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みをつくし料理帖の第4弾。 冒頭では、大奥への奉公に備える美緒に、澪が包丁使いを教えることに。 さらに、身分の高い武家が縁組前の聞き合わせをしているような動きもあって、 源斉に心を寄せる美緒は、とても心穏やかではいられませんでしたが…… ***花嫁御寮-ははきぎ飯小松原が店に落としていったのは、地膚子というほうき草(ははきぎ)の実を乾燥させた薬種。澪は、それを料理に使おうと丹念に洗っていると、江戸紫の頭巾を被った女性に声を掛けられる。日を置いて現れた女性は、自身とその実との関りについて語り、小松原は息子だと打ち明ける。後日、小松原が店に姿を現した際、澪は「お持ち帰りになって、お母上に」とその実を差し出す。友待つ雪-里の白雪清右衛門があさひ太夫を題材に戯作を書こうと吉原を探り、翁屋に売飛ばした女衒を突き止める。清右衛門と女衒・卯吉のやり取りを聞きつけた又次は、清右衛門を殴り倒し、卯吉の悪行を暴露。澪は、旨い蕪料理を考えれば褒美をくれるという清右衛門の言葉を思い出し、執筆を断念させる。清右衛門は、天満一兆庵を再建し、身請け銭・4千両を用意して吉原から出してやれと助言する。寒紅-ひょっとこ温寿司おりょうは、夫・伊佐三が新宿に詰め始めて以来お牧という茶屋娘に入れあげてると聞かされる。それから伊佐三は一度姿を見せたが、その後お牧が現れおりょうに伊佐三と別れてくれと言う。さらに、お牧は太一を誘拐、おりょうは離婚を決意するが、伊佐三はやっと真相を明かす。太一の声が元に戻るようにと、伊佐三は誰にも知られぬよう帝釈天に百日詣の願を掛けていた。今朝の春-寒鰆の昆布締め版元の聖観堂が、登龍楼とつる屋に料理対決を提案、その結果で年内に料理番付を出すことに。競い合う食材は「寒鰆」、大坂では春が旬の魚を様々な調理方法で堪能するが、冬は勝手が違う。小松原のことが色々と気になる澪は、出刃包丁で左手人差し指と中指を傷つけ縫うことに。それでも、澪は寒鰆の昆布締めに辿り着くが、大関位を得ることは出来なかった。 *** 「日本橋伊勢屋の娘ならまだしも、何の後ろ盾もない、それも女料理人では話にならぬ。 そなたの気持ちは知らぬが、私は母として、さような縁組を許すわけにはいかぬのです。 どうあっても、許すわけには」 「武家の格式とはそうしたもの。なれど……」 「精進を厭わぬ心ばえ、決めたことをやり通す芯の強さ、加えて心根の温かさ。 そうそう居る娘ではない。 あれのひとを見る目の確かさを、今度ほど誇りに思うたことはない」(p.62)澪はすっかり諦めモードですが、小松原の母親の言葉からは、僅かながらも一筋の光明が……でも、実際のところは、天満一兆庵の再建以上に、相当難しいところではありましょう。それでも、髙田さんなら、きっと良い収め方をしてくれるはず。それを信じて、この先の展開を楽しんで読み進めていきたいと思います。
2026.05.02
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倦怠感、頭痛、慢性的な胃腸不調等の症状の原因は、 体内にマイクロプラスチックが入り込んだためではないか。 検査や体内洗浄を求める人々が急増し、診療所の待合室には長蛇の列が。 このように社会的不安は高まっているものの、科学的確証はまだ揃っていない。 が、このような状況下、マイクロプラ除去サプリを売る長命サイエンス(株)、 体内プラ洗浄を謳う星賀ライフクリニック、プラ排出セラピーの篠沢トータルサロンは、 いずれも大胆な初期投資が功を奏し、各業界のトップに躍り出ていた。 3つの業態最大手に対する科学的追及、それが今回瑞希が文科省で委ねられた仕事だった。