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2011.11.08
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会社に置いてある、毎日の朝食。この価格で食べ応えあり、しょっぱくて甘いピーナッツクリームがクセになる! URC マジックフレーク ピーナッツ 98円
2011.06.03
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Youは俺にとってたった1人のFavorite送る言葉に偽りは無いよねぇ?出来る事ならそばに居たいよでもあなたはそぅ友達の恋人やがて訪れたり裏切り枯れるほど君涙流し壊れそうな君をただ支えることしか出来なくて胸が苦しくて気付けばいつからか曖昧な日々徐々にYouに溺れてくMe笑ってよ ねぇ?For meきっとかなわない思いでも変わらないAnytime!いつまでも!いつまでも!もぅ涙は見たくないよいつか2人の朝が何気ないと思える時笑顔だったらいいね触れたい 一番遠くて近い君へPleaseこっち向いてよ ねぇ!もう一度Feel me mySweetyいつまでも変わらずにそぅStay with me君の事を抱きしめ何度も温もり感じたいMorningI don'tlie All day all night38℃忘れられないよもう寝ても覚めても君のことが頭から離れないの君とはじめての出会いは1999〜今までの思い出のFileそう 頭整理整頓で思い出す君は俺のBest FrindにFall'n 何かある度に相談でPlease! Please!でMissもSuccessも 報告します!話す度あるがままをさらけ出す君に対し彼は邪で浅はかな行為君に隠れて繰り返す日々はたかりゃ見りゃまるでツギハギの様に俺に言わせりゃもうこれ以上無意味!!糸がほつれ崩れ去る前に俺がここから君を連れ出して今までの出来事巻き戻し昨日の事かの様に思い出し全部知ってるよ君の温もり〜涙の理由までもねYeah抑えきれず気持ち伝えたけど君離れたOh my Baby&Memories忘れられない物!この思い!!君は素晴らしい女性だ人へのやさしさ 心は強くたまに見せる弱さは格別恋は届かないほど強くなり生きる力に変えてくれる僕は君を待ちつづける悩んだって何もつかめないよ!やさしく包む愛このメロディーで!!Pleaseこっち向いてよ ねぇ!もう一度Feel me mySweetyいつまでも変わらずにそぅStay with me君の事を抱きしめ何度も温もり感じたいMorningI don'tlie All day all night38℃忘れられないよ何度も君との幸せ描いて何気ない笑顔逆に切なくて気持ち溢れてまた求めてねぇ Baby?届けたいよMelodyただただ君の幸せを願う!これからのために…「Baby No more cry!」そう2人ただ素直に感じ合える事音と共に朝が来て今日が始まるいつまでも これからもずっと忘れないMemorier&Happinesr君を思うたびに不安で記憶たどり 探し気付くよ!「あなたの優しさと抱きしめた温もりが38℃」だって事!Pleaseこっち向いてよ ねぇ!もう一度Feel me mySweetyいつまでも変わらずにそぅStay with me君の事を抱きしめ何度も温もり感じたいMorningI don'tlie All day all night38℃忘れられないよ
2010.06.14
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偉大なる過去を持つ若き頃のM。仁美が抱く彼の想像と一致するにも、年齢は不詳である。過去に涌井と既に手を組んでいるとは、仁美には知るよしもなく、いまさらMも答える気力と記憶が曖昧だった。今ここにいるMは、仁美の心にしかいられない、カケラでしかないのだ。本部に戻っているMとは別の者となっていた。彩香とiのすべきことは、仁美とMのバックアップと、涌井の帰りを待つこと、それに、iにとっては、学校に異変がないか確認する役目がある。過去が変わると未来は当然ながら連動するが、過去でさらに一部の過去を切り取り、修復している。それは、噂ではXになんらかのペナルティーを受ける事になるが、生死に関わるとも、異次元に戻れないとも言われている。未だに何も起きていない。予期出来ない。涌井もXも、誰も想像出来ない事が待っているのだ。涌井は、弘美の来るのを待ち侘びながらペナルティーの事が気になっていた。まさか、ペナルティーで遅くなっているのかと想像していた。外は雨が降ってきた。その雨の向こうに弘美がいる。その弘美はXと共に店主を待っている。降りしきる雨の中から、店主が戻ってきた。大きな箱を持っていた。店主:「やあ、いたんだね、待ったかい?」弘美:「い、いえ、雨が降ってきたんでつい…」何となく安心する店主は、店主:「今日はちょっといい話しがあるんだ。」弘美:「?」Xも興味があった。店主が持っていた箱の中味を開けると、そこには、あるマニュアルが入っていた。店主:「講習を受けていたんだけど、たいしたことなかったな、食品衛生の免許、とれたんでね」マニュアルの下から、さらに製品のマニュアルがでてきた。弘美はそれを見てびっくりした、知りながらもXでも驚いた。出てきたのは、クレープ屋の心得。弘美は、涙が出てきた。弘美:「無理しちゃってぇ」店主:「そんなことない、だって、もう、文具店やってる時期じゃないしね」その時、Xにはわかった。今日の事、店主にはわかっていた、そして、以外な事も。弘美の顔に書いてあったのかもしれないが、弘美のスッキリした表情に、安心して、店をたたむ決心が着いたのだ。そして、守りたい気持ちから好きな感情に発展していたこと、それはまるでMのようだった。X:[…Mが人間だったら、きっとこんな感じなんだろなあ…]そう感じたXに、ある案が浮かんでいた。
2007.09.03
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Xが見たMは、現在のMとは別人のように思えた。堂々とした行動、発言。涌井の性格に押されている可能性もあるが、当時の涌井に強さはあっても、決断力に欠ける。お互いの欠点を補っているのだ。生徒達を次々と裁いて行く蠍組は、いよいよ職員室にたどり着いた。時間にしてホームルームを残すのみだった授業は蠍組によって自習となった。つまり、校内にある全ての教室は蠍組と化したのだ。校長:「何のつもりだね?こんなことをして、タダじゃあ済まないぞ]涌井:<あんたみたいなのが校長だからダメなんだ、この学校の実態を知らない、ていうか、知ろうとしてない>校長:「な、何を根拠に!不法侵入に侮辱罪として訴えるぞ!」まるで状況を理解していない校長は、何もしていなかったことを頭に過ぎらせていたが、この場を何とか乗り切ることしか考えていなかった。驚いた事が学校中に起きていた。どの教室も、どの生徒も、まるで蠍組を待っていたかのように、共感を抱いているのだ。ヒーローの登場というわけだ。みんながやはりこの学校に不満と不安を持っていたに外ならない。涌井は、各自メンバーから教室にまわしていたアンケートを即座に回収し、校長に突き付けた。X:[…何と言う颯爽ぶりだ、徹底している、この2人、一心同体だ…]今までみてきた相性で1番合っている事を認め、Xは、これこそ、選ばれし者に相応しいと感じていたが、これ自体はもう過去の存在にしかならないのが残念だ。腰を抜かした校長をはじめ、教員達も、認めざるを得なかった。この事実を教育委員会にまとめ、校長並びに、上位の教員に教育実習を命じ、この学校を離れることになった。学校は閉鎖することも改名することもなく、維持を選択し、生徒達に安心感を与える事、伝統に沿った明るく、コソコソせず思いきりのある行動を常に心に置く事が大事であることを掲示した蠍組。彼らの役割は母校を正しい道に修正、成功に終わった。本来、若き涌井は、蠍組をきっぱり解散すること決めていた。しかし、その矢先に、Xからの呼びかけが原因で、この件を追加し、解散を延期していたのだ。Xがこの件を過去の涌井に知らせて無理矢理過去から呼び出したからだ。そのために、母校の痛々しい姿を見せる形となってしまったが、若き涌井の心には、充実感が漂っていた。今度こそいい状態て解散が出来ると確信しているのだ。そして、過去からのヒーローは、この時間から姿を消した。当時の事を思い出す涌井の記憶の中に今、再びヒーローの火を点すことになる。涌井:「M、あんたとまた組んでみたい……」M:[…クシュン!…]
2007.08.29
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涌井が弘美に会えるチャンスは、思わぬ形で訪れようとしていた。蠍組。Xには考えてもいなかった事が、彼女の一言で実現する。Xの能力なら出来る。過去にいながら、更に過去の状態を流用すること。X:[…心のコピーだ、これは使える。過去に実在していれば、その意思を流用することが出来るぞ…]弘美:[?!]涌井が活動していた蠍組の頃に戻り、彼らの意思だけをこの時間に持ってくる、過去からなら、未来には影響しない。弘美:[逆に、未来の状態をコピーするのはダメなんだ?]X:[…それが出来れば苦労しないさ、もしすれば、未来は無くなる、というか、今が未来になるから、未来がどうなってしまうか俺にも誰にもわからない、そんなのはむごすぎるだろ?!…]弘美:[今が未来、かあ]パソコンソフトでもそうだが、作業履歴は、さかのぼったところでぬりかえれば、前回の未来の履歴は消える。それと同じ考えだ。X:[…やはり蠍組だな、ちょっと改良するようだが、使える…]改良する点は、1つだけある。相手が自分の学校であることだ。鎖国状態にするのも外す必要があるが、それは後でも修正出来る。弘美に、父親である涌井と会うための最後の関門となる、心の疎通を、学生時代の涌井として伝えられる。X:[…いいか、これから、学校に何が起きても騒いだり、遮ったりしちゃダメだぞ…]弘美:[え、うん]X:[…父親が誰だかちゃんと見ていればあんたにもわかってくるぞ、本当の父親の心がな…]弘美:[お、父さんの心、気持ち…]X:[…そうだ、あんたへの思いは半端じゃないって事をな…]弘美は、あんなにすっぽかしていた父親が信じられなかった。離婚にまでなったのに、弘美への思いが濃くなるとはどういうことか、理解出来る年齢ではなかった。間もなく、更に過去からの使者が現れる。Xの力は想像を越えていた。更にさかのぼる10年の歳月を経て、蠍組が復活。この地へ到着した。<まさかここに来るとはな、今までの努力を台なしにするつもりなのか、我が母校よ>若かりし涌井率いる蠍組。弘美はすぐに認識し、若い父親をじっと見ていた、信じられるまで。校門を抜け、昇降口にタムロするやかましい男子達を見つけた。<こんなんが後輩とは認められない>男子生徒:「あんだと、コラァ!」涌井を殴りかかろうとしたすぐに、涌井の背後から腕が2本、男子生徒を取り押さえた。男子生徒:「離せコラァ、やるのかぁ!?」瞬く間もなく、男子生徒は高く持ち上げられ、廊下に思いきり投げ飛ばされた。授業が始まる直前という時に、他の生徒達が集まってきた。男子生徒:「見世物じゃねぇ、あっち行ってろ!」他の生徒達は、1番厄介だったこの男子生徒に冷ややかな眼差しだった。すると、男子生徒は、急に怯える表情で質問した。男子生徒:「あんたら、卒業生か、いまさら何だ?」
2007.08.27
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たった1つの家族を引き裂いた理由の中で、かなりの影響が強い学校の体制の問題。涌井が知っているあの学校とは全く違う、伝統などこれっぽっちもない、無惨で堕落していた。Xの考えの一角に、現代での事件と修正に何らかの歪みが生じた関係で、過去にもダメージを受けていると考えていた。しかし、未来が変わると過去も変わるには疑問が発生する。過去を変えれば当然未来は変わる。だが、未来がどう変わろうが、過去には影響しないはずだ。Xは、普通には考えてはいなかった。X:[…歴史を支えているのは、過去にも未来にも人間などの生物次第なんだ。…]現代の事件で、異次元との絡みがあったことを考えれば、影響が出てもおかしくない。しかも、学校絡みだからなおさらだ。Xのケアにより、弘美の心は本来の自分に戻り、忌まわしい記憶は消滅した。X:[…今度は弘美、あんた自身で築く事だ、後は学校にどうしてもらうかだな…]弘美:[救ってくれた成果を見せるって事ね]X:[…わかってんじゃん、時期にお父さんに会えるぞ…]弘美:[近くにいるのね、いつも来た事もなかったのに]X:[…きっと、大事な事を伝えに来たんだ…]弘美はそれ以上質問しなかった。事情がどうであれ、来てくれたこと自体、うれしい事だからだ。仕事一筋で相手にしなかったた家庭。母は限界に来て、父と娘を捨てた。しかし、涌井が弘美を産んだ子供ではない事を知らないだけに、Xが長く弘美の中にいれば、その心理をばらすことになる。そこは慎重にしなければケアはおろか、以前よりひどく成り兼ねない。涌井は、学校に乗り込み、10年前の校長に会った。涌井:「覚えてますか、私の事を?」校長:「あんた、まさか、あの涌井かね?」涌井「覚えてましたか、10年前貴方の担任の生徒だった蠍組の涌井ですよ」校長:「!」涌井は、少しだけ怯えている校長の目をじっと見つめた。校長:「お前、生きてたんか、あんな奴はくたばると思っていた」涌井:「こういう奴ほどどうにか生きていくもんですよ」忘れるわけがない校長の記憶。"蠍組"、それは、涌井が在校生の時、虐めや窃盗などをしている他校の生徒とその高校に対して、正すための、いわば「敵討ち」をするグループのリーダーだった。当時、この学校があまりにも真面目だった事で、他校の悪さが目立ってしまい、帰宅する生徒を狙っては襲われるという事件が勃発した。その犯人を片っ端からあらい出してたたきのめし、その学校に対して警告と通報を促して、その生徒たちを動けなくする事が目的だった。その動けなくなる理由は、真面目がウリだった学校からの警告ならまわりの大人達も納得するということを利用する半面、陰では、あの学校を怒らせたら恐ろしいと思わせるという理由も兼ねていたためだ。ただ、仕返しとはいえ、やり方があまりにも卑劣で残酷だったために、蠍の毒を刺されて動けなくなるという例えから蠍組と呼ばれるようになったのだ。校長がそんなグループを許すわけにもいかず、相手の高校も反省していることから停学処分にとどめた処罰を下していた。しかし、校長本人はそれを影では納得していなかった。追放したい気持ちだったが、他の教員との多数決で仕方なく手を引いた形となっていた。それ以来の再会、しかも、時代を超えた、若き涌井と校長の因縁。
2007.08.22
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弘美は、高校に入って、すぐに好きな人が出来た。それは、一目惚れであり、一方的な片思い。だが、その男子生徒には既に彼女がいた。そのことに気が付かずに、彼を見ては隠れ、彼が目線を向けると、思わず逃げてしまう。そんな弘美の奥手な性格が、後にいじめに発展していったのだ。彼はクラスで最も人気があり、彼女がいようが、他人にも平等に優しく接していた。だが、その彼女は嫉妬心が高まり、我慢の限界が来ていた。だが、彼女は、身近な仲間ではなく、弘美に矢を向けたのだ。彼女:「まるでストーカーね、彼とフレンドリーにもなれない人に、関わりたくないって彼が気持ち悪がってるわ!」弘美:「そんなつもりじゃあ…」はっきりしない行動にむかつく彼女は、次第に悪い噂を流し、弘美に精神的苦痛を味わせる事を思い付く。その噂は、彼にも入ってきたが、最初は気にしなかった。そんな優しい彼は、逆に、哀れむように、弘美を元気づかせたのだ。しかし、その行動は、彼女をますます逆上させる原因となったのだ。罠を仕掛け、弘美を落とし入れる事は普通で、教材の紛失、髪の毛を燃やす、衣服を破くなど、エスカレートしていった。そして、致命的な事が起きた。彼:「君にこれ以上優しくすると、君が不幸になるみたいだから、もう、止める事にするね、そのほうが安全だと思うよ」と、周りの友人に吹き込まれ、弘美にそう言って離れていった。弘美は、この一言でかなりのダメージを受けていた。駄目押しに、彼以外の生徒達からの集団虐めが定着してしまう。ここまで起きている実態に学校側はナゼか動きを見せない。学校の内部よりも、オリンピックがかかっている陸上部の生徒の方で頭が一杯だったのだ。弘美の悲しみの中に、憎しみか起動し始めたのはもう言うまでもないが、その思いが、地球外にいた、わりと近い場所にいた地球外刺客が、偶然にもその思いをキャッチしたのだ。憎悪に圧されて、もう生きる気力を消耗してしまった弘美は、行く場所といえば、学校の向かいにある文具店しかなかった。自分の文具から教材が毎日のように消失するからだ。我慢しながらここに来て無くなった道具を買っていたが、もうそれも限界が来ていた。店員が、いつも心配そうにしていたが、ある日、店員にも弘美の身の上がわかってきた。店員:「いつもありがたいのだけど、何か事情がおありのようだ、何か一言心に残っているんなら言ってみると気が落ち着くかもしれないよ」そこで初めて口を開けた言葉は、弘美:「クレープ食べてみたいなあ…」そう言った後の日、自殺をしたという。しかし、弘美は生きていた。一体何が起きたというのか?
