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ブッシュ政権の最後となる一般教書演説(1月28日)は,経済政策,温暖化対策,イラク戦争のどれをとっても将来に向けての打開策を示すことなく,厳しさを増す現状に時間をさきました。 経済問題でブッシュ大統領は「われわれの前には未完の仕事がある」と述べ,悪化しているアメリカの景気への対策が必須課題であることを表明しました。 しかし「われわれの国を偉大にした哲学によって導かれなければならない」と言うものの,将来に向けたビジョンは示されませんでした。 現状については「不安定な時期に耐えている」「国中の家計では,経済の将来への不安がある」との表現が並びます。ブッシュ大統領がこれまでたびたび口にした「アメリカ経済のファンダメンタルズ(基礎条件)は安定している」という言葉は聞かれませんでした。 低所得者向け高金利型(サブプライム)住宅ローンの焦げ付き増大に端を発した金融構造の混乱や株安から来る今の危機は,アメリカ経済の脆さを世界に露呈していると同時に,国民の不安にもつながっています。 「住宅市場が荒れ模様のなか,アメリカ人を力づけなければならない」という大統領の訴えに力はありません。 世界中の焦眉の課題となっている温暖化対策では,「新たな国際的なクリーン技術基金」の提唱を打ち出し,中国やインドなど主要排出国の援助の方向を示しました。 しかし,世界最大の排出国であるアメリカ自身の温室効果ガス削減の責任あるとりくみを示すこととなる,数値目標の設定などへの言及はありませんでした。 イラク戦争をめぐっては,増派の効果を強調。自らが,イラクが「大量破壊兵器を保有している」との虚偽の理由で始めた戦争で前進した点を印象付けようとする演説でした。 しかし,「イラクでのわれわれの敵は大きな打撃を受けている」という一方で,「彼らは撃退されておらず,眼前にはなお厳しい戦闘が予想されている」として厳しさは認めざるを得ません。 泥沼化したなかで,「出口」にはふれることはできず,今年の目標を「戦略を次の段階へと転換させながら,2007年になしえたものを維持し,さらに作り上げる」と述べるのが精いっぱいでした。 金融不安の拡大や景気の後退,温室効果ガスを排出し続ける企業側に立ったまま遅れる温暖化防止策,そしてイラク戦争の長期化と戦費の増大。 任期を残すところ1年を切ったブッシュ政権の最後の一般教書演説から浮かび上がるものは,負の遺産を最悪の形で次のアメリカに残そうとしているという点でした。 日本も福田首相の所信表明演説が今月にありましたが,アメリカの追随する日本だけあって,国内情勢はアメリカも日本も同様に最悪の状態にあるといえます。国民も国際世論もないがしろにする点は,今の日米トップの共通項です。 日本も,不必要な道路作りなど無駄な大型公共工事で,国民は知ってか知らずか日本国債の残高は増えるばかりです。小泉政権の5年間とその前の5年間で残高は約324兆円も増えているのは紛れもない事実です。 これだけの借金が増えたのにこの間の国民の生活は悪くなるばかり。潤ったのは,大企業と一部の大資産家だけです。結局はこの10年間で自民党政治で国民はアメリカ同様負の遺産を最悪の形で残されたことはアメリカ同様だといえます。 この悪政のツケをいつか,なんらかの形で,国民は払っていかないといけないのです。それは消費税や負担増という形で国民生活に悪影響を与えるのは必至です。そろそろ国民も物事の本質に気づいて欲しいと思います。※参考ページはこちらにもあります。
Jan 31, 2008
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「我が国の刑事手続において,被疑者の取調べは,事案の真相解明に極めて重要な役割を果たしていることは,論を俟(ま)たないところである」 警察庁が1月24日まとめた「警察捜査における取調べ適正化指針」は,こんな挑戦的な文言ではじまっています。 鹿児島県議会選挙をめぐり公職選挙法違反で起訴された12人の被告全員が無罪になった志布志事件,女性暴行で服役後に真犯人があらわれ再審で無罪が確定した富山氷見事件と重大な冤罪事件が相次ぎ,警察の違法捜査の実態に厳しい批判が集中するなかで発表された「自己批判」の文書です。 それが,従来の捜査手法の基本に誤りは無く,一部に行き過ぎや逸脱があっただけだという基本認識に立つのですから,警察組織の無反省と自浄能力の欠如はここにきわまっています。 冤罪は,刑事事件の捜査段階での警察や検察の取り調べで,被疑者が意に反して虚偽の「自白」を強要されることで起こります。 外部との連絡がとれない密室で,肉体的にも精神的にも責めさいなむ取り調べが横行し,無実の人に取り返しのつかない苦しみを与える冤罪を繰り返していることに,捜査機関は本格的な自己点検を迫られているのです。 直接捜査にあたる警察の立場でそのあり方を見直した「指針」は,警察官が取り調べでやってはならない行為(不適正行為につながる恐れのある行為)を7項目にわたり規定しました。 『被疑者の身体への接触』,『直接・間接の有形力の行使』,『一定の動作・姿勢の強要』,『ことさら不安,困惑を招く言動』,『便宜供与の約束』,『被疑者の尊厳を著しく害する言動』などを禁じるという規定は,あまりにも当たり前の中身です。 ところが,これまで警察組織には,こうした取り調べについての明示的なルールは何もなかったのです。 裏を返せば,こうした規定をあらためて設けなければならないほどに,被疑者の人権を蹂躙する威圧,脅迫,利益誘導など違法・不当な取り調べが蔓延しているということです。 志布志事件では,親族からのメッセージに見立てた文字を記した紙を床に置き,いやがる被疑者の足首をつかんで無理やり踏ませた「踏み字」で自白を強要した元捜査員が,特別公務員暴行陵虐罪で起訴されました。 この元捜査員は裁判で「踏み字」が被疑者にたいする侮辱だとは「思わない」と臆面も無く証言しています。 志布志で起きたのは,警察内部の隠語で「たたき割り」と呼ばれる強引な捜査手法でした。風評や情報をもとにした見込み捜査で,被疑者のアリバイも,物的証拠も無視し,犯罪者と決めつけて,警察の描いた筋書きにそった自白を強要するやり方です。 筋書きにそった自白をとった捜査員が優秀だと評価され,そうでなければ「ダメなやつだ」と捜査から外されるという元刑事の証言も報じられています。「事案の真相解明」どころか,警察が事件をつくり,自白をでっちあげるという体質的な問題点があらわになっています。 戦後の日本では,免田,財田川,松山,島田の4つの死刑確定事件が1980年代に相次いで再審無罪となりました。いずれも脅迫や拷問,利益誘導で,やってもいない殺人の自白を強要された事件です。 しかし,密室の取り調べと自白の強要は遠い過去の解決済みの問題ではなく,今日も全国で繰り返されている事実を,取り調べにあたる警察はまず直視すべきです。 警察・検察の違法・不当な自白強要の抑止策として期待されているのが「取り調べの可視化」です。取り調べの一部始終をビデオ撮影やテープ録音し,後で検証することができるようにすることです。 国連の国際人権(自由権)規約委員会が日本に導入を勧告するなど,「可視化」は国際水準からみても当然の流れですが,検察,警察はかたくなに拒んでいます。 国民のための司法・警察制度改革の課題としてその実現を強く求めます。 「可視化」の実現を求める世論の強まりを意識して,「指針」は,不適正な取り調べが行われていないかを監督する新制度を設けることを打ち出しました。しかし,警察本部ごとに捜査部門とは別に監督担当者を置くというだけのことで,いわば身内のチェックを制度化するにすぎません。 捜査の「適正化」を真剣に考えるなら,警察はこんな制度でお茶をにごそうとするのではなく,「可視化」の実現にこそすすむべきです。
Jan 30, 2008
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「消費者・生活者が主役」(福田康夫首相) 「国民の生活が第一」(民主党・鳩山由紀夫幹事長) 「生活が大事」(公明党・太田昭宏代表) 通常国会の論戦で,自民,公明,民主各党が“生活者重視”のスローガンを乱発し,競い合っています。しかし,その中身をみると…。 「盗作ではないか」,民主党の工藤堅太郎議員は1月23日の参議院代表質問で,福田首相のいう「消費者・生活者が主役」が民主党のスローガンに似通っていると“ケチ”をつけました。 しかし,似ているのはスローガンだけではありませんでした。 福田首相は,消費税増税を含む「税制の抜本的改革」をあからさまに示しましたが,民主党の古川元久議員は1月21日の衆議院代表質問で「逃げ水のように先送りされている」,「首相は,本当に抜本的改革をやるつもりがあるのか」と質問。 社会保障財源として引き上げが必要と判断した場合には,選挙の際に引き上げ幅を明らかにすると述べ,将来の消費税増税を予告したのです。 民主党の鳩山幹事長は1月21日の代表質問で,「3年をめどに最低賃金を全国平均で1,000円に引き上げ,ワーキングプアを減らして格差を是正する」と同党の政策を宣伝しました。 日本の貧困や格差の拡大を生んだ根本原因は派遣労働の合法化とその後の規制緩和でした。これが正規雇用労働者を激減させ,不安定で低収入の非正規雇用を拡大したのです。 ところが,今国会の衆参両院の代表質問に立った5人の民主党議員は,誰一人として派遣労働など非正規雇用拡大の労働法規改悪問題には触れずじまい。 登録派遣労働の禁止を明確に主張した,日本共産党の志位和夫委員長の代表質問とは,きわめて対照的でした。 “生活者重視”をいうなら,75歳以上の人に際限のない医療費負担増と差別医療を押しつける「後期高齢者医療制度」の中止・撤回はまったなしです。 ところが,福田首相は「制度の理念や方向性は適切なこと」だと答弁し,あくまでも4月から強行する姿勢を示しました。これに関しても,民主党も代表質問で政府に中止を要求しませんでした。 マスメディアからは「首相が強調する『自立と共生』は,民主党の小沢一郎代表も掲げており,自民党と民主党の政策はますます似通ってきている」(「毎日」1月19日付社説)と指摘されています。 自民党も公明党も,民主党もスローガンで掲げる以上,自分たちの政策の中身の吟味をもう少しして欲しいものです。言っていることとやっていることが違っているのであれば早急に改めなければ,結局は“国民騙し”と言われざるを得ません。 代表質問は,自分たちの政党の政策をアピールする場所ではありません。国民の生活やくらしを良くするためにどうしたいのか実現していく場所であると考えます。 国民もよく見極めないと,結局は騙されることになり,自分たちの生活やくらしにかえってくるだけです。そういう意味で「自立と共生」はその注意喚起をしているのかもしれません。つまり結局は『自己責任』で,“国民自身が責任を取れ!”ということです。 国会議員を選ぶのは,他ならぬ国民自身です。だから国民自身がきちんと『選ぶ責任』もあるのだということです。
Jan 29, 2008
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沖縄県の仲井真弘多知事は1月21日,新基地建設(埋め立て部分)の環境影響評価(アセス)方法書の「書き直し」を求める知事意見書を防衛省に提出しました。 方法書は,あまりにも内容がずさんです。県民が厳しく批判し,沖縄県環境影響評価審査会が「書き直し」と公告縦覧の「再度実施」を求めたのは当然です。 知事の意見書もこの県民の声に押されたものです。防衛省は沖縄の要求に応え,方法書を書き直し,あらためて県民の判断をあおぐべきです。 日米両政府が合意したキャンプ・シュワブ(沖縄県名護市)への新基地計画は,普天間基地(宜野湾市)の基地機能をさらに拡大した恒久的な最新鋭の基地づくりです。 基地あるがゆえの苦しみを県民に押し付けるものです。だからこそ,70%もの県民が反対し続けています。 新基地は,攻撃ヘリや輸送ヘリ,垂直に離着陸することも可能な最新の大型輸送機オスプレイ,C130輸送機などが使用することから,住民に爆音被害や墜落の危険と隣り合わせの生活を強いるのは明白です。 方法書は,アメリカ軍が日常訓練などで住宅上空を飛行するといっているのに,どこを飛ぶのか,飛行経路さえ示していません。海兵隊員を運ぶ強襲揚陸艦も使用できるという大型の岸壁をつくるとアメリカ軍がいっているのに,それも示していません。 これでは“危険隠し”の方法書といわれても仕方がありません。方法書を書き直し,住民の判断をあおぐことなしに,アセス手続きを進めることは許されるはずがありません。 新基地建設は大規模な海の埋め立てを伴います。ダンプカー約340万台分の砂が海に投入されるといわれます。当然,海は汚れ,砂がたまり藻場がなくなるのは避けられません。防衛省の方法書が,これをどうするのか,その手法さえあきらかにしていないのは重大です。 新基地建設予定地周辺の海域には天然記念物のジュゴンが生息しています。周辺海域にジュゴンのえさである藻場が広がっているために,生息できます。新基地建設はこの藻場を消滅においこみ,ジュゴンのすめない海に変えてしまいます。 アメリカのサンフランシスコ連邦地裁は,ジュゴン保護裁判の判決で,「沖縄の危機にひんしているジュゴンへの影響を避けるよう配慮すべき」とアメリカ国防総省に申し渡しました。 アメリカ・文化財保護法を海外で適用し,在日米軍にジュゴン保護を義務付けたものとして画期的です。 ジュゴンへの影響を懸念してアメリカ連邦地裁の判決は,アメリカ国防総省として環境影響調査を実施することを求めました。しかし,在日米軍は自らアセスを行いません。防衛省任せです。その防衛省のアセスは方法書が示すように,アセスに値しない内容になるのは必至です。 ずさんな方法書をもとにアセスを実施しても,ジュゴン保護にきびしい態度をとるアメリカの裁判所では通用しないことを政府・防衛省は知るべきです。 すでに昨年12月,沖縄県は滑走路部分について,方法書を「審査するに足りない」と「再検討」を求めました。防衛省は,審査会が「中止」を求めた,事前の環境現況調査をやめるどころか,海域動物調査の入札を公示するなどごり押しを強めています。 県民の命もくらしもかえりみない,政府の横暴を許さない闘いを強めることがいよいよ重要です。