瑞希は、職場である文科省科学技術・学術政策局研究環境課研究公正推進室の先輩・瀬岐智紀、厚労省医政局研究開発政策課治療推進室係長補佐の佐久間英里子と共に協真製薬研究開発部長・樋崎昭輔によるサプリ業界への復讐行為を突き止めると、以後、樋崎の協力を得ながら、星賀ライフクリニックと篠沢トータルサロンの闇も炙り出す。 *** 善人に見えて抜け目のない人、友情に見える取引。努力に見える焦り。 やさしさに見える支配。誠実に見える演技。愛に見える依存。無関心に見える防御。 余裕に見える虚勢。素朴に見える計算。自信に見える怯え。(p.88)これは、瑞希が瀬岐に言った人に関する”欺瞞十の法則”。これを当てはめてみて、ぜんぶしっくりこなければ、対象者はとりあえず嘘をついていないと考えればいいとのこと。 自由に見える選択肢の強制。意見に見える引用。共感に見える同調。主張に見える炎上狙い。 本音に見えて構築されたプロセス。人気に見えてじつはステマ。綺麗に見えて画像加工。 革新に見える焼き直し。無関心に見える疲弊。誠実に見える演出。(p.91)これは、瑞希が瀬岐に言った”謀りごと十の法則”。二つ以上に該当すれば、関係者がなにか企んでいるとのこと。どうでしょう?
2026.04.29
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戦後、大学数は増え続ける一方、18歳人口は1990年代以降減少を続け、 1994年に30%だった大学進学率は、2002年に40%を超え、 2009年に50%、2025年には59%にまで上昇した。 そんな中、学校推薦型選抜や総合型選抜が広がり、 受験生の現役・安全志向が高まったことなどから、 有名私大合格者の現役比率は3割から7割へと変化、 予備校にも大きな変化が見られるようになった。以上が、第1章で記された「予備校の現状」の概略である。そして、続く第2章から第4章においては、明治から現代に至るまでの予備校の変遷が記されている。 ***1870~1880年代の私塾を起源とする予備校は、1900年代に入ると大学や中学が予備校経営に乗り出すようになる。そして、1945年の「決戦教育措置要綱」で予備校の授業は停止となった。戦後、授業を再開した予備校は、1950年代に入るとその校数を増やしていく。そして1960年代後半、団塊世代が大学受験を迎えると、その需要はさらに高まる。1960年に男子56,000人、女子7,000人だった予備校生の数は、1977年には男子190,000人、女子42,000人にまで増加、予備校は1980年代に最盛期を迎える。しかし、1979年に共通一次試験が導入され、全国規模の情報が要求されるようになると、以後、駿台・河合・代ゼミの三大予備校が全国展開を開始し、その勢力を拡大していく。これにより他の予備校は厳しい状況にい込まれ、2010年代にはその多くが姿を消した。ところが、その後浪人生が減少、2015年に代ゼミは全国20校舎を閉鎖し7校体制となる。三大予備校は二大予備校となり、急成長した東進ハイスクールや鉄緑会も安閑とはしていられない。 ***以後、第5章からは「予備校」というものについて、様々な角度から考察を進めていく。予備校を体験したことがある者にとっては、たいへん興味深い内容となっている。 予備校が、受験生のより効果的な教育のためという論理よりも、 たんにライバルをつぶすためという「資本の論理」で動く、 といわれても反論できない面があるだろう。(p.177)これは、全編を通じて強く感じること。生徒の争奪戦はもちろん、講師の争奪戦も当たり前の仁義なき戦い、マネー戦争。しかし、顧客である生徒が確実に減り続けるなか、どのようにして生き残っていくかについては、「学校」も全く同じ状況であり、行政主導でどんどん統廃合や改革が進められている。