『福島の歴史物語」

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2008.01.23
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「裏の確認・・・? 嘉膳。裏の確認とな?」
 帯刀が尋ねた。
「嘉膳。確認と申さば、先日、富沢村の神官が二本松領に入り、『新政府軍が三春に入り、二本松に攻めてくる』と言いふらし、不埒なこととして牢に入れてことなきを得たことがあった。そのことが関係すると言うのか?」
 季春が、嘉膳に代わるかのように言った。
「うむ。あの黒禰宜の言はまずかった。なまじわが藩の本意を含んでいただけに、えらい心配をした。結局同盟軍の手前、家宅捜索をしてお茶を濁したがのう」
 実当が言った。
「それを言えば、棚倉落城の折、棚倉藩よりの援軍の要請を断ったこともございました」
「いや、しかしあのときは、仙台藩も断わりました。わが藩ばかりが責められるのば、やはりおかしいことと思いまする」
 そう嘉膳が、答えた。
 季春が尋ねた。
「ところで、塩田村でわが藩の町医者の佐久間玄畏が、二本松兵に後方から斬殺されたこともあった。あのこともあるのかのう」
 帯刀が独り言のように言った。
「それにしても、仙台藩はわが藩の監視役として、何名かの探索方をを派遣してきておった。それなのに、重ねて塩森殿まで来られたのは、わしにはやはり、腑に落ちぬ」
「さようでございまする帯刀様。何故半月も経ってから文句をつけにきたのか。考えてみれば、私も不思議に思いまする」
 この嘉膳の返答に、季春が尋ねた。
「これも、政紀よりの報告であるが、同盟側では、『三春反盟は明らかだとして、わが幼い藩主を人質に取るか、三春藩を攻め滅ぼすか』の討論がなされていたという」
 実当が唸った。
「うーむ。すでにわが本意が仙台藩に流れていたにしても、同盟側はそこまで考えておったか?」
「季春様。ご存知の通り、もはやわが藩内には多くの同盟軍が散開しておりまする。それに叡感勅書や御進軍御救助嘆願書のこともございまする。これらの勅書が今、同盟側に知られますれば、わが藩内に駐留している同盟側の兵と藩外にある同盟諸藩の兵に呼応されれば、わが藩はいつでも攻め潰される状況にありまする。推定でございまするが、軍務局はその強力な軍事力を背景に、わが藩に言いがかりを作らせに塩森殿を派遣してよこしたのではありますまいか?」
「言いがかりを? 作りにだと? 嘉膳、三春藩を攻めるための言いがかり、と申すか? そうだとすれば、氏家殿が仙台に戻られてから軍務局にどう報告するか、それが問題ではないか・・・。わが藩を攻撃させぬ方法を早急に考えねばならぬ」
 季春は、救いを求めるかのように嘉膳を見据えた。
「しかし季春様、議論を蒸し返すようでございまするが、どうにも私には、塩森殿の来訪が腑に落ちませぬ」
 帯刀がまた言った。季春は返事ができないでいた。しばらくの沈黙の後、嘉膳が言葉を選ぶようにしながら言った。
「もしかして仙台藩は、わが藩の反盟の意志が分かったからこそ、『わが幼い藩主を人質に取るか、三春藩を攻め滅ぼすか』の討論をしたのではないでしょうか。それにもかかわらず、わが藩をあんなにしてまで責めるということは、会津や二本松藩がわが藩をどう評価しているのか、それらを確認した上で来られたのではありますまいか。さすればわが藩の返答がこうなるのを、予測していたとも思われまする」
「予測? 嘉膳! それはどういう意味か?」
「ははっ。いま申した通り、同盟軍は内外呼応をすれば、いつでもわが藩を潰せる状況にありまする。その攻撃をせずに、あえて確認の使者をよこしたということは・・・、仙台藩は、大変なことを・・・考えたのかな・・・? と。何か裏が感じられまする」
「なんじゃなんじゃ、嘉膳! 気をもたせず早う申してみい」
 季春の顔が、興奮で赤くなった。
「はい・・・。どうも私の考えでは、仙台藩は同盟に内密にして、恭順を考えているのではないかと・・・」
「なに? 仙台藩が新政府に恭順?」
 嘉膳の顔に、鋭い視線が集中した。