Jan 28, 2008
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アメリカ・サンフランシスコ連邦地裁は1月24日,アメリカ国防総省に対し,沖縄県普天間基地の移設先とされる名護市辺野古沖に生息するジュゴンへの影響調査を実施していないことは文化財保護法(NHPA)違反であるとして,影響調査を求める判決を出しました。 この裁判は日米の環境保護団体などが文化財保護法に基づいてジュゴンの保護を求めていたもので,アメリカ国外での同法の適用が認められたのは初めてのことです。 判決は,ジュゴンについての情報や普天間の代替施設がもたらす影響について,国防総省は評価や検討した証拠がないとして,文化財保護法に違反していることを認定。 「計画は国防長官らによる最高レベルの承認を得ているのに,ジュゴンへの影響はよく理解されていない」,「国防総省が法に基づく義務を履行するのを建設前夜まで待つことはできない」として,ジュゴンへの影響調査についての文書を90日以内に出すよう求めました。 この法律の国外での適用については,新基地建設は国防総省が関与している国家事業であり,それが日本の天然記念物であるジュゴンを傷つける可能性がある以上,適用は可との判断を示しました。 この裁判は2003年9月にアメリカの自然保護団体「アースジャスティス」や日本のジュゴン保護基金,環境法律家連盟などが提訴しました。国防総省は2005年に,ジュゴンのような生き物については文化財保護法が適用されないとして却下の申し立てをしました。 これに対して裁判長は,危険にさらされているジュゴンは,日本の天然記念物リストに挙げられており,文化財保護法のもとで保護される資格を持つとして,却下申し立てを退けました。 「(新基地建設の)計画に変更はない。サンゴ,藻場,ジュゴンへの影響を少なくするよう配慮した。一日も早い移設を進めるのが日本の大方針だ」。 町村官房長官は1月25日の定例会見でこう豪語した,と報じられています。 環境省がまとめた「ジュゴンと藻場の広域的調査」を見るまでもなく,新基地建設予定の沖縄県名護市の辺野古沿岸や大浦湾付近はジュゴンの餌である藻場と食跡が集中しています。 新基地建設のために工事用の作業ヤードが計画されている大浦湾内にはサンゴ群など貴重な生態系があります。 ジュゴン保護は沖縄県民が求めているだけではありません。 国際自然保護連合(IUCN),日本国内では日本水産資源保護協会が絶滅危惧種に区分,1972年には文化財保護法による国の天然記念物に指定されるなど,捕獲や殺傷を禁止しています。 沖縄県が辺野古から大浦湾一帯をもっとも保護を要する評価ランク1「自然環境の厳正な保護を図る区域」に指定しているのもそのためです。 辺野古で座りこみを続けるおじぃ,おばぁたちはずっと言い続けてきました。 「新基地の話がもちあがってからジュゴンはよく現れるようになったさ。ジュゴンを追い出し,辺野古の海を壊す新基地建設は許されないからね」 地球環境が最重要テーマになる洞爺湖サミットの議長国として日本政府の姿勢が国際的にも厳しく問われます。
Jan 27, 2008
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地球温暖化問題で世界を「先導」する…。福田康夫首相は1月18日の施政方針演説で,こう見えを切り,ダボス会議に臨みました。 ところが,そこで提起したのは,京都議定書の約束期間が終了する2013年以降の温室効果ガス排出削減で「国別総量目標を掲げ」ることだけ。温暖化防止のために急務である2020年までの中期目標に関しては,世界全体としての目標設定の必要に言及せず,日本の目標数値も示しませんでした。 世界の科学者を結集したIPCC(気候変動に関する政府間パネル)が昨年発表した報告は,温暖化の破局的影響を回避するには,『工業化以前からの温度上昇を2度以内に抑える』,『そのため先進国全体の2020年までの排出量を1990年比で10%-40%削減する』などの必要があることを確認しました。 同報告を受けて昨年12月の気候変動枠組み条約第十三回締約国会議(COP13)では,「先進国が2020年までに1990年比で25%-40%削減する」目標が提起されました。しかし日本はアメリカとともにこれに反対し,この数値目標は決定文書に盛り込まれませんでした。 気温上昇を2度以内に抑えるには,大幅な総量での削減数値目標を掲げ,そこから逆算方式で中期目標を設定し,その実現にあらゆる手段を尽くすべきです。 欧州連合(EU)は,この方式で削減実績をあげ,2020年までに1990年比で20%削減する目標を掲げ,新たに国別削減数値目標を設定するなどして確実に達成しようとしています。 これに対して福田首相がダボス会議で提起したのは,エネルギー効率などをセクター別に割り出し,技術開発に基づき削減可能量を積み上げて目標を設定する方式です。これは,産業界の「自主計画」任せにし,総量削減目標の達成に責任を負わない日本国内でのやり方を「世界標準」にしようとするものです。 それでは,世界全体と各国で総量規制の数値目標を義務化する京都議定書の方式の放棄にならざるをえません。 しかも,「自主計画」積み上げ方式から離脱できない日本は,京都議定書の6%削減さえ達成のめどがありません。 ダボス会議でデ・ブア枠組み条約事務局長は,各国政府は「小さな積み上げ的措置」を捨て,2030年までに温室効果ガス排出ゼロを目指すと表明したノルウェーのように「大胆になれ」と訴えました。 大胆な決断なしに,ブッシュ政権や日本の大企業の顔色だけをうかがう小心な「足して二で割る」式の提案をいくら積み重ねても,温暖化防止で世界を「先導」できません。
Jan 26, 2008
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欧州連合(EU)の執行機関である欧州委員会のバローゾ委員長は1月23日,EU加盟27ヶ国に対し,温室効果ガス排出量削減目標達成のため,各国に数値目標順守を義務付けるほか,企業の温室効果ガスの排出権を売買する排出権取引制度(ETS)を拡充・強化する計画を発表しました。 ETSは,京都議定書の期限の2012年後の2013年からは二酸化炭素(CO2)を最も多く排出する電力分野だけでなく化学産業やアルミなどのより多くの工業に拡大されます。CO2以外の他の温室効果ガスも含まれ,EUの温室効果ガス全体の40%をカバーすることになります。 ETSの対象外の運輸,建築,公共事業や農業などの分野の排出は,2020年に2005年の平均10%の削減が求められます。 この計画に対しては,企業からの反発も予想されます。 2005年時点で年間20億トン以上の二酸化炭素を排出していた企業は,今後21%削減しなければならず,計画の実施には,毎年少なくとも600億ユーロ(約9兆3,000億円)かかるとみられています。 バローゾ委員長は「確かにコストはかかるが,何もしないことで生じるコストと比較しなければならない。それははるかに高いものであり,この提案は勝利を意味するといえる」と強調。 欧州議会と加盟国が,年内に合意することを望むと述べました。 今回の欧州連合(EU)欧州委員会が提案した温室効果ガス削減の新対策案は,2020年までの中期目標として1990年比で20%削減するというEUの昨年の決定のいっそうの具体化を目指すものです。 7月の洞爺湖サミットに向け温暖化対策で世界を「主導」すると表明した福田康夫首相は,スイスでの世界経済フォーラムで1月26日,日本政府の態度を表明します。 しかし,その中身は,数値目標を明示せず「積み上げ方式」で中期目標を設定するだけのものだと報じられています。排出量取引にも言及せず,「2050年に排出量半減」という首相の掲げる目標の実現を裏付ける具体策はありません。 高い数値目標設定や排出企業の責任の明確化に背を向け続けるならば,日本政府は世界での孤立化を深めるだけです。
Jan 25, 2008
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東京地裁が1月23日,全動労組合員のJR採用差別事件で,国鉄が組合差別を行ったことを認め,損害賠償を命じる判決を出しました。 判決は採用差別を「不法行為」とし事実上,国の不当労働行為を認めました。国の不当労働行為を認めたのは,国労組合員らが勝訴した2005年の東京地裁判決に続いて2度目。 国が不当労働行為を行った事実と法的責任は争う余地がないものになりました。国は全面解決のため,直ちに交渉のテーブルに着くことが求められます。 国鉄の分割・民営化は当時の中曽根首相が「臨調行革の二〇三高地」と呼び,国民サービス切り捨ての「臨調」行革路線の最大の柱と位置付けられたものです。 国民サービスを守ろうと反対する労働組合潰しを狙って引き起こしたのが,採用差別事件でした。 しかも政府は,「所属組合によって選別することがあってはならない」(当時の橋本龍太郎運輸相)「一人も路頭に迷わせない」(中曽根首相)との約束も投げ捨て,許されない国家的な不当労働行為を行ったのです。 採用差別を否定できない国側は裁判で,「民営化に反対するものはJRにふさわしくない」と述べ,民営化を御旗に差別は当然だと開き直りました。しかし,使用者が労働者を差別しても当然だなどという論理が通用するわけがありません。 今回の判決は,国のこの姿勢を「中立義務に違反する」として断罪しました。 しかも,民営化が正しかったなどといえないことは,ローカル線の切り捨てや国民負担とされた巨額の借金をはじめ,最近の福知山線の脱線事故を見ても明らかです。 すでに事件から20年が過ぎ,解決を見ずに亡くなった労働者も多く,家族も含めて苦痛は極限に達しており,人道的立場からも一刻も早い全面解決が求められます。 全国751の地方議会が早期解決を求める意見書を可決し,ILO(国際労働機関)も7度にわたって解決を求める勧告を出しています。 労働者側は,不採用となった労働者と組合,支援団体が組織の違いをこえて団結し,政府の責任による全面解決を求めています。 福田康夫首相が「国民の立場にたって」というなら,判決と世論を受け止め,関係者との協議を直ちに開始することこそ求められます。
Jan 24, 2008
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政府の「公務員制度の総合的な改革に関する懇談会」(座長・岡村正東芝会長)で1月22日,ひと握りの特権的官僚の育成などを盛り込んだ最終報告書の素案が提示されました。 「政権党に奉仕する公務員」をつくるため,総理大臣を支える「国家戦略スタッフ」や大臣を補佐する「政務専門官」を新設するなど,各省の官僚の上に立つ新たな「内閣官僚」をつくります。 採用試験で将来の処遇まで決まる特権的な現行のキャリア制度は,「総合職」,「一般職」,「専門職」に再編。管理職の半数は「総合職」から任用するとして,特権官僚制度を温存しています。 陳情など国会議員との接触については,原案にあった「原則禁止」は削除したものの,大臣の許可なしには認めません。 「すべての公務員が民間企業の業務と倫理を学ぶ」として,すべての公務員を民間企業に出向させ,管理職の半分は民間企業などから採用するなど,儲け優先の民間企業の論理を行政に持ち込み,官民癒着の「天下り・天上がり」を自由化する内容になっています。 任用や給与に能力・成果主義を導入し,「行政効果」など政権党の政策を実行してどれだけ成果をあげたかで評価。昇給については20年で停止とするなど,公務労働者の生活を脅かす内容を盛り込んでいます。 一方で,ILO(国際労働機関)から勧告も受けた労働基本権(団結権,団体交渉権,争議権)については,労働協約締結権だけを付与するとした政府の専門調査会報告を「尊重する」としただけで,争議権や消防職員などの団結権については言及していません。 懇談会は1月31日に最終報告をまとめます。 報告書素案は,「全体の奉仕者」である公務員を,時の政権党と財界の奉仕者に変質させようとするものです。 公務員制度の改革というなら,特権的な官僚制度をなくし,住民と国民の目線にたって働くことができるようにすることが求められています。ところが,特権的なキャリア制度は,「総合職」などと看板を架け替えただけで温存。 「国家戦略スタッフ」,「政務専門官」など省庁の上に立つ新たな「内閣官僚」をつくることまで掲げています。 すべての公務員を民間企業に出向させ,管理職の半分は企業などから採用するとしたことも見逃せません。 営利目的の企業の業務や論理を行政に持ちこむことは,すべての国民に対して公正・中立で民主的な運営が求められる行政を歪めるものです。 政府・与党は昨年,官民癒着の「天下り・天上がり」の自由化法案を強行しましたが,これでは腐敗や不正がいっそうはびこることになりかねません。 昇給・昇格に能力・成果主義を導入し,「行政効果」など政権党の政策を実行して,どれだけ成果をあげたかで評価することも大問題です。これでは公務員の目線は,国民ではなく政権党にばかり向くことになり,「ヒラメのような公務員」にさせられかねません。 政治家と公務員の接触に規制を加えることも,不当な介入を防ぐためではなく,国民から選ばれた国会議員による追及を逃れて,公務員を政権党の都合のいい働き手に変えようというねらいから出てきたものです。 一方で,ILO勧告も受けた労働基本権は,政府の調査会が付与するとした労働協約権さえ明示していません。 労働基本権を付与することは,自らの労働条件は自ら決めるという働くルールを確立するだけでなく,公共サービス切り捨てや癒着・腐敗など行政の歪みをチェックし,ただしていく力となるものであり,全面的な付与が求められます。 まるで財界による「行政の乗っ取り」とも呼ぶべき報告書素案は,全面的に見直す以外にありません。