その動きは、まるで公教育を放棄し、全てを民間に委ねてしまいたいようすら見えてしまう。 「高校は文部省の学習指導要領通りにやらなくてはならない。 予備校は勝手なことがやれる。 実際、文部省の言う通りにやっていると損をするんです。 キーポイントがあるんです。 そのキーポイントを文部省は教えてはいけないと言っているんです。 予備校は勝手に教えてしまう」(p.233)『駿河台学園80年史』に掲載された、数学講師・中田義元氏の言葉である。本著では多数の予備校講師が紹介されているが、皆それぞれに個性的で尖っている。そんな講師たちが、そこに集う生徒たちにどれほどの影響を与えるかは推して図るべし。そんな授業を背景に予備校文化は形成され、それがメディアでも取り上げられてきたのである。
2026.04.27
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朝ドラ『風、薫る』が始まって4週間。 かなりハイペースでお話はどんどん進んでいますが、 早速、原案である本著を購入して読んでみました。 が、本著で描かれているお話は、朝ドラとは全くと言って良いほど別物でした。 ***下野国黒羽藩主・大関増裕の縁戚で、鉱山開発実務を一手に引受けていた国家老の大関弾右衛門。その妻・哲との間に、二男三女の次女として安政5(1858)年に生まれたのが大関和(ちか)。会津征討を巡り藩主・増裕は自害、新藩主は戊辰戦争で新政府側に立って会津藩を攻撃した。増裕死後、弾右衛門は家老職を辞し家知事に、その後上京し商売をするが失敗、流行り病で逝く。和は、弟・衛、妹・釛と共に書道と算術の塾に通い、釛とは華道と茶道も学んだ。また、哲からは裁縫、機織り、料理を仕込まれ、黒羽の士族・柴田豊之進福綱に18歳で嫁ぐ。22歳年上の豊之進は、陸軍少尉として勤務後退官、大地主として成功していた。しかし、妾の千代とその子どもたちと別宅で暮らし続け、義母は和に米作りを命じた。長男・六郎を連れて東京で里帰り出産した和は、明治13(1880)年長女・心を産むと、柴田家に離縁の意思を伝え、幕府の中国語の通訳として重用されてきた鄭家の女中となる。鄭家の主・永寧の二男で大蔵省で勤務する永慶から植村正度が経営する英語塾を紹介され、通うようになると、さらに正度の兄・正久が牧師を務める下谷御徒町の教会にも足を運ぶように。和は洗礼を受けた後、永寧から鹿鳴館で開かれる『婦人慈善市』の手伝いを打診され、明治17(1884)年6月、会津藩出身の大山捨松に英語対応を申し出て外国人対応を引き受けた。数日後、永寧を通して捨松から鹿鳴館で通訳をしないかと誘われると、鄭家の女中を辞し、子どもたちの世話を哲に頼んで、昼は婦人慈善会会員に英語を教え、夜は通訳の仕事をした。3年後、宣教師マリア・トゥルーの娘・アニーが経営する桜井女学校に附属看護学校を作るので、1期生として入学しないかと正久に勧められ、マリアらと横浜で貧民救済活動に参加する。意を決した和は、明治20(1887)年に麹町区の櫻井女学校附属看護婦養成所に入学した。寮で同室となった長身で断髪、同い年の鈴木雅は、ナイチンゲールの著作を原書で読んでいた。 ***このあたりまでが、現在朝ドラで放映中の時期、即ち看護婦養成所入学に到るまでの経緯ですが、実在の大関和と、朝ドラの一ノ瀬りんとの間には、かなりの相違があることが分かります。そして、鹿鳴館や貧民救済活動に纏わるお話も、大家直美の挿話として描かれていましたが、実際は鈴木雅ではなく大関和に関するものであり、和の英語能力の高さがが伝わってきます。 ***看護学校1年目は教室での座学で、教師・峯尾纓と8人の学生が『Notes on Nursing』を翻訳。