2007.08.20
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X:[…いや、弘美の中にいるのとは全く違う。 俺は別の世界では人間と変わらない。しかし、コイツは違う…] 真紀:[じゃあ、何なのよ?] X:[…今は喋ってる暇はない、ここからとりあえず逃げるぞ…] 頭が混乱していたXは、何がどういう真実か理解出来ない。 ひとまず弘美から遠退く必要があった。 サッと振り返り、Xの転送で、涌井のいる廃墟に戻った。 その時、弘美は、いや、弘美の中にいる者は、転送先をキャッチしていたが、学校のチャイムが鳴ると、元の平然とした弘美に戻り、他の生徒と何もなかったかのように、正面玄関に入っていった。 涌井の前に1人の女子高生が向かってきた。 涌井は、Xの反応で、知り合いと感じて、 涌井:「よく来たね、学校はいいのか?」 真紀:「今はね、あんたの事は聞いたよ、大変みたいだけど、未来がどうのこうのっていうのは、あたしには理解出来ないから」 涌井:「それでいい、その件は複雑だから何となく、来た目的がわかってりゃいいさ」 涌井は、優しい言葉で真紀に言った。 涌井:[娘の事は聞いた、真紀さんが何とかしようとしていたのも。でも、真紀さんが娘に何かがいると知ったのは何故?] X:[…真紀には鋭い霊感のようなものを持っている、能力というより、天然だ。それで本来の弘美ではなく、操られていると感じたんだ。そうだな?…] 真紀:[そう、そう思うほうが自然だったから] 涌井:「娘とは親友のようだね、もう長いのか?」 真紀:「そうね、短くはないな」 よく知った仲であるからこそ、余計に変化に感じやすかったのだ。 X:[…ところで、整理したいことがあるんだが、涌井は何故、娘を名前で呼ばなかったんだ?…] 涌井は、名前について、渋った顔をした。 涌井:[弘美という名前は、前の親が付けた、でもあの娘はそのことを知らない。もし、最初から名前を言っていたら、その真実が私の心から来た事が娘の本心に伝わって、その事を知ってしまうと思ったからだ] X:[…ちっ、複雑だねぇ、あんたは本当の……] 涌井:[それ以上言うな!] X:[悪かった、それより、知ってしまったらもう彼女にはツツヌケになるぞ…] 涌井:[さっきの話しを聞かなかった事にしたいよ] X:[…いくらなんでもそりゃあ無理だな。真実を話して納得させる方向に持っていったらどうかな?…] 涌井:[簡単にいうなよ、それが出来れば苦労しないさ] 過去に来ていながらその過去を消す事は出来ない。 全てを消す事は出来るが。
2007.08.07
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iは、保健室に人がいることを察知し、彩香より早く中を覗いた。 そこには、臨時で来ている柚木先生ともう1人、生徒がいたのだ。 i:[…あれって、さっきの…] と感じた矢先、 [ガラガラ] 彩香が思い切って扉を開けた。 柚木先生と佳代がキョトンとした顔で、 柚木先生:「あなた、ノックくらいしなさいよ、びっくりするじゃない!」 彩香:「ご、ゴメン、でも今ここで何してるの?」 柚木先生:「これはプライバシーな話よ、佳代はここに相談に来たのよ。」 彩香:「土曜日にわざわざ待ち合わせしたって事?」 柚木先生:「それは偶然かしら?だって今日は普通に来たつもりだったから」 彩香:「やっぱそうなのか!間違ってないみたいね」 佳代:「私も間違えたかと思ってさっき彩香と会った時は、フラッとしてたから一旦戻ったのよ、駅に向かって。考え事してたけど、途中で学校に向かって行った彩香を思い出して追い掛けたら、柚木先生と出くわしたの」 彩香はホッとしていたが、 i:[…いや、間違いないわ、これはもう異変が起きてるわ…] 彩香:[どういう事?] i:[…僅かだけど時間の歪みが来ているわ…] 彩香[……?] i:[…それも、歪みには不思議な事に、個人差があるって事よ…] 一定ではなく、一人一人違う時間のズレがあるという事? i:[…言えることは、一日早く来ている事自体、個人でちがうのよ!彩香は自分自身がズレているけど、柚木先生や佳代の場合は、周辺がズレている、つまり、 ズレているのは周辺だけ、後は個人レベルの感じ方次第で。…] 彩香:[意味わかんないんだけど…] 個人レベルで時間が早く感じる時とそうでない場合、時間の感覚のない人等様々な状況の中で生きている。 その間に、あるきっかけで時間の歪みが生じていたにも関わらず、それに気付かずに普通に過ごしていれば、日にちを間違えていることに気が付かない。 間違いに気付く時、それぞれ視点が違ってくるので、自信をもって違うとわかる人と、おかしいと不思議がる人とに別れる。 彩香は、その説明を聞いて、人の性格や環境で、あらゆる感覚の違いを改めて知った。 彩香:[時間が人の性格を試したって感じだね] i:[…そういう事になるわね、だから時間が正確に流れて当たり前になっているから、それに甘んじてるか、それとも、時間を大切にしているかの違いなのよね…] そうなると、時間を大切にしているのは柚木先生と佳代。 じゃ、考えてないのは、 彩香:「あ、あたしぃ!?」
2007.07.30
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こうなるのは運命だったのか、涌井は、Mと既に出会っていたことを忘れていた、 というより、忘れたかった過去に存在していた。 涌井:[以前に喫茶店で過去の内訳を説明したと思うが、 娘の事件で、私が乗り出した時に、既に異次元の噂は聞いてたんだ。 でも、娘を追い込んだのはいじめ以前にあった、 噂話でかなりストレスでダメージを受けていたらしい。 だけど、最初はその噂には一切聞き入れなかったんだ。] ネット検索で探しているうちに見つけた、 謎の裏側に通じるリンク先を見つけ、その中にあった情報にあるキャッチコピーを目にした。 それが異次元の内容を表記したサイトへのバナーだった。 M:[…でも、異次元にある、数ある事務所の中で、(噂を受け止める) というキャッチに目を奪われたのが偶然、うちの事務所だったとはね。…] そこに所属していたのがMだった。 娘を追い込んだ真相の中にある、 噂話の内容がほとんどと言われ、カウンセラーは、涌井にMを紹介したのだ。 今では心を読み、過去の出来事や、 発言した履歴を見る事は簡単だったが当時はまだ、Mにしか出来なかったのだ。 Mがきっかけで事務所が増加したとも言われる位だ。 Mは、涌井の心から娘の過去を探り、日頃受けていたいじめや噂話を洗いざらい涌井に伝えていった。 いじめが事実だということを確信出来た涌井は、その内容を記事にした。 すると、学校側と、いじめに携わる生徒の親に、プライバシーやら(うちの子に限って)とかいう理屈で訴えられ、結局、解雇させられ、今のフリーに至るのだ。 Mの履歴探索も、やはりプライバシーに関わると問題にされ、容疑者以外の探索を中止させ、一般での探偵業務はほぼ廃止に追い込まれた。 それ以来、Mに仕事が無くなり、涌井とも自然に会う事は失くなっていた。 そして、早くも8年。 Mは完全にあの時の事を思い出した。 M:[…実を言うと、あの時の事はあまり思い出したくなかった。 自分が試されたみたいで、ダメだったからハイ終わりっていう使われ方を許せなかった。 今だったらまた違ったんだろうけどね…] 仁美:[今ならOKって事?] Mは、いつでも心を読む体制でいた。 M:…[あの時はまだ若かったな…] 涌井[思い出させて悪かったが、でも、嫌な思い出の方が、教訓がたくさん潜んでいるんだ] その教訓が活かせるかどうかが、1番の問題だ。 次々に起こる事件や事故の処置が悪かったりすれば、それを教訓に、次回に反映させることが大切だから。
2007.07.17
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異次元にあった学校は、現代の同じ場所にすれ違ったように間もなく現れ、何事もなかったように平然と建っていた。 だが、建物の形は同じだが、鏡のように、やはり逆の構造となっていた。 そして、下校時間はとうに過ぎていたため、校内には誰もいないと思われた。 ところが、1人だけ、中に残っていた者がいたのだ。 それは、保健室の柚木先生だった。 Xは、見覚えのある先生とわかり、柚木先生に近づいた。 すると、柚木先生は、 柚木先生:[一体なんてことをしたんですか!異次元からきた普通の人間がどうなるか、 あなたにはわからないの!?] Xは思い出した。 異次元では何事でもない事が、他の次元では、大変な事に繋がることを。 X:[俺の事を感じるって事は、あんたは俺と同じ空間にいた、 もう1人の柚木先生ってことになるな、なんで学校にいた?] 柚木先生:[そんなのしょっちゅうなの、泊まる事もあるし、たまたまだったらもっとツイテないって事ね] X:[中で今何をしていた?] 柚木先生:[今学校で流行ってるウイルスの特定をしているところよ、 普段良性だったはずのウイルスが突然変異で、学校を休む子が急増したの、今ちょうど学校閉鎖になっているところよ] X:[良性じゃないって事か、それが流行ってるのは学校だけか?」 柚木先生:[そう、学校だけ、校外や周辺にも調べてみたら、ほかの地域には発生してないわ。 麻疹と似ているといわれる、異次元では極普通に浮遊している良性なウイルスは、時には身体の中で調子の悪い内臓を回復させるサポートをする役目を持っていた。 選ばれた者になると、更にその空気中のウイルスを機械を使って収集:圧縮して、圧縮されたまま、ある液体に流され、中和させたものが、特殊な味のする薬品となって、その作用がかなりきついらしい。 しかし、作用後には、他次元の行き来が自由になり、レベルの高い任務に就く。 だが、選ばれた者の九割は、薬の作用に耐えられず、断念する。 だから、任務に就いている者の身体は、神様と呼ばれる位に慕われたのだ。 現在生存している、選ばれし特別任務者はただ1人しかいない。 彼もまた、第1次元空間、現代に飛んでいた。 Mは、その男とは一度だけ会ったことがあった。 まだマスターの地位になる前に、無謀にリセットを仕掛けていたMを怒鳴って、道を正した男が、その者だった。 尊敬しているだけに、Mも現代に跳ぶことを考えていた。 iは、 i:「行くのはいいけど、あの二人を放っておいていいの?」 しまったような顔で、 M:「いけない!忘れていた、彩香と仁美にも伝えたほうがいいな」 i:「あら、忘れてたなんて、あの2人も見放されたものね」
2007.06.29
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仁美:[あなたなのね、あたしの中に、でもどうして?] M:[…それは、君が強くなった証拠さ…] 仁美:[あたしが、依頼人の仁美。ようこそ] M:[…遅ればせながら、派遣の心の同志、Mと呼ばれております…] 2人は、楽しそうに会話も弾んだ。 それもそのはず、いろいろとあった中、仁美の心の障害に阻まれ、入る事の出来ない歯痒さ。 代わりに彩香に入ってから、何回かの問題にあたってきた。 しかも、彩香の中で人間と恋愛の勉強もした。 しかし、これからは、バーチャルではあるが、Mを生み出した仁美との相性はずれることもなく、一心同体のように、気が合い、心のケアも出来ていた。 M:[…こんなにいい部屋だとはいい待遇だね、仁美は…] 仁美:[そうかな、一応、これでも意識してるんだよ、彩香のやり方とか…] M:[………] 明るい会話の中にちらほらと、彩香の名前が出てくると、 M:[…彩香かあ…] 心の勉強を教わったとして考えるようにしているMの心理を、 僅かながら、仁美には気付いていた。 仁美:[彩香からいろいろ教わったんだね、 私に近付く為に、努力してきたんだよね] プラス指向に語る仁美に、 M:[…ああ、そうだよ、仁美に入るのは苦労するって感じたからね…] 仁美:[お礼しなきゃね、彩香に] 仁美は、薄々気付いていた彩香とMとの仲の事も、 勉強の1つと考え、記憶の奥深くに眠り付かせたのだった。 エリート高校に認定されようとしている彩香達の学校は、 リセットで普通の学校に戻せるかどうかの判断に、iは、 i:[…危険過ぎる、普通どころか、なにもかも無くなってしまうかもしれない…] 菅野先生は、 菅野先生:[それは、一度リセットしたから?] i:[…それも関係あるけど、あたしが言いたいのは、 そっとやちょっとのレベルでは無理だという事ね。…] エリートが活性した今、元に戻す事自体、困難になっていたのだ。 かつてリセットする意味とは、現実を白紙に戻す事だ。 腐った環境、政治、人間関係。 その状況から、無かったことにするのが本来のリセットなのだ。 Mやiが行ってきたリセットは、加工、抑制を施した、いわゆる [作られたリセット] なのだ。 それを続けると、部分的に変化し、予測出来ない事が起きる可能性が高い。 英才生徒が誕生したのも、その影響だからだ。 いじめ、虐待を無くすリセットは、逆に、虐められないように強くなる意志を持つ事よりも、虐める暇も虐められる時間もない、”英才教育理論”に繋がっていったのだ。 「勉強だけに集中しなさい」 という事だ。 その理論は、リセットするまではわからない、 リセットだけが知っている、未知の選択なのだ。
2007.06.12
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涌井:[この者には、学校の内情を探るよう依頼した、それだけだ] 彩香:[それだけ?] 涌井:[ああ、それだけだ、しかし、やり方はその者に任せている、 だから過程については、こちらから突っ込まない事にしている…… そうか、その過程に何かあったんだな?] 涌井はようやく気付いた。彩香がそこにいるわけを。 Xは、 X:[…俺の仕事と対立したら、この女が邪魔をした、 というか、俺が邪魔した所を女に阻まれて、ここに閉じ込めたって事だ…] 涌井:[つまり、あんたは、あの学校の変貌に賛成しているって事になるな] すると、彩香は、 彩香:[冗談じゃないわ、あんな学校、最低!] 涌井:[……!] 涌井は肩の力を抜いた。 涌井:[どうやら目的は同じみたいだな、やり方が違うっていうだけだ] 彩香:[そうなの!?] X:[…そのようだな…] 彩香の行動を読めていなかったXにもオチがあったが、 彩香も同じように肩の荷が降りたように、ぐったりした。 涌井:[同じ目的なら、どちらかいい方法でやるのがいいんじゃないか?] 彩香は、 彩香:[あたしはあたしの依頼人とやりたい、 だけど、人は多い方がいいと思うし、 それぞれのやり方でいい部分を活かしていけないかな?] 涌井:[なるほど、あんたにもいたのか、派遣が] 彩香は早くもとに戻りたいだけだ。Mのいる世界に。 でも、彩香にも、とてもまずい気持ちが生まれ始めていたことに まだ気付いていなかったのだ。 涌井:[とにかく、開放して一端戻るんだ、 そのあとに、直にお会いして、あの学校をどうしたいか聞きたい。] 彩香:[あたしも] 彩香は、安心して、Xとも閉ざしていた感情を開放し、 彩香:[勘違いされるような、態度デカイね、Xさん] そういうと、すぐに、Mとコントローラーをリンクさせて、その場所から移動された。 心配していたMは、 M:[…大丈夫か?…] 彩香:[うん、あたしはね] M:[…どういう意味だい?…] すると、後からXも現れて、 X[…何だこいつも一緒かよ…] 彩香:[あたしよりこの男の方がダメージ大きいんじゃない?] Xの姿は、Mにしか見えないが、彩香にはわかっていた。 Xは、顔を赤くしていたのだ。 Mは内容を知った上で、 M:[…どうやら、照れてるみたいだな、何かいいこと言われた?…] X:[…う、うるせー、ほっとけ…] 彩香に[Xさん]と呼ばれた事が、よほどうれしかったのだろう。 Xは早々と、彩香達の前を立ち去り、記者の居場所だけをMに託していった。 Mは、この記者の名前を見て、 M:[…涌井?聞いた事あるぞ…] Mはこの涌井記者との接点があったのか?
2007.06.08
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彩香と言わせてしまったのはMだった。 菅野先生は、真っ赤な顔をして、 菅野先生:「違う、生徒として好きって事よ!」 すると、生徒は、 生徒:「その子、噂になってる子でしょ、エリートでもないのにいいんだ」 菅野先生:「そう、頭がいいとかじゃなくて、心が澄んでいる所が好き」 生徒:「なんかエリートっぽくないね、先生、ピュアなだけじゃやっていけないよ」 菅野先生は、黙ったまま、沈黙状態に陥ってしまった。 その時、教室のドアがいきなり開いて、 彩香:「こらーっ、先生をいじめるなあ!」 菅野先生:「彩香!」 X:[…彩香か…] あの掛け声が彩香を呼びもどしていたのだ。 彩香:「あたしの事はいくらでも言いたい事言えばいいわ、 でも、先生に向かって言う事じゃないじゃん!」 キョトンとしたまま、彩香に注目する生徒達。 生徒:「あんた、今何噂になってるかわかってんの?」 彩香:「ええ、仁美の噂に関与してるってやつね、 あれの真犯人はね…」 菅野先生:「やめなさい、今ここで言うべきではないわ」 彩香を止めた菅野先生をサポートしているのはMだ。 M:[…今は言ってはまずい、近くに…ん!?…] Mが慌てて回りを見た。 Xがいなくなっていた。 M:[…しゃべったらあいつがどうするか…] […どうするか気になるってかあ?…] その声は、彩香から聞こえたのだ。 彩香:[何よ、あんたは?」 X:[…ちょうどお前がフリーだったからなあ、 また消える前に、ピュアな心を拝みたくて…] Mは、 M:[…そいつの事だけは言うことをきくなあ!…] 彩香は、 彩香:「先生の事は言わないって約束して、犯人は私、 仁美を羨む気持ちがこうなったんだから!」 と言って、教室を出ていった。 生徒達は、やっぱりというか、 生徒:「自分で言うなんて、おかしいんじゃないの」 菅野先生:「違うわ、信じちゃダメ!」 M:[…無理だ、今言っても逆効果だ…] 先生や仁美を庇うように、彩香はこの場所から立ち去った。 Mはどこへ行ったか見当がついていた。 恐ろしいのは、Xが入ってしまった事だ。 あれが入っている以上、彩香に手も出せず、逆にXを刺激させて彩香に何が起こっても不思議ではない。 iが尋ねた、 i:[…ねえ、さっき見当がつくっていったけど、どこなの?…] Mは、 M:[…さっきの場所に戻ろうとしている!…] i:[…何故そんな事が?…] M:[…簡単さ、Xを封じ込めるためさ、 あそこなら、Xがいる以上、彩香は死なない、 同時に彩香が動じなければ、Xもあそこから出られないって事さ…] i:[…名前を呼んで消える事を言わないと消滅しないはずよ!…] M:[…さっき、Xが消える予告をしただろ、 心を覗いたら消える仕組みになっていたんだ。…] i:[…名前言ってなかったのでは…?」 M:[…ああ、言ってない、でも、心の中で言ったか、 そのままダイレクトに思ったかだ…]
2007.06.04
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彩香と離脱していられる時間は短い。 しかも、その時間は1時間とも30分とも言われていた。 まちまちなのは、その肉体との心の深さ、強さで決まるらしい。 彩香は自信を持って、長い1時間の方だと信じて、Mを送りだした。 現世から彩香を呼び出す方法、 それは、菅野先生の本心にしか出来ない事だった。 しかし、肝心の本心は記憶を消されて、Xの支配下にあった。 Mは、現世の圏内に入った瞬間、 M:[…記憶が戻った、そうだったな…] 学校でエリート授業をしている菅野先生を見つけ、教室に忍び込んだ。 早く反応したXは、菅野先生から抜け、Mの反応を伺っていた。 すかさずMの背後に回り、 X:[…あんただけ来るとは勇気のある決断だな、 勝ち目はないけどな…] M:[お前、誰に頼まれて来た?やっている事は規定外だぞ…] X:[…それは依頼人が決めた事、やり方は俺に依存するってな…] M:[…規定外を決行できるとは、どのルートで派遣されたんだ?…] X:[…そんな余計な事言うか!…] 一騎打ちが始まった。だがMには時間がない。 M:[…30分以内に何とかしなければ…] X:[…聞こえたぞ、なるほど、という事は、簡単な事だな、 時間稼ぎすりゃあいいのか…] M:[……] Mは眼力でXの目を見た、 その目線を上下に動かし、目線の通りにXの体を振り回した。 X:[…い、いつまで続けるんだぁ、時間の無駄だぞ…] Xは振り回されてもびくともしなかった。 何度も振り回しても、XはMを嘲笑っていた。 疲れを見せた隙に、Xが振り回された反動を使い、 Mに接近し、蹴りあげた。 M:[…うっ…] X:[…なんだよ、一発かよ、それでよく派遣が務まるなあ…] Xは起き上がる前にもう一度Mを蹴り、ダメージを深めた。 M:[…あ、彩香…] その思い、不思議な事に、菅野先生に伝わり、 Mを動かし始めた。その力は、菅野先生の心に吸い寄せられたのだ。 X:[…あ、いけね、菅野をほったらかしたままだったあ!…] 慌てて戻るも、間一髪。 M:[…菅野先生、どうして?…] 菅野先生:[おおよその事はiから聞いたのよ、 記憶を戻すために動いてくれたわ] X:[…何てことだ、居場所がないと、何にも出来ないなんて、 すごい屈辱だあ…] Xは怒り狂い、他の居場所を捜し始めていた。 M:[…お願いだ、今すぐ、彩香を心から呼び出してくれ、 時間がないんだ…] それでも今は授業中の身、 呼ぶだけの事すら出来ない状況だった。 すると、反応のいい生徒が、 生徒:「先生、好きな人いるんですか?」 その突拍子もない質問が菅野先生の心に響いた。 とっさに出て来た名前は、 菅野先生:「あ、彩香!?」 その瞬間だった。
2007.06.01
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菅野先生とのコラボで、部分リセットを決行しようという計画は、菅野先生自身にも影響するという説明をしたら、 菅野先生:[私はいい過去持ってないから、でも、今の生徒とはうまく行ってるの、だからそれだけが気掛かりかな] Mにとっては、一斉リセットより手間がかかる部分リセット。そこに、今の関係も維持するというのは、不可能に近い、更なる技が必要だ。 iにも尋ねたが、今までのケースにはない手段だと言われ、菅野先生はがっかりしていた。 iがいないと気が弱まった所に付け込んで、ある意思が菅野先生に入って語りかけた。 ある意思:[…先生、あんた、なかなか動きやすいね…] 菅野先生:[誰?] ある意思:[…聞くだけヤボだな…] その意思は、Mのタイプとは違っていた。何だか自由な感覚を持っていた。 ある意思:[…あんたを自由な気持ちにさせてやる…] その後、Mが菅野先生に近寄ろうとした時、 M:[…う、この感覚は?…] 菅野先生に近寄る事が出来ない、特殊なオーラを感じた。 意思は、1人に2人は入る事が出来ない。会話は出来るが、入っている意思が拒否すれば、遮断されてしまう。 M:[…誰かいる、しかし、読めない、菅野先生、どうしたんだ…] その刺客は、外部との情報を全て遮断した。この力は、Mにもない特殊な技だ。菅野先生は孤立した。 ある意思:[…あんたは自由だ、これからは、あんたが少しでも心に描いた事があれば、それが全て実行されるぞ…] 菅野先生:[思っただけで?] ある意思:[…そうさ、でも、例外もあるがな…] 菅野先生は、試しに、仁美に話し掛ける想像をした。 すると、 ある意思:[…そんなのは例外に入るなあ、もっと大胆な発想じゃなきゃ…] 菅野先生自体、まだ大胆な事はやったことも、考えたことすらなかった。 菅野先生:[どんな事考えればいいのかわからないわ] ある意思:[…あんた、本当に天然なやつだな、じゃ、試しに、目の前の空気を激流に飲ませるっていうのはどうだ?…] 意味がわからなかった菅野先生は、ちょうど生徒がいない教室なので、少し位大丈夫だと思ってしまった。 ある意思:[…起動したぞ…] と言ったとたん、教室の中を風が舞い、机が動き出す、チョークが舞い上がり、空気は、菅野先生を中心に渦を巻くような流れとなっていた。 菅野先生が気が付かない事に、Mを飛ばしてしまうのが本当の狙いだった。 M:[…余計な事をさせやがって!…] Mは、学校の外に放り出された。 ある意思:[…どうだ?こんなふうにあんた自身が考えるんだ…] 確かに菅野先生にはやりたい事がたくさんあった。だが、それを大胆に発想するまでにいかず、素朴な事ばかりだ。 ある意思:[…やりたい事がそんなにあるのに活かせないなんてもったいないなあ、じゃ、実現に向けて、1つ1つ、俺が手ほどきしながら味付けしてやろうか?…] 妙な親切心を煽るこの意思とは?