Jan 23, 2008
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フジテレビが昨年7月28日に放送した「FNS27時間テレビ『ハッピー筋斗雲』」が放送倫理にふれると指摘を受けて審議を重ねてきたBPO(放送倫理・番組向上機構)の放送倫理検証委員会(川端和治委員長)は1月21日,記者会見を開き,同番組は「制作上の倫理に反すると判断した」と発表しました。 判断結果はフジテレビに自省を促す「意見」として公表されます。 同番組は,東北地方で美容院を経営する女性を“ドッキリカメラ”的手法で,自称スピリチュアルカウンセラー(霊能者タレント)の江原啓之氏が「霊視」し,「亡き父親の言葉」を伝えるというもの。 その中で江原氏は,女性が取り組んでいる被災者などにリンゴを贈る活動が美容院を経営難にしていると,一方的に断定しています。 委員会審議の結果,霊能師ありきの企画・構成や,美容院を「経営難」と断定している二点について,「倫理上の疑義がある」と指摘しました。 「放送倫理基準が慎重な扱いを求める『スピリチュアルカウンセリング』なるものを,『おもしろく』見せるために,一方的に出演させた人の生活状況を十分な裏付けも取らずにおとしめている」と判断理由を述べています。 フジテレビに対しては,「裏づけに欠ける情報の作為」,「スピリチュアルカウンセリングの押しつけ」などに自省を求めています。フジテレビは同日,「今回の意見書を真摯に受け止め,今後の番組制作に役立てていく所存です」とのコメントを出しました。 マスコミ界はBPO・放送倫理検証委員会の指摘を,当該番組だけでなく「スピリチュアル」番組全体への警鐘と受けとめるべきです。 意見書によると,局側が事前に女性に関する片寄った情報を伝え,江原氏はその誤りにも気付かないまま亡父の「言葉」を紹介しています。 守護霊や先祖霊の言葉は,霊能者がそう「感じた」,「思った」だけのもの。 それを断定的,短絡的に伝えるところに,一連の番組の共通した特徴があります。民放連の放送基準は「占い・運勢判断およびこれに類するものは,断定したり,無理に信じさせたりするような取り扱いはしない」と述べています。 全国霊感商法対策弁護士連絡会が昨年2月に節度ある放送を申し入れて以後,一部番組では「科学的に立証されていない」という趣旨のテロップを流していますが,それだけでよいのか。 弁連は,番組には「霊界や死後の世界を安易に信じこませる」効果があり,霊感商法などの犯罪を生み出す温床になっていると指摘しました。 実際,統一協会は洗脳施設のビデオセンターでこれらの番組のビデオを教材に使っています。占いやヒーリングを看板にして高額商品を買わせたり,法外な「祈祷料」を巻き上げる事件も急増。 昨年末に発覚した「神世界」は氷山の一角です。 金銭被害だけではありません。人々の悩みや社会の不安に霊界を使った短絡的な結論を押しつけ,なぜそうなるのか考える努力を放棄させていることです。 弁連の紀藤正樹弁護士は「こうした思考放棄を社会に蔓延させ,本当の知への努力ができない人たちを大量に生み出す」ことの怖さを指摘しています。 番組の「癒やし」効果を主張する人もいますが,その「癒やし」は「脅し」と表裏一体です。悩みや不安の原因はなにか。それを科学的に,視聴者とともに検証することこそがメディアの役割ではないでしょうか。
Jan 22, 2008
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「当たり前のように考えていたこの資本主義が,本当に国民を幸せにしつづけていけるのか」。 こんな資本主義の先行きにたいする懐疑的な発言が飛び出したのは,1月16日の民主党定期大会のことです。鳩山由紀夫幹事長が,2008年度活動方針案の「報告」で述べたものです。 鳩山氏は,「果たして,このような行き過ぎた金融資本主義が,これからの世界で多くの人々を幸せに導いていけるのか。(7月の洞爺湖サミットでは)こんな根本的な経済の議論もおこなってもらいたい」とまで述べました。 鳩山氏といえば,同党代表を務めていた2000年当時,「どんどん新規事業を起こすことができるような税制・金融改革」などの「金融自由化」論を展開。 国会論戦でも「改革のスピードを競い合うことはやぶさかではない」(2001年)と,弱肉強食の新自由主義路線を掲げて登場した小泉内閣と「構造改革」の競い合いを演じました。 また短期雇用や解雇を容易にする労働基準法改悪について,「その規制緩和は大いにやるべきだ」と主張するなど,今日の貧困と格差を生み出した政策の後押しをしてきた政治家です。 規制緩和を中心とした「改革」こそ,投機マネーの暴走にみられるような“金融資本主義の行き過ぎ”を生んだのですから,鳩山氏もみずからの責任を自問してしかるべきです。 いずれにしても,「資本主義」の悪影響に言及せざるをえないほど,財界・大企業本位の政治が行き詰まっていることの告白ではあります。 一方,同大会に来賓として招待された大橋光夫日本経団連評議員会副議長・政治対策委員長(昭和電工会長)は,「責任政党として改革に全力をあげていただきたい」と述べ,いっそう「構造改革」をすすめる「政治のリーダーシップ」を民主党に期待しました。 同党の活動方針も「経済団体からの民主党への期待は高まっている」と,財界からの期待をおおいに“自覚”しています。 いくら鳩山氏が“資本主義の行き詰まり”を嘆いても,政治献金(企業・団体献金)で財界と深く結びついた自民・民主の「二大政党」に,その打開を期待することはできません。
Jan 21, 2008
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巨額の軍事費を食い物にする政軍財の癒着構造が明らかになった防衛省汚職。あれほど国民の怒りを呼んだにもかかわらず,福田首相の施政方針演説のなかでは,自らの反省も「真相究明」の言葉も一切ありませんでした。 福田首相が羅列したのは「文民統制の徹底」,「防衛調達の透明性の確保」など抜本策とはほど遠いものばかりでした。 防衛省汚職では,年間約5兆円の軍事費をめぐり,東京地検特捜部の捜査が政界ルートにのびるかどうかが,今後の焦点のひとつになっています。 注目される政治家の一人が久間章生元防衛相。守屋被告をゴルフ接待していた軍需商社「山田洋行」元専務の宮崎元伸被告(69)=贈賄罪で起訴=から,すっぽん料理などの宴席接待をうけていました。 また山田洋行が久間氏への口添えを依頼したとされるのが,日米平和・文化交流協会の秋山直紀常勤理事です。 秋山氏は今月8日の国会参考人質疑で否定しましたが,アメリカ軍需メーカーの販売代理店契約を維持したい山田洋行側から,約3,000万円を受領した疑惑がもたれています。 三菱グループから秋山氏とともに接待を受けていた額賀福志郎財務相,石破茂防衛相らのかかわりは…。 「防衛省改革」をいうなら,まず軍事利権をめぐるこうした不透明な資金の流れと,政軍財の癒着構造を徹底的に明らかにすべきです。なのに,首相はまったく触れませんでした。 それどころか,首相が強調したのは,自衛隊が「誇りを持って防衛や国際貢献のための活動が行えるよう,改革する」というもの。 一体何のための「改革」なのかと言いたくなります。
Jan 20, 2008
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厚生労働省は1月16日,違法派遣など社会問題となっている日雇い派遣で働く労働者の権利保護などを盛り込んだ指針を,同日の労働政策審議会の部会に示しました。 次期国会で労働者派遣法の抜本改正を見送る代わりに検討していたものです。 グッドウィルなど事業停止命令を受けた派遣元と派遣先企業が行っていた二重派遣など違法行為を防ぐために,派遣元と派遣先に労働者から聞き取りをしたり,実際の就業場所を巡回して契約通りかどうかを確認したりすることを求めています。 派遣労働者の連絡や苦情処理などにあたる派遣先責任者についても,選任することを義務付けます。 派遣元が「データ装備費」などの名目で給与から不正に天引きする企業が多いことから,使途が明白で労使協定を結んだ場合以外は「不適正な控除が行われないようにする」として禁止。 集合場所から就労現場までの移動など拘束時間の賃金を支払わない問題についても,「労働時間を適正に把握し,賃金を支払うこと」を求めています。 賃金や労働時間など労働条件について,明示した書面を交付することを指示。ただし,携帯電話を活用した就業条件の明示も認めています。 また,日雇い派遣労働者が派遣元を適切に選択できるように,派遣の実績や派遣料金などを公開することを派遣元に求めています。労働者側が求めていたマージン(派遣元が取る手数料)の公開は見送られました。 一方,安定雇用のため契約期間の長期化については,「可能な限り長く定める」と努力義務にとどめ,派遣元に課せられている職業能力の向上などについても「実施するよう努める」などとしています。 日雇い派遣を規制する「指針」の策定は,違法行為が相次ぐ労働者派遣の規制強化を求める世論と運動を無視できなくなったものです。不法行為をなくし,労働者の権利を守るには,日雇い派遣の禁止を含む労働者派遣法の抜本改正にすすむことが求められています。 日雇い派遣は,グッドウィルの二重派遣や給与からの不正な天引きなど違法行為が横行し,禁止を含む派遣法の抜本改正を求める声が高まっていました。今回の指針は,世論や運動に押されたものといえますが,指針の策定によって派遣法の改正を見送ることは許されません。 指針は,「データ装備費」など横行している給与からの不正な天引きについて禁止を明記。集合場所から就労現場まで拘束時間の賃金を支払わない問題についても賃金の支払いを命じています。 これらは現行法でも認められない違法行為であり,遅きに失したとはいえ当然の規定です。 指針はまた,グッドウィルなどで摘発された二重派遣を防ぐために,派遣元と派遣先に,労働者からの聞き取りや就業場所の巡回などを求めています。しかし,違法派遣は,派遣元と派遣先が共謀しているのが実態で実効性が疑われています。 一方で,安定雇用のための契約期間の長期化については,「可能な限り長く定める」と努力義務にとどめ,ピンはねをチェックするためのマージン率(派遣元の手数料)の公開も見送られました。労働者の願いに応えるには不十分です。 日雇い派遣は,仕事のあるときだけ働く「登録型派遣」のなかでも極端に不安定な雇用で不法行為が横行しています。 派遣法では,派遣元に教育訓練などさまざまな義務を課していますが,日雇い派遣は教育訓練も行われておらず,職業安定法が禁じる労務供給事業にあたるのが実態で,禁止すべきものです。 本来雇用は,直接・常用雇用が原則になっています。これに対して労働者派遣は,働かせている企業が雇用の責任を負わない間接雇用です。だからこそ政府も国会で「派遣は臨時的・一時的なものであり,常用雇用の代替にしてはならない」と言明してきました。 ところが,財界の要求に従って,1999年には原則自由化し,2004年には製造業への派遣も解禁され,ほとんどの業務で派遣労働ができるようになっています。 労働者派遣法の原則に立ち返ってこの規制緩和の流れに歯止めをかけるために,抜本改正を行うことこそ求められています。
Jan 19, 2008