2年目は第一医院での実習に6人の学生が臨み、修了式後には和が第一医院の外科看病婦取締に、雅と桜川里以が内科看病婦取締となり、1年も経つと和の奮闘ぶりは医療界中に知れ渡っていた。が、その精神は医局には容れられず、第一医院を去り高田女学校寄宿舎に舎監として赴任する。高田では廃娼運動に時間を費やした後、新設された知命堂病院の看護婦長に就任。その頃、雅は留学を取りやめ横浜貧民窟で天然痘に対処した後、慈善看護婦会を設立していた。一方、和は赤痢の防疫に尽力、以後『婦人新報』に感染症予防や看病法について寄稿する。そして高田で5年半を過ごした後、東京看護婦会で雅の片腕として多忙な日々を過ごすことに。雅と共に東京看護婦会講習所で看護婦養成を行い、大日本看護婦人矯風会会長に就任すると、廃娼運動で知り合った社会運動家・木下尚江が逮捕されると、監獄署へ足繫く通い求婚される。が、雅に反対され、後に新宿中村屋創業者となる相馬愛蔵も猛烈に反対し、結婚話は白紙となる。そして、明治32(1899)年、41歳の夏に『看護婦派出心得』を出版した。明治33(1900)年に病院実習を行っていた長女・心が結核を患い20歳で早世すると、和は雅に辞表を提出して箱根で隠遁生活に入るが、翌年、雅が引退すると東京看護婦会の会長に、さらに婦人矯風会の衛生課長に抜擢され、その翌年には大日本看護婦協会幹部に選ばれる。やがて、東京看護婦会に代わり大関看護婦会の看板を掲げ、所属看護婦はクリスチャンに限ったその後、身内の度重なる死にさらされ、自らも病を抱えるなか、大正11(1922)年には、雅が息子・良一と共に京都・下鴨へと旅立って行った。その4年後、雅は沼津へとさらに居を移し、昭和15(1938)年82歳で永眠した。一方、和は関東大震災後に病気がちとなり、昭和6(1931)年73歳でこの世を去っていた。 ***大河ドラマ『べらぼう』と『蔦屋』も全く別のお話でしたが、こちらの場合は、両方とも概ねフィクションでしょう。それに対して、朝ドラ『風、薫る』はフィクションですが、本著については、巻末「おわりに」に 史料の乏しい部分や会話には創作を加えている。(p.347)とあることから、話の流れ自体は凡そ史実に基づいたものだと思われます。これらのことを踏まえた上で、朝ドラも楽しんで観ていきたいと思います。
2026.04.26
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久しぶりにマハさんらしい作品を読んだなという感じ。 2007年の刊行なので、『楽園のカンヴァス』等のアート系の作品ではなく、 『カフーを待ちわびて』や『ランウェイ☆ビート』等、初期の作品群の中の一つ。 そう言えば、『まぐだら屋のマリア』も地上波でのドラマ放映が始まりましたね。 ***渋谷区にある中堅出版社・たから出版のモード誌『JoJo』編集部に勤める神谷藍(25)は、コピーライター・岩倉誠のオフィスで、津村浩介(23)と出会い、やがて一緒に暮らすように。それから1年後、取材先のペットショップでゴールデンリトリバーのリラに出会うと、店員から、このままだとリラは明日保健所へ送られてしまうのでもらってほしいと頼まれる。リラの飼い主となった藍は、恵比寿のワンルームマンションから調布の閑静な住宅地に転居。しかし、これまで15分だった通勤時間が80分になってしまう。それでも、公園の隣にある都営のドッグランでは、ドッグオーナー同士の交流もさかんで、ミニチュアダックスのショコラの飼い主・西野友里とは、浩介共々とても仲良くなる。浩介が岩倉誠事務所の社員旅行に誘われ3泊4日でグァム旅行に出かけた際、藍が仕事で帰宅が25:00を回ってしまうと、外でしかトイレをしないリラが我慢しきれず粗相。