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2021.07.22
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テーマ: 読書(8289)
カテゴリ: 【読書】未分類

本のタイトル・作者



エンド・オブ・ライフ [ 佐々 涼子 ]

本の目次・あらすじ


プロローグ
2013年 今から六年前のこと
2018年 現在
2013年 その2
2013年 その3
2013年 その4
2013年 その5

2013年 その6
2019年
2013年 その7
2014年
2019年
あとがき

引用


「佐々さんは『かまいい』という言葉をご存知ですか?こちらの言葉で『おせっかい』という意味です。まぁ、我々のやっていることは、『おせっかい』なんでしょうなぁ。世間は自分のやることに境界を設けたがる。『私の仕事』『あなたの仕事』『誰かの仕事』というように。自分のすべきこと以外は、だれもが『私の仕事じゃない』と言って見て見ぬふりをする。しかし、それでは社会は回っていかんのですよ」


感想


2021年読書:143冊目
おすすめ度:★★★★

2020年ノンフィクション本大賞(第3回) 第1位。

京都で訪問医療を行う渡辺西賀茂診療所。
訪問看護師の森山は、2018年、異変を感じて検査する。すい臓がんだった。
著者が2013年から2019年まで在宅医療で取材した人々との、出会いと別れ。
人は生きて、死ぬことで、何を教え、残すのか。


特に、西洋医学が発展し、「どこまで」のキリがなくなって、人は治ることを信じてどこまでもどこまでも行かなくてはいけない、というところ。
でもそうなんでしょうか?という問い。
幼い頃、「どこまで行けばゆるされるのだろう」と思っていた。
そのことを思い出した。

自分が死ぬことを考えた。

どうやって死ぬのかも、何で死ぬのかも分からない。
そのとき、私は何を思うのだろう。
病を得たら、それをどう受け止めるだろう。

子どものとき、死ぬことが怖かった。
それは、「自分がいつか、この世界に耐え切れず、自死してしまうのではないか」という怖さだった。
一桁の子どもだった私は、ひとりで教会に通いはじめ、信仰に救いを求めた。
―――大人になるまで、生きなくては。
親のために、まわりのために。私の存在が、赦されるまで。
でもその後は?
幼い私にとって、死は遠く憧れる安らぎであり、いつか齎される約束された癒しであった。
今はさすがに焦がれることはなくなったけれど、どこかにその名残がある。
ほっとするのだろうな、と思う。
そこで私は、はじめて赦されるのだろうな、と。

健康に生きてきて、それは何と傲慢な考えだろう。
実際に病を得、あるいは老い、そんなことを忘れて、私は抗うだろう。
否定し、傷つけ、当たり散らすだろう。
けれど、自分の根底に、魂に刻まれた記憶でもある。
死は赦しだ、と。

自分の命日を選べるなら、いつにしたい?
本の中で、そんな話が出てくる。
―――願はくは花の下にて春死なむ。
やはり春だろうか?と考えて、思った。
ううん、夏だな。私は、夏がいい。
うんと煩い蝉の声と、汗だくの喪服。
カンと晴れ渡った雲一つない夏空。唐突な夕立ち。
それがいちばん、私らしいな。

自分のことをひとしきり考えて、思い至る。
これは、自らが死に挑む人の記録であると同時に、その人を見送る人の記憶でもある。

祖母が、母が、父が、夫が。
本の中には、子どもを亡くした親にも触れられていた。
その時、私はこんなふうに献身的に家で診られるだろうか。
子どもの世話にすら苛々してしまうのに、とても私には出来ないんじゃないか。
在宅で診ることが本人の希望であっても、私にはその能力がないのではないか。

自分のことばかり考えていた。
私が死ぬなら、どうしたいか。
でも、自分が看取るならば。

渡辺西賀茂診療所は、「観客じゃなくて、一緒に舞台に上がって、賑やかで楽しいお芝居をしたい」と言う。
最期に、森山さんを拍手で送りだしていた。
こんな人たちと出会えるなら、私もあるいは、頑張れるかもしれない。
家族が望むかたちで、在宅看護ができるかもしれない。

病気になり、余命宣告を受けた人たちを、「死にゆく人たち」と見ないでほしい、と森山さんが言っていた。
それで、ふと祖母のことを思い出した。
私はどこかで、彼女を「死にゆく人」だと思っていないか。
違うんだ。
死ぬことは生きることの一部だけれど、まだ十分じゃない。
自分の名前で、過去と、現在と、未来を生きている。
124.母親を失うということ [ 岡田尊司 ]( 2021.07.01「2021年6月に読んだ本まとめ/これから読みたい本」 )を読んで思ったこと。
「私」のことを、わかったように語るな。
私は、「私」。勝手に記号をつけないで。

読みたい本



エンジェルフライト 国際霊柩送還士 (集英社文庫) [ 佐々涼子 ]

著者の前々作。

​​
紙つなげ!彼らが本の紙を造っている 再生・日本製紙石巻工場 [ 佐々涼子 ]

著者の前作。


京都の訪問診療所おせっかい日誌 [ 渡辺西賀茂診療所 ] ​​

参考文献にあげられていたもの。


小笠原先生、ひとりで家で死ねますか? 上野千鶴子が聞く (文庫) [ 上野千鶴子、小笠原文雄 ]

参考文献にあげられていたもの2。




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最終更新日  2021.07.22 07:10:54
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