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中央教育審議会(山崎正和会長)は1月17日,「学習指導要領の改善について」の答申を渡海紀三朗文部科学大臣に提出しました。教育基本法改悪後初めての学習指導要領改定の方向を示したもので,小中学校での授業時間増や教育活動への統制を強める内容を盛り込んでいます。 答申は今回の改定について教育基本法などの「法改正を十分踏まえる必要がある」と明記。「伝統や文化に関する教育や道徳教育,体験活動」を重視するとしています。 また,「学力の重要な要素」を(1)基礎的・基本的な知識・技能の習得,(2)知識・技能を活用して課題を解決するために必要な思考力・判断力・表現力等,(3)学習意欲,の三つであると規定し,この内容にそって「音読・暗唱」「反復学習」「レポートの作成,論述」など指導方法を具体的に細かく提示しています。 さらに各教科の「重点指導事項例」を示し,それを子どもが身につけたかを全国学力テストなどでチェックする仕組みをつくるなど教育活動への国家統制を強めるものになっています。 前回(1998年)の改定で削られた「台形の面積の求め方」(小学校算数),「イオン」,「生物の進化」(中学校理科)など多くの項目が復活しました。小中学校の授業時間は各学年とも現行より週当たり1~2時間増やす方針です。 総合的な学習の時間は小中学校とも縮減。中学校の選択教科は標準の授業時間以外で行うとされ,事実上の廃止となりました。 小学校に外国語活動の時間を導入。中学校の体育で武道を必修化するとしています。答申を受け文部科学省は3月までに小中学校の学習指導要領を改定します。 学習指導要領は小中高校などの教育内容を文部科学省が示すもので,ほぼ10年ごとに改定されています。今回は教育基本法改悪後,初の改定で,中教審答申は教基法改悪の具体化のひとつです。 答申は「愛国心」育成を目指して道徳教育の充実を掲げ,「伝統や文化に関する教育」を強調。中学校の体育で武道を必修化,国語・社会・音楽・美術なども伝統文化に重点を置いています。道徳の教科化については賛否両論を併記しました。 また授業の内容や指導法を細かく指示。「PDCAサイクル」として,「重点指導事項例」など文部科学省が定めた目標が達成されたかを評価し,「改善」を迫るシステムをつくろうとしています。 授業時間や教育内容の増加は「詰め込み」を激しくし,子どもの負担が増大するという声が上がっています。答申は習熟度別指導を積極的に実施するとしており,授業についていけない子が放置されるなど格差拡大のおそれがあります。 いま求められるのは上からの統制ではなく,教師が子どもとじっくり向き合い,ていねいな教育活動ができるような条件整備と,教育実践の自由を保障することです。
Jan 18, 2008
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福田康夫首相が施政方針演説で内閣の基本方針を述べました。福田首相は「生活者・消費者が主役となる社会」を実現するため,「あらゆる制度を見直す」と強調しました。「国民本位」「国民の立場に立って」など,やたらと国民を「持ち上げる」言葉を散りばめています。 国民が主人公だということは憲法に明記された政治の大原則です。それをあえて繰り返さなければならないことは,むしろ,自公政治が国民をどれほどないがしろにしてきたかを浮き彫りにしています。 昨年の参議院選挙で国民が下した自民党・公明党連立与党大敗の審判を受けて,ようやくそのことに気が付いたのでしょうか。首相の演説を聞くと,まったく違うことが分かります。 首相は内閣の課題として社会保障の維持,少子化,非正規雇用,地方経済の低迷への対応,地球環境やエネルギー問題などを挙げました。いずれも財界・大企業を優先し,アメリカに追従する自民党政治によって,欧州諸国などと比べて事態をはるかに深刻にしてきた問題です。 それにもかかわらず,首相は「成熟した先進国として,今まで経験したことのないこれらの問題」と,降ってわいた災害のように語りました。 みずからは責任も反省も,何も感じていないのではないでしょうか。 いま国民が直面しているのは,制度改悪で医療や介護,生活保護など福祉から締め出され,社会保障にいのちとくらしを踏みにじられる本末転倒の政治です。身を粉にして働いても生活保護を下回る収入しか得られない貧困の広がりや,農業や商店街など地域経済の命綱の破壊です。 首相の演説には,生活保護を削られた母子家庭,ネットカフェで寝泊まりせざるを得ない若者,過疎の村でふんばってお米をつくっても時間当たり250円ほどにしかならない農家をはじめ,庶民の痛みへの目線が微塵もうかがえません。 なにより,「生活者・消費者が主役」,「国民が安心して生活できる社会保障」というなら,“財界・大企業が主役”“アメリカいいなり”の政治と決別する必要があります。 少なくとも,違法な派遣労働の野放しや社会保障費の自然増を毎年2,200億円も削減する「骨太方針」をやめなければ,当面の対応策も一時しのぎに終わります。 最低限の政治的決断さえやる意思がないなら,生活者が主役,安心できる社会保障などただの「偽装」になってしまいます。 見過ごせないのは,福田首相が社会保障の安定財源として,「消費税を含む税体系の抜本的改革」を早期に実現すると述べていることです。消費税の増税は,最悪の生活者・消費者いじめにほかなりません。 基礎年金を全額消費税で賄えば年金給付で返ってくるから負担増ではないという議論もありますが,企業の保険料負担がなくなる分は国民に転嫁されます。 税率が10%引き上げられた場合,月14,000円余りの保険料を払う国民年金では家計消費が月14万円余を超えたら負担増です。加えて中小業者は取引の上でも消費税を転嫁できずにいっそう苦しめられることになります。 企業が保険料の半分を拠出している厚生年金は,ほぼ全員が負担増です。 財源問題は大企業・大資産家への行きすぎた減税と5兆円の軍事費にメスを入れない限り解決できません。自民党政治が生み出した矛盾は,自民党政治を転換することではじめて切り開くことができるといえます。
Jan 18, 2008
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2008年は,株価の急落,原油価格の100ドル突破,金価格の史上最高値更新,ドル安(円高)など,激動のなかで明けました。 こうした経済変動が投機マネーの跳梁によるということは,すでに衆目の一致するところです。世界のマネーは,GDP(国内総生産)の3.2倍,1京6,000兆円という天文学的な規模に膨れ上がっているといいます。 それにしても,わがもの顔に世界経済を撹乱している投機マネーにたいし,国際的に有効な規制がとれないでいるのはなぜなのか? 投機マネーの活動の中心に,国際的な金融大資本が参画し,基軸通貨ドルのもとで国際金融を取り仕切ってきたアメリカの利害が深くかかわっているという実態があります。 しかし,このように投機を野放しにする国際金融の実態とともに,投機マネーの活動を積極的に弁護・奨励してきた“経済学”の責任を忘れることはできません。 もともと,資本による投機的活動を経済学のなかで理論的に明確に位置づけたのは,J・M・ケインズでした。 ケインズは,その主著『雇用・利子および貨幣の一般理論』(1936年)のなかで,資本主義のもとでは,投資市場が活性化し,発展するときには,投機的資本の活動がともなうという「投資誘因」の理論を展開しました。 しかし同時に,ケインズは,投機的活動があまりに肥大化することには強い警戒感をもち,次のように主張していました。 「投機家は,企業の着実な流れに浮かぶ泡沫としてならば,なんの害も与えないであろう。しかし,企業が投機の渦巻のなかの泡沫となると,事態は重大である。一国の資本発展が賭博場の活動の副産物となった場合には,仕事はうまくいきそうにない。…このような傾向は,われわれが『流動的な』投資市場を組織することに成功したことのほとんど避け難い結果である」(注1) そこで,ケインズは,「投機が企業に比べて優位である状態を緩和するためには,政府がすべての取引に対してかなり重い移転税を課すことが,実行可能で最も役に立つ」(注2)という投機規制策を提案しました。 ケインズの危惧にもかかわらず,その後,新自由主義派の市場原理主義の経済学が主流になるとともに,「投機」の有用な役割が一面的に強調されるようになりました。 たとえば,ノーベル経済学賞を1982年に受賞したアメリカのシカゴ大学の重鎮,G・J・スティグラー教授の経済学教科書(注3)をみると,市場の価格決定の仕組みのなかで,「投機」がいかに大事な役割を果たすか,詳しく解説されています。 そして,市場経済のなかでの投機家の役割が,「将来のある時点における需要と供給の様々な条件についての確率を推定する人」と定義されています。 では,市場経済には,なぜ将来の需給条件の確率を推定する人(つまり投機家)が必要だというのか? かいつまんでいえば,投機家が将来の需給条件の確率を推定して,潤沢な投機資金を市場へ投入するから,資金の流動性が高まり,価格変動のリスク・ヘッジ(危険の回避)が円滑にすすむ。そのため将来の価格の乱高下が緩和され,現物市場の過熱,急騰も抑制される,こういう理屈です。 たしかに,将来の需給動向を推測しておこなう先物取引などは,資本主義市場経済のもとでは,価格変動の乱高下を平準化する一定の機能をもっています。しかし,それはあくまでも現物取引にたいする副次的取引として機能するときです。 ところが,いま世界市場ではいかいしている投機マネーは,価格の乱高下を自ら引き起こして世界経済を撹乱するモンスターになっています。ケインズが危惧したように,まさに,世界経済が「投機の渦巻のなかの泡沫」になりかねないのが実態です。 新自由主義派の“投機理論”は,市場経済の基礎理論の段階から,さらに発展しました。 とりわけ,その大きな契機となったのは,1960年代から1970年代へかけて,国際通貨制度のあり方をめぐって為替投機の評価について国際的な大論争がおこったときでした。 新自由主義派の理論的な指導者,M・フリードマン教授は“為替投機は,変動相場制のもとで為替レートを安定化させる役割を果たす”という論陣を張りました。 こうして,新自由主義派の経済学から太鼓判をもらって,1970年代に主要国の通貨が変動相場制に移行すると,巨額な投機マネーが大手を振って活動するようになりました。 さらにIT(情報通信)革命は,投機マネーの活動に拍車をかけました。新自由主義派の金融理論家は,「金融工学」などと称して,高度な数学とコンピューターを駆使して,さまざまな新しいデリバティブ(金融派生商品)をあみだし,住宅など不動産までも証券化して投機的取引の舞台を拡張してきました。 昨年以来,世界の金融市場を震撼させているサブプライム・ローン(低所得者向け住宅ローン)の破たんも,こうした「金融工学」理論にもとづいて,アメリカのCDO(債務担保証券)が世界中にばらまかれた結果です。 スティグラー教授は,先に紹介した経済学教科書のなかで,こう述べています。 「大衆…は,常に投機家に敵意を抱いており,誰かが将来を予測したり,予測の誤りによる危険を負担したりする必要があるという経済学者の議論を聞き入れない」(注4) しかし,歴史の舞台は大きく反転し,いまや“スティグラー教授たちの経済学者”の方こそが,投機マネーの跳梁に怒る大衆の声を聞くべきときがきたのではないのでしょうか。(注1,2)ケインズ『雇用・利子および貨幣の一般理論』(東洋経済新報社,157頁,158頁)。ケインズは,資本の利子率の決定を「流動性選好説」という新しい理論で説明し,その「流動性選好」の要因のひとつに「投機的動機」をあげている。(注3,4)スティグラー『価格の理論』(有斐閣,111頁)
Jan 17, 2008
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「(アフガン)本土に陸上部隊を派遣し,武器使用基準を見直すというのだから,もっと審議・検討する価値がある」 自民党の新テロ特措法案作成のプロジェクトチームの中心メンバーで防衛庁長官経験者は,民主党の「対案」を継続審議にした「理由」についてこう述べます。 民主党の「対案」は,「アフガン復興支援」を名目に陸上自衛隊のアフガン本土派兵を盛り込み,自衛隊員による武器使用基準を大きく緩和しました。また国連決議がある場合には,アメリカのアフガン報復戦争と一体である海上阻止活動への参加を検討するとしました。 民主党は与党案に“反対”する姿勢を強調してきましたが,その「対案」は,インド洋での給油継続に限定した与党案よりも大きく踏み込んだ内容です。高村正彦外相も「自民党がそういうものを先に出した場合,民主党が本当に賛成してくれたかわからないものを民主党が出してくれたことは有意義」(1月11日)と述べるほどです。 参議院では民主「対案」に反対した与党が,衆議院で「継続審議」とした最大の狙いは,自衛隊海外派兵の恒久法の実現に向けて“火種”を残すところにあります。 民主「対案」は,「国際的なテロリズムの防止及び根絶」を口実に「我が国の安全保障の原則に関する基本的な法制が速やかに行われるもの」としています。「アフガン復興支援」とは関係なく,自衛隊の海外派兵を恒久化する法制=本格的海外派兵法制の早期整備を義務付けるものです。 恒久法整備を「柱」に「対案」取りまとめを指示したのは小沢一郎代表です。そしてそれは小沢代表と福田康夫首相との「大連立」協議の最大のテーマのひとつでした。 政府は年明け1月8日,新テロ特措法案強行の構えを固めつつ,恒久法の本格検討に着手する方針を明らかにしました。 その根本には,アメリカの先制攻撃戦略に対応して,いつでも機動的に海外派兵する体制を整備する狙いがあります。 2005年10月の在日米軍再編に関する中間報告は「国際的な安全保障環境改善」を口実に,アメリカと日本が海外の共同作戦態勢で「実効的な態勢を確立するための必要な措置をとる」ことを合意しました。 民主「対案」に示される恒久法の内容は,これに応える中身です。 「対案」はふたつの「基本原則」を盛り込むとしています。ひとつは憲法の下での自衛権の発動にかかわるもの。もうひとつが国連憲章にかかわるものです。 これらの「基本原則」についての考え方を,民主党はすでに2006年12月の「政権政策の基本方針」でまとめています。 そこでは国連決議があれば経済制裁や軍事制裁を定めた憲章41条,42条にもとづく行動に参加するとしています。さらに「個別的・集団的といったこれまでの概念上の議論の経緯に拘泥せず」自衛権を行使するとして,集団的自衛権の行使を一部容認しました。 憲法九条のもとで,国連のお墨付きがあれば海外での武力行使を可能とし,それがなくてもアメリカと一体の武力行使ができるということです。 政府は新テロ特措法の1年後の期限切れをにらんでそのときまでに恒久法を整備しておこうと急いでいます。海外派兵体制を常態化する恒久法は,憲法九条と根本的に相いれません。