2007.05.23
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エリートクラスの派遣教師。 育ちは財閥を抱えるエリートの家庭。 家族構成は彩香と同じ、働く両親と妹の四人家族。 家族は地方であるが、有数な大手貿易の商社、父親のやり方に不満を抱き単身で上京するも、趣味や特技はない。資格さえないから、資格と習い事を数え切れないほど実力のある妹と比較対象となる事が多かった。 自分は自分の生き方でいくと行って家を出てきたのだが、何をすればいいかも解らず終いで、見兼ねた父親が、ある情報から、iを派遣に送り、心のスパルタを受け、自分には想像もつかなかったエリート級の資格を取得させ、現在に至る。 富豪家族でありながら、一度もすねをかじることなく、常にお金がないと思い込むようにしているという。 そうしていれば、お金に甘えたり溺れる事無く、普通の生活をしていれば、身近に友達が増えたり出掛けたり出来る、そのほうが人生無駄なく楽しく過ごせるからだ。 そんな彼女のピュアさを抑えて、心をリードしてきたのが、iだった。 彼女もまた、父親に抜擢される程の心理を操る技を持った、エリートクラスのセラピー。 菅野先生から、自分では発揮出来なかった力を引き出させるのが目的だが、中には彼女の意思とは正反対な事まで身につけさせていた。 その1つがこのエリート教師。 やりたくもない普通の担任ならともかく、エリート教師である。 そんな彼女でも、初めてよかったと思ったのは、生徒が声をかけてくれる事。 友達とも普通にうまくやっていきたい気持ちと同じくらいに、生徒とのコミュニケーションをとることが、どれだけ楽しく、素晴らしい事か、菅野先生自身、エリートなど抜きにして考えていた。 iも、そんなピュアな菅野先生を、今時とても珍しい性格だと、援助する身とはいえ、ある意味感心している。 仁美は、菅野先生とも仲のいい、友達感覚な感情を抱いていた。 ただ、エリートクラスという環境だけが邪魔をしている。学校の方針が変わらない限り、ぎくしゃくした感覚は修まらないだろう。 彩香は、仁美へのイジメや、噂を遮断するためのエリートクラスでは、ただの時間稼ぎにしかならないと思い、裏ではやはり、隠れ家としか見ていない。 Mとiに、この事を踏まえた対策を依頼し、内外の歯車を噛み合わす手段を考えていた。 M:[…どのみち、学校も、世間も、気持ちはかわりないようだね…] i:[…そうね、致し方ないけど…] M:[もっと真剣に考えてよ、もう仁美だけの問題じゃないんだから] i:[……] そんな中、また新たな刺客が、この世に送られてくることは、まだ誰も知らなかった。
2007.05.22
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世の中には、何に置いても2通りの人間がいる。善と悪、都会派と自然派、アナログ派とデジタル派。しかも善だけでもヒーローと天才だったり、自然派でも農民と登山やキャンプ派だったり、デジタル派でもパソコン使いだったり、作る人だったり、大体二手に分かれたりする。人は、プロフェッショナルと位置付けられる者がいる。普通と違うのは、その道の職人、いわば、専門家って事だ。でも、プロフェッショナルにも2通り存在する。人の意見を取り入れて実行する者と、自分の道を行く者。本来のプロは、普通の人には不可能なことを可能にするというが、人に役に立つかどうかがカギを握る。意見を聞いてから動き出す場合は、ある程度個人から団体まで多彩な範囲があり、お店の店員だったり、エアコン取付だったり、修理などもそうだが、個人レベルから好印象である。もう一方は、独創的な判断で作り上げ、時間が経ってから評価される事が多く、立地開拓や、作詞作曲などは、その時に人気があっても、後々で気に入ってもらえるか、心に残る位、伝説的になるかどうかで評価が変わる。どちらを取ってもゆるぎなきプロの地位には変わりない。スヴェンの心は、人を幸せにしたいという気持ちを、話しを聞きながら開発し、プロとしては福祉と環境の両面から貢献するタイプであるが、外観からでは、ただの話し好きなオジサンとしか思えない。でも、そういったギャップや人柄が皆に近い存在として支持される。ショウやシンは、どちらかといえば、独創タイプで、自分が考えた事を具現して主張する、そして皆に理解してもらう事で納得させる完成品を提案する。いわば、頑固一徹。気に入らなければ、提供しないし、人が必要としていなくても強引に置いていく。でもこれが、後になって役に立つ事になったりする。新しい世界が誕生しようとしている、この世界を提案したスヴェンと、それを実行したシンやショウ、この2つは、お互いに敵視していても、仲がよくても、プロフェッショナルとしては一流の結果を出すことには変わりなかった。現代社会に、こういった共存ができる世の中になるのはいつ頃なんだろう。-------------------------------------------------------※第9章・本物の絆・・・・END-------------------------------------------------------新章[RESET]は、10/2スタート。人気blogランキングへ
2006.09.26
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リセットのない理想の社会、それを強く望んでいるのは、彼らだけではないだろう、脱線したり事故があったにせよ、形態、レベルの違いがあるだけで、みんなが同じ思いを抱いているに違いない。十人十色とはいうが、同じ考えを持つ人間ばかりではないのに、うまくいくわけがないと思うが、噛み合いも重要だし、巡り合った人との相性や世間体、自分自身の思いと外部からの思いなど、普段から見ていると様々なドラマが少なくともあるのだ。人々が言う、「楽園」とは何か?スヴェンがもたらした、皆の気持ちを一つにする大切さ、一番それを実感していたのはクラウだった。ザイルと手を組んだ頃を考えると、天敵としていながらも、頭のどこかにあった空間に、「楽園」という名の暖かさを求めていた事が、今の状況を作り出した根源だ。あるちょっとしたきっかけで、感動を招く事が、今の時代には不可欠だ。刺激する対象が、現代にはあまりいい材料がなく、明日は我が身のような悪い材料が蔓延る中で、自分に言い聞かせる方法もまた千差万別。人間に取説がないから、一歩踏み入れるだけですでに人とは違う道を行く。そこから感動を発見しながら成長していく。クラウの成長は、まわりにいる人にも影響し、いい刺激を与える事が、多くの希望に繋がり、新たな感動を呼ぶ。スヴェンの復活を願う人間は、それなりに感動を受けた者ばかりだ。砂は全て陥没し、町が地表に現れた。それと同時に、環境擬似装置が働き、オアシスへの「町作り」をサポートする、そう、あくまでもサポートなのだ。機械任せでは人は動かない。土台を整えたら、あとは人間が作る、創造する気持ちにさせる事、不可能を可能にするサポートに過ぎないのが機械の本来の存在。それこそが、「楽園理論」。全自動に未来はない、人間そのものが衰退していくだけの産物。ここに今、まさに楽園の第一歩が始まろうとしている。人気blogランキングへ
2006.09.25
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シンの償いの気持ちは、果たしてスヴェンに届くのか、あとは天にまかせるしかなかった。シン:「できるだけの事はした、こんなこと言える立場ではないが、あとはあんた達にまかせるしかない。」ショウ:「無責任な事だが、やるだけの事をやった事に対しては認める、それより、砂の沈みが気になる。」ショウはこの地点のかつてのオアシスを復活させ、迷い込んだ者への楽園にすべきと提案した。「今スイッチを切った装置ではまだ砂を含む情報が抜く事が不可能だから、あんたが持ってるプロトタイプ装置で水を使った環境にセットすれば、砂と入れ代える事は可能だろう。」わざわざよそ者から避けていた環境から、迎え入れる環境に一変させるのは、確かに荒しが来る事は避けたいが、みんなが荒らしというわけではなく、大半の人は困っている者だと確信しているのだ。世の中をリセットに追い込まれないための根源として、心のオアシスが不可欠であること。これこそ、スヴェンの理論、いや、世界全体に言える構想なのである。ショウ:「本当は気で捩伏せる事はしたくなかったはずなんだが、リセットボタンの威力を想像すれば、まだこの世界にも守りたいという余力があったって事だろう」ショウの言葉が重く、そして深いものだとシンには感じていた。マシンは、唸るようにスヴェンを光りで包んでいた。マリア達は、転送が長く続かない事で、施設へと一旦戻り、老婆を置いてから再び転送を試みようとした。しかし、転送先がさっきの場所にアクセスできない。マリア:「転送履歴が合っているって事は、あの砂漠の異変が始まったって事ね」クラウ:「おそらくね、どのみち、あのまま居たら、嵐に巻き込まれていたし、ショウ達に任せるしかないな」マリア:「でも、スヴェンが気になるのよね、シンのした事が決して許される事じゃないのはわかってるけど、目の前で親子の絆を見せ付けられちゃったしね」マリアが落ち着かない様子を見たクラウは、「砂漠までは2時間、歩いてみる?」水の楽園都市が、この海底の楽園のように必要な場所として復活しようとしていた。そして、スヴェンも皆の心を一つにした、楽園の理論を確立させた人物として、同時進行に復活を遂げようとしている。人気blogランキングへ
2006.09.22
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シンの住む部屋にたどり着いた。ショウはノックをしたがなかなか出てこない。ショウ:「居るはずなんだが、手荒くしたくないけど仕方ない。」ショウは強制的にドアを開け、中に入ろうとしたその目の前に、マシンに座らせたスヴェンと、チップを組んでいるシン。その横にはカミさんもいる。ショウ:「それがあんたの言う償いなのか?」シンは、最大の同期を失う事が苦痛だった。海賊を発足させて我が道を行く気持ちで高ぶっていた自分を恥じた。シン:「砂の中で潜んでいるのはもうこれっきりにしたい、砂が解析されたのがちょうどいいきっかけになった」ショウ:「全てはお袋さんのお陰だろ?チップなしで記憶取り戻せたなんて、幸せすぎるし、スヴェンが浮かばれないぜ!」ショウはシンに思い切りグチを飛ばした。しかし、海賊な時のシンとは違い、冷静沈着だった。シン:「俺は何を言われても償うやり方はかえない、ショウ、その意味がそのうちわかる」と言いながらも、手を休める事なく、スヴェンの修復を進行した。「治るって言うのか!?」カイも問い掛けると、 シン:「スヴェンは一度でも生身の脳を復活したために、完全にはならないかもしれない、どこかに障害がある可能性が高い、その場合に備えた細工をした、彼のチップは一番ネックであるセキュリティを解除したら後は修復しやすい、こいつにできる最大にして最後の償いだ」ショウ:「傷害を抱えても彼を復活させたいというのか?」シン:「その方がみんなの願いでもあるんじゃないのか!?」ショウ:「・・・・・」これ以上言い返す言葉がなかった、確かに傷害があるとすれば考えなければならないサポート。だが、彼の人柄はまわりの人を楽園にしてくれるのも確かだった。カミさんが隣で初めて口を開けた、「そもそもこの町は元々はオアシスだった、それがリセットしたあとに気候に大変動が起きてね、まわりは砂漠化したんだよ、そしてこの地点は昔から私たちの土地だった、偶然この場所にオアシスが出来て、まわりの人は水を飲みに集まってくるようになった。」ショウはある程度まで聞いたその話しで理解できた。「つまり、外部の人間が荒らしにきた、ここの常連だけでオアシスを匿う方法を考え、シンの機械好きと昔から残った癖を活かして、周りに散らばったパーツで組み上げたマシンが、擬似空間装置ってわけだろ!?」シンは、驚いて、シン:「何て勘だ、その通りだ、間違いない」ショウ:「この頭脳だってここまで磨くには苦労した、だが、全てのサポートはスヴェンにあったんだ。だからやはり、彼は必要な人間だ。」シンは、手を止め、マシンを起動させながら言った。「あんたが今度から"楽園"である彼をサポートするんだ。」人気blogランキングへ
2006.09.21
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今の段階なら、スヴェンが仕掛けたままなら緑色のリセットボタンだ。それなら、救う手はある。急いでリセットボタンがあった場所に向かった。あのスヴェンがチップを抜き取られ、倒れていた倉庫だ。カイ:「あの場所にリセットボタンがあることに気が付いていたのか、シンは」ショウ:「それが不思議なんだ、どう考えたって見てなかったように思えるし、見たとしても放っておかなかったはずだ。」ショウは考えた、最悪の時、最悪の場所にあれは具現する。そして、例の倉庫にたどり着いたが、シンの姿も、リセットボタンもそこにはなかった。ショウ:「やっぱりそうだ、スヴェンが操作した時点で、色を修正したのではなく、ボタンそのものが消えたんだ、最悪はそこにはないってね」カイ:「じゃあ、シンはどこへ行ったんだ?」他に最悪を生む場所があるというのか、ショウもカイも混乱してきた。砂の根源は解析した、この世界の砂は、1時間後には地面に舞落ちて、普通の空に戻るはずだ。しばらくして、砂が上から降り始めた。機能が低下し始めたのだ。そこでショウが不吉な予感を抱いた。ショウ:「この世界は、砂を浮かす事で保たれた場所、ということは、砂漠の砂はどうなる?」カイ:「冷静に考えたら、砂漠の砂が沈むって事になるな」ショウ:「それ事態、最悪に成り代わってないだろうか!?」カイ:「だって、俺達はもうとっくにここから出ている予定だったんだ、わざわざ巻き込まれに来たようなもんだぜ」ショウとカイは、シンが本当にボタンを押すために戻ってきたのかが疑問になっていた、砂はどんどん降りがひどくなり、2人の足元が砂で埋まっていく。ショウ:「彼の償いって、いったい何だろう?」少し先へ歩くと、シンらしき人物が、ある入れ物と飾りを持って立ちすくんでいた。しばらく行くと、最初に見た古臭い団地に来ていた、団地には確かに人の気配がしていたが、シンや、その家族もいたはずだ。ショウとカイは、最初にスヴェンが来た形跡のある棟に入り、シンの部屋を捜した。ここに住む人には、砂が降っていることに疑問を抱く者がいないことから、興味を持たない、あるいは、支持されているシンに委ねているようだが、砂がこのまま降り続けば、世界が変わり、砂漠が消えて、閉鎖された地下から地上での暮らしとなる。ショウは、スヴェンの解析されたチップによって転送されてきたマリアやクラウに通信を送った、シンの考えている償いを追っていること、あとすこしで転送時間が限界外部来る事を伝えた。「マリアからは、もう少し大丈夫だと言っている、シンを連れて帰れるかも!」人気blogランキングへ
2006.09.20
