偐万葉田舎家持歌集

偐万葉田舎家持歌集

2021.04.23
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カテゴリ: 銀輪万葉

​​​​​​​​  今回 も、少し前のことになりますが、奈良散策の記事です。
 まだ桜が咲き残る頃、興福寺、東大寺二月堂​などを散策しました。
 興福寺の起源は、藤原鎌足の夫人・鏡王女が、夫・鎌足の病気平癒を願って天智天皇8年(669年)に山背国山階(現、京都市山科区)に創建した山階寺にある。その後、山階寺は藤原京に移転し、厩坂寺となり、平城京遷都に伴い、藤原不比等が現在地にこれを移転し、興福寺としたとのこと。
 鏡王女は天智天皇の寵愛を受けるが、後には藤原鎌足から求婚されその正妻となっている。異説もあるが、藤原不比等の母親は彼女とされる。
 万葉集には鎌足と鏡王女との愉快なやりとりの歌がある。
玉くしげ 覆ふをやすみ 明けていなば
      君が名はあれど わが名し惜しも (鏡王女)

​<夜が明けてしまうと、アンタはいいけど、あたしの評判に傷がつくのよ。人目につかないうちに早く帰ってよ。>​
玉くしげ みもろの山の さな葛 さ寝ずは遂に ありかつましじ (鎌足)
​<みもろの山のさな葛じゃないけど、君と寝ないで帰るなんて、ボクにはとてもできないよ。>​
 興福寺と言うと、猿沢の池などから眺めても五重塔がまず目に入るように、この塔が思い浮かぶ。
 これに対して三重塔は、南円堂の裏側にひっそりとあって、目立たぬ存在である。
 今日は、この三重塔から始めてみることにしましょう。

(興福寺・三重塔)
 三重塔(国宝)は、康治2年(1143年)崇徳天皇の中宮皇嘉門院(藤原聖子、小倉百人一首で「法性寺入道前関白太政大臣」と呼ばれている藤原忠通の娘)によって創建されたもの。
 現建物は、鎌倉時代前期に再建されたものであるが、正確な再建時期は不明とのこと。
 父親・藤原忠通の小倉百人一首の歌は、
わたの原 こぎいでてみれば ひさかたの 雲ゐにまがふ 沖つ白波
​<海原に船を漕ぎ出して眺めやると、雲に見間違えそうな沖の白波、素晴らしい眺めだ。>​
 また、彼女に仕えていた女官(女別当)の歌も、皇嘉門院別当の歌として、次の歌が百人一首に入っている。
難波江の 芦のかりねの ひと夜ゆゑ 身をつくしてや こひわたるべき
​<たった一夜のかりそめのちぎりを交わしたばかりに、わたしは、生命をつくしても、死ぬまでも、恋いつづけてゆくことでしょう。>​
 然るに、彼女自身の歌が入っていないのは、
​​​​​
父に似ず、 ​​​​​​​ 歌の方は得意ではなかったということか。
 三重塔から南円堂の裏道を通って北円堂へと向かう。
 南円堂もこちらの角度から見ると何か新鮮である。

(南円堂)
 風鐸をズームアップで撮影。

(南円堂の風鐸)
 南円堂は、藤原冬嗣が父・内麻呂の追善供養に、弘仁4年(813年)創建した八角堂。本尊は不空羂索観音。西国三十三所の9番札所である。
 現建物(重要文化財)は、4代目で、寛政元年(1789年)の再建とのこと。
 北円堂は撮影しなかったと見えて、写真はなし。
 中金堂は完成して、落慶法要も済んでいるが、外周などの工事がまだ続いていて工事中仮囲いが無粋な空気を醸す。
 で、これに背をむけて、桜を撮影。

(興福寺の桜)
 復原なった中金堂と南大門跡礎石の間を通って、五重塔と東金堂の方へと向かう。

(興福寺・中金堂)
 中金堂は、
興福寺の中心的な建物で、 藤原鎌足発願の釈迦三尊像を安置するための建物として、 710年平城遷都直後に創建されたとみられる。現在の建物は9代目で、2018年10月の再建である。

