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空白の一日(連載第8回)
番外編1 「阪神小林」デビュー戦
1979(昭和54)年4月10日
阪神4-3巨人 (1回戦 甲子園 38000 人)
巨人 000 111 000 3
阪神 010 300 00x 4
小林は、1979年4月10日、江川より一足先に巨人戦で先発デビューする。舞台は甲子園。 開幕2カード目の 「この日に投げさせてほしい 」とキャンプ中からブレイザー監督に直訴しての志願登板だっただけに、試合開始からムキになっているのが見ていてもよくわかった。
1回から3回まで0点に抑えるが、圧倒的に勝負球はストレート。どこまで持つかなんて考えていない。投げる8割がストレートといってもいいほど真っ向から巨人打線にかみつき、ねじ伏せようとしている。
気迫あふれる小林を最初に援護したのが女房役の若菜である。2回裏の第1打席でライトスタンドに先制1号ソロ、阪神が1点を先行した。 ところが、スタミナを無視して飛ばす小林は単調になり、4回表、投手の加藤初にタイムリーを許して同点にされてしまう。
しかし、今日は特別な試合だ。気迫が空回りして苦闘する小林を見て、阪神打線は黙っていなかった。4回裏、先頭の4番竹之内が四球を選ぶと、すかさず5番ラインバックがレフトへ勝ち越しの1号2ランホームラン。さらには続く中村勝が追い打ちの1号ソロだ。
ところで、若菜? ラインバック? こりゃ江川のデビュー戦でのホームランの顔ぶれじゃないか。偶然か? じゃあスタントンは? ちなみにこの日のオーダーは次のとおりである。
1(遊)真弓 2(一)藤田 3(三)掛布 4(右)竹之内 5(左)ラインバック 6(二)中村 7(捕)若菜 8(中)島野 9(投)小林
おやおや?スタントンがいない。実は彼と阪神との契約は4月1日に成立したばかりで来日が開幕に間に合わなかった。スタントンの公式戦初出場は4月14日だった。間に合っていれば奇跡的な偶然もあったかもしれないが。
さて、4対1と援護をもらった小林だったが、力投がたたって中盤でバテてきた。5回には張本に1号ソロを浴び、6回にも代打原田にタイムリー二塁打を打たれて1点差に迫られる。しかし、ここからが小林の真骨頂。かわすピッチングに切り替え、ねばりの投球で8回一死まで持ちこたえた。ここで中畑に三塁線を破る二塁打を打たれ、ついに限界、竹田にスイッチとなった。
ここまで139球、毎回の12安打を浴びながらも3点でしのいできたのは気力だろう。こ の力投にこたえ、阪神は竹田から池内とつなぐ完璧なリレーで逃げ切って小林に移籍後初勝利をプレゼントした。阪神ナイン全員が「この試合は絶対に負けられない」「どうしても小林を勝たせたい」という気迫で臨んだ結果である。
こうして小林さんはひとつの区切りをつけました。試合後の取材に「やっぱり意識しすぎてしまいました(笑)」と正直にコメントするあたり実に爽やかでした。しかし、試合内容を振りかえれば、 クールで爽やかな印象とは対照的に、本当は意地っ張りで芯が強く熱い人だということがよく伝わってきます。
次回は番外編2
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