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2008.03.03
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テーマ: いい言葉(576)
カテゴリ: 文学・芸術
番外▼海の微風(マラルメ38)

まず私が選んだのは、初期の作品から「海の微風」です。1865年、マラルメ23歳のときの作品だとされています。

Brise marine (海の微風)

La chair est triste, hélas! et j'ai lu tous les livres.
肉体は悲しい、ああ! それに私はすべての本を読んでしまった。

Fuir! là-bas fuir! Je sens que des oiseaux sont ivres
逃れよう! 彼方へと逃れるのだ! 未知の海泡と天空のまにまに

D'être parmi l'écume inconnue et les cieux!
鳥たちが酔いしれるのを私は感じる!


何ものも、そう、瞳に映る古い庭園も

Ne retiendra ce coeur qui dans la mer se trempe
海に浸るこの心を引きとめることはない、

O nuits! ni la clarté déserte de ma lampe
おお、夜よ! 純白が守りを固める虚ろな紙を

Sur le vide papier que la blancheur défend
寂しげに照らす私のランプの輝きも、

Et ni la jeune femme allaitant son enfant.
また、自分の子供に乳を与える若い女も。

Je partirai! Steamer balançant ta mâture,
出帆だ! マスト全体を揺り動かす蒸気船よ、


異国の自然に向けて錨を上げよ!

Un Ennui, désolé par les cruels espoirs,
「倦怠」は、残酷な希望に打ちひしがれながらも、

Croit encore à l'adieu suprême des mouchoirs!
ハンカチを振る最後の別れをなお信じているのだ!


そしておそらく、マストは嵐を呼び起こし、

Sont-ils de ceux qu'un vent penche sur les naufrages
突風に傾いて、難破へと誘う

Perdus, sans mâts, sans mâts, ni fertiles îlots...
消えていく、帆桁も、帆柱も、豊穣の小島もなく・・・

Mais, ô mon coeur, entends le chant des matelots!
だが、おお、私の心よ、船乗りたちの歌を聞け!


後期の詩に比べたら、言葉に関しては、まるで絵本のように訳すのが簡単です。日常と決別し、詩の世界へと出帆するマラルメの決意と挫折が記されていますね。

1行目は面白い書き出しですね。肉体は悲しく、本も全部読んでしまった、とは。マラルメには、楽しいことが何もないようです。精神的にも肉体的にも、倦んでいることを言っていますね。11行目の「倦怠」と呼応しています。イメージ的には、肉欲の象徴である寝室と、読書をする書斎が浮かび上がります。

現状に飽きているので、2行目では逃避したいと叫ぶわけです。どこへ逃避したいかというと、海と空が混じり合う彼方、鳥たちが酔いしれている場所みたいですね。その場所へ逃げたいという思いは、誰にも止められないと、4行目から8行目にかけて主張しています。

詩人を引きとめようとしているのは、長い家庭生活を象徴する「古い庭」、一行も詩句を書けずに真っ白になっている原稿用紙という現実、そして乳飲み子に乳をやる妻であると言っています。この詩が書かれた前年の1864年11月に娘のジュヌヴィエーヴが生まれています。つまりこうした日常生活の現実が、詩人の倦みの原因にもなっていることを示しているんですね。

そこで9、10行目ではとうとう、現実から逃避して、鳥たちが酔う「詩の世界」へ旅立つぞ、と宣言します。勇ましい決意表明みたいなものですね。

でも、そう現実は甘くないことも詩人は知っています。マラルメの「倦怠」から生じた希望は、家族を見捨てて、教師の職も捨てて、すべてに別れを告げて旅立つことができると、愚かにも信じているのだと言っているようです。残酷な現実に打ちひしがれた詩人の姿が浮かびますね。

そのイメージが、嵐の中の難破と重なります。世間は、詩人として生きていくには厳しすぎます。教師の職を辞したところで、カネがなくなり、身を滅ぼすのが落ちでしょう。詩人が身を寄せられるような「豊穣の小島」などないのです。

「だが」と、最後の行でマラルメは、出帆を諦めつつも言い切ります。どれだけ苦痛が伴おうとも、希望を失わはない、と。おそらく「船乗りたちの歌」こそ、この詩のタイトルとなった「海の微風」なのでしょうね。それは、マラルメが目指す海の彼方にそよぐ微風であるのだと思います。

海の微風
(続く)





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最終更新日  2008.03.03 13:20:00
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