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小林さんの激動の一日と言ってしまいましたが、こればっかりは他人に分かる話ではありません。ここは東京スポーツ新聞にご本人が綴った回想録に全面的に頼っています。
小林激動の1日(その1)
期限ぎりぎりでのトレード成立。小林サイドの一日を追っていく。以下青字部分は東京スポーツ新聞の記事からの抜粋である。
31日朝、タクシーで羽田空港に到着した。報道陣がボクをどっと囲み、カメラマンが一斉にフラッシュをたく。巨人の主力クラスの選手なら決して珍しい光景ではない。ボクはこの時点でもまだ、宮崎キャンプの出陣取材だと思っていた。(中略)ロビーで数十人の報道陣に囲まれたボクは、いつの間にか球団職員に両脇をガードされていた。
こうして小林は一階ロビーから外へ誘導されていく。そこには読売新聞社の旗の付いた一台の黒塗りハイヤーが待っていたという。
「オッ、オッ、オレだったのか...」。ようやく事態を把握したボクはぼうぜんと立ち尽くした。車中の記憶は完全に飛んでいる。阪神にトレード放出されるショックで何も覚えていない。それほど頭の中は真っ白だった。どれくらい走っただろうか。ハイヤーはホテル・ニューオータニの駐車場に滑り込んだ。
ホテル到着が昼12時半ごろ。到着すると長谷川代表が待っていて、すぐに本題に入った。
「今日の夜の12時までに決めなければならない。そうじゃないとご破算になる。阪神に行ってくれ」。長谷川実雄球団代表はそう切り出した。「夜12時ならまだ間があるので、ボクに考える時間をください」。そう申し出て、トレード通告の場はひとまずお開きとした。(中略)
ボク1人でどう決断を下せというのか。公私にわたってお世話になっていた人たちに相談するしかなかった。(中略)いろいろな人に相談を持ちかける中で、複数の球界関係者からある有力情報がもたらされた。「巨人は本気だぞ。トレードが成立しなければ新リーグを発足させるつもりだ」--。ボクは再び目の前が真っ暗になった。
この時点で、すべては小林の返事一つにかかっているということに気付き、本人も愕然としただろう。次の一節がすべてを要約している。
ボクは全身が震えた。何ということだ。ボクの腹ひとつでプロ野球界が大変なことになる。巨人残留、阪神移籍、それとも引退か、などと揺れている場合ではなくなった。もはや結論は一つしか出せない。追い込まれ、切羽詰まったボクはトレード通告を承諾するしかなかった。
短い時間で追い詰められていった様子は悲壮です。
次回は激動の1日(その2)を
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