中島三郎助と蝦夷桜_2,幕末,箱館戦争

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中島三郎助 と蝦夷桜
No.1 ＜ No.2 （現在の頁）＜ No.3 ＜ No.4 ・・・ No.12 （完）

中島三郎助 （諱：永胤）文政4(1821) - 明治2/5/16(1869/6/25),幕臣,蝦夷では「箱館奉行並」,享年49

中島三郎助 と蝦夷桜_No.2

海の好きな「猿」と「犬」

★ この前の部分から読むには

中島が鳳凰を造船するにあたって、上申の段階から、どこからともなく雑音が入っていた。

「やっこさん、上申する時にまで、へりくだりやがるわ。万事この調子だい。
おいら、耳が腐りそうだねぇ。」

中島の上申書は、ざっとこんな感じだった。
▼
「私ごときの下らぬ戯言ではござりますが、なにとぞ
洋式軍艦の造船を、この愚かな私にお許し頂けませんでしょうか・・・・」

・・・・・ちなみにこの上申書のタイトルは「愚意上書」（タイトルからして謙る）

内容的にはその必然性と成功させるにあたっての裏づけ詳細が入っている。
しかし、それでいて思わぬ人物の鼻に付いて、むしろ取り潰しを食らわぬよう、やたら
へりくだっているのだ。

どっちが猿で、どっちが犬だか？考えたくないところだが、間柄はまさにそれだ。

中島の上申書の話を聞いた勝海舟。思わずむかついた。

「ぐちゃぐちゃ、ぐちゃぐちゃ、まわりくどい親父め！」

謙虚な中島は口に出して言う事はなくとも、その実、内心では「海と軍艦に関しては、
誰にも負けない・・・」そう自負していた。長崎海軍伝習所の後輩の釜次郎（榎本）には、
ちょくちょく相談を受ける。 「中島さん、すんません。また、一丁、お知恵頂けませんかねえ。」
そうした時には、きまって若者達に一歩譲って、惚けて答える。

「釜さん、何をおっしゃいますやら。こんな老いぼれ爺の知恵なんぞ、そんなもんは、
とうの昔に錆び付いて使い物になりませぬぞ。まさに、年寄りの冷や水、何ができますやら？

万事、お若い方々にお任せですぞ。新しい時代には、やはり、人間も新しい程
良い結果が生み出せるというものですぞ。」

そうは言いつつ、いつだって、なんだかんだと世話をやいた。持って生まれた性分なのだ。
持病の喘息。少しぐらいは休養すればよいものを、結局は、あれやこれ、おまけに趣味の
分野では、俳人としても活躍。寝る暇無しの人生だった。

■猿と犬のキーワードはこれ！「軍艦奉行」

当初、実質上の海軍のTOP、軍艦奉行は勝安房ではなく、中島に声がかかっていた。
ここで彼が、ちゃっかり拝命していれば、あの有名な「咸臨丸の大冒険」は、
勝の功績ではなく、中島のものだったわけだ。

世相柄、最も重要ともいうべくこのポジションは、内心願ってもない誉だったが、
彼は己の持病を配慮した。喘息発作が原因で、皆に迷惑がかかる事態が懸念された。
それだけは、断じて許されない。丁重に辞退したのであった。

事情が事情だけに、重臣達にも理解が得られ、浦賀に留まることになった。

それだというのに、あれもこれも、山盛り仕事を抱え込んだ。

「なんのために、お断りなされたのやら・・・」
・・・・・・・・・・幾度となく、妻のぼやきが聞こえたものだった。

かくして、勝海舟は中島三郎之助が大嫌いだったのだ！！
間にはさまった榎本は可愛そうに。彼にとって「大好きな優しいおじさん＆
たのもしいおじさん」二人組みはなんと、「猿」と「犬」だった！！