(同上・東金堂と五重塔)
 こちらは、昔ながら景色である。
 東金堂は、神亀3年(726年)、聖武天皇が元正上皇の病気平癒を祈願し、薬師三尊像を安置する建物として建てられたもの。
 現在の建物(国宝)は、6代目で、応永22年(1415年)の再建。
 五重塔は、光明皇后の発願で、天平2年(730年)創建である。
 現在の建物(国宝)は、応永33年(1426年)の再建で6代目。
 五重塔と東金堂の間を抜けて、会津八一の歌碑のある道を東へ。
​​ はるきぬと いまかもろびと ゆきかへり
        ほとけのにはに はなさくらしも (会津八一)

​※上記歌碑の写真掲載の記事は下記です。
 ​ 参道の奥に憶良の歌碑ありて ​ 2014.1.16.
​​​​ ​​
<参考>​ 興福寺 ​・Wikipedia
法相宗大本山興福寺 ​​

 東大寺二月堂へと向かう。
 南方向からだと、手向山八幡宮の前を通ることになる。

(手向山八幡宮)<参考>​ 手向山八幡宮 ​・Wikipedia
 手向山八幡宮は、
天平勝宝元年(749年)、 ​​ 東大寺及び大仏建立に際して、東大寺の守護神として宇佐八幡宮から勧請された神社。

(同上・御紋)
 八幡神の御使いとされる鳩が向かい合っている手向山八幡宮の御紋。
 中央にハート型が出来上がっているところがミソである。

(同上・鳥居)
 今日は、鳥居前を素通りである。
 百人一首の菅原道真の歌にかこつけて、ヤカモチも戯れ歌1首。
​​​​​​
このたびは 前を素通り 手向山 四月といふに ゆく二月堂 (素通道真)
(本歌)このたびは ぬさもとりあへず 手向山 もみぢの錦 神のまにまに
                (菅原道真 古今集420 小倉百人一首24)
(注)本歌の菅原道真の歌は、昌泰元年(898年)10月宇多上皇の吉野宮滝御幸に供奉した時に詠んだもの。この時同時に、次の漢詩も作っている。
  満山紅葉破心機
  況遇浮雲足下飛
  寒樹不知何処去
  雨中衣錦故郷帰
​​​​​​  向かいの三月堂(法華堂)もスルーして、二月堂前に到着。

(東大寺二月堂)<参考>​ 東大寺二月堂 ​・Wikipedia
 東大寺二月堂の確実な創建時期は不明であるが、修二会は大仏開眼供養と同年の天平勝宝4年(752年)に初めて行われたとされるところから、この年の創建と考えられている。
 本尊は十一面観音。
 現建物(国宝)は、寛文9年(1669年)江戸幕府(第4代将軍、徳川家綱)の援助により再建されたもの。

(同上・南面)
 南から入り、西側の回廊へ。
 修二会の儀式の中の「お水取り」では、北側の登廊から火をつけた松明を担いだ僧がこの回廊へと駆け上がり、火の粉をまき散らすということが行われるが、昔、若い頃、今は亡き父と一緒にお堂の下でこれを見上げ、火の粉をかぶったことがある。その時着用していた黒いコートは化学繊維のもの。儀式が終わって、帰路の近鉄電車の車内で気が付いたことは、着用の我がコートのあちらこちらが穴だらけになっているということ。その後、何度かお水取りの松明を見物しているが、火の粉の舞い落ちる下には近づかず、遠目に眺めている次第。

(同上・回廊からの眺め)

(同上・登廊)
 西回廊から登廊に回りこれを下って、北側の坂道から大仏殿方向へのだらだら坂を下る。

(大仏殿裏手から二月堂への道)
 大仏殿の東側を通って、鏡池、南大門へ。
 南大門の手前のミュージアムの前に巨大な手。
 大仏の両手の実物大レプリカである。
​​ ​​
(大仏の実物大レプリカ)
 境内にある会津八一の歌碑の歌を思い起こさせました。
おほらかに もろてのゆびを ひらかせて
            おほきほとけは あまたらしたり (会津八一)
​​
<参考>上記歌碑の写真掲載の記事は下記です。
    ​ 参道の奥に憶良の歌碑ありて ​ 2014.1.16.

 以上、奈良ぶらぶら散策でありました。
​​​​ ​​ ​​ ​​ ​​






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最終更新日  2021.04.23 17:33:24
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