『福島の歴史物語」

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2015.02.16
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カテゴリ: いわれなき三春狐


 さらに私はこれを書いているうちに、奇妙な事実に遭遇しました。

 慶長7(1602)年、関ヶ原の戦いで徳川方に味方をしなかったとして、温暖の常陸から寒冷の秋田の地に追われた領主に佐竹氏があります。そのため、先祖伝来の秋田の地から押し出される形で国替えとなった領主に三春・秋田氏、新庄・戸沢氏、本庄・六郷氏、矢島・内越氏、それと由利五人衆の仁賀保氏など奥羽の五藩があったのです。この戊辰戦争の際にそれら五藩と秋田藩を含む六藩が、まるで話し合いでもしたかのように新政府の側についているのです。もちろん時期は一致しませんが新政府側に付いたのは、これらの藩ばかりではなく都合十六藩にも及んでいるのです(1990年 歴史読本 勤王・佐幕、幕末諸藩の運命 160ページより)。これら六藩の統一したような行動は、単なる偶然であったのでしょうか? もっとも私としては、それ以外に考えようもないのですが、徳川に対する積年の恨みからこうなったと考えることもできるのかも知れません。

 それにしても、慶応から明治、大正、昭和、平成と戊辰戦争後一三〇年も経った今の世に、なぜ三春はこんな風に責められ、苦しめられなければなければならないのでしょうか? 私は歴史の専門家ではありません。しかしこのエッセイが、三春を「狐よ裏切り者よ」と責める側にもそして責められた三春の側にも、なんらかの再考の材料になることがあるとすれば、望外の幸せです。しかし今後、この仮説を覆す資料が出た場合、修正するにやぶさかではないことを付け加えさせて頂きます。つまり歴史とは、そんなものかも知れないのですから・・。

 過日、私は、茨城県古河市に住む友人と裏磐梯に遊びました。戊辰戦争の戦場の跡である会津と二本松の中間の母成峠に至ったとき、碑文を読んでいた彼が尋ねました。
「ここでは、西軍、東軍と言うのかね?」
 奥羽越の人たちが、「賊軍」と言われることを嫌った記念碑の表記でしたが、彼には違和感があったらしいのです。なお古河藩は、新政府軍としてこの戦争に参加しています。
「やはり、『官軍』『賊軍』の感覚かね?」
 この私の逆襲に、彼は戸惑ったような表情を浮かべながらこう言いました。
「そうはっきりではないが、それに近いものを感じていた。なぜなら東軍・西軍では関ヶ原の戦いと勘違いされそうだし、その上に東西ではどこからが西でどこからが東なのか、抽象的で分かり難い。歴史を真綿でくるんでしまうような甘さを感じさせられる」
 なるほどそう言われてみると、私にも東軍・西軍という名称が全国的に認知された名称、とも思えなくなったのです。

 これらのこともあって、私はこのエッセイの中で『官軍と賊軍』、さらに『東軍と西軍』に変えて、あえて『新政府軍と奥羽越列藩同盟軍』の文字を使用したのです。あの戦争で賊軍とされた地に住む者の一人として、やはり「賊軍」という文字は使いたくなかったのです。

 戊辰戦争における最大の悲劇は、平和を希求したはずの奥羽越列藩同盟が攻守同盟に変質し、明治天皇に抵抗する賊軍・朝敵と目されたことにあります。しかもこの戦いは、歴史としてきちんと総括されていないのです。

 三春藩は大政奉還後間もなく朝廷に奉った主旨を守り、新政府軍に対して、また同盟軍に対しても一発の銃弾を撃つことをしませんでした。三春藩は周辺の藩からどう蔑まれようと、朝廷を裏切らなかったことをもって了とすべきなのかも知れません。そして戊辰戦争の終った翌明治2年、三春藩は町人67人に、『右之者共 去秋官軍諸藩町家江宿陳炊出し宿割夫夫ニ骨折相働候ニ付御酒被下候』と表彰しています。この中に私の家の本家・橋本孫十郎と私の曾祖父・橋本捨五郎(孫三郎)の二人も含まれていました。

 最後に、『宮城県史 202ページ』からの一文を転載したいと思います。

『“二面両舌”まことによく仙台藩の立場を浮き彫りにしている。幕末維新にあたり、公武のあいだに立って去就を決しかね、ついにもっとも恐れた朝敵として崩壊していった仙台藩の中間外交は、こうしてもう矛盾をあらわしはじめていた。”あれかこれか”の選択がせまられた最後の段階でも、この藩は”あれでもない、これでもない”といった。それを”あれもこれも”という形式に表現したのが奥羽越列藩同盟であった。それが、本来幕府党ではないはずのこの組織を、幕府党として機能させ崩壊させていく理由にもなる。そして仙台藩のこの道がそのまま北日本一円の諸藩の進路ともなった。その点で、幕末維新の政治史においてこれ以上に罪の深い両面外交はなかった。』

 私は三春町史とは異なってここまで書ける宮城県史は凄いと思いますし、立派なことだとも思っています。なお仙台藩は、62万石から28万石に減封されて仙台県となりましたが、明治5年、宮城郡の名をとって宮城県になりました。この名称の変更は、朝敵藩の名称を抹殺するためであったという説がありますが、これはジャーナリストの宮武外骨が唱えた説で、実際は該当しない都道府県がかなり多いので、俗説であるとされています。

     ありがとうございました。

          資  料

    歴史読本(勤王・佐幕、幕末諸藩の運命一六〇ページより) 
     (同盟側)              (新政府側)     
   仙台藩   六二・五万石      秋田藩   二〇・五八万石
   会津藩   二八          高田藩   十五
   南部藩   二十          新発田藩  十
   米沢藩   十八          弘前藩   九・四
   庄内藩   十六・七        新庄藩   六・八二
   二本松藩  十           三春藩   五
   棚倉藩   十           松前藩   二
   長岡藩   七・四         守山藩   二
   中村藩   六           本庄藩   二
   山形藩   五           秋田新田藩 二
   村上藩   五           与板藩   二
   一関藩   三           黒石藩   一
   平 藩   三           下手渡藩  一
   福島藩   三           椎谷藩   一
   上山藩   三           糸魚川藩  一
   村松藩   三           矢島藩   〇・八  
   松山藩   二・五
   八戸藩   二
   泉 藩   二
   亀田藩   二
   天童藩   二
   湯長谷藩  一・五
   七戸藩   一・一
   三根山藩  一・一
   米沢新田藩 一
   長瀞藩   一
   黒川藩   一
   三日市藩  一





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最終更新日  2015.02.16 13:17:56
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