■後の世に実証された名艦＿「鳳凰」

勝海舟はご存知のとおり明治を生きた。能力を高く評価された。
一方中島は死んでしまった。そこで、人は長らく一種の盲目になってしまった。

立派な人の発言とは、大抵誰でも信じるものだ。
勝海舟は中島の造ったこの船を

「ああ、あれね。よく頑張って造ったと思うよ。」
「えっ？洋式軍艦？・・・じゃなくてさ、洋風船だからさ、確かに綺麗だよ。」

・・・とつまるところ、けなしている。
ここで人々は皆、あっそうなのかと思ってしまった。

そして公の場では言わなかったにも関わらず、露骨な酷評も残ってしまった。
悪口は伝わりやすいものなのだ。「やっかい丸」と称した事実が露見！！
速度はとろいし、見かけだけで構造はちゃち！すぐ壊れるような華奢な構造。
・・・ずいぶん貶したものだ。

つまり、日本人が自力で初に作ったのだから、外見は洋式軍艦であっても
機能や堅牢性においては、箸にも棒にもかからないモノ・・・と
あの勝海舟が言うものだから、人は皆、長年そう思い込んでしまった。

長年の冬眠から覚めたのは、なんと昭和も半ばの頃だった。検証した結果、
実に堅牢な構造だった。
▲
（スミマセン：この詳細メモったのですが、どっかに埋もれて無念！書けません！恐縮）

【 中島三郎助 えとせとら資料編】： No.1 ＜ No.2 ＜ No.3

欠陥船_開陽と、中島の見抜いた男の能力

中島は、仙台に停泊中の際、こうして感激の再会＝自分の作品「鳳凰丸」に会えたわけだが、
だからといって、ハッピー状態だったわけでない。むしろ悲壮だった。

失った咸臨丸も、美嘉保丸も、ひとえに個々の老朽化が原因とはいいがたい。
少なくとも、咸臨丸は開陽のせいだった。勝海舟の「咸臨丸の大冒険」でお馴染みの当艦は
確かに老朽のため、蒸気機関を取り外され帆船になっていたため、回天に牽引されていた。

しかし、この船は実に安定感の良い名鑑だったのだ。
豪風雨に酷く揺れても、その揺れには一種秩序性があった。揺れの法則に奇異な点はない。

そのため、この船は散々な目にあいつつ、後の世でも修復されて活躍。
明治4/09/19＝1871/11/01、北海道への移住者401名輸送途中の事故に遭うまで健在だった。
この船は頑張って何回も津軽海峡を往復していた。この事故自体も嵐のせいにされているが、
原因は操縦士の酒飲み運転が真実で、それが隠蔽されていたとも言われている。

（少々脱線しましたが、話を元に戻します。）
品川沖から仙台に向かう途中の榎本艦隊の話に戻ると・・・
八艘の船は、豪風雨に曝されて、大パニックになり、ことに開陽と美加保丸のペア、及び、
回天と咸臨丸の牽引ペアは、共倒れを避ける為に、究極手段。
手旗信号による両艦同意の上、牽引ロープを切った。

ここで美嘉保丸と咸臨丸は流されていったわけだが、牽引ロープが繋がっている間に、
酷い揺れ方をする開陽のせいで既に大分ダメージをうけていた。

開陽の酷い揺れ方とは・・・
「舞い散る木の葉が左右にひらひらと振り子運動のような動作をする状態」それに近かった。
本体の上下浮き沈みと左右の交互揺れなら嵐につきものだが、この「木の葉運動」は異常だった。
咸臨丸がどんなに揺れても、船本来の揺れの法則からずれることなく一種の秩序性が保たれて
いたのに対して、開陽は直進性を完全に欠いていた。

船を操縦したことがないので専門用語も正しい表現も使えず恐縮ながら・・・
いわば、ホイールバランスの狂った超旧式の中古車みたいな故障以前の根本的要素が
誤っていた状態だろうか。持ち主なら乗れるが他人が運転すると非常にビビるアレか？？
否、世間でよく言う「幻の名車に不覚の欠陥」が発生したのと同様の常態か？
なんせ、開陽は、非常に怪しいらしい。オランダで完成イベント＝進水式の際、
いきなり防波堤だかにゴーン！オカマやっている。やっぱり怪しい。

