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2017.10.27
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カテゴリ: 探訪 [再録]
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JR余呉駅で電車を降りプラットホームから南を望むと、稲穂の先に山に囲まれた水面が見えます。
JRの米原駅から、長浜を通過して、賤ヶ岳の山が見えるようになるところに小さな余呉駅があります。これが小さな湖、 余呉湖の眺め です。地図で滋賀県の中央にどかんと位置を占める琵琶湖、近畿の水瓶のその北にちょこんとある湖なのです。

司馬遼太郎氏は『街道をゆく4』の最後の一文で、余呉湖は「よごこ」ではなく、あくまで「よごのうみ」とよばれるべきものと記しています (資料1)
この余呉湖は、上代には「伊香の小江 (このえ) 」と呼ばれていたこともあったとか。これは、琵琶湖が「大江 (おえ) 」と呼ばれたことに対応するようです。
(資料1では「小江」に「このえ」とルビを振っています。他資料では「おえ/をえ」とも)


先日の再録ブログ記事にも余呉駅の画像を載せています。この駅前に集合してこの探訪が始まりました。
2013年8月31日(土)の探訪記です。 日本列島に接近した台風が熱帯性低気圧に変わり、曇空の不穏な天候状態での出発でした。このとき滋賀県教育委員会事務局の企画「ブロガーによる歴史探訪情報発信」のコースに参加しました。ほんの一瞬の小雨以外は雨に降られずに、ウォーキングと水色のバスの併用による効率的な探訪ができ、行程を巡ることができました。
この時のまとめをここに再録してご紹介したいと思います。 (再録理由は付記にて)


駅前に、大きな観光案内の説明板が並んでいます。

そこから切り出した部分図です。ここに、 今回の企画「余呉湖周辺から高時川の上流域を訪ねて-長浜市-」(これが正式名称なのです!)の訪問場所が含まれています。

「現在地」が余呉駅です。駅からまずはウォーキングで出発。 余呉湖のほぼ西側半周を湖岸沿いに歩き、余呉湖の南端に近い「国民宿舎余呉湖荘」 (番号5) まで、余呉湖に関わる史跡や現況を探訪しました 。そこから、バスを利用しながら各所の訪問です。
地図に付された番号で言えば、6番、3番、7番、8番というルートを辿り、地図の上辺にある9番「妙理の里」に近い「洞寿院」という曹洞宗のお寺の訪問までとなります。古の史跡・伝承地、寺社、「近江水の宝」に関連する現在の設備など、 まさに今昔とりまぜた余呉湖とその周辺地域の探訪でした。

まずは余呉湖のロマン、天女羽衣伝説のご紹介からはじめましょう。

私がこの伝承を知ったのは社会人となった頃です。琵琶湖の北に余呉湖という小さな湖があり、そこに羽衣伝説があるという・・・・へえっ!と思い、早速図書館で本を調べてみました。そのとき余呉湖と賤ヶ岳を初めてスポット的に訪ねたのです。なつかしい思い出です。
そして、再びその伝承に関連する場所などを網羅して巡ることが、今回何十年ぶりにできたという次第。(もちろん、その後余呉湖近辺には何度か来てはいるのですが・・・・それは別目的。)私には、これだけでもうれしい限りでした。


駅から歩いて700mほどの距離 天女衣掛けの柳」 です。​ このあたりの地図(Mapion)はこちらからご覧ください。

柳? 普段よく目にし、イメージを浮かべる柳とは違います。
そこで調べてみると、「 この柳は楊柳科のマルバヤナギ(アカメヤナギ)という植物 で、中国原産の柳だという。」ものだそうです (資料2)

もう一つ、お気づきでしょうか? 
美保の松原の羽衣伝説などで。 天女が羽衣をかける木は「松」 というのがそのイメージですね。 ここ余呉は柳の木なんです。柳はここだけのようです。


木の傍に、その 伝承・言われの説明板 が建てられています。これをお読みいただくと伝承の概略がご理解いただけるでしょう。


柳の木のすぐ傍に読みづらくなっていますが、歌を印刻したような石碑があり、また 「北野神社」という文字のみえる石標 が建てられています。この石標は、余呉湖の周辺地域の一角にある菅山寺、また伊香で生まれたという 菅原道真との関連史跡 のようです。

昔々、8人の天女が白鳥となってこの伊香の小江(余呉湖)畔に舞い降り、羽衣をこの柳の木にかけて、水浴を楽しんでいました。それを伊香刀美が知り、犬を使ってその羽衣の1枚を手に入れます。そのため天に戻れなくなった一人の天女は、しかたなく彼の妻となり、二男二女を成します。しかし、羽衣の所在を見つけた時、天に戻ってしまうという伝説です。この伊香刀美が、この伊香地方を開発した伊香連 (いかごのむらじ) の祖先なのだという伝承につながっていきます。

