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2022.09.26
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テーマ: 読書(8289)
本のタイトル・作者


プリズム [ ソン・ウォンピョン ]

本の目次・あらすじ

夏 ちょうどいい距離
真夏 眠れぬ夜のワラビーと幽霊
初秋 血のための速い単調(マイナー)
冬 じめじめした寒さ
早春 春の属性
再び夏 ひととき(ハンチョル)の永遠(ヨンウォン)、永遠のひととき

作者の言葉


引用

手遅れになる前に、何かを変えなければいけない時期だった。きらびやかに輝いていた夢の方向を変えなければならない苦しい時。若さだけで持ちこたえるのがそろそろ難しくなる時。子どもの頃は諦めと決めつけていたことが、諦めではなく、ただある種の納得だったと認めるようになる時。何かが折れて、曲がって、まったく違う人間になり始めた時。その変化のポイントは、捨てること、切り取ることだった。


感想

2022年248冊目
★★★

ビルの13階にある中堅玩具メーカーに勤める27歳のチョン・イェジン。
彼女は都会の片隅の空きスペースを見つけ、そこでコーヒーを飲んでいた。
彼女は、地下の音楽スタジオで働くペク・ドウォンが同じようにそこでコーヒーを飲んでいることに気付く。

パン好きではないが、ベーカリー・ショップ「東方の花(イースト・フラワー)」でパンを作る経営者のファン・ジェイン。
彼女はアルバイトに雇った青年、不愛想なイ・ホゲを弟のように思う。

四人の男女が繰り広げる不器用な恋愛物語。
しんみりした大人の連続ドラマみたいな雰囲気だった。

私はパン屋のジェインが好きだな。
最後に彼女によいことがありそうで、明るい終わり方でよかった。

それぞれに屈託と葛藤を抱え、自暴自棄になりたくて、でもなれなくて。
自分の中の醜い部分を隠し、時にさらけ出して傷つき、生きていく。


韓国ではこの「文房具ボックス」ってポピュラーな物なんだろうか?
そしてそれにプリズムが入ってたりするの???
日本ではまあお目にかかることないよね、プリズム…理科の実験道具くらいでしか…。

プリズム。
光の具合で、色が変わる。

二度と同じ光景は現れない。

イェジンは幼い頃大切にしていたそれの鋭角で後に残る傷を作り、片隅に放置する。
埃をかぶり、光らなくなり、忘れ去られ、どこかへ行ってしまったプリズム。
最後に彼女はそれを再び手に入れ、思い出す。
遠い日の輝き。
イェジンの物語を象徴的に表すアイテム。

これは、ドウォンにとってはギターであって、ジェインにとってはパン(甘いお菓子)であって、ホゲにとっては絵であって…。
大切なもの。大切だったもの。
けれど自分では、忘れた理由も忘れてしまったもの。

それを思い出すタイミングって、いつ訪れるんだろう。
私にとってのプリズムは、何だったのかな。

くすんで、もう光も通さなくなったそれ。
私はいつか、それを見つけるんだろうか。
思い出の小箱の片隅に。
懐かしく、胸を刺す痛みと共に。
もう戻れない場所。帰れない過去。

その時私は、もう一度その光を見たいと願うんだろうか。
それとも、そのプリズムを、捨ててしまうかな。

好きだったこと。
望んだもの。願ったこと。

これまでの関連レビュー

アーモンド [ ソン・ウォンピョン ]
三十の反撃 [ ソン・ウォンピョン ]




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最終更新日  2022.12.03 23:36:41
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