後の世、皆のあらゆる文献などからすれば、操縦桿に値する最も重要な部品が何十センチだったか
途中で圧し折れてしまったから・・だとか、帆が折れたからとか、またまたオランダで造船された
段階で、本来オール金属で造るべきところ、幕府の財布が悲鳴をあげて木造船にしたからだとか、
色々言われているのだが、中島は、乗艦するやいなや「欠陥」を肌で感じ取った。

澤太郎左衛門の操艦能力と、勇敢な水夫達の頑張りでどうにかなったものの、
これほど優秀なスタッフが揃ってなければ、榎本蝦夷共和国どころか、開陽は仙台にすら
到着できなかった。新政府から見れば、「空前のお笑い大ヒット事件」になるところだった。
それでは、蝦夷独立政権もなければ、箱館戦争という言語すら、歴史上登場せずに地下に埋没だ。

■中島が仙台停泊中、妻スガに送った手紙
・・・ ●添付された墓石の絵、●二心殿を汲んだ狂歌

散々の嵐をどうにか抜けて、開陽はやっと仙台に到着。
ここで彼は、真っ先に妻スガ宛に手紙を送っていた。

死の覚悟である。命を懸けて戦うからじゃなくて、この船では蝦夷まで到着できないだろう
・・と踏んだ。墓石の絵を描いて手紙に添えた。死の覚悟と同時に、中島家の存続頼むぞ！！
という心準備の促進。（これには訳がある。中島家の訳＆ルーツ）
そして、もうひとつの意味は、己の意思の固さは、硬い墓石のごとくだという意も含めている。

筆まめ＆慎重派＆なんでも事前に細々準備を怠らない中島さん。
開陽が仮に沈んだ場合、己と可愛い次男、英次郎（房次郎）は絶望だが・・・
蟠龍艦長_松岡盤吉のもとに長男、恒太郎を預けている。見習いとして頑張って乗艦している。

親子全員、同じ船に乗って全滅しないように、ちゃんと配慮している。
大きい船、立派な船、安全性が高いといわれる船・・で考えれば、「回天」だが、
蟠龍に乗せている。蟠龍艦長は、徳川の頭脳畑、故、江川英龍の里、韮山の松岡盤吉だからだ。

機械大好きの中島は、その反面、一般論に押し流されることなく、機械の機能、つまり無機質の
能力よりも、常に「人による力！」を重視して何事も動いた。ここでいう「人による力！」とは、
個人の頭脳もあるが、現代でいう「頭のいい人」とか、そういう領域だけでなく、「内存する穢れ
無き魂」は非科学的なことじゃなくて、究極に至っては最大限の力を発揮できるものとなる事だった。

■「内存する穢れ無き魂」って何？
呼応_武蔵の国,江川の韮山,浦賀＝徳川へ真の忠誠、不義への闘い■関連＿箱館総攻撃
今日の感覚で考えると非常に不思議だが、当の将軍慶喜がコケても、徳川自体への心は
皆、全くコケない人々なのだ。
（三郎助の句）

君がため我もえぞ地に行くぞかし
にしんといわば恨なりけり

▲「にしん」って何？
＝慶喜がコロコロ姿勢を変える習性から、影では「二心殿」といわれていた。
どうやら松平春嶽が頭にきて、密かにネーミングしたらしい。密かがなぜか世に伝わった！！
それでも、中島の忠誠は変わらない。「二心殿」なんかじゃないぞ！！狂歌でそう叫んでいる。

・・・（関連：二心殿の写真館【明治になって、慶喜は写真に凝った】

■中島三郎助が見抜いた男！：「とんちの彦さん」と「上田寅吉」
・・・開陽を悲劇から奪還、無事救った真実の男は誰？

嵐に祟られた開陽。あの揺れは尋常じゃなかった。二艦を失ったものの、流石は開陽と
釜次郎が豪語する以上、陸兵達、皆には言語道断。もちろん、榎本に歩調をあわせてはある。

