ザビ神父の証言

ザビ神父の証言

2009.01.25
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カテゴリ: 民衆の歴史
マリア信仰の形成(9)

ところで、母としてのマリアは、いつ頃どのようにして誕生し、カトリック世界に広められたのでしょうか。

実はマリア信仰やマリア伝説は、当初は東西に分けられた東ローマ世界を中心に広まったことが明らかにされています。トルコのエーゲ海沿いの地域には、シュリーマンによって突き止められたトロイアの遺跡を初め、数多くのギリシア・ローマ世界の古代都市の遺跡が並んでいますが、そうした遺跡と並んで、イエスが十字架に架けられた後、信者達がイエスの母マリアを匿った、マリアの隠れ家とされる場が、いくつも存在しています。

そうした地域は、イエスの死後、直弟子たちによって広められたイエスの復活伝説が、最初に広められた地域と、ほぼ一致しています。遅れて布教活動が活発化する後の西ローマ世界には見られない現象でした。この東ローマ世界のことを、ビザンツ世界とも称するのですが、ビザンツ世界におけるマリアとは、後の慈愛に満ちた優しい母とは全く違っていました。

ひとたび修行に出たならば、「どんなに辛いことがあっても、歯を食いしばって頑張れ、目的を達して名を上げるまでは、決して帰ってきてはならぬ」と言う、あの孟子の母のような、厳しい母として描かれていたのです。人を寄せ付けない冷厳な母の姿がそこにありました。

その姿が転換したのは、ビザンツ世界を離れたローマカトリックの世界でした。イタリアに始まるルネサンスのことは、ご存知の方も多いと存じますが、このイタリア-ルネサンスとりわけ、15世紀の中頃以降に展開する、その最盛期と深いつながりがあります。15世紀のど真ん中、1453年という年は、西では有名な英仏百年戦争の終了した年であり、同時に東では首都コンスタンチノープルがオスマン-トルコ軍の攻勢によって陥落し、ビザンツ(東ローマ)帝国が遂に滅亡した年でもあります。

このビザンツ危うしの危機の中で、残されたビザンツ世界の学者や教養人は、交易のために当地と深い付き合いのあったヴェネツィアへと、避難したのです。文化的な後進地帯だった西欧世界は、ギリシアやローマの文化的遺産の継承すら十分に出来ずにいたのですが、そうした文化的伝統を余す所なく受け継ぎ、さらに発展させてきたビザンツ文化の粋は、ビザンツ世界の滅亡という危機の中で、濡れ手に粟のように、ヴェネツィア経由でイタリアの諸都市に吸収されていったのです。

ギリシア哲学やギリシア数学、そしてギリシアの美術や文学は、こうしてイタリアに継承されることになったのです。ルネサンス建築として知られる、あのドーム式の大きな屋根は、この時期に齎されたギリシア数学の知識なしには、実現不可能なものでした。ルネサンスの一方の柱であるヒューマニズム(人文主義)の精神もまた、古典研究の中から生まれてきたものでした。

マリアの母性を強調する傾向は、この人文主義の台頭と結びついています。人文主義の教師役である亡命者たちとの付き合いの中から、イタリア各地で教育の重要性が認められるようになると、文字を学び、読書に親しむ初歩の教育の必要性もまた自覚されるようになります。誰がそれを担当するのか。誰が子ども期の教育の必要を自覚することが大切なのか。ここから、子ども(幼児ではありません。6歳以降の子どもです)に道徳的、市民的な初歩の教育を授ける導き手としての、母親の果たす役割の重要性が意識されるようになったのです。


                        続く





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最終更新日  2009.01.25 19:51:56
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Re:マリア信仰の形成(9)(01/25)  
danmama313  さん
母の愛には「厳しさ」と「優しさ」両方が必要ですね。
人間の子供が自立するまでには長い時間がかかります。
子供は大きくなると親が手をかけて育てた事も忘れがち(^^;)
ワンコの方が恩義を感じてくれていますよ。

日本の武家社会でも我が子を人質として預けたりしているし
洋の東西にかかわらず生きるのが精一杯の時代には女、子供は人間として扱われていなかったのでしょうね。 (2009.01.25 21:28:20)

Re:マリア信仰の形成(9)(01/25)  
kopanda06  さん
絵画も時代で大きく変わりますね。
美術にも時代背景が大きく影響します。
その時代背景を理解するほどに、絵の本当の意味が分かってきますね。

(2009.01.25 21:36:33)