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旦那は顔を見上げた。そして、老婆の存在を知った瞬間、奇跡的に自力で記憶の紐が解かれていく。あれほど欲しかったチップの才能は、記憶が復活した時には、それを上回る才能だった旦那の本来の科学者だったレベルに達していた。「お袋、お袋なんだな、自分は今まで何やってたんだろうな、あの砂嵐でお袋と逸れちまった時に、自分の記憶と引き換えに、とんでもない世界を作っていた。あの世界そのものが、忘れたくない自分の過去からの栄光を引きずってできた唯一の記憶の道標だったんだ。」旦那、いや、シンは、過去の誇りを自分のいいように書き換えてあの世界を生み出したことを深く後悔し、そして反省した。「シン、あなたのしたことは決して忘れてはならない、そして、それを踏まえた正しい方向へ導かなくてはならないんだよ。」老婆は、親としての言葉をシンに伝え、この先どうやって生きるのかを選択させた。シンは、「自分が今することは、この世界を真っ白にすること、スヴェンにした仕打ちを償う事だ、少しだけ時間をくれないか?」老婆はゆっくりと首を縦に動かすと、すぐに立ち上がり、この世界を作り出している根源であるマシンの所へ向かおうとした時、「旦那さん、いや、シンさん、根源はこの中に情報を入れてあるよ。」ショウとカイが手にカプセルを持って戻ってきた。「おまえら、知っていたのか、この世界の根源を?」「ああ、スヴェンが最期に教えてくれた、あんたの事を彼は最後まで考えていた、あんな事をされているのにな」ショウは辛口な言葉でスヴェンについて語ると、「あいつ、自分の事を知っていたのか!」ますます後悔したシンは、これからの目的を決めた。ショウは、「このデータを再利用して、環境に適した場所を作るんだ、それが母への償いだな」「ああ、わかってるさ、でももうひとつ、つぐわなければならない事がある」シンは、ショウの肩をたたいて、「そのカプセル頼んだぜ」耳元でそう言い残し、急いで通り過ぎて行った。「あいつ、どうするつもりだ?」カイが不思議そうに言うと、「待てよ、あいつがやりそうな事といえば...」「リセット!?」人気blogランキングへ
2006.09.19
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旦那の手によって、解析されていくスヴェンのチップは、一つ一つ防御が解除されていく。「後はマシンにかけるだけ、これで俺は最強の海賊間違いなしだな」そして遂に全ての解析が終了したその瞬間、[シューッ]と空気が抜けたような音がチップから聞こえた。「な、なんだこりゃ!」旦那は驚いて、チップから手を離し、床に落とした、すると、チップは木っ端みじんに割れ、煙を発し、一面真っ白になった。焦りを見せた旦那は後退りしながら「な、なんだ、この仕掛けは?スヴェンの奴、とんでもない置き土産しやがったな!」見えないうちに、何者かが旦那に蹴りを入れたり殴ったりのやりたい放題。「ウグッ」まだ辺りが見えないうちの攻撃、いったい誰か?「何者だ!?」「すでにあんたの魂胆はお見通しよ、旦那さん、いや、シン」「だ、誰だ!?何だ、その名前は!?」旦那は何が起こっているのかまったく判断できなかった。それもそのはず、スヴェンのチップには最大ともいえる仕掛けがあったのだ。そこに現れたのは、なんとクラウとマリアだった。クラウ:「あんたは解析だと勘違いしていたんだろうけど、気が付かないうちに封印を解いていた!」シン(旦那):「勘違いだと?俺が何をしたっていうんだ!?」クラウ:「その封印は、彼から奪った者がまずやりそうな事を予測したトリップを仕掛け、それが非常ゲートとなる、つまり、スヴェンはどんな状況になっても決して一人ではないって事さ!」旦那は何となく理解していた、スヴェンが考える事にはスキがないことを。そして、ここからが本題だ。シン(旦那):「さっきの名前は何なんだ?」クラウ:「それを聞いたらあんた、絶対泣くことになるよ」シン(旦那):「う、うるせぇ!早く言え!」クラウ:「ああ、泣くのはお母さんかもね」シン(旦那):「お、母さん?なんだそりゃ、俺にはそんなの聞いたことないぜ」クラウ:「あんたがここにいるってキャッチしたのは、お母さんなんだよ、どんなに記憶がぶっ飛んだあんたにでも思い出せるだろう」旦那は、力が抜けていた、記憶のないはずの頭脳が、パッと真っ白になったと思えば、少しずつ、昔の記憶が見えてくる。研究所のこと、スヴェンの存在、家庭のこと、そして、母親の姿。「お、お袋...」目の前に母親であるあの老婆が旦那の前に笑顔で現れ、手を差し延べた。人気blogランキングへ
2006.09.15
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スヴェンと旦那の繋がり。あのチップが解析されればほぼ間違いなく記憶を取り戻す。そうなれば、スヴェンが来た事実、そしてこの擬似空間の束縛、更に、海賊拡張と、最悪の階段を昇る事になるだろう。ショウは、あの緑色のリセットはやはりあの時押しておくべきだったと後悔していた。押していれば、この世界に限ってリセットされれば、スヴェンだって助かっていたかもしれないし、旦那も海賊も消滅していたはずだった。「あの時押さなかったのは、自分の事しか考えてなかったんだ、自分もこの世界の中にいる以上、記憶がなくなると思ったからだ」ここまで事態が大きくなろうとは予想も出来なかったショウは自分を嫌な人間だと思った、しかし、「ショウ..さん、そう自分を責める暇があったら、さっき言った事、実行するしかないですよ、リセットするならその後に考えればいい」スヴェンは、精一杯の声でショウを宥めた。カイ:「そうさ、俺達、皆のために記憶を維持して帰らなけりゃ意味ないよ、な、スヴェン」穏やかな顔で返事をしないスヴェンは、ショウとカイに全てを託した。砂は上空をさ迷い続けている。スヴェンの生き様は、自分の世界を手に入れたかのように誇らしいものだった、それは、もうほとんどの時間、人のために費やした満足感、自分にないものはないという自信が、彼を動かしていたのだ。カイは、彼のような生き方を強く尊敬した、そしてそれが今後の自信に繋がっていくことになる。ショウも後悔を自信に置き換えるチャンスが巡ってくる。全てはスヴェンが描いていた、[皆の未来]がこれにかかっているのだ。ショウ:「行くぞ、カイ!」カイ:「ああ、そうだな」涙を飲んで2人はスヴェンに手を振り、目的に向かっていった。それを見送るように、スヴェンは、最後の気を、具現化していたたリセットボタンへ投げ掛けながら、息を引き取った。それがどのように届くかどうかはまだ未知だったが彼にとって精一杯の "最後の奉仕" だった。人気blogランキングへ
2006.09.14
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生身の本能で久しぶりに体を動かしてはいるが、半分は機械だ、首から胴体にかけては爆発の衝撃で損傷した部分は機械化され、声は電子的に発声されていた、チップの効力で拡声され、動作も生身らしく制御できたが、それらは、死亡した場合と半死とでは症状が異なるために、完成するまで全く予想がつかなかった。ショウ:「じゃあ、スヴェンのケースは?」スヴェン:「大成功!最高傑作!って喜んでいるのは奴だけですよ」ショウ:「奴?」スヴェン:「ま、とりあえずここから出ましょう!逃げられたらお話しましょう」スヴェンはすぐに独房のカギを倒れた男のポケットから取り出し、2人を開放、その場から走り去った。建物から出ると、スヴェンが再び話し始めた。「この砂はかつて我々が開発しようとした擬似空間都市開発の一貫で、要望に応じ、水や、山、砂など環境を選択でき、衛生上の問題や都市計画の失敗などから援助して、最悪から逃れるための手段なんです。ショウはまだこの時点にはまだいませんでしたね、計画が流れた後、すなわち、私があの事故にあった後に入って来た人間だから知らなかったですよね。」ショウ:「そうだったのか、事故は噂だけで真実は全くだったな。」スヴェンは少し様子がおかしかった。ショウはそれに気付いて、ショウ:「スヴェン、まさかとは思うが、今の状態が続くとどうなる?」スヴェンは、明るい表情で「もうすぐ朽ち果てるでしょうな、チップはいわば、命綱のような物でしたから」カイはそれを聞いて、「じゃあ急いでチップを取り替えしに行こう!」走りだそうとしたカイの腕を掴んで止めたスヴェンは、「根本から摘出すると、生身の脳がフル稼動する、するともうチップを再び搭載は不可能なのだよ、カイさん、どのみち、もうあいつらにばらばらにされているでしょうし」悲しさのあまりに大声をあげたカイだが、見つかってしまうため、ショウに抑えられた。スヴェン:「カイに出来ることは砂の海賊を壊滅させること、砂の環境を作り出している元を捜して、いい方向で広める事です」そして、倒れこんだスヴェンは、「最後に、あの旦那と呼ばれている彼は、その砂を踊らせている張本人、私の同期です、..仲良かったんだけどね、あの爆発も彼の仕業って噂が流れてから、仲がこじれてきてね、彼は辞退するはめになった、リセット後は記憶がなくなったと思ったが、今はどうかな...」相変わらずの口調で振る舞うスヴェンにはもう、起き上がる力はなかった。人気blogランキングへ
2006.09.13
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生身の本能で久しぶりに体を動かしてはいるが、半分は機械だ、首から胴体にかけては爆発の衝撃で損傷した部分は機械化され、声は電子的に発声されていた、チップの効力で拡声され、動作も生身らしく制御できたが、それらは、死亡した場合と半死とでは症状が異なるために、完成するまで全く予想がつかなかった。ショウ:「じゃあ、スヴェンのケースは?」スヴェン:「大成功!最高傑作!って喜んでいるのは奴だけですよ」ショウ:「奴?」スヴェン:「ま、とりあえずここから出ましょう!逃げられたらお話しましょう」スヴェンはすぐに独房のカギを倒れた男のポケットから取り出し、2人を開放、その場から走り去った。建物から出ると、スヴェンが再び話し始めた。「この砂はかつて我々が開発しようとした擬似空間都市開発の一貫で、要望に応じ、水や、山、砂など環境を選択でき、衛生上の問題や都市計画の失敗などから援助して、最悪から逃れるための手段なんです。ショウはまだこの時点にはまだいませんでしたね、計画が流れた後、すなわち、私があの事故にあった後に入って来た人間だから知らなかったですよね。」ショウ:「そうだったのか、事故は噂だけで真実は全くだったな。」スヴェンは少し様子がおかしかった。ショウはそれに気付いて、ショウ:「スヴェン、まさかとは思うが、今の状態が続くとどうなる?」スヴェンは、明るい表情で「もうすぐ朽ち果てるでしょうな、チップはいわば、命綱のような物でしたから」カイはそれを聞いて、「じゃあ急いでチップを取り替えしに行こう!」走りだそうとしたカイの腕を掴んで止めたスヴェンは、「根本から摘出すると、生身の脳がフル稼動する、するともうチップを再び搭載は不可能なのだよ、カイさん、どのみち、もうあいつらにばらばらにされているでしょうし」悲しさのあまりに大声をあげたカイだが、見つかってしまうため、ショウに抑えられた。スヴェン:「カイに出来ることは砂の海賊を壊滅させること、砂の環境を作り出している元を捜して、いい方向で広める事です」そして、倒れこんだスヴェンは、「最後に、あの旦那と呼ばれている彼は、その砂を踊らせている張本人、私の同期です、..仲良かったんだけどね、あの爆発も彼の仕業って噂が流れてから、仲がこじれてきてね、彼は辞退するはめになった、リセット後は記憶がなくなったと思ったが、今はどうかな...」相変わらずの口調で振る舞うスヴェンにはもう、起き上がる力はなかった。人気blogランキングへ
2006.09.13
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ダミー用のサイボーグは、研究段階で人間に関する事には常に用いられ、成功したものを規準に製品化する最終段階の確認用だったが、中にはあまりにもよく出来たサイボーグに関しては、それ一体ごと商品にしたケースもあった。逆パターンも何回かあり、動かないものから大暴れするものまで様々な失敗もあった。表には決して公開されない、もうひとつの理由は、サイボーグであった事。ロボットとは違い、人間の組織が使われたもの、つまり、生身の体を改造したことになる。大概は死亡した肉体を再利用する名目で行っていたが、病気や怪我などで悩んでいた者が生きたまま希望するケースも出て来たが、意外にもチップとの相性もあって拒否反応する事から、この方法は禁止となっていた。しかし、ショウとカイが待ち受けているのは、その禁止したはずのパターンだ。「今そちらへ向かってますよ」そのサイボーグが2人に向かっていた。ショウは思わず涙がこぼれた。「なんてことだ!こんなのずっと気が付かなかったよ!」今までチップで保っていた体は、チップがなくなった瞬間、サイボーグとしての機能が働いて、今はサイボーグと生身の脳だけで動いているのか?「わからない、わけわからない、何故だ!?」「その訳はねぇ」ショウが想像したスヴェンの姿だった。カイもようやくこの事実に涙した。カイ:「なんだよ、これぇ!」スヴェン:「ショウとカイさん、黙っていて済まなかったね、私はとっくに死んでいたんですよ、不慮の事故でね」ショウ:「事故?知らなかったが」スヴェン:「ショウが入ってくる以前の話しですよ、研究に無理があったか、誰かの仕掛けか、突然チップが爆発して、わたしは瀕死の重症、すぐに病院に行っても手遅れと上官が独断でサイボーグにすると決めた、意地でも私にやってほしかったのでしょう、何もなかったように振る舞うよう、チップに細工されたんですよ」ショウ:「なんて事を、人を実験台にしたというのか!」更にスヴェンは、「そんなことより、今は生身の脳で喋ってるから、欠けていた記憶が復活しましたよ、大変なことです」ショウ:「隠された記憶か、いったいそれは!?」人気blogランキングへ
2006.09.12
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砂の世界で生死がかかっている3人。頭脳を失ったスヴェンには成す術を絶たれ、ショウとカイも捕獲されて、いずれは抜け殻となる可能性がある。砂の海賊一味は、スヴェンから抽出したチップの改良に専念、旦那は細部まで研究を重ね、海賊版チップの中でも最優秀とされるスヴェンチップのプロトタイプを目指した。カイ:「なあ、ショウ、スヴェンの口調なんだけど全然スヴェンの声じゃあないよね、これ」ショウ:「最初は空耳かと思ったが、どうやら本当らしいな、私にも感じるよ」この砂の世界環境に慣れてきた2人は、違う独房に居ながらも何とか会話だけは出来るようになった。頭に入って来るこの声はまさしくスヴェンが発声している。しかし、声が人間の物とは程遠い波形で2人に伝わっている。海賊の1人が用足しにスヴェンが横たわる部屋に差し掛かる。そこにいきなり、[ボコッ]と鈍い音がした。男は部屋の中を覗いた。「あれ、野郎が...」と言った間もなく、[バコッ!]男は頭を強打して失神した。「できれば乱暴なことはしたくなかったんだけどねぇ」ショウは今までにない気を感じ取り、焦りを見せた。それを見てカイも同じ様に感じてビビっていた。カイ:「ショウにしてはめずらしいよな、ビビるなんてさ」ショウ:「カイだってビビってるんじゃないか!?」ショウにはこの気が何なのかわかったうえで、恐れていたのだ。ショウ:「こりゃ、研究所でチップを作る際に、チップの記憶を試すための模型を作ったことが一例ある、チップだけでどのくらい手足が、胴体が制御できるのかを」しかし、チップ研究段階の途中で、大暴れし、研究所をめちゃくちゃにしたあげくに、「自殺」ともいえる、自分を抑えようとしたかのように、自ら頭部を切断する、という事件があった。しかし、この事はチップのみでは制御不可能という事実と、事件にされる恐れから、研究が中止にされるのを避けるため、表ざたに公表しなかった。その時と同じ「気」が、なぜ、今ここで感じているのかが、恐ろしかったのだ。ショウ:「どこからか情報が漏れたのか、それとも...」カイ:「よくわからないけど、それってまさか...」ショウ:「そうだ、ダミー用のサイボーグだ!」人気blogランキングへ
