「いとこなんです。ちょっと気分が悪くなっちゃって、のぶちゃんが横になれるところ、近くにあるからって、連れてきてくれたんです。すいませんけど、ちょっとだけ、貸してください」 これほど笑いをかみ殺すのに苦労したことはない。「He go home yesterday」なんて普段英語の試験に書くくせに、こういうときは学校の勉強だけはできる俺なんかよりよっぽど芸が深い。どうして女はとっさにこんな見え透いた嘘がつけるのだろう。 「ああ、そうなの、大丈夫かな、きたない部屋だけど、どうぞ、遠慮しないで寝てていいわよ。何か飲むかしら。のぶくん、ちゃんとお世話しなくちゃね、ちょっと、あたし、氷買ってくるわ、三平ストアに売ってるから、すぐ戻るからね、お嬢さん、スカートゆるめて、横になっててね。のぶくん変なことしちゃダメよ、じゃあ、行ってくるから」 突っかけをうまくすくい履きそこねてドアに頭をぶつけた響子は、なにやらぶつくさ言いながら出て行った。