羽衣伝説には、別の伝えもあるようで、この説明板に触れられています。 「桐畑太夫の羽衣伝説」 。こちらの説を、この企画に参加して初めて知りました。ロマンが増えるという収穫です。 前者の羽衣伝説は、『近江国風土記』の逸文として伝わるもの 。大昔、ある人からこの伝説の話とこの出典のことを聞き、たしか岩波書店の古典文学大系の風土記の中で、探し当てたのじゃなかったか・・・・と記憶します。
この探訪企画で当日いただいた資料によると、 『帝王編年記』という本の養老7年(723)の条に、前者の羽衣伝説が記載されているそうです。 ウィキペディアの「近江風土記」を読むと、この『帝王編年記』記載の内容が、訳文で「余呉湖の羽衣伝説」として記載されています (資料3) (入手資料は同書原文の読み下し文の引用です。)

再録ですので 、その後某大学の図書館に行った機会に、再確認したことを ここに追記します
『風土記』(日本古典文学大系2 秋本吉郎校注 岩波書店刊)に「風土記 逸文」として「近江國」の項目中(p457-459)にやはり掲載されていました。
伴信友が「諸国風土記逸文稿」(「古本風土記逸文」とも題している)として採択した資料と記されています。筆者の考証判断によると、古代の官撰風土記としては疑わしいものだとか。読み下し文の続きに漢文の原文が掲載されていて、末尾に「帝皇編年記」と記されています。(今回入手の『帝王編年記』と同じ出典と思われます。)
同書p458の頭注に次のような注記が付されています。
「養老七年癸亥の条に記しているのは所拠の文献に養老七年の記事としてあったものか、所拠の文献名を記していないので、風土記の記事に近似するが風土記と決し難い」。

横道に入りました。本筋に戻ります。

天女衣掛の柳を通り過ごし、次の場所に行く途中で、振り返ってみたところ。



余呉湖畔を西まわり、つまり反時計回りに歩いて行きました。道路沿いに数分歩いて行くと、進行方向右手の少し奥まった場所、自動車ならその存在すら見過ごしてしまいそうな位置に 「天女像」 が建てられているのです。もう少し、道路沿いだと注目されやすいと思うのですが、天女は少し控えめです。

道路からは銅像の側面が眺められます。
銅像の基壇、側面には俳句が刻まれています。

  賤ヶ岳 寄りに鴨をり 余呉の湖    幸叢


少し廻りこむと、 基壇正面には「余呉湖」と 記されています。
銅像を見つめることと、並行して国会図書館のサイトを調べていて、 この羽衣伝説が聴方資料として まとめられ、 「伊香の小江(近江国風土記) -羽衣-」として記載されている のを見つけました。全文引用します(資料4)。














この天女、何を思っているのでしょう・・・・。






現地をぜひ訪れて、この柳の木や天女像を眺めながら、この伝承に思いを馳せてみてください。

つづく

参照資料
1)『街道をゆく』4 司馬遼太郎著・朝日文芸文庫 「余呉から木ノ本へ」p276
2) ​ 近江国風土記 ​ :ウィキペディア  
3) ​ 余呉湖・長浜市 ​ :「滋賀文化のススメ」
4)​ 『標準日本名話集 : 新聴方資料.物語の巻』三浦圭三編著・白鳥社 昭和11年出版
      :「国立国会図書館 近代デジタルライブラリー」 コマ番号(102~109/104)

【 付記 】 
「遊心六中記」と題しブログを開設していた「eo blog」が2017.3.31で終了しました。
ある日、ある場所を探訪したときの記録です。私の記憶の引き出しを維持したいという目的でこちらに適宜再録を続けています。
再録を兼ねた探訪記等のご紹介です。再読して適宜修正加筆、再編集も加えています。
少しはお役に立つかも・・・・・。他の記録もご一読いただけるとうれしいです。

補遺
余呉湖 ​ :ウィキペディア
天の羽衣(伊香小江) ​ :「伊勢物語と仁勢物語」(yoshyさん)
羽衣伝説 ​ :ウィキペディア
帝王編年記 ​ :「コトバンク」
帝王編年記 ​  国文学研研究資料館
『帝王編年記』について知りたい。 ​ :「レファレンス協同データベース」
久米幸叢句碑(唐橋町) ​ :「大津のかんきょう宝箱」

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Last updated  2017.10.30 20:47:45
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