「はい。すでに仙台藩は、浜街道で敗退を続けておりまする。と言ってここで白旗を掲げては、奥羽の盟主の名が廃りましょう。それでは伊達の名が泣きまする。それに仙台には、大政天皇様もおられます。ここは一番、三春藩を悪者に仕立て、『不逞の輩、裏切り者が居たから、仙台藩はやむを得ず矛を収めた』という論議立てかも知れませぬ。もし仙台藩が、慎重に新政府軍と干戈を交えぬ相馬藩が、わが藩の意志と同じと知ってのこととすれば。なおさら三春や相馬が裏切ったため、やむを得ぬという理由で・・・」
「恭順するか・・・。しかし仙台藩が錦旗を掲げて錦旗に恭順するとは、間尺に合わぬ。どういうことか?」
 そこにいた誰もが、季春の呻きにしゅん、とした。 
「むろん私も、仙台藩の本意については推定の域を出ませぬ。しかしすでに、錦旗は東部皇帝・北部政府より戴いたもの、と考えているのかも知れませぬ」
「だから仙台藩は新政府軍と戦ったと?」
「はい。その結果として、同盟軍の防衛線はすでに小野新町や守山にまで引いてきております。そして現在、三春には領外に応援に出ているわが藩兵に代わって、他藩の兵が守備しておりまする。この状況を利用して、向こうから来た使者に対しての返礼ということにして、また事を穏便に収めるためにも、こちらから改めて仙台の軍務局に弁明の使者を出しては、いかがでございましょうか」
「うむ。それは考えられるが、使者を出してなんと言わせる。結局、塩森殿に言ったことの繰り返しになろうが? 仙台の軍務局としては二番煎じ、なにも目新しいものはないではないか?」
「そこででございまする」
 そう言いながら、嘉膳は季春に少し躙り寄った。
「季春様。二番煎じでも構いませぬ。こちらの主張は何度やっても構いませぬ。ただ使者の口上の最後に、『わが藩救助のご依頼』を加えたら、と思いまする。同盟側がわが藩を信用せぬとなれば、せめてこれが、同盟側を納得させ得る最後の口上、となりましょう」
「なに、それでは同盟軍の攻撃を避けるために、同盟軍そのものを三春へ引き入れよというのか?」
「さようでございまする。しかしそれでも同盟軍は救助には来ないとは思いまするが、ただそうしておけば救助には来なくても、助けを求めているわが藩への攻撃は致し兼ねると思いまする」
 嘉膳は平伏した。なんとしても使者を送りたいと思ったのである。
「嘉膳! 本当に同盟軍は救助には来ないと申すか!」
 季春は、叱責するような声で言った。
「ははっ。そう思いまする」
「しかしそれでは、同盟に嘘をつくことになるではないか? それにもしこのことが露見すれば、わが藩は平藩に吉見廉蔵を軍使として出しておる。それに仙台にもわが藩士が出向させられておる。それら藩外におる全員の、いや藩兵どもも含めた命にもかかわる問題。嘉膳、これは危険な賭けじゃ。」
 季春の顔は、こわばっていた。
「とは申せ季春様、平からの新政府海軍が東から、また南の蓬田から陸軍が攻めて来ておりまする。三春に到達するのは、もはや時間の問題。棚倉には、帰順の使者として秋田主計殿や佐久間儀門殿らも参っておりまする。こうなれば、次の命題は、この町にいかにして戦火を引き入れぬか、ということでございましょう。江戸の例もありまする。いまは藩と領民の命を守ることに、全力を揚げるべきでございましょう」
「それは分かる。しかしこれは・・・一歩間違えれば、三春領内に予期せぬ戦いと、いらぬ詮索を持ち込むことにもなろう!」
「しかし、もはや三春藩がどちらの側に立とうとも、戦いそのものは避けられませぬ。かくなる上は、いま町での戦いを避けられる可能性の高い方に賭けるべきでございましょう。もしそれでも戦いが起こるとすれば、それはそのときのこと、三春藩は最初からの意志の通りに新政府の錦の御旗に依り、新政府軍とともに全力をあげて同盟軍と戦うべきでございましょう。領民どもは、その前に新政府軍側となっている棚倉や浅川に避難させましょう。とにかくわが藩は、なんとしても賊軍になる訳には参りませぬ。仙台藩の策に、うまうまと乗せられる訳には参りませぬ」
「仙台藩は秘密理に、そして本当に恭順という策を立てたであろうか?」
 季春の顔は、まだこわばっていた。
「恐らくは、間違いございませんでしょう」
 嘉膳は断定的に言った。








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最終更新日  2008.01.23 10:35:34
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