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chiko619 @ Re:新参者(09/22) 「新参者」読みました。 東野圭吾さんは、…
kimiki0593 @ 相互リンク 初めまして、人気サイトランキングです。 …
Twist @ こんにちは! 遅ればせながらあけましておめでとうござ…
Twist @ こんにちは! 遅ればせながらあけましておめでとうござ…
Twist @ はじめまして^^ 先ほどこのロングインタビューを読み終え…
2015.12.19
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カテゴリ: 教育・子育て

 教授は、青森県立高校の校長から県教育庁生涯学習課長、
 県総合社会教育センター所長を経て現職に就いた方で、
 現在は国立教育政策研究所のプロジェクト研究委員でもある。

 従って、 『これでいいのか小中一貫教育』 の山本さんとは、
 立ち位置が異なり、記述されている内容も違う。
 その点については、本著の「はじめに」にも記されており、
 双方を読むことが、バランスをとるためにもいいと思う。


第1章は「小中一貫教育とその必要性」で4頁、
第2章は「これまでの小中一貫教育の経緯~その成果と課題~」で22頁、
第3章は「アンケート調査結果等から見た小中一貫校の実態」で22頁。

  小学校は担任制で、1人で全教科を指導するのが原則である。
  これに対し、中学校は教科担任制で
  教員は特定の教科のみ指導するのが原則であることなど、
  小・中学校の教職員の職務の性質は異なる。
  このため、「小学校と中学校では文化が違う」などと公言する教員も多く、
  連携・協力が難しいとされる。
  一貫教育により、こうした小・中学校間の相違を互いに理解しあい、
  「小学6年と中学3年が別々ではなく、

  望ましい連携協力関係を構築することで、
  学習及び生活の両面で教育効果を上げようとする。(p.4)

この記述は、実際にその職務に関わったことがない者には分かりにくいかもしれない。
同じ義務教育に携わる者であり、同じ子どもを指導する者であるのに、
なぜ、「文化が違う」というようなことが起こるのか?


  中一貫教育の成否を決するのは、
  取組みの主役である教職員の意識改革ができるか否かにかかっている、
  と指摘されることが多い。(p.45)

まさに、この指摘の通りだと思う。
そして、そのことは、事が「文化の違い」だけに、容易いことではない。

続く第4章の「特に注目すべき取組み事例」には148頁が費やされている。
「施設一体型」「施設分離・連携型」という施設形態の違いに着目して、
奈良県奈良市、千葉県鴨川市、青森県三戸町、
鹿児島県薩摩川内市、広島県呉市、島根県松江市を紹介している。

  これに対し、地域住民や保護者等から多く出された主な質問や意見は次の3点だった。
  1.そもそも「小中一貫教育」や「小中一貫校」への理解が
    不足していることから来る不安や、実際の取組み内容に関する質問。
  2.もともと合併前の旧町村単位に小学校があったため、
    小学校の統合により地域から学校が無くなることで、
    地域の活力が失われるのではないかとの不安。
    特に、学校が無くなる計画の大山・主基地区で多く出された。
  3.通学距離が長くなることによる、スクールバスの運行に関する質問や意見。
    特に大山・主基地区の保護者から多く出された。(p.61)

これは、千葉県鴨川市の事例紹介の部分に出てくるものだが、
地域住民・保護者の意見として、典型的なものではないかと思う。

  同市が小中一貫教育の目的の1つとして、
  「教職員の教育観の変革と指導力の向上」をあげ、
  そのための取組みとしての授業交流と、
  児童生徒の交流活動の充実を重視している(中略)
  その実施のためには教員同士の綿密な打ち合わせが必要なことは言うまでもなく、
  取り組みの回数が増えれば増えるほど打合せの回数も多くなり、
  そのための時間確保が重要な課題になることは言うまでもない。(p.95)

これは、鹿児島県薩摩川内市の事例紹介で出てくるものだが、
先述した、「文化が違う」小学校と中学校の「異文化交流」を促進するために、
最も基本的で、もっとも効果のある取り組みである。
それ故、この時間確保こそが、最重要課題となる。

次に「4・3・2」「4・5」「5・2・2」「4・3・5」「3・4・2」という
学年区分の違いに着目して、
兵庫県姫路市、神奈川県横浜市、広島県広島市、
熊本県産山村、長崎県小値賀町、宮城県登米市の事例を紹介している。

  初年度は、小・中教職員が各教科・領域の特性や学習内容について
  議論するところから作業を始めたが、
  教職員から「同じ教科・領域でありながらも、
  そのとらえ方や指導上の留意点が小中では全く違う」と驚きの声があがったという。
  しかし、2年目にあたる2008(平成20)年度に作成作業を終えるに際しては、
  「異校種のことがよくわかった。今後の指導に生かしたい」とか、
  「同じ教科・領域でありながら用語や学習内容についてのとらえ方が全く違うことが分かり、
  小・中教員間で意識の共有化が図れた」などの声が多くあったという。(p.135)

これは、兵庫県姫路市の事例紹介に出てくるものだが、
まさに、異文化交流の成果である。
そして、次の広島県広島市の事例紹介に出てくる一文は、
その成功に向けての指針として、注目すべきものである。

  一方で、小学校と中学校の指導方法をめぐる連携には課題がある。
  これまで見てきたように、「ひろしま型カリキュラム」の実施を核とした
  広島市の小中連携の取組みは、市教育委員会が明確な方針を示し、
  試行しながら成果と課題について検証したうえで、
  例えば綿密な「言語・数理運用科ガイド」の作成・配布など、
  積極的に学校(教職員)への支援を続けながら
  全校実施へ歩を進めたことが最大の特徴だと思われる。(p.162)

このように、同じ小中一貫教育に取り組みでも、地域により随分差があり、興味深い。
それは、同じ小中一貫教育と言っても、
これだけ特色に違いを持たせることが可能であることも示唆している。
要は、現時点では、各自治体の裁量の幅がかなり広いということであろう。

続く第5章の「小中一貫教育を推進するために解決すべき課題」は、
わずか13頁にしか過ぎないが、高橋教授の考えを述べた部分で、
本著の核ともいえる部分である。
それは次のような内容であるが、その指摘は的確で分かりやすい。

(1)小中一貫教育の目標や方針・計画等を明確に
    -何のために一貫教育を目指すのか-
(2)学年区分論の活発化が必要
    -各区分の取組みによる得失の分析・検証が不可欠-
(3)カリキュラム論の重要性を再確認する必要
(4)一貫教育に伴う学習指導上の課題
(5)保護者や地域住民等の参加を拡充する必要性
(6)市町村教育委員会の脆弱な推進体制整備の必要性
(7)一貫教育に伴う教職員の多忙化
(8)市町村格差が拡大する可能性

そして最終的に、やはり課題となってくるのが(7)であろう。
成果を上げることの出来る、継続可能な取り組みとするためには、
このことを避けては通れない。





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Last updated  2015.12.19 20:56:01 コメントを書く
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