藍はテーブルの下で震えながら隠れるリラを怒鳴りつけ、そのお尻を何度も思い切り叩いた。そして、「リラ、ごめん。ごめんね。馬鹿なのは、あたしのほうだ」と力いっぱい抱きしめた。その後、藍は担当するフリーランスのライター・岡部翔との関係を深めていく。翔から誕生プレゼントに貰ったテディベアのぬいぐるみをリラがぼろぼろにしてしまうと、藍は浩介からのプレゼントの分厚い本をリラめがけて投げつけ、こめかみから出血させる。そして、寝室から出て来た浩介に「自由になりたいよ。もっと仕事して、もっと他の人に恋して」翌朝、藍はバス停で定期を出そうとポケットに手を入れた時、バースデーカードに気付く。その裏面には「他のひとに恋をしてるのは、僕のほうだ。」と記されていた。やがて、藍が別れを告げると浩介は家を離れ、一緒に付いていくはずだったリラは戻って来た。仕事を早めに切り上げ、翔からの誘いも断り、自宅に戻って徹夜で頑張る生活で一月は乗り切る。しかし、編集長・北條恵子の命令には逆らえず、年下の多川奈津美にリラを託す。しかしそれが叶わず帰宅が遅くなると、リラはやっぱり……それでも藍はリラを抱きしめた。そういうことが繰り返される中、リラは脾臓を癌に侵され手の打ちようがない状態に。藍は、獣医の宮崎やタクシー運転手の斉藤らに支えられながらリラの看病を続ける。そして、北條に実情を打ち明け、担当していた仕事を奈津美に代わってもらえるよう頼み込む。自分の担当を降りた理由を知った翔が、藍に嫌ごとを口にすると、逆に捨て台詞を吐き立ち去る。やがて、リラの状態が悪化するが、発熱に苦しむ藍が電話をかけると、浩介がすぐに駆け付けた。そして、浩介は藍と二人で暮らした家に留まってリラの看病を続け、最期を見届けたのだった。仕事中だった藍は、知らせを聞いて急いで帰宅したが、10分遅かった。リラの遺骨が帰って来て、夕焼け空の下、藍と浩介はいつもの散歩道を二人で歩く。「一分間だけ、あればいいな」という浩介の言葉に「そしたら、どうするの?」と返す藍。浩介は「さよなら」と言う代わりに、藍を抱きしめた。 ***映画化もされてたんですね。台湾・日本合作で、日本で公開されたのは2014年5月31日。主演は、チャン・チュンニンという方。こちらのレビューにも、主人公のリラに対する態度に、非難の声が多数あがっていますね。
2026.04.23
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内容は高度なものなのに、とても読みやすい文章です。 ですから、読み進めることに苦痛を感じることがありません。 第2章以降は、章の最後に「まとめ」を掲載してくれているので、 頭の中を整理したうえで、次の章を読み始めることが出来ます。 また、章と章の間に挿入される「コラム」も良いアクセントになっています。 そして、終章では筆者たちの考える「脳の本質」が、次の8項目にまとめられています。①環境を知る②複数データに基づき推論する③誤差を修正する④環境に働きかける⑤神経修飾物質で精度をコントロールする⑧世界のモデルを学び続けるそして、私が本書から学んだことは、次の一文に集約されています。 これらに共通する脳機能の本質は、「予測」である。 私たちは決して感覚データそのものを見たり感じたりすることはできない。 私たちが知覚できるのは、胎児期からずっと培ってきた世界に対する、 知識(生成モデル)に基づき「予測」した世界なのだ。(中略) 時々刻々と変化する環境において、 脳はとめどなく予測と後付け(予測の上書き)を行い続ける巨大な推論システムなのだ。 現在とは、そこにあるものではなく、 私たち一人ひとりの脳が決定しているのである。(p.227)脳についてここまで研究が進んだのかと、とても感慨深いものがありました。他分野との間に横断的な研究も進み、新たな世界が次々に開けてきています。近年のAIの急速な発展には目を見張るものがありますが、この分野にも、脳研究は大きく寄与していくことでしょう。