2006.09.11
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何度も見直しされ、ようやく完成したプロトタイプを、老人達の適正グラフに基づき、ひとつひとつ組み上げていく。人数分だけ作成するのは容易ではなかったが、クラウには今は明るい未来があった。辛い気持ちなどなかった。クラウ:「そうね、ティムにはチップ必要ないわね」ティム:「そ、そうなんですか?」クラウ:「あんたはあんたのままがいい、それでも充分伝わってるし、更にもっと判り会えるようになるから」ティム:「それって、天然って事ですよね」ティムは、何となく複雑な顔をした。クラウにはそれがわかった。「ああ、悪い方にとったか、こいつはネガティブだな」クラウはティムの肩を軽く叩いて、「頼むよ!」「は、ハイッ!」にこやかな顔で厨房に入っていった。マリア:「クラウ、あれは天然というか、単純なんだなぁ」クラウ:「え、天然って同じ意味じゃないのか!」食事を済ませた老人達を一人ずつ呼んで、その人専用のプロトタイプを頭に被した。そして緊張の一瞬、ケアチップの組込みを開始した。「スゥー」とケアチップ独自の音が静かに鳴りだし、老人はそっと目をつぶった。「頼むよぉ」マリア、そして厨房にいるティムは共に祈願する気持ちで一杯になった。数秒で組み込みが終わると、すぐに目を覚ました。「どう?」老人は、「何だか若返ったみたい」成果ははっきりした。「やったね!」この成果は、次々と表れ、全員の組み込みが完了した。まさにスーパーな老人の誕生だった。すると、すぐにその効力が発揮された。老人達は次々と同じ事を呟きだしたのだ。「砂の渦が・・・」「そうそう、砂よ、砂」「あんたもそうか、わしにも砂を感じる」「スヴェン様がいる!」1人の老人が言った。「そうだ、砂の渦にスヴェン様だ」そして、例の老婆も、「砂のような世界がある、そこに息子の影もある!」マリア:「なんだって!?スヴェンと息子さんは同じ場所にいるのか!?」人気blogランキングへ
2006.09.07
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クラウが汲み取った老人の記憶が、偶然にも、砂の事に繋がっていく。クラウはおろか、ティムもマリアも砂を意味するまで時間を要する事になる。「息子さんは生きているわ、でも、今でも砂に囲まれているみたいに、ざらついたノイズが入るの。」すると老人は、「生きているとだけわかったらホッとしたよ、誰だかわからないけど、ありがとう」老人はなすすべもなかった自分を後悔すると同時に安心感が生まれ、以前の明るいお婆ちゃんに戻りつつあった。この時点でケアチップの威力を見せ付けた、それを立証したのだ。部屋を出ると、マリアとティムが心配そうに待っていた。「どうだった?」マリアが質問すると、クラウはマリアとティムの前でようやく笑顔を見せた。クラウ:「ああ、なんだかすっきりしたなぁ、あんた達をみるのがあたしにはケアだな」マリア:「何勿体振ってんのよ、どうなったの?」クラウはケアチップの唯一の弱点を知った。それは涙もろくなること。人の話しに集中することで、過去と現在の断面を掘り下げる抽出機能が発達している、その効果を自ら行うことで、人や自分を見つめる事が常に自分で可能にする事が、このチップの最終的な性能なのだ。それがクラウ自身が一番味わっている今がその効果を決定づけた。クラウ:「こんな気持ちは初めてだ、こんなに人の気持ちになれたのがね」泣き続けるクラウを支えたマリアにも、そしてティムにも、涙と笑顔が滲み出ていた。すごいことに、ドアを開けて老人が出てきた。「さっきは本当にありがとう、チップとやらの話、いいんじゃないでしょうかね」といって、みんなが賑わうリビングへと歩いていった。思いがけない言葉だった。マリアもティムもそれを受け止めた。ケアチップ導入に向けて、準備段階に入ろうとしていた。クラウ:「その前にみんなから適正検査しないと、プロトタイプによって目覚める早さが違うから、気をつけないと危険かもしれないんだ」マリア:「もし目覚めが遅かったら?」クラウ:「まだわからないが、脳死するかもしれない最初が肝心、ここは慎重にやらなくちゃ」年齢に適した演算をするプロトタイプに改良しないと個人差に勝てないとみた。人気blogランキングへ
2006.09.06
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ケアチップの可能性を賭けた瞬間が待っている。例の老人だ。いつも1人で何を考え、何のために、そして、何が悲しいのか?緊張するクラウの頭脳には真新しいチップが組まれている。クラウ:「この一瞬に、このチップの将来がかかっている、前向きで行かなければ!」マリア:「そうよ、その調子!私達はここで待っているから」クラウは、マリア達に励まされながら、ゆっくりとその老人の部屋の前に来た。軽くノックをすると、反応がない。もう少し強く叩くと、ようやく椅子を立つ軋む音がした。その時、ケアチップの回路が急激に回りはじめ、クラウは一瞬めまいがしたが、持ち直った。「なんなの?このフワッとした感覚は?」感じたままに言葉にしてみた。「あの、その椅子って、息子さんのですよね?」すると、老人は、ドアの入口まで近づいて来た。「何を知っている?何を見た?」老人は重い口を開いた。「あなたの事は大概知っているわよ」ドアの向こうにいるのにも関わらず、読み取るように感じ取っているケアチップの効果。それはまるで、盲目でさ迷っているかのように心を塞がれている者を真の道に導くかのように汲み取れる、「あなた、心臓を患ってらっしゃる、感動もしなければ驚く事もない、しかもそれは、その息子さんが原因ね」クラウはまるで占い師のように次々と読み出した。すると、ゆっくりとドアが開き、俯いたまま顔を覗かせた老人の目から涙がこぼれていた。老婆:「あんたは、どこまで知っているの?誰なの?」クラウ:「あたしはただのカウンセラーよ、でもいろんな事を知っているわ」老人はそっと驚くと、その驚いている自分に対しても驚いていた。クラウ:「なんだ、ちゃんと驚ける要領知ってるんだ、じゃあ大丈夫だね」クラウは、心臓に負担のないやり方に慣れていると悟り、少しずつ感動や笑い、息子への思いをサポートする事にした。クラウ:「みんな、ここにいる意味わかるよね、みんなだって1人じゃ生きていけないからここにいるんだ、心はね、しまったり出したりするから人間って言うんだよ」涙が止まらない老人は、クラウに語った。老婆:「息子はね、砂にやられたんだよ、まわりが急に真っ白になったと思ったら、あたしを置いて、砂に撒かれるように居なくなったのさ。」砂?老人はリセット直後に信じがたい経験をしたようだ。しかし、砂が人をさらったとでもいうのか!?人気blogランキングへ
2006.09.05
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ショウとカイの脳裏でスヴェンの声が聞こえた、声はまさしくスヴェンだったが、テンションといい、アクセントが妙に違ったのだ。まるで別人がスヴェンの代わりに話しているようだ。旦那も既に気付いていた、「あの男、ただの体じゃないな、というか、何だか知っているような気がするのは気のせいか?」鋭い感性を持った旦那は、自分自身に博士号記憶を自分の頭脳に植え付けしたら、スヴェンの過去と同時に自分の過去がわかると判断した。しかし、チップ売買している身分でありながらチップを搭載していなかった。過去の忘れ去られた栄光の僅かなシコリが、プライドとなって、自分の頭脳だけを信じてきたのだ。「俺には無理だが、あの男になら何とかなるかも。どうせ捨てるつもりだったんだから、失敗してもかまわんだろう」安易な考えだが、それが後に奇跡を引き起こすこととなる。リセット後でありながらもここまで感性を持ち続けるにはやはりそれなりに優秀な頭脳である証拠、旦那とスヴェンの接点はチップによって発かれる。スヴェンが旦那の記憶を取り戻すための楯となろうとしているのだ。もしチップから完全にデータを吸い取ると、再フォーマットも出来なくなり、ただの植物人間と化してしまう。この世界は砂によって閉ざされた正義も悪も共存したまだ未開拓な場所。その砂の仕組みを築いた人物がスヴェンらもかつて関わっていたらしいが、果たしてこの世界にまだ留まっているのだろうか?----------------------------------------------------男どもが未だ帰ってこない施設では、クラウの目覚めが待たれていた。チップのプロトタイプを使用したにも係わらず、起動は早かったのに、目覚めの悪さにやはりマリアは、「これって失敗?プロトタイプを信じてたのにぃ」すると、ようやく目を開けたクラウ。「ご、ごめん、寝てたかも」「!!!!」人気blogランキングへ
2006.09.04
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リセットボタンには種類があったというはるか昔からいい伝えがある。それは、色分けでそれぞれ意味があるのだ。前回が赤、他に青、緑とあるらしい。そう、光の三原色だ。RGBの構成は自然界、人間界、そして次元界の要素を意味し、全てにおいて、太陽の光を浴びて成り立つ存在。その時の空気や時間の動きなどによって、社会現象、自然現象などの変化をもたらすのだ。リセットが発動することでその瞬間に起こる変化と関係があるという、科学者の間での提案である。ショウは、あの緑色のボタンを発動させれば、この世界、砂の海賊の存在を打ち消す手段と見ていたが、赤を除いては、立証されておらず、単なる伝説だったため、むやみに判断できない。牢獄のような部屋にカイとは別の部屋に監禁され、しかも砂の影響もあって、通信さえ不可能であった。「あの時からこんな部屋には縁があるな」そう呟きながら、あたりを見渡すショウ。あの時とは、スヴェンに捕獲された時だと思うが。一方、カイは「こんな個室を持ってたらなぁ、自分の好きな事をいっぱいやるんだけどなぁ」という妄想に浸っている。スヴェンから解析された海賊版チップは、今までとは違い、コピーが困難な部分が多く、性能が逆に落ちてしまう結果となり、チップとして売買するのは不可能だった。しかし、スヴェンの博士号の知識が詰まっている記憶貯蔵部分については使えると判断した旦那。「いままでとは違うビジネスができそうだ、博士号級の知識という商品は海賊版ではなく、本当の情報があるわけだからな」頭に"海賊版"が付かない分だけ高値が付くと予想した。そもそもこの旦那とは、一体何者なのか?この人物、実はスヴェンにもカイにも昔関わっていたことがある。直接会っていたわけではなく、実は平等にする定義を出せと命令した上役その者だったのだ。しかし、リセット後、油断して記憶を落とし、何をしていた人物か全て忘れてしまったのにリーダーだった事だけが何故か体で覚えていたために、記憶喪失への怒り、平等論に対する偏見が妙な記憶となって旦那を築き上げたのだ。海賊版チップを広める行為そのもの自体、平等論の勘違いを招いた引き金となったのだ。抜け殻状態のスヴェンにはもはや博士号も人間味もなくなっていた。ところが、[ショウ、カイ、聞こえますか?]人気blogランキングへ
2006.09.01
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外されたスヴェンのチップが解析されるための海賊版マシンにかけられた。しかし、所詮海賊版、完全に解読出来ずにエラーを起こす。「やはり海賊版に本物は100%求めるのは無理か」諦めかけた瞬間、スヴェンのチップに反応が出た。「なに、通信機材を盛り込んだのか、それでマシンが考えてたんだな。なるほど」ちょうどショウがスヴェンに伝達信号を送っているのと同期した反応をしているので、多少の誤差はあるが、ショウとコンタクトをとっていることがわかってしまう。ここに向かっていると言う事までばれてしまうのだ。スヴェンは動かないまま、呆然と座っていた。ショウ:「しまった!応答がないって事は、ただの気絶じゃなかったんだ、カイ、スヴェンの事を考えちゃダメだ!」カイ:「読まれるって事?」ショウ:「そういう事だ。」ショウは気付いた事が遅れた事を悔やんだ。「気付くなよ」大分接近した2人は、先に来た住宅の向かいにある倉庫を見つけ、そこにスヴェンの余韻を感じた。ショウとカイは無心無言で倉庫に近寄る。そして静かに扉を開けると、目の前にスヴェンが横たわっていた。駆け寄ろうとしたその時、突然背後で扉が閉まった。「やっぱりばれていたか!」前に現れた旦那。「そう、遅かった、通信だという事がわかったほうが早かった、彼は呼んでたんだよ、君達の来るのが嬉しくて」ショウはこの男が"砂の海賊"と知った。この者達にまともには敵わない。ショウ:「頭脳勝負なら偽チップには負けないんだけどなあ、なあカイ」カイ:「こんな時、マリアがいてくれたらなあ」完全に弱気な2人に、信じられない光景が。カイ:「ショウ、見えるか、あれ」ショウ:「ああ、見えるさ。」2人の目に写っているのは、最悪になると出現する物。ショウ:「待てよ、どうかんがえても、この状況は全国規模じゃないはずだが、何かが違うな」旦那:「何ツベコベ言ってるんだよ、捕らえろ!」ショウとカイは抵抗もなく、捕獲された。2人が見た物はまぎれもなく、リセットボタンだった。しかもそれは、赤ではなく緑色をしていた。それには意味があった。人気blogランキングへ
2006.08.31
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ショウとカイはちょうどその時、砂の謎解きに力を入れていた。一瞬だが、強い信号がショウを気付かせた。ショウ:「カイ、スヴェンがここに来ている。」カイ:「マジで?心配してたんだろうな、連絡取れなかったし」ショウ:「でも、今はその気配が途絶えたんだ、何かが起きたに違いない、行こう!」僅かだが、場所ははっきりした。集中した周波数のおかげでその余韻が色濃く残っているのだ。スヴェンは何者かに背後から鈍器のようなもので殴られ、運ばれていた。「こいつだな、うちからチップ持って出たのは」「はい、旦那さん」やはりこの世界にも"悪"と呼ぶ者が存在してしまった。どんな世界にも"善"と"悪"とがあって成り立つのだろうか?スヴェンが訪れたカミさんの旦那に見つかったのだ。その旦那とは、スヴェンが予想したとおり、極悪なる「砂の海賊」と呼ばれる集団であるヘッドだった。「こいつ、俺らの事を知っているな、探りをいれにわざわざ砂に来たってわけか」スヴェンから海賊版チップを奪い返すと、スヴェンが装着しているチップに高い気を感じた。「かなりヤバイの付けてんじゃねえか!?」あまりに緻密に作られた本物のチップに感動して、そのチップも外そうとした。だが、特殊なロックが掛かって簡単には外せない。「なるほど、面白いものを発見したぞ、使える」海賊版を逆利用したスヴェンが今度は海賊版制作に逆利用されようとしていた。緻密性からおそらく最高の出来であるスヴェンのチップに、目が眩んだ丹那も相当たるチップに詳しかった。「すぐに制作班を呼べ!」すぐに連絡を入れたカミさん。分解する機材を持って来た旦那の素早い行動は砂の海賊と呼ばれるだけの事はあった。しかし、やはり欠点もあった、それは詳し過ぎて手抜きが多い事。ほとんどの作業は制作班にまかせていたが、出しゃばるのも性格、やりたがりだが執着心がない。ショウも必死だった、襲われる理由は2つ、海賊版に手を出したか、あるいは、スヴェンのチップに気付いた"奇才"に出会ったか。「噂に聞いた海賊版の密売組織だったら最悪だぞ!」すぐに作業班が到着、特殊ロックを解読していた。そして、ロックが解除信号を送り、チップの接続も解除された、もはやスヴェンは抜け殻となってしまったのか?人気blogランキングへ
