「007 スペクター」21世紀のボンドにスペクター
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安楽椅子に寝そべって 木乃伊の手首 第十三話
テーマ:
連載小説を書いてみようv(10393)
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「お待たせしました」
数分後。
右手の甲をさすりながら、鼻を赤くした美奈子が言った。
その真横では、水瀬が壁にめり込んでいた。
「目をつむっていますから、どうぞご自由に」
「……拳が顔にめり込んだの、初めて見ました」
女のあきれ顔を後目に、美奈子は目をつむり、耳を塞いだ。
その仕草にクスリと小さく笑った女は、つぶやくように言った。
「そういう律儀な性格は、嫌いではありません」
「―――水瀬様?」
「痛たたっ……はい?」
美奈子の必殺技“めりこみパンチ”をモロに喰らった水瀬は、顔を押さえながらつぶやく。
「何で避けられないんだろう……」
「よろしいですか?」
「あ……戻った。どうぞ?」
「これを見ても―――」
衣擦れの音がして、女の体から脱がされた衣服が床に落ちた。
女が、自ら衣服を脱いだのだ。
白い陶器のような艶めかしい、一糸まとわぬ肌が、水瀬の前にさらけ出される。
突然の出来事に、水瀬の視線は、女の肌に釘付けだ。
女がゆっくりと水瀬に近づく。
「あ……あの……」
水瀬は目を見張って女を見続ける。
ゴクリ
水瀬の飲み込んだ生唾の音が妙に高く響く。
女が自らを抱きしめるような仕草をする。
その細い両腕の中で、豊かな双丘が、男を狂わせんばかりに歪む。
「あなただけに抱かれた……あなただけのものなのに……」
「だ、だから」
自分が誘われていることはわかる。
だが、女の言っている言葉の意味がわからない。
女は、自分と肉体関係があったと。そう言っているのだ。
「僕は祷子さん以外の女の人は―――えっと」
水瀬はどもりながら言った。
「ナターシャさん位しか……えっと」
「まぁ……」
女の手が、そっと水瀬に伸びる。
「私達は……女の数に入らないのですか?」
「っ!」
水瀬の喉が、自分でもびっくりした程素っ頓狂な声を上げた。
女の手が伸びた先。
そこは、水瀬の男性として最も弱い部分だったのだ。
そこをはい回る女の手。
それは、水瀬にとっては久しぶりに快楽であり、快楽に慣れていない水瀬という男の子には刺激が強すぎた。
水瀬は、自分の体が、その手に正直に反応したことを、嫌が上にも悟った。
「……まぁ正直ですこと♪」
水瀬の男性としての反応を楽しむように、女の手が艶めかしい動きを見せる。
「ご立派ですね……これが……」
時に強く、時にいとおしむように動くその動きに、水瀬はもう動けなかった。
―――祷子さんだけ祷子さんだけ。
水瀬は何かを呪文のようにつぶやくだけだ。
ただ、それが決壊前の堤防に過ぎないことを、水瀬自身がもう悟っていた。
「私の……純血を……」
「あ……あの……」
半分泣きそうなまでの水瀬の声に、女は楽しげに答えた。
「これは罰です」
不意に、女の手が水瀬から離れた。
「私は、あなたに復讐します」
「へっ?―――んっ!?」
水瀬は、不意に自分の唇がふさがれたことに驚いた。
女の顔が、びっくりするくらい、近い。
女に抱きしめられ、その体の柔らかさと、言いようのない香しい香りが、水瀬の男性としての本能を狂わせようとしていた。
―――祷子さん。ごめんなさい!
水瀬は心の中で叫んだ。
―――ちょっとだけ!
水瀬の腕がそっと女を抱きしめようと動く。
だが、女はその手から逃れるように、水瀬から離れた。
「え?」
「……今晩は、ここまでです」
いつの間にか床に落ちていた衣服を手にした女は、晴れやかに微笑んだ。
「お仕事がありますので」
「……へ?」
お仕事。
その言葉に、我に返った水瀬は、とっさに美奈子を見た。
水瀬の目の前で、いつの間にか、女と同じスーツを着た別な勝ち気そうな黒髪の女が、まるで汚物を見るような眼で水瀬を睨んでいる。
その腕の中に、ぐったりとした美奈子がいた。
「しまっ!」
水瀬が腰の霊刃に手を伸ばした時には遅すぎた。
フンッ。
勝ち誇った様な視線を残し、美奈子を抱きかかえた女が水瀬の目の前から、かき消すように消えた。
瞬間異動(テレポート)だ。
「私達は、まだしばらくこの国にいます」
女の声に、水瀬は目を見開いた。
「ま、待って!」
「―――ではいずれ」
優雅な仕草で挨拶する女の姿が、水瀬の前から消えようとしていた。
「こ、こんなの困るっ!」
女は答えることなく、その姿を消した。
後には、ガラスや家具が散乱する部屋と、風に揺れるカーテンだけが残された。
「ぼ……僕」
テレビの音だけがむなしく響く部屋で、水瀬は悔しそうに、困ったように言った。
「……僕」
その視線は現実を見ていない。
水瀬が見ていたのは、脳裏に焼き付けられた、あの女のみせた胸であり、下半身の茂みであり、そこから連想した、女との、それこそ「小説家になろう」の通常版では表現出来ないレベルの激しい妄想だった。
「ぼ……僕……」
はぁ……はぁ……。
水瀬は、荒い息のまま、消えた女に救いを求めるように言った。
「ばっきんばっきんなんですけど……」
その姿勢は、無様なほど前屈みだった。
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最終更新日 2009.11.29 19:39:50
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