Jan 16, 2008
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2008年度政府予算案には,障害者自立支援法の「抜本的な見直しに向けた緊急措置」が盛り込まれました。原則一割の「応益負担」は変わりませんが,障害者・家族・関係者の運動やこれと結んだ各地の取り組みが政府を動かしています。 政府の「見直し」を見てみました。 2006年4月に施行された障害者自立支援法は,施行前後から重い負担に批判が噴出。政府は同年12月に,総額1,200億円になる「特別対策」を打ち出さざるをえなくなりました。 それでも障害者・家族の負担は重く,昨年12には与党プロジェクトチームが「見直しの報告」をまとめていました。 「緊急措置」では「特別対策」を継続するとともに,利用者負担の軽減と事業所支援を拡大しました。 「特別対策」では,障害者の居宅・通所福祉サービスの1割負担の月額上限を,「低所得2」(市町村民税非課税世帯)は6,150円,「低所得1」(収入が年80万円以下の世帯)は3,750円に引き下げていました。今回はさらに,「低所得2」は3,000円,「低所得1」は1,500円に引き下げました。 また,福祉サービスの負担上限額を決めるときの所得区分を,「世帯単位」から,「個人単位」を基本とすることに変更。「本人と配偶者のみを勘案する」としました。 これまでは世帯単位のために,本人の収入が少なくても負担軽減を受けられず,やむを得ず世帯分離をする家族もいました。個人単位への変更は障害者・家族の強い要求を受けたもので,改善に向けた一歩です。 障害児をかかえる世帯の負担軽減が受けられる範囲も,年収600万円程度から890万円程度まで広げました。これにともない,年収890万円程度までの住民税課税世帯の月額負担上限は4,600円に抑えられます。 「特別対策」の利用者負担軽減は,期限が切れる2009年3月以降も続けられます。 自立支援法施行に伴い通所施設などの事業所は,報酬が「月払い」から「日払い」になったことと,報酬単価の引き下げによる大幅な減収で,運営が深刻な危機に直面しています。 2006年の「特別対策」では,法施行前の90%の収入を保障しました。今回はそれに加え,通所サービスの報酬単価を約4%引き上げます。 しかし,これは小手先の見直しにすぎず,日払いを月払い制度に戻すことと,一刻も早い報酬単価の抜本的な引き上げをしなければ,根本的な問題解決にはなりません。 今回の「緊急措置」の予算総額は130億円です。そのうち利用者負担の軽減については,70億円であり,「特別対策」の2008年度予算(120億円)を合わせても,わずか190億円にすぎません。 福祉サービスを受ける低所得者の負担を軽減してはいますが,それ以外の自立支援医療,補装具は軽減の対象外です。何より,障害者・家族からの批判が強い「応益負担」には手をつけていない小手先のものです。 「抜本的見直し」というなら,政府は障害者,施設を苦しめている元凶の「応益負担」を廃止すべきです。
Jan 15, 2008
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大学院の博士課程修了者の就職難が深刻な社会問題になっています。その就職率は50%台にとどまり,博士になっても常勤の研究職に就ける若者はごくわずかです。 そのため,優秀な学生が研究者への道を敬遠し,博士課程への進学者が減るなど,有能な研究者の確保が危ぶまれています。日本の学術研究と社会の発展にとって深刻な事態であり,政府は抜本的な対策をこうじるべきです。 研究者をめざして博士課程を修了しても,多くは常勤の研究職に就けず,ポストドクター(3年-5年の短期契約の研究者=ポスドク)や大学の非常勤講師など,短期雇用の職に就くことを余儀なくされます。 こうした不安定雇用は,契約期間終了後の研究や生活の保障がありません。ポスドクや非常勤講師を繰り返すうち,研究職どころか他業種への就職先さえ失う人が激増しています。 しかも,ポスドク(約15,000人)の40%は職場の社会保険に加入しておらず,年収200万円程度の人が少なくありません。大学の非常勤講師を専業とする人(約25,000人)は,40%が年収250万円以下,職場の社会保険に加入しているのは10%もいないとされています。 こうした若者は「高学歴難民」,「高学歴ワーキングプア」とさえいわれています。 博士の就職難は,政府の科学技術政策の「失政」によって生み出されたものです。政府は,1990年代以来「大学院生の倍増」政策をすすめ,博士課程修了者を1990年の6,000人から16,000人に急増させました。 ところが,高等教育充実のための人員増や大学・研究機関の予算の抜本的拡充,民間企業も含めた大学院修了者の就職先の確保など,院生の急増にみあって当然とられるべき施策を政府が怠ってきたのです。 この根本には,高等教育予算が,国内総生産比で欧米諸国の半分しかないという貧困な教育政策があります。 さらに,「構造改革」路線にもとづく市場原理主義や雇用破壊が学術の分野にまで持ち込まれてきました。政府は,研究所や大学の基盤的経費への財政支援を減らし,常勤職への採用を抑制する一方,競争的研究費で雇うポスドクのような非正規雇用におきかえさせたのです。 とくに,国立大学や独立行政法人研究機関に運営費交付金の削減と人件費5%削減を押し付け,常勤研究職への採用を減少させました。このために,後継者が不足し,学術研究を引き継ぐことが困難だという悲鳴が研究現場であがっています。 若手研究者の就職難と劣悪な待遇を解決するためには,これらを根本から改める必要があります。政府は,ようやく「多様な職業選択」の支援や「安定的な職を得る仕組み」の導入などに乗り出しましたが,極めて不十分です。 ポスドクや非常勤講師など若手研究者の深刻な実態を国の責任で調査し,それをふまえた抜本的な解決策をとる必要があります。 そのために,大学や研究所で必要とされる教員・研究員の増員をはかり,研究者の非正規雇用を抑えることは,待ったなしの課題です。日本の大学の本務教員1人当たりの学生数は,イギリスの1.4倍,ドイツの1.7倍です。 これからみても大学教員の増員は不可欠です。 均等待遇にもとづく賃金の引き上げやポスドクの転職支援,大学院生への経済的支援の強化などの対策をこうじることを強く求めます。
Jan 14, 2008
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春闘の時期を迎えて,財界から自民,公明の与党にいたるまで,「給与アップ」発言が相次いでいます。 なぜこんな発言が飛び出しているのか,その背景に何が… 「10年以内に主要国で最高水準の所得を実現するよう政府に求めたい」 こんな年頭所感を掲げたのは,日本経団連の御手洗冨士夫会長。人口1,000万人以上の国でみると,1人あたりの国民所得が日本は4位(2005年)と落ち込んでいるとして,「国民一人ひとりが豊かな生活を享受できる」社会をめざすとぶちあげました。 さっそくこれに飛びついたのが,公明党の太田昭宏代表。1月2日の街頭演説で,「2010年までの3年間で給与所得を過去最高の水準に持っていく」と打ち出しました。 今年初めての会合となった1月7日の政府与党連絡会議。太田氏の主張に自民党の伊吹文明幹事長も「労賃の配分を高めていくことは,的を射た発言である」と応じました。 「所得アップ」が財界から政府与党の「共通目標」になったのです。 この背景には,大企業が史上最高の収益を謳歌する一方で,年収200万円以下の低所得者が1,000万人を超えるなど貧困と格差を拡大させた責任が国民から問われ,参議院選挙で自民党・公明党連立与党が惨敗したことがあります。 太田代表が「労働分配率を考えても大企業は低い。大企業から中小企業へ,企業から家計へ,家計を元気にする戦略に踏み出していかなくてはいけない」(1月6日のNHK日曜討論)と強調する所以です。 消費の低迷が日本経済に影を落とすもとで,賃上げや安定雇用によって家計を豊かにし,内需拡大による経済成長をはかることが急務になっていることも見逃せません。 伊吹幹事長は政府与党連絡会議で,所得水準低下の原因について,「派遣社員だとか自由化が進んで,結果的に労働賃金の二極化が起こっている」と指摘。「これが消費が伸びない大きな原因である」と述べました。 経団連が昨年末に出した経営労働政策委員会報告でも,「手取りの収入が伸び悩み,個人消費の増勢鈍化が懸念されている」と指摘。「安定した成長を確保していくためには,企業と家計を両輪とした経済構造を実現していく必要がある」と言わざるを得ません。 政府・財界あげてすすめてきた賃金抑制と非正規雇用の拡大路線が行き詰まりに直面していることを示しています。 それでは,賃上げによる所得水準アップが実現することになるのか。 御手洗会長は1月10日の労使フォーラムで,「全体としては企業業績は堅調で,働く人への配分を考慮できる状況になっている」としながらも,「業績が良く余力がある企業は検討してもいい」と述べるなど,全体としては低賃金を押しつける基本姿勢を変えていません。 同フォーラムでトヨタ自動車の小沢哲専務も「生産性向上の裏付けのない賃金引き上げが結果として国際競争力を落とすことは自明」と述べ,生産性向上の名で賃上げを牽制しています。 伊吹幹事長も結局は,「自由競争社会だから経営者に(賃上げを)強制することはできない」として,残業代の未払いがないようにすることぐらいしかいえません。 マスメディア各社が,「賃上げ容認」と報じる内実はこのようなものです。 安定雇用をめぐっても安定雇用を増大させる方向ではありません。労働者派遣法の改正について政府は昨年末,財界が反対すると,早々と見送る方針を固めました。 それだけに,労働者と労働組合が積極的な要求を掲げて,国民的な共同を広げて政府・財界の賃金抑え込みをはね返し,要求を勝ち取るたたかいが重要になっています。 全労連の坂内三夫議長は,労働者はじめ国民すべてに貧困が広がるもとで,「中小業者や農民,生存権裁判をたたかう市民など貧困根絶を求める国民との共同を強め,貧困撲滅春闘にしよう」と呼びかけています。 格差是正と内需拡大を掲げる連合の高木剛会長は「賃上げ容認」発言について,「積極果敢に要求してしっかり交渉することに尽きる」と労働側の奮闘を強調します。 今春闘での賃上げは,貧困をなくし,日本経済の健全な発展にとっても不可欠の国民的課題になっています。参議院選挙がつくりだした情勢を生かして,春闘でも要求を大きく前進させるたたかいが焦点となっています。
Jan 13, 2008
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参議院が否決した新テロ対策特別措置法案を,自公両党が衆議院で再可決したことにつよく抗議します。 アメリカのアフガニスタンに対する「報復戦争」を支援するためのテロ新法は,アフガニスタンの和平努力をも妨げる,憲法違反の悪法です。本来,審議未了にして廃案にすべきものです。国民の多くはテロ新法に反対です。国民の意思にそった参議院の歴史的否決を,数の暴力でくつがえすなど言語道断です。 日本の戦争支援が国際社会の和平に向けたとりくみの流れに逆らうものであることは明らかです。 7年にわたるアメリカの「報復戦争」は,テロをなくすどころか,世界にテロを広げ,アフガニスタンの治安を悪化させているだけです。アメリカ軍とNATO(北大西洋条約機構)中心のISAF(国際治安支援部隊)が一体となった攻撃で国民の犠牲は増える一方です。 人道復興もままなりません。戦争を続ければ事態はますます悪化します。憲法で戦争を放棄した日本が戦争継続に手を貸すなど許されるべきではありません。 テロ新法は,インド洋に自衛隊を再派兵してアメリカ艦船などへの給油支援を再開するとともに,アメリカ軍の海上作戦にたいする無制限の戦争支援に道を開いています。政府は,インド洋での海上阻止活動に従事してさえいれば,自衛隊が給油する相手の艦船はアフガニスタンだけでなくイラクなどでも軍事作戦できるという見解を公然とうちだしています。 アメリカに追随し,アメリカの戦争に参加・協力する道を突き進むのでは,日本は平和を願う諸国に相手にされるはずはありません。 福田康夫首相は,国際社会のためだといって,テロ新法の成立を強行しました。しかしこれは,「報復戦争」参加国のなかでも戦争の手法を見直す動きがつよまっているいま,通用するものではありません。 当のアフガニスタンではカルザイ政権はテロのネットワークに加わらないタリバンとの交渉にふみだし,和平のプロセスを進めています。アフガニスタン議会の上院は,そのために,アメリカ軍に軍事掃討作戦の中止を求めています。 当事国の意思を無視して戦争を続けるのは横暴のきわみです。アメリカ軍への批判は当然です。 派兵国の変化も重要です。アメリカの盟友で「報復戦争」主要参加国であるイギリスのブラウン首相は昨年12月,反政府勢力の壊滅をめざした軍事一本やりの方針から,対話を通じて和解を促進させる戦略に重心を移すと述べています。 オーストラリアの新政権のフィッツギボン国防相も「大幅な方向転換」を明言しました。アメリカ国内でも批判の声が高まっています。 国際社会は戦争の手法を見直しつつあります。日本も軍事一本やりのやり方を見直すべきです。アメリカいいなりに,自衛隊をインド洋に再派兵し給油支援を再開するのは,世界の和平の流れに逆行する愚行です。こんなことを続けていては,日本は世界で孤立するだけです。 イラク戦争を契機として,紛争やテロを軍事力でなく,平和的・外交的に解決する動きがいよいよ大きくなっています。「平和的手段」による紛争の解決を求めている国連憲章に沿う流れです。これを広げつよめることが国連加盟国の責務です。 憲法で戦争を放棄した日本が,平和的・外交的解決をめざす流れの先頭に立ってこそ,世界の平和に貢献できます。