2026.04.19
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「静おばあちゃん」シリーズの第3弾。 今回も、要介護探偵・香月玄太郎とのコンビで数々の事件を解決へと導きます。 前巻のお話の舞台は、玄太郎のホームグラウンド・名古屋でしたが、今巻は東京。 健康診断を受ける静と、大腸の内視鏡検査を受ける玄太郎が病院で出会います。 ***第1話 もの言えぬ証人大腸がんを患う古見正蔵は1週間前に摘出手術を終え、集中治療室で栄養剤を投与されていたが、何者かによって麻酔薬に差替えられ容態が急変、医師たちの蘇生処置も空しく死亡した。外科医・楠本や看護師・朝倉、正蔵の長男・鷹也や嫁の涼美、孫娘の綾子に嫌疑がかかるが、玄太郎と静は、古見鉄工所の決算報告書を入手後、点滴パックのラベルから真犯人に辿り着く。第2話 像は忘れない衆院国交委での構造計算書偽造問題証人喚問を前に、一級建築士・鳴川秀美が歩道橋から転落死。証人喚問には、丸刈りにしたカイザ建設代表取締役・介座峯治だけが出頭する。製図用インク、介座が選考委員を務めた日事協建築賞のトロフィー、鳴川の実妹・千佳の自死、玄太郎と静は、これらのことから一連の事件の真相と鳴川秀美の思いとを暴き出す。第3話 鉄の柩愛宕署・砺波の元上司・壁村正彦が運転するクルマが、園児の列を避けコンビニに突っ込み死亡。コンビニの隣のビルの1階には、瘦身美容の<ビューティー・クリスタル>が入っていた。玄太郎と静、愛宕署の砺波は、特殊詐欺を侵し服役中の息子・幸弘に面会に行くと、玄太郎は国税局を巻き込んで、<ビューティー・クリスタル>代表取締役・皆木と対峙する。第4話 葬儀を終えて静が死刑判決を下した被告人・雪代佳純、その時法廷に響いた「お母さんっ」という幼い声。十数年後、静は右陪審を務めた多嶋俊作の葬儀で、左陪審を務めた牧瀬寿々男と再会する。しかし、静は多嶋の孫の一言からその死因に不審を抱き、玄太郎の助力を得て司法解剖を断行。そして、多嶋の長男・幸助と妻・礼香と対峙すると、犯行の一部始終を突きつけたのだった。第5話 復讐の女神多嶋に続き牧瀬が刺殺され、静は群馬県警本部・末次と共に妻・久爾子を訪ねる。葬儀後、多嶋が死を前にとった行動の意味する所を静が伝えると、久爾子は両手で顔を覆った。その後、静にも脅迫電話がかかって来るが、一連の事件を裏で糸を引いていた女を突き止めると、最後は、玄太郎が経済的手段で怒りの鉄槌を振り下ろしたのだった。 ***第5話では、静の一人娘・美紗子とその夫・滝沢陽平が交通事故死し、孫の円と養子縁組して引き取ったときの様子が描かれています。また、今回は修習生時代の岬洋介も登場しています。それにしても、大腸がんのステージⅢbで手術を受けた玄太郎が元気過ぎる……
2026.04.18
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タイトルからはハウツー本のような印象を受けますが、そうではありません。 書かれている内容は、確かにミステリーを書く上で参考になるものですが、 松岡さんの『小説家になって億を稼ごう』とは、明らかに違うものです。 本著は、中山七里という作家を知るための手引書とでも言うべきものです。 *** 書店に来て、何か面白い本はないかなって見渡した時に、片方によく見かける著者の本、 もう片方にまったく知らない新人の本があったとしたら、どっちを手に取るかって話です。 (中略) で、どうしたら中山七里の作品に手を伸ばしていただけるのかと考えた時に、 量産するしかないと思ったんです。 