Re:マリア信仰の形成(9)(01/25)  
吉祥天2260  さん
母性というものが認められ、確立されるまでには長い道のりがあったのですね
しかし
女は悪で、母となって初めて善の有意義な存在となる、なんて・・・勝手で自分達の都合だけ考えて・・・
ほんと「男の考えそうなこと」です (2009.01.25 21:52:10)

Re[1]:マリア信仰の形成(9)(01/25)  
ザビ神父  さん
danmama313さん
>母の愛には「厳しさ」と「優しさ」両方が必要ですね。
>人間の子供が自立するまでには長い時間がかかります。
>子供は大きくなると親が手をかけて育てた事も忘れがち(^^;)
>ワンコの方が恩義を感じてくれていますよ。

それでも、この時期のマリア像は、厳しく怖い、とても冷たい顔立ちですよ。ママさんと正反対でしょう。自分が親になって初めて知るのですね。

>日本の武家社会でも我が子を人質として預けたりしているし
>洋の東西にかかわらず生きるのが精一杯の時代には女、子供は人間として扱われていなかったのでしょうね。
-----
おっしゃる通りですが、下々の世界では、男たちも同じだったように思います。
                  ザビ (2009.01.26 02:19:37)

Re[1]:マリア信仰の形成(9)(01/25)  
ザビ神父  さん
kopanda06さん
>絵画も時代で大きく変わりますね。
>美術にも時代背景が大きく影響します。
>その時代背景を理解するほどに、絵の本当の意味が分かってきますね。
-----
その通りですね。遠近法の技法も、ビザンツ世界から入ってきたもののようです。
                  ザビ (2009.01.26 02:20:54)

Re[1]:マリア信仰の形成(9)(01/25)  
ザビ神父  さん
吉祥天2260さん
>母性というものが認められ、確立されるまでには長い道のりがあったのですね
>しかし
>女は悪で、母となって初めて善の有意義な存在となる、なんて・・・勝手で自分達の都合だけ考えて・・・
>ほんと「男の考えそうなこと」です
-----
なんだか、男性代表で睨まれているようで、光栄の至りと言うべきなのでしょうが…… 実はもっと自分勝手な話を明日書く予定なのですが、少し心配になってきました(笑)。
              ザビ (2009.01.26 02:24:51)

必要。  
山デジ  さん




(2009.01.26 06:38:51)

Re:必要。(01/25)  
ザビ神父  さん
山デジさん
>支配は支配によって取って代わる。構成しているのはそこに居る人々。追われた人達が人々の生きる理念を模索し始めた。しかし再び支配者は代わる可能性がある。そこに、困難や矛盾そして犠牲は伴う。必要なのは教育(ヒューマニズム)。教育によって人々は救われる。でも、人は弱い。求心力が必要に成る。マリア...。母親達はマリアによって救われる事に繋がる。しかし、未だ未だ困難が時間が闘いが必要だった。
-----
こんにちは。ヒューマニズムは良く人道主義と訳されますが、当時のヒューマニズムは、人間の尊重とりわけ、個としての人間の追及とでもいうべきニュアンスが強いです。それをルネサンス期の教養人は、ビザンツ世界から齎された特にギリシアの古典の中に発見した。そのため、古典研究そのものがヒューマニズムと考えられた。こういう流れになります。しかし、この個人の尊重は、共同体が個人に優先する西欧社会では、異端の考え方に連なります。ですから、個の確立=自我の確立は、ルネサンスを超えた宗教改革の成果が必要でした。これがルターの業績になります。女性の戦いと視点がずれましたね。女性の戦いはまだまだ続いています。今もですね。その点では、女性史は面白いですよ。なかなか調べは進みませんが…
                ザビ
(2009.01.26 10:58:26)

Re:マリア信仰の形成(9)(01/25)  
Mrs. Linda  さん
あるイラン人が云いました。『我々はペルシャ人だ。アラブではない。紀元前にはゾロアスター教を信じていた。だが、暴力でモスレムに改宗させられた。
トルコも同じようにしてやられた』 彼は東ローマ帝国滅亡の事を云ったのでしょうね。

現在、モスレム社会でトルコだけが政教分離と云われていますが、原理主義が段々と強くなってくればそれも危ういでしょう。『我々は未だに宗教戦争の真っ只中に居るのだ』と誰かが云ってましたが、本当ですね。