Jan 12, 2008
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「この法案を提出したころに比べて,随分(国民の)理解が進んでいる」 「今,間違いなくアフガニスタンは改善の方向に向かっている」 福田康夫首相は参議院外交防衛委員会で新テロ特措法案が否決された1月10日,野党議員の追及にたいし,こう言い放ちました。 法案提出当初,賛成が反対を上回っていた世論調査が,昨年末に完全に逆転したことは周知の事実です。にもかかわらず「理解が進んでいる」とは,アメリカのためなら,国民世論を無視してもかまわないという福田首相の立場が如実に現れています。 同時に,事実をあべこべに描くしかないところに,政府・与党がいかに窮地に追い込まれているかが示されています。 一方,アフガンの現実はどうか。 アフガン国民は,1979年に開始された旧ソ連による侵略以来,約20年にわたり戦争と内戦の惨禍の犠牲となり,数百万人が難民となりました。現在は,アメリカ軍による,時には無差別の攻撃に日々さらされています。 このアメリカ軍の攻撃がいかにアフガン国民を苦しめ,治安を悪化させ,さらにはテロの温床を広げているかは,アメリカCBSテレビが昨年10月末に伝えた次のような住民の声に象徴されています。 「私たちはこれまで,アメリカ軍よりもはるかにソ連軍を憎んできた。しかし,アメリカ軍がおこなっていることすべてを目撃したいまいえるのは,ソ連軍の振る舞いはアメリカ軍よりずっとましだったということだ」 アメリカ軍と武装勢力の双方の攻撃がエスカレートし,このままでは情勢のさらなる悪化が必至だからこそ,当初,アメリカの「かいらい」といわれたアフガンのカルザイ大統領も,現在は空爆の中止を求め,テロリストではないタリバンとの「平和と和解のプロセス」を探求しているのです。 新テロ特措法案の中身は,アメリカ軍の報復戦争支援そのものです。政府・与党による同法案の衆議院再議決は,アフガン政府や国民の努力に冷水をあびせる以外の何物でもありません。 アメリカ軍はいま,4月から海兵隊3,000人を増派して,さらに戦争体制を強化することを検討しており,自衛隊の再派兵はその動きにも呼応しているといえます。 野党の追及に対し,福田首相は「アメリカ追随じゃない」(1月10日)などといいますが,首相が就任早々に訪米し,ブッシュ大統領に,新テロ特措法成立に向け全力をあげると約束したのは紛れもない事実です。 自衛隊の撤退をうけ,アメリカだけが唯一,日本を非難したことを見ても,日本政府がどこを向いているかは明らかです。 本当にアメリカ追随でないならば,自衛隊の再派兵反対の世論に真摯に応えるとともに,アフガンをめぐる現実をありのままに見つめ,そしてあらゆる想像力を発揮して対処するはずです。 それをしないで,憲法九条をふみにじる戦争支援法を強行したことは,首相のキャッチフレーズである「国民の目線」が,実は「アメリカの目線」にほかならないことを示すだけです。
Jan 11, 2008
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再延長した臨時国会の会期末(1月15日)が迫るなか,海上自衛隊をインド洋に再派兵する新テロ特措法案をめぐり,緊迫した局面を迎えています。 政府・与党は衆院での再議決を強行し成立させる構えです。しかし,これまでの国会審議や国民世論からみても,同法案は廃案以外にありません。 「国民や国会によく説明し,ご理解をいただくよう全力を尽くす」,臨時国会での所信表明演説で福田首相は,新テロ特措法案についてこう語りました。 しかし,臨時国会を再延長しても,「国民の理解」は深まるどころか,先月実施された新聞各社の世論調査では,海上自衛隊のインド洋での給油活動について不支持が支持を上回る結果が相次いでいます。 たとえば「毎日」(2007年12月18日付)の世論調査は給油活動を「再開すべきだ」41%にたいし,「このまま中止すべきだ」は50%。前回調査の「賛成」48%,「反対」43%が逆転しました。 自民党・公明党連立与党が衆議院の2/3で再議決しようとする姿勢についても,「毎日」の調査は「支持しない」が57%と大きく上回っています。 世論の支持もなく,昨年の参議院選挙で示された民意を再議決でひっくり返すことは許されません。 福田首相はインド洋への再派兵で「世界のために汗を流す日本の姿を示したい」(1月4日)などと繰り返しています。 しかし,対テロ報復戦争への支援は,「テロ根絶」に役立つどころか,事態をさらに悪化させていることは明らかです。 日本がやるべき国際貢献は,アメリカ主導の対テロ報復戦争への支援ではなく,アフガニスタンの和平を支援する外交的努力を尽くすことです。 アフガニスタンのカルザイ政権も,空爆に反対し,タリバンを含む武装勢力との交渉による和平を目指す「平和と和解のプロセス」に踏み出しています。 アフガニスタンに派兵しているアメリカの同盟国であるイギリスやオーストラリアからも,軍事的手法から政治的解決に戦略の重点を移すべきだとの声が挙がるほどになっています。 再派兵論者は“再派兵しないと国際的に孤立する”などといいますが,給油中断で国際社会から日本が非難されているわけでもありません。アメリカが「失望した」(国務省報道官)と表明しただけです。 派兵を担う防衛省・自衛隊が軍事利権疑惑にまみれているのでは,法案を提出する資格そのものがありません。 疑惑の端緒となったのは,海外派兵体制づくりを進めてきた防衛省の事務方トップ=守屋武昌前事務次官の逮捕。疑惑は拡大の一途で,贈賄側の「山田洋行」元専務・宮崎元伸容疑者が業績を拡大する足場としていた「日米平和・文化交流協会」にも向けられています。 同協会は,軍需企業,自民党・公明党・民主党の国防族議員らがメンバーとして名を連ねています。 同協会の秋山直紀常勤理事への参考人質疑(1月8日の参議院外交防衛委員会)では,自民党議員からでさえ「防衛省と防衛産業は,防衛機密のベールでガードされている。官民ともに防衛機密に安住しているのではないか」という声があがりました。 疑惑を徹底解明することもせず,法案を強行するとなれば,国民の批判は必至です。
Jan 10, 2008
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昨年12月にインドネシア・バリ島で開かれた気候変動枠組み条約第13回締約国会議(COP13)は,2009年を交渉期限として,2013年以降の温室効果ガスの削減目標と対策を検討する行程表を決めました。 これは温暖化防止の「地球規模での行動への重要な前進」でした。COP13は(1) 「すべての先進国」は「排出の抑制および削減に関する数量化された目標を含め,計測・報告・検証可能な各国の適切な緩和の約束・行動」をする。(2) 京都議定書で削減義務を負わない発展途上国も「技術支援され,財政措置と能力構築により可能にされた,持続可能な開発の文脈で,計測・報告・検証可能な緩和の行動」をとる。などを確認しました。(1)の「排出の抑制および削減に関する数量化された目標」という表現は,京都議定書第三条の同様の規定を踏まえたもの。先進国が数値目標をもって削減する議定書の方式が,2013年以降の新対策の検討対象に含まれていることを意味します。 バリ会議の決定は,多数決ではなく各国の総意によるコンセンサス方式でした。COP13の合意文書で削減数値目標への言及にアメリカが反対し,日本などが同調したため,「2020年に先進国が1990年比で25%-40%削減する」との数値目標が書き込まれない「残念な結果」となりました。 しかし会議の合意文書から,この数値目標が消えたわけではありません。COP13の合意文書は,「深い削減」の必要や,IPCC(気候変動に関する政府間パネル)報告に示されたような問題対処の「緊急性」を強調しています。 IPCC報告の関連部分のページ数を脚注で掲げています。そこで指定されたページは,温室効果ガス排出量をCO2換算で450ppmに抑えるには「先進国が1990年比で25%-40%削減」する必要があることを表で示しています。 またバリで同時に開かれた京都議定書第三回締約国会合(COP/MOP3)の採択文書では「2020年に先進国が1990年比で25%-40%削減する」必要が合意されました。 バリ会議がアメリカの思惑通りになったわけでないことは,会議の決定へのアメリカの態度表明に示されています。アメリカ国務省が昨年12月15日に発表した声明は,「気候変動問題は先進国だけでは適切に対処できない」,「発展途上国は,その経済規模などに応じて明確に区別して,責任を負うべきだ」などと述べ,バリ会議の決定に「深刻な懸念」を表明しました。 同時に,これは,最大の排出国・アメリカの責任を棚上げすることが途上国の参加の阻害要因となることを承知の上で,中国などの排出量増加を口実に自国の責任を回避する立場に固執する宣言といえます。 バリでの議論でも明らかなように,今後の交渉では,京都議定書のように先進国が削減数値目標を義務化する方式を継承・発展させるのか,日米両政府が主張する「各国の自主性任せ」=義務化放棄の道をとるのかが,大きな争点になります。 この点で注意すべきなのがアメリカの動きです。アメリカのグレイEU(欧州連合)大使は昨年12月18日の記者会見で,オゾン層保護に関するモントリオール議定書の交渉のときのように,今回もアメリカ主導の主要国間交渉を重ね,自国に有利な合意への道筋をつける考えを明らかにしました。 アメリカは1月末にハワイで2度目のアメリカ政府主催の主要排出国会議を開くのをはじめ,頻繁にこの種の会合をもち,有力国間で既成事実を積み重ねようとしています。 また温暖化問題が主要議題になる7月の洞爺湖・主要国サミットが「空洞化」される可能性もあります。 アメリカ主導の協議が新対策の交渉の正当性を傷つけるなら,逆効果です。合意の公平性を確保するため,2009年までの交渉はあくまで国連が主軸になるよう,日本も含め,努力する必要があります。
Jan 9, 2008
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食料の安定した生産と供給,農漁村など地域社会の健全な発展にむけた取り組みが,新しい年の緊急な国民的課題になっています。 昨年後半から顕著になった国際穀物価格の急騰は,食料品や飼料の価格を上昇させ,国民生活をじりじりと圧迫しています。同時に,地球温暖化による農漁業の生産条件の悪化や食料資源の減少,発展途上国の人口増とバイオ燃料による需要の急増などのため,国際的な食料不足が現実の問題になっています。 昨年秋から,インド,ロシアなど6ヶ国が,自国消費を優先しコメ,小麦などの輸出規制を実施しました。中国も大豆,トウモロコシ,ソバなどの輸出数量制限を設けたと報道されています。金にあかせて世界中から食料を買い漁ってきた時代は,確実に終わろうとしているのです。 自民党政府が続けてきた自由化一辺倒,国内生産の切り捨て,小泉内閣以来の「構造改革」路線のもとで,日本の食料自給率は39%と40%を切りました。 コメをはじめ農産物の生産者価格の低落で,生産をあきらめる農家や耕作放棄農地が激増するなど農業生産の基盤崩壊がすすんでいます。地域経済と地域社会の崩壊も深刻になっています。 農業の再建と地域社会の再生に道をひらくことは,新しい年のまったなしの課題です。 昨年は一部の大規模経営だけを農政の対象にする品目横断的経営安定対策と政府がコメの需給にいっさい責任をもたない「農政改革」が全面実施され,参議院選挙ではこの農業・農村切り捨て政策に対する怒りが与党を敗北させました。 さらに,品目横断対策の農家選別による現場の大混乱,昨年産米の米価の大暴落は,農民・農業団体の怒りをいっそう高めました。農民連を先頭にした集会と政府交渉,農協関係の決起集会などで,コメ政策,品目横断対策の中止・変更を求める声がわき起こりました。 その結果,米価暴落対策では,備蓄米の34万トン買い入れ,備蓄米の安値放出中止などを実施させ,米価の大暴落に一定の歯止めをかけました。 品目横断対策について政府は,対象農家や集落営農の要件緩和,米価暴落対策の拡大,助成金の早期支払いなどの手直しを行い,名称も「水田(北海道は水田・畑作)経営所得安定対策」に変更しました。 国民の声が政治を動かす新しい政治の流れとともに,「農政改革」が政策的に破たんしていることをも示しています。 政府は,「制度の内容の普及・浸透が十分でないことによる不安」があり,「制度の基本は維持しつつ,地域の実態に即した所要の見直し」(農水相の年頭所感)をしたという認識です。 昨年の米価暴落要因のひとつである備蓄米の安値放出も次年度には再開する計画であり,米作減反については,目標達成に国が積極的に関与する,強制減反に戻そうとしています。米価暴落の原因も農家・農村の危機も解決するものではありません。 政府は農業を国の基幹産業に位置づけて,適切な国境措置と価格保障を柱に,家族経営と国内生産を発展させ,食料自給率を向上させる農政に転換しなければいけません。米価暴落をくいとめ,農家・農村を守る政治は「国民の食」を守ることでもあるのです。 新年を農政転換に踏み出す年とするために,この取り組みを激変する食料・農業情勢にふさわしく発展させるよう,国民自身も日本の農政について考える一年にしなければいけません。