2006.08.30
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ある1人の老人を説得するにあたり、やはり自分自身の装備が必要と判断したクラウ。バッグからケアチップの元データとレプリカチップを取り出し、マシンへのセッティングを開始した。ここで登場するレプリカというのは、兼ねてマシンへのインストールを早める効果があり、細かなコードの打ち込みやプログラムが同時記憶される機能、いわばパスワードをブラウザに自動保存する機能と同じ仕組みで、セッティングした瞬間に自動的にオペレーティングされる博士号必須アイテムなのだ。チップ作成の先駆としてレプリカが必ず使用することに決まったのは、実は研究所で既に設定したことだったが、前回の場面ではショウのケースはそこにレプリカを作るための素材が不足していたために、それをスルーしていたのだ。手動での作業だったわけだ。本当の意味でレプリカ搭載としては初めての作業となったクラウに緊張感が走る。マリアとティムは唾を飲んで見守っていた。スイッチが押されると、すぐにクラウは記憶が吸い込まれ、同時に気絶し、ケアチップの機能が追加され、再構築される。時間にして1分位だろうか、過去にない早さで作業が完了したのだ。マリア:「早いわ、これなら量産しても時間がかなり短縮されるのは間違いない。」ティム:「でも、クラウさん、大丈夫かな?」作業は早かったものの、肝心のクラウがまだ目覚めなかった。成功したのか、早過ぎて対応が遅れているのか。よく見ると、目を閉じながら演算している処理に慎重なチェックを測っているのだ。「クラウ、しっかり」一方では、ショウとカイを捜していたスヴェンは、砂の世界に何が起こっていたのか確認する必要があると判断、一刻もショウとカイを見つけなければならなかった。「まずいな、完全なる通信の遮断か、どうやら人間特有の「感」ってものに頼るしかないのかな」スヴェンは全ての機材をしまい、気持ちを集中した。この世界の状態に対しての住宅、そして住民が普通の生活をしている中で、ショウとカイがとる行動とは。「捜査か?私と同じ考えならそうするはずだ、どう考えても不自然だからなあ」同じだとすれば、同じ行動をすれば尾行できるかもしれないが、スヴェンは、違うやり方で反対から追い込んだほうが早いと判断し、ショウが思い付かない方法を考えた。「この世界を知る第一歩は、とりあえず"海賊版"を使うことかな」人気blogランキングへ
2006.08.29
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クラウは、この施設にあるという、例のマシンを気にかけていた。まだカイもマリアもどこの部屋にあるとも知らされていない事だが、今時点、未完成のまま威力を発揮できないでいるのが無念でならなかった。「クラウといえばそうだよね、考えて見たら博士なんだよね。ケアが自分自身で賄える能力って、絶対にここには必要な気がするよ」マリアも期待を膨らませた。「でも、肝心な部屋はどこなんだろ?」結局誰も場所を聞いていなかったのも、皆が再会できた事の嬉しさで、チップを忘れさせるほどの反動だった。「とにかく、捜してみるか」施設を隈なく捜すことに。主な場所はティムが案内するが、例の部屋というのは実は、老人達の部屋のすぐ近くにあった。老人が使用する際に対応をよくするために隣接したらしい。老人達にアンケートを予めスヴェンがとり、このようなタイプのチップを組み込む事に賛否の了解を得ることまで準備していたのだ。ただ一人を除いては。老人の一人は、「難しい事はわからない、でもこの歳になっても出来る事があるならば、これからの人生に可能性を活かしてみたい。」と、受け入れてくれ、自然に任せたほうが身のためだが、こんな社会だから少しでも役にたてるという意識を齎すことにこのチップの意味がある。しかし、ただ一人、どんな事にもまったく相手にしない、引きこもりでティムが一番気掛かりにしている老人の男性だ。「リセットした時に何かがあったとされているけど、よほどショックが強いか、ただの頑固か、調べる必要があるね」クラウはやはり、ここにいる全ての人に理解してもらうまでは納得できないと話した。クラウは博士号を持つ上、心のケアを促すカウンセラーの資格を持っている。その老人に直接話しをしたいと思っていた。「その時に、今のままで話すか、それとも、あのチップ導入後か」クラウの考えは、素のままで気持ちを汲み取るか、チップの性能で気持ちを分析するか。読むか引き出すかの問題らしい。クラウ:「出来れば読むほうがいいに決まっている、でもそれが叶わないのが老人たる記憶の色だね」マリア:「色って?」クラウ:「記憶の深さを色で例える分析方法さ、研究の一貫で、記憶力、喪失度、アルツハイマーのレベル計測などで使ったりするが、老人の場合、記憶の深さはともかく、幾つか枝分かれした記憶を持つ人がかなりいるのがわかった。そうなると、素の状態では枝分かれした一つ一つの先を診る事が不可能だった、チップを導入すると、枝分かれした記憶を自動的に分析して、一つの記憶として整理する、はずなんだけどね」マリア:「????」人気blogランキングへ
2006.08.28
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女性3人と子供達が加わった環境が変わらないわけがない。すっかり明るさと若さに満ちたこの施設は、老人達にもいい影響になっていた、1人を除いては。「そういえば、スヴェン達、遅くない?いくらなんでもかかりすぎてるわよ」マリアがそう思った直後に、スヴェンから連絡がカードリーダーに伝えられ、読み込んで来た。[待たせたが、ショウとカイは今療養している、でも心配しないで、もう少しかかるので...]マリアはびっくりした、2人に何があったのかが心配だった。「それにしても、声を替えているのはおかしい、本人じゃないかもしれない」クラウもこれを聞いていたが、「何か電波が障害気味だねぇ、陸なのか?」クラウは何かに会った2人を匿った者からの伝達とみた、しかし、そこにはスヴェンの事は話していない。マリアは、「そんなことより、何故2人の名前を知ってる?普通知らない人にむやみに教えない、しかも、書いてある記録もないはず」クラウ:「それもそうだな。」気になり出したら止まらない女心、しかし、どんなに嘆いても、車はないし。マリアにはまだ、逆にスヴェンに返事をする能力はない、まして、このカードリーダーに返信も不可能。「八方塞がりっていう事ね、待つしかないか」活気つく施設の中で、胸騒ぎする2人。----------------------------------------------砂の底では、そうとは知らず、ショウとカイを捜し続けるスヴェン。「人の気配はするんだが、あの2人の反応がない、わからない」匿われている可能性もあるが、何しろ目的が不明で、ここがいい場所なのかまずい場所なのかも掴めなかった。5階の屋上まで来た時、スヴェンは信じがたい光景を目にする。さっき下で見たあの昭和の物とは違い、近未来の風景が広がっていた。「バーチャルビューだ、この技術、見たことがある。」バーチャルビューとは、見たかった、体験したかったなど、実現させたい世界を再現するために開発された、環境に悩まされた地区に提供する画期的技術だった。スヴェンがこの事を知っているのは、一度依頼が来たが、設備やコストに問題があり、断ったことがあるからだ。ちょうどその時期はチップの開発に集中した時期でもあった。「この場所に使われているという事は、何だかわからないが、環境が悪かったという事になるな、それと砂は関係ありますかな」スヴェンの研究魂が再燃されようとしていた。人気blogランキングへ
2006.08.25
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スヴェンを乗せた車は、知らないうちに、着地していた、砂の中で着地?どうなっているのか?車を降りてみると、不思議な事に、砂が曇り空のように宙を舞っていた。「こいつは驚きだ、重力を砂漠にだけ集中させてる、ある程度重量がかかればその部分だけが沈むようになっている、こりゃなかなか頭いいな」何故か感心しているスヴェン。科学者を唸らせるこの技術は、設計した者がある知識を持つ学者であることはまず間違いないだろう、果たしてその者とは誰か?歩いてみると、微かだがショウ達の気を感じた、しかもショウだけではなく、カイの成長した頭脳まで感じ取れた。「カイさん、快挙ですな」 薄ぐらい砂の空の下、微かに建物が見えてきた。見た感じ、アパートのような形をしている。これも施設なのか?入口には、自転車があり、ポストや外灯とかもあり、どこかで見たような光景、しかも懐かしさを感じる。「こりゃ、昭和だな、どうみても。」高度成長の中で、ポツンと時代から置いて行かれたあの下町のイメージだ。「一体何のために、昭和の下町をセレクトしたんだ?施設だとすると、七つ目、たしかに聞いている情報だと不明な場所にも何箇所かあるとか」ここが施設なら悪い人物はいないはずだ。いたとすれば、我々が捜している、もう一つの存在、海賊版のアジトだ。スヴェンのチップは砂の影響か、カイのレベルの少し上位までしか発揮出来ず、うまい発想、判断がつかない。「ここは人工的にチップのレベルを抑制している、とすれば、海賊版ならある程度まではレベルが上がるって事だ。だから、頭の悪い人には効果があるって意味だな。」何とか解読していたスヴェンだが、たいした労力ではない割に、凄い疲労を感じた。「頭のいい私にはかなり不自由な所だな。考えるのが嫌になる」海賊版アジトの疑いを秘めながらも、スヴェンは建物の中に入った。階段のある廊下は砂の影響で足元がざらざらしているが、乾燥している。しかも、ひんやりしていて、暗い。各階の部屋はそれぞれ人の気配がした。テレビかラジオの音か、あるいは、メロウな音楽が聞こえてくる。「そういえば、音楽なんて最近聞いてなかったな、ある意味ここはそういう文化を忘れていた者への避暑地、それとも墓場。」砂がチップの性能を鈍らせた結果、スヴェンの大きな勘違いが生じていた。人気blogランキングへ
2006.08.24
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車が狭いというオチで、歩くハメになったショウとカイ。砂漠を半分近くある炎天下を歩かなければならない。カイ:「おかしいな、行きはこんなに長かったかなあ、屋根でも車に乗ればよかった」ショウ:「着いてる頃には黒焦げだよ」カイ:「迎えにきてもらえないのか?」ショウ:「しょうがない、交渉してみるよ」ショウは仕方なくスヴェンとコンタクトした。スヴェン:「そう来ると思って、今出ている所ですよ。砂漠にいますよね、あと10分位ですな」ショウ:「ありがとう、助かるよ」カイは安心して、座り込んでしまった。ショウ:「カイ、この砂漠で立ち止まっているのは危険だ。」カイ:「どうして?何もないだろ?」という間もなく、カイは砂に吸い込まれるように沈みはじめた、ショウも同じように沈みかけていた。「カイ、捕まるんだ!」「何だ どうなってんだあ!?」2人で捕まりながら、必死にもがいたが、沈むスピードが異様にも早い。間もなく沈んで消えた。そのほんの直後にスヴェンが到着したが、あの2人とも見つからない。「おかしいな、たしかにこの場所で信号がきてたんだが?」今ほんの一瞬足元が沈んだような気がしたので車を少しずつ動かしながら、「さてはこの下に!ショウらしくないな」スヴェンは少しでも動いていれば車でさえ沈まない事がわかったが、ショウ達をどう救うのかが問題だった。「今の場所に居たのは間違いないんだ、そこで潜ればたどり着くかもしれない、やってみるしかないな」スヴェンは車をさっきの地点に戻って止めた。すると砂は段々車を包み込むように沈めていった。スヴェンは車の中から砂の世界を見た。「これは自然の力じゃないな、誰かが仕組んだトラップかもしれない。」人工的な罠だとすると、一体誰が何のために?いつも通り掛かっていたこの砂漠にこんな秘密があったとは、ショウは愚か、スヴェンでも判らなかった高度な技術だ。「我々のチップをもってしても沈むかもって所までしか予測出来なかった、まだまだ改良の余地ありですな」砂の上はもとの平然とした砂漠に戻っていた。人気blogランキングへ
2006.08.23
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「完全に100%は無理なんだ」と言いながら近寄ってくる、マリアがたまらず走りだし、しっかり抱きしめた。マリア:「会いたかったよお、クラウー!」クラウ:「そ、そんなに仲良かったっけ?マリア」と言いながら笑顔で抱きしめた。老人達もほほえましい光景をじっと見ていた。後から子供を連れてスヴェンが帰って来た時、老人達が、老人:「お帰りなさい、スヴェンさま」スヴェン:「そういう言い方止めてくださいよ、もう何もでませんよ」相変わらずな嫌味っぷりに、マリアが「いやあ、変わってないねぇ、スヴェンがいるって気がするよ」そして双子の子供のイオンとサーヤも紹介され、より賑やかさを増した施設内。マリアは、子供の噂は聞いていたが、実際に見たら、父親があの最悪だったザイルとは思えないほど可愛いと感じたが、「世の中、本心から悪い奴なんていないんだな、でなきゃ、こんなに可愛い子供が生まれてくるわけないもん」と言い聞かせていた。それを受けてスヴェンは、「いや、残念ながら芯からの最悪は存在するんですよ、少なからずともね、だからリセットが発動するんですよ」マリア:「そんなの信じたくない、いてほしくない」スヴェン:「最悪の心は、何も特定の人が持っているわけではなく、誰にでもある願望のうちの一つのジャンルとして備わっている、つまり、私達にだってあるかもしれない、でもそれが人間という生き物なんですよ、マリアさん」クラウがそれを聞いて、「じゃあその最悪を唯一無くす手段というのは、やっぱりあれか」「チップの事ですな、最悪抹消を可能ですよ、以前まではね。」「以前?今はダメって事?」食事中の老人達のいる部屋から移動して、打ち合わせ室に案内しながら、「皆も知っていると思いますが、海賊版チップという、チップ面での最悪が発生して、急増しているとの情報がありました、これを解決しないと、もはや本家チップにも敵わない事態になりうるのですよ。」マリアもクラウも恐怖に陥って呆然とした顔を見て、「怖い顔、まるで最悪を見てるみたい」と発言したのはなんと双子の男の子、イオンだ。マリア:「え..そう、恐かった?」脅かしてもびくともしない双子に対して、怖い顔が赤くなったマリアは、「これってすべった?」皆がどっと笑いになった。「そんなことより、女性3人チームとなってティムを中心に厨房担当お願いしていいかな?」スヴェンがそういうと、マリアもクラウも快く引き受けた。すると、「女性はもう一人いるんだけど」「おっといけない、サーヤちゃんもお願いしますよ、おばさん達のお手伝いして下さいね」おばさんじゃねぇよ...ぶっ飛ばされたのはいうまでもない。人気blogランキングへ
2006.08.22