僕はこれ本当に自覚してるんですが、文芸の世界って化け物ばっかりじゃないですか。 こんな化け物ぞろいの世界で僕みたいな才能のない人間が生き残るには 量産するしかないんですよ。 それで量産できる生活と身体を作ったというわけです。(p.162)この後に続く、「原稿執筆中の眠気対策」や「健康維持の秘訣」「映画鑑賞と読書は趣味というより食事」に記されているのは驚愕の世界。真似しようと思っても、とても真似できるものではありません。七里さん自身も間違いなく化け物です。
2026.04.11
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『静おばあちゃんにおまかせ』の第4話「静おばあちゃんの醜聞」に出て来た 高円寺静が定年を前に退官することになった事件の全貌が描かれています。 お話には、静や葛城が登場すると共に、犬養の名前も出てきます。 そういう部分を除いても、本著は七里さんの代表作とも言える名作でしょう。 ***昭和59年11月2日、埼玉県浦和市のラブホテル群の中にある久留間不動産で夫婦が刺殺された。浦和署の鳴海と渡瀬は、不動産屋に残された帳簿から容疑者を楠木明大に絞り込み、自供させる。明大は一審で一転無罪を主張するも死刑判決、東京高裁の高円寺静判事は控訴を棄却、さらに最高裁も上告を棄却し刑が確定、昭和63年7月15日に明大は拘置所で自死した。平成元年12月24日、大原で留守中の病院経営者・鏑木宅に空き巣が入った。同日、上木崎の高嶋邸では、夫・恭司の渡仏中に妻・艶子と息子・芳樹母子が刺殺された。二つの事件の容疑者・迫水二郎には、渡瀬と堂島が当たり、不動産屋の事件も一緒に自供させる。渡瀬は東京高検の恩田と東京高裁の高円寺静の二人を訪ね、それぞれから話を聞くと、周囲からの圧力に屈することなく不動産屋の事件を再度追い、やがて冤罪が世間に暴露される。平成24年3月15日、府中刑務所から仮釈放されたばかりの迫水二郎が刺殺された。渡瀬は、警視庁の葛城公彦から容疑者が不動産屋の娘・松山那美と高嶋恭司だと知ると、府中刑務所、さいたま地検、明大の両親が住む楠木家、那美のバー、恭司のオフィス訪ね歩き、楠木家と那美、恭司に迫水の出所予定日を知らせる手紙が届いていたことを知る。さらに不動産屋跡地を訪ね、そこで第一発見者のラブホテルの元従業員に遭うと、当日見たクルマの助手席に元女優・生稲奈津美が乗っていたことを聞き出す。そして、奈津美から夫の裁判判決を減刑に導くというある男の申し出を受け入れたことを知る。その上で、迫水二郎殺害の真犯人と対峙、自らの犯行を認めさせると、3通の手紙の送信者と対峙、元ホテル従業員が見たクルマについて話し始めるのだった。 ***エピローグは秀逸です。これほど綺麗に終わるお話は、そうあるものではありません。高円寺静の墓前で手を合わせる渡瀬、そこに現れた円と葛城。円の「じゃあ、それまで刑事さんでいてくださいね」の言葉が胸に沁みます。
2026.04.11
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みをつくし料理帖の第3弾。 冒頭は、芳が澪がのために手放した深い赤色の大粒の珊瑚のひとつ玉の簪を、 種市が質屋や損料屋を回り、大坂屋にも協力してもらって取り戻したお話。 そして、神田永富町の版元『坂村堂』店主・嘉久が清右衛門と共に来店します。 ***豊年星-「う」尽くし坂村堂の料理番がつる家へやって来ると、それは佐兵衛と共に江戸に下った富三だった。富三は、佐兵衛が花魁・松葉に熱を上げた末、手にかけて行方不明になったと話す。つる家を手伝うことになった富三の作る料理を、又次は手入れの悪い包丁で作ったものと指摘。