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2022.10.12
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テーマ: 読書(8289)

本のタイトル・作者



チーム・オベリベリ (上) (講談社文庫) [ 乃南 アサ ] ​​

本の目次・あらすじ


時は明治、文明開化の音を聞く横浜。
没落士族の娘・カネは、キリスト教に入信した父と兄の縁で、宣教師が開いた女学校で学んでいた。
信仰の自由がもたらされても、なお奇異な目で見られる耶蘇教。
授業はすべて英語、白人の教師たちとの暮らしはすべてが西洋式だ。

そんなある日、牧師だった兄が、友人たちと北海道に開拓に渡るという。
見渡す限りの大平原、オベリベリ。
カネは兄の友人に嫁ぎ、ともに土地の開拓に加わるが……。

引用



「みんな貧しい人たちでしょう。学校も行っていないと思います。アイヌはもっと、日本語の読み書きなど分からないでしょう。カネさんは立派に学問して知識もある人です。だから必要なときはみんなの目や耳になって助けてあげるといい。代わりにカネさんは、畑のことは農民たちから教わり、その土地のことはアイヌから教わることが出来るでしょう」


感想


2022年263冊目
★★★★


元は2020年7月発刊のハードカバー。
私が読んだのは上下分冊の文庫版。

てっきり弱小スポーツチームの起死回生一発逆転物語だと思っていたら(チームって付いてるし)、まさかの明治時代の北海道開拓の物語でした。
英語で学んだ主人公のカネは、北海道に根を下ろそうとする自分たちを、英語では「チーム」(仲間)だと言うのだと考える。
オベリベリ、は帯広のこと。

帯広の名の由来は、アイヌ語のオペレペレケプ(河口がいくつにも分かれている川)がなまってオベリベリ、そして帯広(おびひろ)になったと考えられています。

「帯広の名の由来」帯広市ホームページ

最近北海道を舞台にした物語に縁があるなあ。
引き寄せの法則だろうか。
それとも注目され題材になることが増え、刊行数じたいが増えているのか。

どうしてこんなに北海道の物語に惹かれるんだろう、と考えていたら、子供の頃に読んだ『大きな森のちいさな家』を思い出した。

あれを思い出すからかしらん。

便利な暮らしをしていて、でもこういう本を読むと思う。
誰かが拓いたからこそ、今その土地は人が住める土地になっているのだ。
北海道だって、誰かが入植して耕したからこそ、豊かな「日本の食糧庫」になっている。

物語の冒頭、開拓民たちが辿り着いたオベリベリ。

夏でも寒いところにやっと実った農作物を、バッタの大群が押し寄せ食い尽くしてしまう。
冬は耕作も出来ず、鮭を釣り狩りをし、家の造作に充てる。
昔の暮らしすごい。ヒートテックもないのに(笑)すごい。
いやほんと、根性座ってる。

素封家と没落士族、士族と農民、アイヌと和人…いろいろな軋轢もあり、けれどうまくやっていかないとならず…。
(何度「依田ァ…」と思ったか!)
基本的に「西洋が一番優れている」という価値観のもとにあるから、日本人も文明開化の途上にあり、その最先端を行っていた才女・カネや、牧師をしていた兄、教師をしていた夫はみな「農民たちに天主さまの教えを説く」「アイヌが生き残れるように啓蒙してやらなくては」という考え方。
畑を耕すことがないアイヌを雇い入れ、飢えることがないようにと農耕を教える。
純粋に、ほんとうにそれは善意なんだ。
でも色々なものが失われた今となって、それについて読むと「うーん」と思う。

カネたちは、アイヌがいなければ、オベリベリの冬は超えられなかっただろう。
土着の、文字にされなかった数多の知恵が、彼らを救う。
けれどそれは、終わりの始まりでもあって。

開拓農民の妻の一人は、考えてはいけないのだと言う。
寝て起きて働いて、また寝れば明日が来る。
そうやって毎日をやり過ごしていくだけ。
それもまた一つの知恵なのだ。摩耗させ鈍化させる。

それでも学問をすること(していること)が何なのか。
ワッデル師の言葉を、カネは胸に刻みつけて思い返す。
みんなの耳と目になること。
同じものを目にしても、耳にしても、それによって受け取るものが違う。
それは知識や経験の差だ。
学問を修めたものにしか出来ないことがあるとすれば、そこなのだろう。

惨憺たる結果だった1年目、2年目の農作が終わり、3年目に突入。
じゃがいもや豆ならばよく育つことが分かり、馬を使って耕すことも決まった。
じゃがいもは加工して澱粉として売れば、日持ちもするし値段も上がる。
豚と山羊の飼育も始まった。

さてここからどうなるのか!という上巻の終わり。続きを読むのが楽しみ。

これまでの関連レビュー


熱源 [ 川越宗一 ]
六つの村を越えて髭をなびかせる者 [ 西條奈加 ]
絞め殺しの樹 [ 河崎秋子 ]

戦争は女の顔をしていない [ スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチ ]
同志少女よ、敵を撃て [ 逢坂冬馬 ]




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最終更新日  2022.12.03 23:31:49
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