Jan 8, 2008
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今年は,オリンピックをはじめ,競技スポーツに耳目が集まる年です。トップ選手の活躍とともに,スポーツ界の動きが注目されます。 1月13日から大相撲一月場所が開幕しますが,深刻なファン離れの打開を迫られています。横綱の身勝手な振る舞いや,新弟子への暴力・致死事件をふまえて,充実した土俵をどう回復するか,いかに力士の人権を尊重していくか,角界の体質改革は“待ったなし”です。 2月にはサッカーのワールドカップの男子アジア予選がいよいよ始まります。3月には若い日本選手の活躍が見もののフィギュアスケートの世界選手権が控えています。 気になるのが,人気競技に対していたずらに絶叫したり,一部選手の追っかけに走る報道姿勢です。高水準のプレーと表現をじっくりと観戦できてこそ,深い感動は伝わるものです。 高校野球は春の選抜が80回,夏の選手権が90回の節目を迎えます。昨年は,プロ球団の「裏金」問題と特待生制度の是非をめぐって大きく揺れ動きました。 求められているのは,関係者も球児もあらためて学生野球の原点に立ち返り,ひずみを正す一歩を堅実に踏み出していくことではないでしょうか。 目白押しなのがオリンピックの代表権がかかる選考会です。ベテランの力の発揮はもちろん伸びざかりの選手の台頭を願い,アジア予選をやり直す男子ハンドボール,最後の出場枠に望みをつなぐ男女のバレーボールなどの奮起に期待したいと思います。 競技団体に問われているのが,だれもが納得できる明確な選考基準の確立であり,選手が競技に打ち込める環境を整えることです。 4年に一度のオリンピックの今回の開催地は,中国の北京です。第29回夏季大会は8月8日から,身体障害者のパラリンピックは9月6日から始まります。アジアで3回目,隣国での開催だけにその成功を願ってやみません。 北京大会がかかげる理念のひとつが「緑の五輪」です。温暖化や異常気象などから地球環境を守る世界規模の行動の一端を,オリンピックは担わなければなりません。 北京はスモッグなど大気汚染が著しいと聞きます。熱中症の防止や選手の健康保持に,大会関係者の本腰を入れた対策が求められていますし,マラソンなど炎天下のレースの実施には細心の注意を払ってほしいものです。 ドーピング(禁止薬物使用)汚染とのたたかいでも,スポーツを通じた世界平和への貢献でも,北京オリンピックが新たな跳躍台になることを願っています。 ちょうど今年は,「スポーツは人間の基本的権利である」と宣言したユネスコの体育・スポーツ国際憲章が制定されてから30年目です。憲章は,競技スポーツのあるべき姿をつぎのように提言しています。 「競技スポーツは…オリンピックの理想にしたがって,それを最高の典型としている教育的スポーツの目的につねに役立つことをめざさなければならない。それはけっして利潤を追求する商業的関心に影響されてはならない」(第3条)。 フェアプレーの精神をつらぬき,人間的な発達と可能性を切り開いていくことは,21世紀の競技スポーツの発展方向だといえるでしょう。世界の競技者とともに日本選手がオリンピックや国際舞台で,競技のうえでも交流の面でもその真価を発揮する年でありたいものです。
Jan 7, 2008
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“『有事』だから秘密で当然”。インド洋で海上自衛隊が行ったアメリカ軍など外国艦船への給油活動。その燃料調達先の商社について防衛省は,国会論戦でも「軍事秘密」を盾に,ひた隠しにしています。昨年12月25日,調達商社2社を一部のマスコミが報道していましたが,防衛省はいまだに正式に公表しようとしません。 かたくなな秘密主義の背景に「有事」を口実にした危険な軍の論理があることが,関係者の証言などで浮き彫りになりました。 「(一部のマスコミに」商社名をスクープされて防衛省幹部はショックだったようだ。しかし,マスコミの取材にたいして防衛省は詳細を明らかにしなかった。なんでも秘密にする傾向がますます強まっている」。防衛省を取材するマスコミ記者は,こうあきれます。 給油燃料の調達は,大手総合商社「伊藤忠商事」(大阪市)と燃料関連商社「旭日通産」(横浜市)との随意契約。152回の契約(2001年から2007年4月2日現在)すべてを2社が独占し,税金225億円が投入されていました。 初めから特定の業者と契約を結ぶ随意契約は,不透明さが汚職の「温床」と指摘されています。批判が高まっているにもかかわらず,給油燃料調達で随意契約に固執し,企業名も秘匿するのはなぜなのか。関係者はこう語ります。 「随契で2社が独占していると批判されますが給油活動は『有事』対応なんですよ。『有事』のときに悠長に入札なんかやってられますか」 自衛隊の幹部を集めた会議で制服組トップである統合幕僚会議議長が「今や,ある意味で組織にとって『War Time』(戦時)である」と強調したことがあります。この「戦時」意識が,給油活動にも露骨にあらわれています。 関係者は「油を運ぶ船がテロに襲われるのが一番こわい。船員にイスラム原理主義者が紛れ込むかもしれない。だから秘密裏に,日本人だけで船を仕立てることが必要だった」ともいいます。 給油活動の本質は,憲法違反の海外派兵による「戦争支援」です。これを給油にかかわる側はどうとらえているのか。関係者はこう語ります。「湾岸戦争のときは,金で解決して国際的に批判された。今回は,外国艦船への給油で,国内外で大歓迎されている。」 給油活動は,巨額の税金が投入されながら,燃料の調達先や調達場所など,国民には不明なことだらけです。 商社2社は,どこから燃料を調達しているのか。 防衛省が作成した「中東地域の港湾に停泊中の艦船を納入場所とする艦船燃料」の「募集要項」をみると,「燃種」は「軽油2号(艦船用)又は米軍規格(MIL SPEC F-76)」とあります。 国会でも同省は燃料の調達について「日本の商社が現地で調達をしている。契約は民民ベース」と答えるのみです。「現地」とはどこなのか,調達先の石油会社はどこなのかなど,情報は公開されていません。 旭日通産は,昭和シェル石油と特約店契約を結ぶなど深い関係です。昭和シェル石油は取材に対して,「インド洋給油の事実はない」と答えました。伊藤忠商事は「契約に守秘義務がある」と回答を避けています。 日本には,世界に誇る平和憲法があります。それを無視して「有事」だと非民主的な秘密主義を強めることは許されるものではありません。 また随意契約で国民の税金を特定の業者のいい値で使うことは許されません。ましてアメリカの戦争・戦争支援のために使うなど決して許されるはずもありません。
Jan 6, 2008
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昨年12月,トヨタについての二つのニュースが世界をかけめぐりました。 ひとつは,トヨタの2007年の生産実績見通しが951万台(ダイハツと日野を含む)となり,GM(ゼネラル・モーターズ)の926万台を抜いて,初めて世界一になったというニュースです。GMは,1931年以来,77年間も維持した首位の座を明け渡すことになりました。 もうひとつは,トヨタ自動車で働いていた内野健一さんが過労死した事件の裁判で,原告の妻,博子さんが名古屋地裁で全面勝訴したというニュースです。 ロイターやAP通信,CNNテレビ,経済専門誌など海外マスコミは,内野さんが月100時間以上の「サービス残業」を強いられていたというトヨタの労働慣行の異常ぶりを詳しく報道しました。 第一のニュースに関していえば,トヨタはどのようにして生産台数世界一になったのか。 トヨタは“ものづくり”の方法を極限まで効率化し,「よい品質で安い商品を,売れるときに,売れる量だけ作る」というトヨタ式生産方式をあみだすことによって国際競争力を強化し,GMなどの販路を奪いながら世界市場でのシェアを拡大してきました。 トヨタ式生産方式は,たしかに自動車の品質向上(不良品の排除,燃費の効率化など)を“ものづくり”の基本にすえています。しかし,同時にそれは,「乾いた雑巾をさらに絞る」とか「徹底的に無駄をなくすかんばん方式」などといわれるほど過酷な労働強化やコスト削減で支えられています。 19年間も系統的にトヨタ取材を続けてきたある新聞記者は,トヨタの異常なもうけぶりの秘密を,最近まとめた『トヨタ 世界一の光と影』(いそっぷ社)のなかで,あますところなく暴き出しています。 トヨタ資本がいかに効率よく儲けているかを示す総資本利益率でも,トヨタはGMを大きく超えています。総資本利益率は,売上高利益率×総資本回転率で計算されますが,別表のとおり,利益率でも回転率でも,トヨタはGMよりはるかに高い水準です。 第二のニュースに関していえば,イギリスの経済誌『エコノミスト』(2007年12月19日号,電子版)は,「日本の過重労働による死」という論評の冒頭で,こう書いています。 「HARA‐KIRI(腹切り)は,自殺の日本独特の形態である。その日本企業における表れが“karoshi”(過労死)である」 この論評では,トヨタの内野さんの過労死裁判をもとに,「日本の労働者は死ぬまで働いている」,「こうしたハードワークこそ,戦後日本の経済的奇跡のコーナーストーン(礎)である」と指摘しています。 『エコノミスト』の論評は,一面では「ルールなき資本主義」といわれる日本の過重労働の実態を厳しく告発しています。しかし,他面では不正確な点もあります。現代日本の「過労死」の本質は,封建時代の“腹切り”との類推で説明されることではないからです。 よく知られているように,マルクスは,『資本論』のなかで19世紀前半のイギリスの「過労死」の実態をとりあげ,それが「資本の搾取欲」からきていると分析しています(注)。 日本の「過労死」の問題性は,こうした19世紀前半のイギリスと同様に,「資本の搾取欲」を抑制する社会的ルール,国家的規制が極めて不十分であること,まさにそこにトヨタに代表される現代日本企業の労働慣行の根本問題があることを示しています。ところで,ついに世界一にまで登り詰めたトヨタは,これから先,どこへゆくのか。 第一に,「世界一トヨタ」を支えてきたトヨタ式生産方式に危険信号がともっています。そのひとつの表れが内野さんの過労死に象徴される過酷な労働強化の問題です。「過労死のトヨタ」と「世界一トヨタ」は,両立するものではありません。 トヨタの“ものづくり”の核心である品質と安全性への信頼も揺らいでいます。近年,トヨタ車のリコール件数は,2001年の4件45,000台から2005年には14件1,927,000台へと激増しています。 第二に,トヨタがこれから後もなお生産拡大を続けていくためには,国内市場はほぼ限界にきており,海外での生産と市場を急速に拡大していかねばならないでしょう。 すでにトヨタ単独の海外生産比率は国内生産を超えており,従来と同じように世界市場でのシェア拡大を追求し続ける限り,いちだんと多国籍企業化の道を進まざるを得なくなります。 第三に,世界の自動車産業では,不振にあえぐアメリカのビッグスリーを中心に,新たな提携・合併の大再編が起こる可能性があります。もし鉄鋼産業のように世界企業同士のM&Aが進展したなら,一夜にしてトヨタよりはるかに巨大な世界企業が生まれることもありえます。 いずれにせよ,トヨタをめぐる国際競争戦は,いっそう厳しくなるでしょう。 第四に,トヨタがグローバル競争で「ひとり勝ち」を続けたとしても,21世紀の自動車産業は,地球温暖化防止という全人類的な最優先課題に直面しています。「世界一トヨタ」が率先して,従来の生産拡大路線を再検討することが求められています。 いずれにせよ,「世界一トヨタ」の社会的責任は,グローバルな規模で重くなっていくことはまちがいありません。※(注)マルクスは,『資本論』第1巻で,資本の異常な搾取欲による過度労働が過労死をもたらすと,次のように告発しています。◇ 「資本は労働力の寿命を問題にはしない。それが関心をもつのはただひとつ,一労働日中に流動化させられうる労働力の最大限のみである。資本は,労働力の寿命を短縮することによってこの目的を達成する。」 (『資本論』新日本新書(2)456ページ)
Jan 5, 2008