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施設船では、クラウが帰って来る事を知らされて一番喜んだのはやはりマリアだった。「やったね、ますます活気が沸くな」はしゃぎ気味のマリアに気付いたティムは、「何かいいことあったんですか?」「そうなの、前に会ったカッコイイ姐御がね、久々にここに来るの。来たら紹介するね」「へぇ、姐御かあ、マリアさんより上なんだあ」「それどういう意味よ、このぉ」ティムが一通りの食事の仕度を済ますと、すぐに老人達を呼びにまわった。しばらくして、老人達が集まってきて、ティムに笑顔で応えていた。「いつものことなんだけど、どうしても1人だけ一緒に食事しない老人がいるの」ティムはその話しをするときは少し暗い顔になった。老人の1人が、「以前までは話しくらいはしてたんだけど、最近は見向きもしなくなって、心配でしょうがないよ」他の老人達も頷いていた。マリアがマリア:「過去に何かあったんでしょ?」するとティム:「何かを抱えているはず、きっとリセットした時と関係があるのよ」ティムにもそのことで心当たりがある。今はシェフとして働いているが、他に男性2人も厨房にいた。その2人もやはり、リセットをきっかけにいなくなった。大規模で考えたら、消えた人達は数知れずと聞いている。チップを付けたとしても、記憶は保ってもその場に居られる保証は70%。「もうこんなのやだ、リセットするたびにいなくなっちゃうなんて!誰が造ったの、そんなもの!」ティムが泣きながら叫ぶと、「誰かがとかじゃないの、人類がそうさせているのよ、難しいけど、人類がみんな共存できる環境にしないかぎりはね」マリアは他に言う言葉が見つからなかった。「どうすれば共存できるの?チップとかで何とかなるの?」ティムがそう言った直後、「無理!」廊下から声がした。「?」皆が揃って廊下の方を注目した。姿を見た瞬間、マリアが突然泣き出した。「100%は無理よ」人気blogランキングへ
2006.08.10
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母親としての認識を強く感じたカイは、クラウの考えを伝えて、限界を抱え込む女性を救いたい、精神を修正していかなければならないという意味で自分で抱えた精神をケアできる女性向けチップを普及させたいと意欲を表していた。だがクラウ自身、まだ完成したとはいえ、試したわけではない。ここにはそういった設備がないため、自分ですらどうなるかわからないのだ。クラウ:「今の段階ではどうみたって量産が難しいわね、そんなことより早いとこ自分が試したい、そこの施設には例のマシンってあるの?」カイ:「ああ、多分、スベェンの事だからね。」カイ自身確認したわけではなかったので、半信半疑な言い方だった。しばらくすると、ここでは聞き慣れない音がした。車の音らしい。「スヴェンとショウが来たぞ」クラウは一層緊張を増した。どこかに隠れたい気持ちで、部屋をうろうろしている時に、「お待たせ、クラウさん。元気そうだね。」そう言ったスヴェンはすぐにクラウの前まで来て、軽く抱きしめた。スヴェン:「心配いらない、もう過去はリセットされましたよ、先を見ましょう」耳もとで囁くように言ったスヴェンに、クラウは改めて腕をまわした。クラウ:「す、すまない、おかげで吹っ切れそうだ」精一杯の声と同時に涙が滲んでいた。ショウとカイは、背後で★「やったね」というゼスチャーをしていた。スヴェン:「もう仕度は出来てるかい?必要な物だけにしてください。後からでも取りに来れますから」必要な物と言えば、ケアチップのデータとプロトタイプ、それに、子供達。ショウ:「よく育て上げたな、たいしたもんだ」ショウもクラウの意外さに感動していた。スヴェン:「しばらく狭いかもしれないが車だからそんなに時間はかからないと思います」乗って来た車は、あのザイルに盗まれたはずのフィアットだった。ふっ切れたクラウにはもう抵抗もなく乗る事ができた。しかし、クラウ:「よりによって小さいのが好きなの?」スヴェン:「ゴメンゴメン、トラックとかバンとかどうも抵抗あるんで」ということは・・・ショウ:「じゃあ、私達は着くの明日だな」カイ:「そのようだね」結局、ショウとカイは歩いて帰る事に。人気blogランキングへ
2006.08.09
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スヴェンとの距離を確実に縮めているショウ。「縮めている分だけスベェンが作業している事になるな、一体どこまでやるのか」少ししたら、ショウに連絡が入った。[やあ、スヴェンです、今どこにいますか?]「スベェンか!待ってたぞ、今、崖から深い森を抜けて草っ原を真っ直ぐ通っている。」しばらく間を置いて、[あー、わかった、後でね...あ、ゴメンゴメン、ショウさんの場所は今ポケットナビでキャッチしましたよ、情報は聞いてます、今から行きますからそこに居て下さい。プツっ]「勝手にしゃべって切りやがったな、誰としゃべってたんだ?大丈夫だよなあ」ショウは心配しながらも顔は笑っていた。朝になり、ちょうど起床したぐらいに、カイにも伝えられ、安心した所へクラウも起きて来た。「今、ショウから連絡が入ったよ、スベェンがこっちに向かうそうだ」「そう、わかった」あまり明るい表情を見せなかったクラウは、未だにリセット前の事件を引きずっていた。「あの事だけはリセット不可能って事か」カイは、痛いほど気持ちが伝わっていた。あの事件、ザイルの散布やクラウの反発、数え切れない謀反に顔向けできないでいた。おまけにその子供の父親であることも引きずる要素だった。しかし、子供達には全く罪はないし、父親の事も知らない。もっと辛いのは、父親の存在、つまり、父親というものさえ教えられないでここまで来たのだ。カイ:「クラウさあ、気持ちを決着させるなら早い方がいい、子供が大きくなってからじゃ、もっと辛くなる、しかも、子供から事実を知ってしまったら、...」クラウ:「判ってるわ!それぐらい。」カイ:「判ってるなら決断しないと、あんたも限界にきてるはずだ」ここ最近は1人の子供を殺してしまう事件も起きているぐらいだ。精神面に弱さを感じる現代の主婦を考えると、昭和時代までの苦労から見たら一体どこかが変わって来ているのか。クラウの場合は、犯罪の重さを背負い込むのはまだ稀なケースとしても、3人から5人子供を抱えて生活を錐揉みしている主婦と、たった1人のためにイライラしている主婦との違いは、生活していくために当たり前の事としての認識、子育てという生活に対しての認識に大きく違いがでてきたように思える。子供の将来を考えて今の生活を苦労とは考えず、自然と普通にこなしていたはずだが、どうみても現代の生活起点を子供のせいにしているのではなかろうか?人気blogランキングへ
2006.08.08
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クラウの準備が整う間、ショウに連絡をし、スヴェンとの合流を急ぐこととなった。「なんとしても乗り物がいる、この世界、何で車が無いんだ?」嘆いているカイを見て、クラウは、「昔にはなかった物だし、ここには必要な物でもない、それがリセットの本心だからさ」納得するカイ。そもそも、スヴェンが車を持っている事が不思議な所だ。ショウは、クラウの思いに添えるよう、スヴェンの発見を急いだ。「この通信が彼に届けば、きっと来る。」思いを込めてスヴェンに伝えた、果たして返事は来るのか。双子の子供と相手をするカイは、心の中で、「この子供達の親がザイルとクラウとはね、あげくに、リセット直前に生まれて、リセットの最中に急成長。ちょっとした化学反応じゃないか?」カイはザイルが関わっている以上、麻薬が頭から離れない。急成長とリセットとの絡みで化学反応を起こしたとすれば、この子供達の将来に支障はないのか?クラウ:「今日はもう遅いから明日にしようか、泊まってくだろ?」クラウが精一杯の親切な言葉をかけた。カイ:「あ、そうか、そうだな。時間が経つのが早いな」クラウ:「早く感じるのは楽しかったって事かな」カイ:「どういう事だい?」クラウ:「どっちが子供か判らないって事だよ」相変わらず、減らず口なクラウだが、カイは、こういうのが平和って言う瞬間なんだな、と妄想していた。まさにそうかもしれない、これが続く事が望みだが。子供達が寝静まり、しばらくは二人で時間を過ごした。カイ:「2人とも名前あるんだろ?」クラウ:「ああ、男の子がイオン、女の子がサーヤ。最初は変えようと思ったんだ」カイ:「何で?かわいい名前じゃないか。」クラウ:「名付けたのはザイルさ、あいつ、あんなガラだけど、割と紳士なんだよね、惚れたのはそこなんだな、きっと」カイ:「それしかないって言う意味か?」クラウ:「ま、どうでもいいけど、名前を変えなかったのは、子供に父親がいないのがかわいそうだから、責めて名付け親だけは、父親だった事を自覚してもらおうと思ってね。」カイは、クラウの人柄を改めた。この世界、心底から悪い人なんて一握りしかいないんだって事が、彼女を見て、そう感じた。いい人だって、完璧ではない、過ちもある。ちょっとした失敗を認めるか隠すかが分かれ目なのだから。人気blogランキングへ
2006.08.07
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クラウがここに着いてから何年経ったか、子供達はいつの間にか3歳位になり、子供が病気しないほどの莫大な免疫力を付けた代わりに、クラウが病弱となってしまった。だから、体調や健康管理などを踏まえ、検査することを奨めるカイ。「俺が守るから、移動する準備をしてくれ」クラウは戸惑った、森林に囲まれた気候のよさと、誰にも関わらない、煩わしさが一切ないのがよかったのだ。「ここにたどり着いたのは何かの運命って気がするんだ、定めというか、ここに居ちゃ駄目なの?」カイは困ったが、すぐに、「確かに、ここには自然があり、食物も豊富で、子供達も病気せずに健康に気を使ってきた事も事実だ。でもクラウは今の状態から回復するわけではない、治療する、しなければいけない、ここには道具もないし、施設もない、子供にはまだあんたが必要なんだ」クラウは、今でも既に歩くのが不安定だった。クラウ:「この環境が好きだ、ようやくあたしの居場所だって気がする、子供達だって自立し始めていて、自分の事も出来つつある。今が一番幸せなんだよ。」カイ:「じゃあ、せめてそのケアチップを導入すれば、自分の体の制御はしてくれるんだろ、そうしたら、またここに戻ってくればいいんじゃないか?」カイはもう彼女を説得する力がなかった。半面、彼女の言っている事が納得がいく。クラウはこれから先の事や伝えていきたい事が見つけられるのであれば、ここに戻るという条件で一緒に行く事を承諾した。今の幸せが一番なら、おそらくそれ以上の事は求めない、というのが自分にとっての本当の幸せなのかもしれない、こういう古風な考えを持つ人間が確実に減少している。地球全体がその気持ちなら、おそらく、これ以上の文化の進歩はそうないだろう。でもそれは、もともと必要ない事だからだ。しかし、進歩をめぐり、あらゆる競争や、金儲けなどが伴うのも事実だ。※関連記事=番外編に続く人気blogランキングへ
2006.08.03
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ショウでもさすがにここまで想像を絶する事が立て続けに起きているとは思っても見なかっただろう。強い動機を感じたショウのチップで騒ぐものには、その真実の詳細まではキャッチできないが、カイに何かが起きている事だけは理解出来た。ショウはカイの所へ行きたかったが、今の状況では、スヴェンの行方を優先するしかなかった。電波の余韻は時間が経つほど効力を失っていくからだ。「何だかわからんが、悪い気じゃなさそうだ、先を急ぐぜ、カイ。」カイに伝える事を前提に独り言をわざと言った。気が動転しているカイの頭脳には、ショウの思いが流れてきた。 「なるほどな、ショウが一番我慢してるよな」クラウが起き上がろうとすると、「ダメだよ、まだ寝てなきゃ。」女の子の方が注意した。「どこか悪いのか?」カイも心配そうに話し掛けた。「ちょっとね、この子達産んでから体調が弱くなったというか、昔のツケかな」「ツケって、麻薬のことか?」「関係ないとは言い切れないよ、まして双子も産んでるし、風邪一つでもこうだから」彼女は麻薬の名残が祟って、双子の出産の負担から、免疫力が著しく減少したと見られ、チップのメンテナンスも怠っていた。「こうなる前に組み込んでおけばよかったんだよねぇ」クラウは後悔の溜め息を大きくついた。「そうか、完成しているんだな、例のチップ、でもマシンがないから目の前で拝んで見るだけか」クラウは、カイにここまでのいきさつを話した。リセット前から1年位前からザイルと手を組み、スヴェンの手下として潜り込んで、必要な知識と一緒に、必要な物資を横流ししていた。幹部たるザイルが仕切っていたから揉み消しは簡単だった。付き合い始めて半年には同棲をはじめ、日夜共にする。しばらくしてから、彼女が妊娠したことがわかってからは、ザイルが少しずつ単独で動くようになり、物資に紛れ込ませた麻薬を持ち出すようになった。ザイルがクラウに無理をさせまいと気を使っていた事が逆にストレスとなり、彼女に黙って麻薬で気を紛らせたのだ。しかし、ザイルの体の異変に気付き、クラウは彼を追求した。その時はよく謝っていたが、彼女に言われる事が慣れて来て、逆に快感を覚えるようになり、クラウにも限界が来たその瞬間、彼女も半分ノイローゼ気味となり、自分から麻薬を打ちはじめた。しかし、彼女を制御するチップから、お腹の子供を守るためのセキュリティ作用が働いて、危険を防御するのに免疫を急激に作るため子供の成長を早めた。ザイルがリセットを押した時にはもうお腹が大きくなりかけていた。リセット後、この小屋のある森林にいた。お腹の子供は、いつの間にか体外に存在していた。リセット中に異変があって、出産が早まったとみられるが確証はない。人気blogランキングへ
2006.08.02
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カイの奇跡は、あらゆる事を招くきっかけになった。その暗い小屋に入ると、何と子供が2人、そしてその向こうにベッドに寝ている母親らしき女性の姿があった。子供は男女の双子で、遊んでいるわけでもなく、一緒に寝ていた感じではない。どうも、寝ている母親を守っているようだった。「こんにちは」カイが尋ねると、「あんた誰?ここ誰にも教えてないのに」すぐさま怪しまれたカイは、「ご、ゴメン、俺の名前はカイ、大切な人を探しているんだ、ここは偶然に来たんだ。」子供達は警戒しながら、母親の近くに歩み寄った。すると、「どうした、2人とも、何があった?」母親は、振り向かずに声をかけた。「妖しいおじさんがきてるけど、やっつける?」勇ましいやら返事をする男の子に、「あたしが見て判断するよ」と言って、こちらを見た。カイは目を疑った、それは母親も同じだった。しばらくはお互い固まっていた。子供達は不思議な状況となり、やがて、カイに近付き、「知り合いなんだね、おじさん」子供達にも何やら伝わって来た様子だった。当然ながら、子供にチップなど組み込んでいるわけがないが、勘の鋭さはどこから湧いて来るのか?しかし、この2人の子供には信じがたい事実が隠されていたのだ。「探し求めていた人物にこんな形で再会するとは予想外だ」「あたしもだ、みんな無事か?カイ、だったね。」「ああ、元気だ、といっても、あと1人は探索中だけどね、クラウさんよ。」 人気blogランキングへ
2006.08.01
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