しかし、直進性を完全に欠いたあの揺れ、「奇怪な木の葉現象」は、もはや、開陽の欠陥以外の
なにものでもなかった。

■ 開陽が仙台に堂々！入港。・・否、その真実の姿は惨め！！

大量の樽を縄で結びつけて、『岐阜の鵜飼じゃあるまし・・・状態』
・・・・の惨めな姿で、辛うじてこの船は仙台にたどりついたのだった。

「障害有りとて、操艦技術の沢が居る。」胸を張って榎本はそう言った。
釜次郎は可愛い後輩だけに、そのへんは信用している。
しかし、命を取り留めたのは操艦技術もさることながら、
中島は、『測量士官の原田彦衛門の一人手柄』だと踏んでいた。

この男は、 「とんちの彦さん」 と呼ばれ、なんら手柄語らぬひょうきん者だ。

「鴨獲り権兵衛か、鵜飼か、知らねえけどさ、やってみるっしかねえよ！」

荒れ狂う大海原、豪雨に叩きつけられ皆動転する中、彦さんは笑ってそう言った。
・・・無数の樽を縄で繋いで、開陽は、それをぞろぞろ引き摺りながら進んだ。

功を奏したのであった。
中島はここで見抜いた。とんちどころでない。皆には無い「別畑の素晴らしい能力」

蒸気機関に関してならば、中島本人、滅法強い。長崎伝習所時代といえど、基本的に海外の書物は
ご法度だから、読みたくても本は、まともになら入手できない。ましてや若者達の非常識
を叱るべき立場、年配の幕臣である。余計な動きはできない。
しかし、中島、どうにも止まらなかった。オランダの教師達に、食い下がって、できる限りの
手は尽くした。実戦留学やってる暇がないと解っていた以上、僅かな書物がだけがたよりだった。

中島は、伝習船に存在してない機能分野は、しかたないから頭で構築して大体把握した。

■「彦さん」＝原田彦右衛門が発揮した能力・・・応用物理学の一種か！！

この時代、応用物理学という言語があったかどうかは知らないが、
中島は「彦さん」の能力に驚愕した。彼が発揮したこの優れた能力は
他の誰にもない力だ。機械構造に滅法強い中島があれこれ考えても、けっして
及ばない。 発想の領域が皆と全く異なる分野にあることに気付いた。

■上田寅吉

また、オランダで士分を得た上田寅吉とて、所詮、大工上りなどど影で呼ばれていたが、
中島は彼を根っから尊重した。船大工というより、工学博士に近い知識を集積している。
この人は無事生きたから、明治政府に出仕して、横須賀造船所他で造船技術者として活躍する。

中島の目は確かだった。上田と彦さんはただものじゃない。見抜いていた。

そういえば、あっ！弁当！給仕の伊藤源左衛門

あれや、これや、ついつい思い起こした中島は、すっかり箸が止まっていた。
気の効く男、伊藤は、中島の食事中、独楽鼠のように、ちょろちょろと動き回り、
陣屋内のゴタゴタを片付けていた。

やれやれとばかり、振り返って中島を見るなり、落胆のあまり、大きな溜息を漏らした。

「いやだね！だんな、飯食う時ぐらい、仕事の事忘れて下さいよぉ～ってば！！」

・・・中島は、突然の伊藤の声で、やっと我に返った。
「すまん。・・・いや、実に旨かったぞ。」
・・・あわてて、どうにか繕ったものの、さまにならない。

「なに言ってんだかサ。だめですったら。ああ～っ、やっぱ小食なんだからぁ～！」

伊藤はついに、完全に仏頂面だ。それもそのはず、
旨い、旨いと褒めるわりには、折角の手作り弁当はちっとも減っていない。

すっかり中島に懐いたこの男は、話し言葉に不自由なくなっていた。
顔からすると、固苦しい典型的な幕臣肌に見える中島は、こう見えても、
デコボコな若者が大好きだった。心許せば、無礼など全く気にしない。

