現代の標準レシピとは違って、(スイート・ベルモットではなく)ドライ・ベルモットを使うレシピが目立つことです。これはやはりマティーニへ発展していく過程で、レシピが揺れていたことの証でしょう。・「The Modern Bartender's Guide」(O.H.Byron著、1884年刊)米 Martinez Cocktail No.1=ジン0.5pony、ドライ・ベルモット1pony、アンゴスチュラ・ビターズ3~4dash、ガム・シロップ3dash Martinez Cocktail No.2=ジン0.5wineglass、ドライ・ベルモット0.5wineglass、キュラソー2dash、アンゴスチュラ・ビターズ2dash、ガム・シロップ3dash ※No.1、No.2いずれもステア なお、Byronによる以下のような別レシピも伝わっています(出典:ginfoundry.com/cocktail/martinez-cocktail/)。 オールドトム・ジン30ml、スイート・ベルモット30ml、キュラソー2dash、アンゴスチュラ・ビターズ2dash・「Cocktails:How To Mix Them」(Robert Vermier著、1922年刊 )米 オールドトム・ジン4分の1gill(=30ml)=【注3】ご参照、スイート・ベルモット4分の1gill、アンゴスチュラ・ビターズ1~2dash、ガム・シロップ(またはキュラソー)2~3dash、アブサン1dash=お好みで、レモン・ピール&チェリー(ステア)(【注3】gillは当時の液量単位。1gillは120mlに相当)・「Cocktails」(Jimmy late of the Ciro's著、1930年刊 )米 オールドトム・ジン2分の1、ドライ・ベルモット2分の1、アンゴスチュラ・ビターズ2dash、レモン・ピール&オリーブ(作り方の指定なし)・「The Savoy Cocktail Book」(Harry Craddock著、1930年刊)英 ジン0.5glass、ドライ・ベルモット0.5glass、オレンジ・ビターズ6分の1tsp、キュラソー(またはマラスキーノ)3分の1tsp、レモン・ピール&チェリー(シェイク)※本文中では6人分のレシピとして紹介していたため、1人分の分量に換算しました。・「The Official Mixer's Manual」(Patrick Gavin Duffy著、1934年刊)米 ジン45ml、ドライ・ベルモット30ml、オレンジ・ビターズ1tsp、キュラソー(またはマラスキーノ)0.51tsp、レモン・ピール(シェイク)※本文中では6人分のレシピとして紹介していたため、1人分の分量に換算しました。 最後に現代のオーセンティック・バーではどんなレシピでつくっているのか、その代表として、英国ロンドン・サヴォイホテル「アメリカン・バー」のレシピをご紹介しておきましょう。 オールドトム・ジン50ml、スイート・ベルモット20ml、ドライ・ベルモット10ml、マラスキーノ5ml、ボウカーズ・ビターズ=【注4】ご参照=1dash、オレンジ・ツイスト(シェイク)。【注4】1828年にドイツ系米国人のヨハン・ボウカーが製造・販売したビターズ。かのジェリー・トーマスもいくつかのカクテルで使用している。1920年代に一時製造中止となったが、近年、その味わいを再現した製品が再発売されている。 「マルチネス・カクテル」は、日本には1930年代には伝わり、文献でも紹介されました。しかし、その後は60年代初めまでの間、カクテルブックに何度か登場したあとは、ほとんど忘れられたカクテルになりました。再び”陽の目”をみるのは、2000年以降、欧米の大都市を発信地としてクラシック・カクテル再評価のトレンドが起きてからです。【確認できる日本初出資料】「スタンダード・カクテルブック」(村井洋著、NBA編、1937年刊)。レシピは以下の二通りが紹介されています。 英国風=プリマス・ジン2分の1、ドライ・ベルモット2分の1、アンゴスチュラ・ビターズ2dash、オレンジ・シロップ2dash、レモン・ピール、 欧州大陸風=オールドトム・ジン2分の1、ドライ・ベルモット2分の1、オレンジ・ビターズ2dash、キュラソー(またはマラスキーノ)3dash、レモン・ピール・こちらもクリックして見てねー!→【人気ブログランキング】
2017/06/03
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