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先週は久しぶりに小学校と中学校の読み聞かせに行った。長男が一年生のときに始めた読み聞かせ。途中私が体調崩したりして、休み休みになってるけれど、なんだかんだで、10年近く続いている。やっぱり辞められない「自分が好きな」活動だ。 小学校で読んだのは「はずかしがりやのれんこんくん」と「たいせつなこと」。「はずかしがりやのれんこんくん」は自分の「良いところ」が見つからないれんこんくんのために、友達が一生懸命彼のいいところを探してくれる絵本。地味で静かなれんこんくんの長所がなかなか見つからず苦労する友達たち。でも、小さなことだけど、一つ二つと良いところが見つかって…。そして皆が気づく、池の蓮の葉っぱを支えているのが、実はれんこんくんだった!蓮の葉っぱなら、みんないつもお世話になっているじゃない!そして、最後にもう一つサプライズが。暗いところから始まる絵本なのに、最後の展開が明るく素敵な絵本だ。 「たいせつなこと」は「ありのままの自分」の大切さを、詩的にとても丁寧に綴った絵本。時々開くと心が落ち着く。絵も文章も本当に素敵で、プレゼントにもオススメできる。 中学校の読み聞かせはテーマが決まっていて、今回は「友情」。実は以前同じテーマの時に読もうと思って取りやめた「哲学」の本を、「やっぱり読みたい」と引っぱり出してきた。中学生に「哲学」なんて、きっと皆眠くなって聞いてくれないだろうなって思って、前回は読まなかった。 選んだのは「14歳の君へ」という哲学家池田晶子さんの本。「14歳の」というくらいだから中学生向けて書いてある。それに、文章は池田さんが生徒に向かって話しかけるような文体だから、何とか聞いてくれないかな、でも難しいかな…と今回も迷ったけど、やっぱり、私自身が今の中学生に「哲学」をぶつけてみたくて、この本を読むことに決めた。教室に入って最初に黒板に「哲学」と書いた。「知ってる人?」と聞いたら、半分くらいの子が手を挙げた。じゃあ、「哲学って何か説明できる人はいますか?」と尋ねたら、一人の男子生徒がすっと手を挙げ「物事の本質を深く考えること」と答えてくれた。模範解答だね。 私は、哲学は「◯◯って何?」と考えてみること。考える事自体が哲学で、正解がある訳でもなく、自分や他人の意見を聞きながら、考えを掘り進めていくことが哲学です…という風な前置きをして、朗読を始めた。 時間が20分と限られているので、「友愛」という最初の章だけを読んだ。この章の始まりはこんな感じ。 「どうして君は友達に好かれたいと思うのか。好かれたら嬉しいし、嫌われたら悲しいのはどうしてか。このことを一度考えて、納得しておくと、これからの友人関係の悩みが減るかもしれない」 中学生と言えば、何かしら友達関係で悩みを抱えている年頃(のはず)。この掴みの文章で、何人かの生徒が明らかに顔をコチラに向けた。ここで、すでに「この本にして良かったかも」と確信した。 私の住む地区は、読み聞かせに熱心なお母さんたちが多くて、毎月毎月、子ども達のために、考えに考えて選んだ本を読んでくれる。小学校の頃から、読み聞かせを通じて、話をじっと聞くということに慣れている子ども達だということもあり、なんとかこの「哲学本」について来てくれたのだと、後から思った。 そこから展開される話は、生徒に問いかけられるようにして進められる。 「人に好かれようとする自分は本当の自分か?」 「ありのままの自分を見せたら嫌われる?」 問いかけの後は、少し生徒さんに考える時間の間を取りながら、読み進める。 池田さんの強い言葉が続く。 「人に好かれようとするよりも、人を好きになるようにしよう、そのほうが断然面白い」 「人に好かれることは自分じゃどうしようも出来ないことだけど、人を好きになる方は自分で出来ること、その方がが楽しい!」 語り口調なので、「コレが正解です!」という講義のような感じでなく、一人の人間、池田晶子さんが「どうよ?」と、遠慮なく、でも親しみを込めて言葉を投げかけてくれるので、子ども達はそれぞれにその言葉を受け取っている。もちろん、それは受け入れられないって子がいてもいい、そんな雰囲気。 続いて、そもそも「好き嫌いって何だろう?」というテーマに入っていく。大人なら分かるけど、好き嫌いだけはどうしようもないもの。好きなものは好き、嫌いなものは嫌い。おそらく学校のようなところでは「誰とでも友達になりなさい」的な雰囲気が流れているので、自分の好き嫌いは全面に出しにくい。 でも、池田さんはどんどん続ける。 「嫌いなものは嫌いだ。これはもうどうしようもない。」 ずばっと言うおばさんですね(もう亡くなっているが)。 この辺で、生徒たちの顔がニヤける。そうだよね。なかなか「嫌いなものは嫌いでいい!」って認めてくれる大人ってあんまりいないから。 そこからさらに続く。 「じゃあ、どうしても嫌いな人に、君はどういう態度を取ればいいんだろう?」ちょっと困ってる、中学生。 池田さんは畳み掛ける。 「君はこうすることが出来る。嫌いなものは嫌いだ。これはもうどうしようもない。そして嫌いなものはそこにある。これもどうしようもない。だからそのことを自分で認めてしまうんだ。そしてそれ以上そのことにこだわらないんだ。そうすれば嫌いなものは嫌いで、ほおっておくことが出来る」 半分くらいの生徒が、フムフム。半分くらいの生徒はキョトンとしてる。 最後のとどめ、「好き嫌いは好き嫌いとして、どうしてもそれは存在する、それなら、それはそれとして認めてこだわらないこと、『これが愛』というものなんだ」中学生は???「嫌なものがが嫌いで愛だって??」という顔をしている。 中学生にとっては、(まあ大人にとっても)愛といえば「好き」に近いイメージだと思う。でもそこもバッサリ。 「愛と好きとは違う。愛は感情じゃない。愛は好き嫌いを超えたもの、『それがそこに存在することを認めるということだ』」 うーん。深いですね。大人なら、ウンウンと頷くことが出来るけど、(実際ここを読んだ時、担任の先生が激しく頷いていた(笑))中学生には、難しかったかもしれない。 と、かなり、深い話まで進んで、この「友愛」についての章を読み終わった。 中学生にどこまで響いたかは…疑問だが、彼らの心や頭を少しはグラグラと揺らすことが出来たのではと、私は自己満足で教室を後にした。 読み聞かせの後、読み聞かせのメンバーで、それぞれが読んだ本について、シェアする時間がある。皆それぞれに「友情」について、中学生に色々と考えてもらえるような、深い本を選んでいる。 「友達に流されて、いじめに加わってしまう気持ち」「友達に流されず、『私は私』と強く一歩を踏み出す大切さ」 「一人でいることが何が悪い?」「人が集団になった時に陥る、集団の論理の恐ろしさ」色々なメッセージを投げかけられた生徒さんたちは、どんな風に感じただろう。 おそらく生徒たちが自分では手に取らないような本を、押し付けるでもなく、でも大人として揺るぎない視点をもって本を選んでいる。ホント、ここの学校の生徒たちは幸せだなあ、と思う。 私の本も皆に紹介したら、「嫌いなものは嫌い、でもそれが存在することを認める、それが愛」ってところで一同「深いねー」と。この本「14歳の君へ」というタイトルだけど、大人でも、十分読みごたえがある。 ちなみに、池田晶子さんの本で「41歳からの哲学」という本もある。参考までに。
2016年10月22日
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