伊藤は、調子に乗ったのか、本気で腹が立ったのか、
ついに、こんなセリフまで吐いてしまった。

「だんな、こんなに、ちょっとしか食わないから、そんな体なんですぜ。
・・・今に、身欠き鰊みたいに、干からびちまいますぜ！！」

勝ち目のない時は、大人しく侘びるか、馬鹿な冗談で返す・・・もう、それしかない。
「すまん。干からびたら、柄杓で湯でも掛けて、また伸ばしておいてくれ！！」
・・・・・・・・中島は、照れ隠しに頭を掻いた。

伊藤はオーバーアクションで、わざと、ぷんぷんと怒ったふりをしてみせた。
「ほんとにもう、・・！あたしゃ、あれ以来、柄杓が大嫌いなんですったら！！」

しかし、ふと思い立ったらしく、突如、漬物の話をしゃべり始めた。

「そう言えば、身欠き鰊で、思い出しましたわ。塩っ辛いやつで旨いのがありゃ、だんな、きっと飯、二倍食えまっせ。
あっしよりかね、実はうちのおふくろの漬ける『鰊漬』って
やつ、ありゃ、もう、旨めえのなんのって最高っすよ。
よし！キメたぞ！必ず今度、そいつを持って来ますからね。頼みますよ。それまでは、ちゃんと努めて、飯一杯食うように心がけといて、下せいよ！！」

最後の最後、別れ際まで、伊藤は、痩せぎすの中島の体を心配してくれた。
近いうちに、母親から漬物をもらってくるからと約束して、気持ち良く立ち去った。

こうして、なぜか中島の周囲に集まる奇怪な男達の一人、
デコボコな男＿伊藤源左衛門との今日のラウンドは無事終わった。

デコボコな部品

若者達＿●榎本、そして、木戸孝允、●蒸気機関車の模型

中島三郎助 と若者達

確かに、中島の周囲には、不揃いな「デコボコ部品」がなぜか集まっていた。

■真面目な中島は上の者に対して極めて丁重な姿勢で接するあまり、悲しきかな、同世代
同格には、あまり良く思わない者も少なくない。これは、勝海舟に限ったことではなかった。

■しかし、その反面、律儀で礼儀正しいことから、年齢が上の者には、位が高い低いに関わらず
その点は評価される。また、前述の柴田のような人物には、心から尊重されたりもする。

■そして、ぐんと若い者達には、非常に慕われる。
一本筋通すべきところを示せば、無礼講OKなのだ。気さくな若者に囲まれていると、
安心のあまり本人も、案外「とんま」な事をやって、皆を笑わせたともある。

■オリーブ油のビンを掴んで、洋酒の一種と思ったのか、なにげない顔で飲んでいたらしい。

★ついでに脱線オマケ：
オリーブ油の話は、若者の前でという説と、黒船被接待中の事との二説あるものの、実際
中島がやらかした「トンマ」事件としては本当。
★しかし、このオマケについては、あらかじめ、（3）の話は、
中島かどうか証拠はありませんが、ついでに一コマ。
1853ペリー来航事件の後、一応表向き平和モードで米＆日本、お互いにちょっとした余興を
見せ合ったりプレゼントをしたりしました。

★日米（腹芸！）友好イベント＆プレゼント大会★

日本側のショータイム
日本はお相撲さんが登場して、米俵を楽々２から３個まとめて運んであげたり、
中には歯で咥えて両手を含めると４つも５つも運んで見せたりした。
JAPANは強いぞ！デカイの居るぞ！というところを見せたかったのだが、
コレ、残念。純粋に、結構ウケたらしい。外人さんの一人はお相撲さんの肩を触ってみて
まるで牛の皮みたいにブホブホに分厚いの意の記述・・・残されてしまった。
アメリカ側は、黒人水兵達がゴスペル風？に重唱で独特のハーモニーで歌いながらダンスを
見せてくれた。日本人、このハーモニーかなり感激。（この後箱館に上陸した際も、やはり
このハーモニー、誰もが感激した。）
アメリカ側からのショータイム。
ミニサイズの動く機関車。コレ、お飾りじゃなくて、あくまで模型だけれど、
ちゃんと動く本物の蒸気機関構造搭載。円状のミニレールを
置いて、実際動かしてくれた。 すると！事件が起きた！
これ、日本側には書いてないみたいだが、アメリカ側の記録に一種「お笑い見聞」的に
書かれていた。