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アメリカの経済覇権を支える構造に大きな転機が訪れています。その象徴となっているのが,国際経済をゆるがしている「サブプライムローン」(アメリカの低所得層向け住宅ローン)の破たんと原油の暴騰です。 アメリカの住宅バブルが崩壊し,低所得層を食い物にしたサブプライムローンの焦げ付きが世界の金融市場に不安の連鎖を広げ,株価やドルを下落させています。借金まみれで消費を増やし,「最先端」の金融市場が世界の投機資金を引き寄せるという,アメリカ経済の膨張の仕組みそのものが打撃を受けています。 石油価格の国際指標となっているニューヨーク先物市場では,ヘッジファンド(国際投機集団)や機関投資家が巨額の「ペーパー取引」を繰り返し,価格をつりあげています。 1980年代にレーガン政権がエネルギー市場を自由化し,ニューヨークで先物取引が始まりました。原油市場の「カジノ化」は,エネルギーを市場にゆだねる「市場原理」政策の根本的な失敗を示しています。 サブプライム問題と原油暴騰の2つの衝撃が明るみに出したのは,市場万能論の土台の上に金融投機で利益を蓄積するアメリカ経済と,その血液であるドルへの不信です。 ドル安はかつてなく深刻です。アメリカは貿易と財政の「双子の赤字」を抱えていますが,黒字を続けてきた「所得収支」も国の借金返済の増加で急降下しています。FRB(アメリカ連邦準備制度理事会)によると,主要通貨に対するドルの価値は過去40年で最低に落ち込んでいます。 ドルが下落し,資金が流出してもドルが世界の資金決済で通用する基軸通貨である限り,FRBが金融緩和し,ドルを増刷すれば支払いには困らないかもしれません。 しかし,いま,アメリカが戦後60年間ほしいままにしてきた基軸通貨国の地位が曲がり角にさしかかっています。ユーロの定着,産油国のドル離れの動きに加えて,中南米・アジア諸国が,ドル基軸体制を支えてきたIMF(国際通貨基金)から自立し,地域の自主的な通貨政策を模索し始めていることです。 こうした流れは世界経済の構造変化に根ざしています。各国通貨の実力を表す購買力平価で見ると今年,世界経済に占める先進国の比重が初めて50%を割り込む見通しです(IMF推計)。 アメリカの比重が2000年の21%から19%に低下し,代わって中国の比重は11%から17%弱に伸びています。 世界経済に重大な混乱をもたらしてきたアメリカの経済覇権体制の根幹が崩れ始めるとともに,アメリカに深く従属してきた日本経済の進路が鋭く問われています。 アメリカの介入と財界・自民党政府の追従は,日本経済の危機と矛盾の大きな要因となってきました。1980年代には金融政策への介入で急激な円高に見舞われ,1990年代以降は公共投資基本計画やアメリカ流の規制緩和の押し付けで,財政赤字,雇用悪化,地域経済の疲弊など,国民のくらしに深刻な被害が及んでいます。 異常な対米追従は自民党の経済運営ゆきづまりの大きな原因です。 アメリカのくびきを離れて自主的な経済政策を確立することは,財界・大企業中心の政治の転換とともに,くらしと経済を安定的に発展させる上で避けて通れない課題です。 アジア諸国との連携を深め,日本経済の自主的な発展の道を切り開くことが,いまほど強く求められているときはありません。
Jan 4, 2008
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21世紀の8年目を迎え,各新聞の社説を一読しました。 各紙の社説に共通するのは,おしなべて現状への悲観論です。「今年もまた,穏やかならぬ年明け」(「朝日」),「世界の構造的変動のただ中にいる」(「読売」),「世界を覆う霧は今も深い」(「毎日」)などです。 「産経」は社説(主張)ではなく論説委員長の署名入りの論文ですが,より直截に「“危機の20年”へ備えと覚悟」を求めています。 もちろん,これらの社説に見られる“危機意識”が,アメリカ一極支配の揺らぎや,日本での自公政治のいっそうの行き詰まりなど,現実政治を反映している側面があるのは否定できないでしょう。 年初から本格化するアメリカの大統領選挙で共和党の敗北が確実視され,日本でも昨年の参議院選挙での自民党・公明党連立与党の敗北に続き年内には総選挙も予想されるなど,世界でも日本でも時代が激動しているのは明らかです。 しかし,各紙の社説に悲観論が漂うのは,そうした激動する時代の前進面に目が向かず,否定的な見方に落ち込んでしまっているからです。それは多かれ少なかれ,これらの新聞が現状を肯定する立場にとらわれているためでもあります。 たとえば,「唯一の超大国」として君臨してきたアメリカ一極支配の揺らぎは,どの国にとっても一国だけでは世界が思うように動かせない時代がきたということであり,各国が自主的に,平和のために力を合わせる条件が広がったことを示すものです。 ところが,「多極化世界への変動に備えよ」と題した「読売」社説では,アメリカにかわって台頭する中国やロシアに警戒感をむき出しにしており,それに備えるには日米同盟をさらに強化すべきだというものになってしまいます。 その立場は,日米の軍事同盟を不動の前提として,日米関係からしか世界を見ない,最悪の現状肯定主義です。この点では,最優先の「覚悟の国家戦略」は「対米関係の構築」だという「産経」論説委員長の論文も,同じ立場です。 一方,「歴史に刻む総選挙の年に」と題した「朝日」の社説が,衆参の「ねじれ」国会による政治の「混迷」を憂えるのも,結局はここ数年この新聞が肩入れしてきた,自民か民主かという「二大政党」の発想を一歩も出ないからです。 そのため社説の結論は,総選挙の結果自民が勝とうが民主が勝とうが,「敗者は潔く勝者に協力する」などという,昨年失敗した自民党・民主党の「大連立」とも共通する,翼賛政治のススメともなっています。 衆参の「ねじれ」は,各党とも否定できない,国民の利益になる法案は通るが,国民の利益に反する,与党の勝手な法案は通らないというだけで,国民にとって「混迷」でも何でもありません。 しかも,国民が求める政治を実現するためには,アメリカいいなり,大企業中心の自民党政治を根本から変えるしかないということがいよいよ明らかになっています。 新聞も「二大政党」の枠内での発想にいつまでもとらわれているようでは,ますますこうした国民の政治に対する願いに応えきれなくなることを,自覚すべきです。 ここ数年,日本の新聞から,現状批判の精神がますます弱まっていることに危惧を覚えます。「真実を伝える」という点でも,「権力を監視する」という点でも,日本の新聞はますますジャーナリズムらしさを失っています。 その代表的な姿が,今年の年頭にあたっての各紙の社説ではないでしょうか。憲法や靖国神社参拝といったテーマを除けば,各紙の主張する中身がますます似たり寄ったりのものになっているのも,気になるところです。 たとえば福田内閣になって急浮上している「社会保障財源」を口実にした消費税の増税では,昨年末「朝日」が増税を求める社説を掲げ,今年の元日付の社説では「読売」も消費税増税を主張するといった具合です。 新聞は長らく社会の変化を敏感に写し取り,時代を先取りして警鐘を鳴らす「木鐸」が役目だといわれてきました。その新聞の社説が,時代の激動に立ち向かうのではなく,現状肯定の立場から怯えてしまっているというのでは嘆かわしい限りです。 「読売」や「朝日」など全国紙のように,世界と日本を広く論じているわけではありませんが,ブロック紙や県紙のなかにことしも,「反貧困たすけあいネットワーク」の活動を取り上げてこうした運動のなかから「『反貧困』に希望が見える」と論じた「東京」や,小泉政権以来の「構造改革」路線について「国民の暮らし,特に地方の暮らしを苦しい状況に追い込む結果を招いた」と批判する「信濃毎日」のような,良質な社説が見られることがせめてもの救いです。
Jan 3, 2008
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長期化するイラクやアフガニスタンでの戦争を契機に,紛争やテロは武力によってではなく,平和的・外交的手段で解決せよという声がますます大きくなっています。 アジア,アフリカ,ヨーロッパ,ラテンアメリカなど,世界各地で,アメリカの軍事覇権主義に反対し,国連憲章の「平和原則を守れ」を合言葉にした動きが広がっています。世界を平和と社会進歩の方向に大きく変えるこの流れを,確かなものにしていくことが求められます。 アメリカがはじめたアフガニスタンへの「報復戦争」は今年で開始から7年目,イラク戦争は5年目を迎えます。しかし二つの戦争は両方とも失敗が明らかになっています。 イラクだけでも戦争による民間人の犠牲は途方もなく増えつづけています。イギリスの世論調査機関ORBは,これまでの犠牲者数は100万人以上にのぼる可能性があるといっています。 アメリカ軍の犠牲は開戦から大規模戦闘の終結まで140人程度だったものが昨年の12月下旬までに3,900人になりました。多国籍軍全体では4,200人を超えています。 戦争に反対する世論は国際社会ばかりか,当のアメリカ国内でも強まっています。昨年11月アメリカCNNテレビとオピニオン・リサーチ社が共同でおこなった世論調査では,68%がイラク戦争の不支持を表明しています。 歴代政権の中枢を担ったアーミテージ元国務副長官とナイ元国防次官補も昨年11月に公表した報告書で,「アメリカの姿と影響力は世界中で低下」,「軍隊は思想とたたかうには多くが不毛な方法」というほどです。 アメリカに協力している「有志連合」も,いまやアメリカのいいなりではありません。スペイン,イタリアが多国籍軍から完全撤退したあとも,撤退・削減の流れはつよまるばかりです。 イギリスも部隊の削減にふみだし,政権交代したオーストラリアは撤退方針をあきらかにしています。イラク戦争を続けるアメリカ「有志連合」路線の破たんは明白です。 5年前,イラク戦争の開戦をきっかけにして世界に広がった「国連憲章の原則と精神を守れ」を合言葉にした平和の流れはますますつよまっています。 平和をめざす地域共同体づくりも発展し,東南アジアでは,武力行使を禁止し紛争の平和的解決をめざすASEAN(東南アジア諸国連合)友好協力条約(TAC)への加盟が24ヶ国に増えました。TACだけでも世界人口の57%を占めているように平和の流れは明確です。 東アジアを「平和と繁栄の共同体」にする努力も進んでいます。 ラテンアメリカではイラク戦争反対,平和の流れが大勢です。 弱肉強食の新自由主義に反対し,アメリカに依存しない自立した経済に向かうなかで,新しい平和的共同体をめざす動きも広がってきています。 ブッシュ政権でも,問答無用の勝手な論理で戦争を進めるやり方が通用しなくなり,北朝鮮問題などでは交渉による解決を前面に押し出さざるを得なくなっています。 日本政府がこうした「変化」も理解せず,軍事優先の路線を進みつづけるなら,それこそ国際社会のなかで孤立するのは避けられません。 世界に広がる平和的流れは,日本の憲法九条がめざす方向とぴたりと一致しています。日本に求められるのは,今年こそ,今の自民・公明の政治を変え,世界の平和と社会進歩に貢献する道を進むことです。
Jan 2, 2008
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4月からの実施が予定されている後期高齢者医療制度について,見直しなどを求める意見書を可決した地方議会が,2007年末までに351議会になりました。 中央社会保障推進協議会の調査でわかりました。住民の不安と怒りの高まりを反映して,制度の中止・撤回を求める意見書が増えています。 意見書を可決したのは,岩手,福島,長野,富山,和歌山,徳島,香川,高知,鹿児島,沖縄の10県議会と,341の市区町村議会です(趣旨採択した7市町村を含む)。(別項) 中止・撤回を求める意見書を可決したのは,青森県平内町,岩手県奥州市,三重県朝日町,奈良県三宅町など。「高齢者に堪えられない高負担を押し付け,医療から高齢者を排除するものになりかねません」(和歌山県かつらぎ町)と,制度を厳しく批判する内容となっています。 岩手県では,35ある市町村の85%,30市町村議会が意見書を可決。県議会も12月に「制度の凍結・見直しを求める意見書」を可決しました。 同県では,岩手県社会保障推進協議会が取り組んでいる署名に対し,これまで「政治の問題には関与しない」との態度だった老人クラブからも署名が寄せられ,合計で12,000を超える署名が集まるなど,実施中止を求める声が広がっています。 他にも東京が全市区町村の約80%,高知が約60%,沖縄が約50%で意見書を可決しました。 制度の運営主体となる都道府県単位の広域連合も,北海道,埼玉,東京,千葉,神奈川,京都の6都道府県が意見書を可決しました。国や都道府県に対して,制度の改善や財政支援を求める内容です。 自民党・公明党連立与党政権は,アメリカ・大企業いいなり政治をいつまでもやるのではなく,国民が真に求めているものが何なのか知るべきです。そしてそのための政策のために国民の税金を優先的に使って欲しいものです。 新年にあたり,そんな政治が本当に「国民のための政治」なのか国民自身が選択しなければいけない年になりそうです。 どのような選択をするかで,この後期高齢者医療制度も,消費税増税も,自分たちの暮らしも国民自身の選択の結果であることを肝に銘じなければいけない年になりそうです。【参考】意見書を可決した地方議会(趣旨採択を含む) 札幌市 平内町 北秋田市,男鹿市,にかほ市,小坂町,藤里町, 五城目町,三種町,井川町,美郷町,大潟村 日立市,桜川市 さいたま市,蕨市,上尾市 文京区,墨田区,北区,練馬区,東久留米市, 東大和市,小平市,福生市,あきる野市, 多摩市,八丈町,御蔵島村,三宅村 志摩市,大紀町,朝日町,南伊勢町 尼崎市,明石市 三宅町 新宮市,かつらぎ町,湯浅町 奈義町 香南市,土佐市,室戸市,土佐清水市,越知町, 田野町,佐川町,春野町,日高村 行橋市,古賀市,糸田町,福智町,苅田町,芦屋町
Jan 1, 2008
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