キリスト教は知っていたのです。先回りしてモスレムが来ないうちに布教しないと危ないと。日本にも来たし、ハワイ、南米までも。マリア信仰が東ローマから始まったとは知りませんでした。もし今南米がモスレムだったら、アメリカはこんなに安閑としていられないでしょう。






(2009.01.26 16:27:43)

Re[1]:マリア信仰の形成(9)(01/25)  
ザビ神父  さん
Mrs. Lindaさん
>あるイラン人が云いました。『我々はペルシャ人だ。アラブではない。紀元前にはゾロアスター教を信じていた。だが、暴力でモスレムに改宗させられた。
>トルコも同じようにしてやられた』 彼は東ローマ帝国滅亡の事を云ったのでしょうね。

ムスリムの発祥は、パレスティナからサウード家の領土にかけてです。そこから、アフリカへ、そしてジブラルタルを越えて、ヨーロッパへも、少し遅れてシリアやイラク、ペルシャへと進み、遅れてアナトリア高原のトルコ族にも信仰のタネをまきます。イランの方はこのことを言ったのでしょう。ただし、決して暴力的ではなく、支配層以外には、ソフトに接しています。だからこそ、あの支配は長続きしたのですよ。でないと無理ですよ。長期の支配は… 当時のムスリムは原理主義ではありませんから。

>現在、モスレム社会でトルコだけが政教分離と云われていますが、原理主義が段々と強くなってくればそれも危ういでしょう。『我々は未だに宗教戦争の真っ只中に居るのだ』と誰かが云ってましたが、本当ですね。

トルコに原理主義が広まることは、ありえないと思います。トルコの女性、経済力ありますからね…
(笑い)。

>キリスト教は知っていたのです。先回りしてモスレムが来ないうちに布教しないと危ないと。日本にも来たし、ハワイ、南米までも。マリア信仰が東ローマから始まったとは知りませんでした。もし今南米がモスレムだったら、アメリカはこんなに安閑としていられないでしょう。
-----
これは対ムスリムでなく、対プロテスタントですよ。カトリック再生のための対抗宗教改革でした。
我が先祖フランシスコ・ザビエルもその1人でした(笑い)。
              ザビ (2009.01.26 21:05:34)

Re:マリア信仰の形成(9)(01/25)  
Mrs. Linda  さん
あるイラン人の話#2です。彼の云うには、最初ペルシャに入ってきたモスレムは、改宗しない者には高額の税金を課したそうです。とても払えない額なので払わずにいたら殺されるようになって、仕方なく改宗したそうです。『モスレムは非常に暴力的な宗教だぞ』とそのイラン人は云ってました。一度モスレムになったら、他宗教に変えることは禁止されるので、モスレムは増え続けるのです。

英語学校で会ったイラン女性はスカーフを被っていないのです。どうやら彼女はイラニアン・ジュー(ユダヤ系イラン人)らしいのです。こちらでも、モスレム女性は皆スカーフを被ってますよ。どういう訳だか、モスレムが増えましたねー。

アメリカはややこしい国になりました。 (2009.01.27 06:44:16)

Re[1]:マリア信仰の形成(9)(01/25)  
ザビ神父  さん
Mrs. Lindaさん
>あるイラン人の話#2です。彼の云うには、最初ペルシャに入ってきたモスレムは、改宗しない者には高額の税金を課したそうです。とても払えない額なので払わずにいたら殺されるようになって、仕方なく改宗したそうです。『モスレムは非常に暴力的な宗教だぞ』とそのイラン人は云ってました。一度モスレムになったら、他宗教に変えることは禁止されるので、モスレムは増え続けるのです。

変りにムスリムの税額は、前の施政者よりも1割程度安くしているのです。貧しき人々は、大喜びです。金持ちは高い税金を我慢するか、国外に逃亡するかです。これで長続きしました。当時のカトリックは改宗しないものは、みな殺しでした。この時代は、ムスリムの方が。カトリックよりもスマートでした。今は逆になりましたが…

>英語学校で会ったイラン女性はスカーフを被っていないのです。どうやら彼女はイラニアン・ジュー(ユダヤ系イラン人)らしいのです。こちらでも、モスレム女性は皆スカーフを被ってますよ。どういう訳だか、モスレムが増えましたねー。

トルコの女性は、スカーフなしです。もうトルコは、原理主義に戻れないでしょう。

>アメリカはややこしい国になりました。
-----
移民国家の宿命のようなものを感じますが、オバマの手腕に期待しています。
                 ザビ (2009.01.27 16:47:10)

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