★事件！：さて、この人物＝犯人は一体誰なのだろう？歴史上の謎★

「気難しそうな役人の一人が、動いた途端、突然上に乗っかった。
彼はどうやら、乗ってみないと気がすまなかったようだ。彼は機関車が
動いているので、怖いやら、面白いやら、興奮の余り、もの凄い形相だ。
それなのに、暫し、そのまま小さな機関車の屋根に乗って大騒ぎだった。」

（・・・上記のとおり、これが中島だなんて、どこにも書いてないので宜しくね）
ただ、妙に気になる。阿呆な考察お許し下さい。考察▼
- 気難しい顔。ん？中島？＝他にもそんな顔一杯、だから断定できない。
- 子供なら乗れる小型：デブを自覚している人物なら、まさか上に乗らない。潰れる！
  また、身分が相当低い若手役人なら、叱られるから、そんなことしない。
  ・・・微妙な地位？ん！
- 蒸気機関の威力を見て、大人気なく興奮した！
  ・・えっ！まさか！まさか！
  ・・ん？マシーン好きって、見れば、大抵ビョーキが止まらない！
  ・・そういえば、中島の体重なら壊れるわけないかも？（注）あくまで単なる想像!）
- なぜ、根拠もなく上記機関車事件の犯人として中島氏を疑うかというと、他にも
  奇行やってます。アメリカ人の帽子を被って、鏡の前でひょうきんなポーズ。
  そして、意味不明に知ってる単語をバラバラに連発してにこにこ。中島としては一件
  落着だから、前回、「我こそは浦賀の副奉行だぞ！」と決死のハッタリで体当たりした
  時の怖いお面を脱いでいるのだが、外人さんから見ると前回の印象が強い為
  酔ったのか？と勘違いしたらしい。中島は、鬼のMEMO魔と外人さんにマークされた。
  軍艦内のメカ系をじろじろ見回したイヤな男と思われているのだが、本人は無邪気。

★脱線回復、真面目に下記復活▼

■木戸孝允と中島

■明治の世になってから、木戸孝允が語った有名な話。

「あの人だけは、生きててさえくれれば、私がなんとしてでも助命したのに。
絶対死なせたりしなかった。否、それどころか、脱走の段階で知っていれば絶対止めたのに」

と涙ながらに語った。
実際、言ってるだけでなく、真っ先にふっとんで行って、中島の遺児の養育を引き受けた。
その後、赦免されて出てきた榎本も、負けずにふっとんで行って、他の子の養育援助をした。

また、実際、木戸はこうも語っている。
「あの人がいると、ただ、それだけで、たちまち、その場の空気が心地良くなった。」

中島は面倒見がいいだけでなく、若者達がリラックスして物を語りやすい、かつ快い境地を
提供できる独特のムードを持っていた。中島と共に散華した若者達も義理だけでなく、
心底慕ったからだった。

勝海舟が土佐藩脱藩浪士「坂本龍馬」を型破りで可愛かったのは有名で、
中島は「石頭の幕臣」と思われがちなところ、
実のところ、こうして中島は、長州の「木戸孝允」の気持ちを汲んでやったのだった。

木戸孝允が、神道無念流の練兵館（斎藤弥九郎が開いた名道場）に於いて塾頭になれたのは、
中島が口を訊いてくれたからだった。

中島は立場上、己には、やるにやれなかった「THE_でこぼこ」・・・せめて
若者達には存分にやらせてやりたかったのだった。

人様の子には、こうして活性の空気を送り込んだ中島。
子という年代ではなく、それは、いわば年の離れた弟世代達へのことだ。

中島は、客観的に己を糺すなれば、我が子に対して、実は負い目があった。

人様に尽くしておきながら、そのわりには、我が子に対して、己は失格ではないか・・・？
ふと、そんな思いが体の中を過ぎっていった。