320life

PR

プロフィール

ノマ@320life

ノマ@320life

キーワードサーチ

▼キーワード検索

カレンダー

2020.07.15
XML
テーマ: 読書(8199)
カテゴリ: 【読書】未分類

本のタイトル・作者



蜜蜂と遠雷 [ 恩田陸 ]

本の目次・あらすじ


第6回、芳ヶ江国際ピアノコンクール。
近年注目を集めるコンクールに、若き才能が集まった。

風間塵。
養蜂家の父に付き、行く先々でピアノを弾いてきた天衣無縫の少年。
マサル・カルロス・レヴィ・アナトール。
無邪気と戦略を併せ持ち、その多様性で人を魅了する天性のスター。
栄伝亜夜。

高島明石。
ラストチャンスに賭ける、楽器店に勤め、妻子を持つサラリーマン。

亡き稀代のマエストロ、ユウジ・フォン=ホフマンが仕込んだプレゼントが、コンクールで爆発する。
それは、「音楽」をまるごと変えてしまうような、恩寵と災厄。

引用



(中略)
『世界中にたった一人しかいなくても、野原にピアノが転がっていたら、いつまでも弾き続けていたいくらい好きだなあ』
(中略)
『誰も聴く人がいなくても?』
『うん』
『聴く人がいなくても音楽家と呼べるのかしら』
『分からない。だけど、音楽は本能だもの。鳥は世界に一羽だけだとしても、歌うでしょう。それと同じじゃない?』


感想


2020年読書:111冊目
おすすめ度:★★★★★

面白かった。文句なしに。
私は天邪鬼なので、こういう本を読むと「映画にしやすそうだな」と思ってしまう。
捻くれて見ると「エンターテイメント」として、起承転結のある作品として優れている。
「のだめカンタービレ」があるので、ついそれと比べてしまう。
これは、ジャンプの少年漫画みたい。
そんな穿ったことを言うけれど、でもやっぱり、上手い。
本文2段組で文字びっしりでボリューミーなんだけど、ぐんぐん読める。


最初に課題曲、最後に結果発表がそっけなく載せられているというのも臨場感がある。

タイトルも素敵。
雷は恐ろしい災厄であると同時に、「神鳴り」であり、実りをもたらす。
遠く聞こえるおどろおどろしい音は、これから訪れるものに対する不穏と予感。
近く聞こえる蜜蜂の羽音は、耳元でかすかに鳴る。

しかし蜜蜂は花の間を飛び回ることで花粉を運び、実りを結ぶ。
この本の内容をまさに体現している秀逸なタイトル。

ピアノを文字で伝える。
そんなことが、出来るんだな。
これには、作家のかなりの力量が必要だろう。
たくさんの比喩や心象風景で、文字からみんなそれぞれの「その曲」を作っている。
その曲を知らないのに、なぜ聴いたように思うんだろう。不思議だ。
この本を読むと、コンクールを、コンサートを聞きに行きたくなること必至。

それぞれの葛藤、成長。
私はすっかり明石さんのファンになってしまった。

コンサートホールに、五線譜に、とじこめられた音楽。
森見登美彦『夜は短し歩けよ乙女』で古本市の「本を返す」、という場面がある。
本棚で値段を付けられた本たちが、一斉に飛び立つ。
値札は剥がれ落ち、本は霧散する。
そのシーンを思い出していた。

伊坂幸太郎『オーデュボンの祈り』に出てくる場所には、音楽がない。
それは何かとても大切なものを無くしているような、何か重要なピースが欠けているような、そんな世界。
なくても困らない。それなのに、どうして私たちには音楽が必要なんだろう?
世界に溢れる音を捕まえて、世界にない音を作り出して。
そのために途方もない時間をかけて、人生をかけて。

音楽も、小説も、スポーツも、ゲームも。
それがない世界で生きて行くなんて、嫌だ。
つたなくても、下手でも、やりたい。
歌いたい。踊りたい。書きたい。描きたい。プレーしたい。遊びたい。
もっと上手く、もっと楽しく。

読んでいて、自分がピアノを習っていた時の事を思い出した。

ピアノを習い始めたのは、友達がやっていたから。
兄とセットで通ったのは、日本楽器のプロがやっているピアノ教室。
兄はなぜかリコーダーを吹いていたっけ。
次に私が習ったのは、アメリカ帰りの声楽家。
ピアノより、アメリカンな暮らしが垣間見えることが楽しかった。
部活でやったトランペット、コーラス。
自分に絶対音感があると知ったのは、高校生になってからだった。
一貫して練習が大嫌いだったのは、楽譜を読むのに支障があったからだと、最近気づいた。

今、またピアノが弾きたいと思う。
きっと大した曲はもう弾けないけれど。
何かを練習して、うまくなる。
自分で音楽を再現できる。その喜び。

蜜蜂と遠雷。
育てるものと、齎されるもの。
神様が作ったシステム、はかりしれない力。
畏敬の念をもって、それを受け取る。

子どもたちと一緒に、ピアノを弾きたいな。


にほんブログ村 にほんブログ村へ



ランキングページに日々の呟きを毎日更新しています。
「みたよ」「いいね」の代わりに押してもらえると、喜びます。





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

最終更新日  2020.07.15 00:00:17
コメント(0) | コメントを書く


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x

© Rakuten Group, Inc.
Design a Mobile Website
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: