としのすけのワインハウス

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「香りが閉じる」ということ


また、一般的に「香りが閉じる」という現象はボルドーの上等のワインに見られるということから、エキス分の濃さ、特にタンニンやポリフェノールの量と関係がありそうです。これらの事から推して、としのすけは以下のような仮説を考えます。

ワインの熟成の過程では、種々の新鮮な香気性エステル類(若いほど良い香りのする物質)が加水分解によって減っていき弱香化する方向の反応(反応A)と、タンパク質、アミノ酸、多糖類の加水分解生成物、ポリフェノールによるアミノ・カルボニル反応に代表されるような香気成分が生成される方向の反応(反応B)が同時に起こっている。
ボルドーワインのようなポロフェノールを多量に含有するワインは、還元状態にあり、加水分解反応は極めてゆっくり進むと考えられるので、反応Bは、加水分解ステップ→香気成分合成ステップとステップが多い分遅れる。
その為、初期(反応Bの加水分解ステップ時)は香りの分解(反応A)スピードが生成(反応B)スピードを凌駕し、香気成分量が減少する。
しかし、ひとたび反応Bの香気成分合成ステップに入ると、カラメル・有機酸類・種々の環状芳香化合物・複雑なエステル類といった所謂「熟成香」の元がどんどん創られ、香りの生成(反応B)スピードが分解(反応A)スピードを凌駕し、香気成分量が増加に転じる。
そして、香りの分解(反応A)スピードが生成(反応B)スピードを凌駕し、香気成分量が減少するピークが、製造後4、5年辺りにくる。
これが、「香りが閉じる」ということではないか。

ワインの熟成、結局のところは、還元状態における種々の分解・合成反応なのでして、コルクの朽ち果てた時が「ビン・ニガー」への転落の瞬間であるわけです。
ですから、
・どれだけ、初期の良いものが残り、後から良いものが創られるか?
・それらのバランスがいかに好ましいものか?
で決まるものと思われます。
特にボルドーは、「後から良いものが創られる」為の原料(アミノ酸やミネラル)が天賦の良さを持っているのでしょうね。
もちろん、卵白による清澄や焦がした木樽による熟成も、原料のバリエーションという意味で非常に大きな貢献をしているものと思われますね。
微妙な量のバランスもとても重要です。
サンテミリオンの厩の香りも、インドールという物質が主犯?と言われていますが、ごく薄いとフローラル系の好ましい香りですし、上等な白ワインに見られる白桃の香りのするラクトン系の化合物は、濃いときは耐え難い油脂の臭いです。

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