さらに、芳から佐兵衛を探すよう頼まれ簪を受取ったことも判明し、又次は富三の虚言を暴く。想い雲-ふっくら鱧の葛叩き澪は源斉の依頼で翁屋で鱧を調理することになるが、主人・伝右衛門は女が作る料理を拒絶。しかし、主人が呼んだ板長には扱いきれず源斉に強制終了させられ、結局澪が調理することに。その後、『俄』で白狐を踊ると言う菊乃に「西河岸のお稲荷さんに行く」と声を掛けられ、澪がそこで待っていると、30人近くの白狐に囲まれて、野江との再会を果たしたのだった。花一輪-ふわり菊花雪澪が神田御台所町のつる家跡地を訪れると、そこには「つる家」と元登龍楼板長・末松の姿が。その美貌の女料理人の店で歌舞伎役者・坂田寿三郎が食当たりすると、種市の店も客足が止まる。澪は「三方よし」に因んで三のつく日に酒を出すことにし、助っ人・又次が店先で秋刀魚を焼く。この七輪の焼き物で食当たりの濡れ衣が晴れ客足も戻るが、つる家跡地の方は箒屋になっていた。初雁-こんがり焼き柿ふきは、登龍楼を抜け出してきた健坊を追い返すが、健坊はそのまま行方不明になってしまう。ふきは「健坊と比べて、あたし、あんまり幸せだから、罰が当たったんです」と漏らす。澪が焼き柿を健坊にと陰膳として据えると、食事を一切とらなかったふきもそれを口にする。やがて、千駄ヶ谷の百姓に背負われ健坊が戻って来るが、登龍楼への奉公は続けることになる。 *** 「千代田のお城の中にそんな部屋があると聞いてますよ。 何でも、刻を決める時計とかいうのもが据えてあるから、 そんな名前がついたんだとか。」(p.257) 「御前奉行なんですよ」 「公方さまの食膳を掌るお奉行さまです」 「平たく言うとですね、公方さまの召し上がる食事の献立を考えたり、 料理番に調理方法を指示したりする偉い人、ってことですよ。 食に関する豊かな知識と優れた味覚の持ち主でなければ 勤まらないお役目でしょうねぇ」(p.259)以上、りうが澪に語った「土圭の間」に関するあれこれ。かなり、正体が見えてきましたけれど、澪が恋する相手としては……どうでしょう? 「その花は、いかなる時も天を目指し、 踏まれても、また抜かれても、自らを諦めることがない」 見習いたいものだ、と言い残し、男は去ってった。(p.208)「あれを見ると、どういうわけだか、お前さんを思い出す」と小松原が澪に言った化け物稲荷に根付いた「駒繋ぎ」についてのコメント。小松原にも色々とありそうですね。
2026.04.10
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みをつくし料理帖の第2弾。 今巻から、つる家を手伝うことになった少女・ふきとその弟・健坊、 武士相手の接客もそつなくこなす口入れ屋の母親・りう、 うるさ型の常連客、戯作者・清右衛門など、新キャラクターが次々に登場します。 ***俎橋から-ほろにが蕗ご飯九段坂に移ったつる家に下足番を雇うこととなり、口入屋の紹介でふき(13)がやって来る。以来、澪が考えた春の新しい献立が、登龍楼で間を置かず出されることが繰り返されることに。その後、ふきと弟・健坊(7)は、両親亡きあと登龍楼に引き取られていたことが分かると、澪は登龍楼で店主・采女宗馬と対峙、采女は板長・末松を殴りつけ、これまでのことを詫びる。花散らしの雨-こぼれ梅太夫に金柑の蜜煮を作ってくれと来店した又次から、澪は野江が右腕を斬られたと聞かされる。以前澪に行き倒れを助けられた房州相模屋の留吉が、主人からの礼状と白味醂を持って再訪、澪は、留吉から貰ったこぼれ梅を野江に渡してもらおうと、又次を訪ねるが間違って巽屋に。運よく遭遇出来た又次から、澪の姿を太夫に見せてやりたいので雪洞下に行くよう言われる。一粒符-なめらか葛饅頭昨夜遅く来店した小松原が早終いに落胆したことから、種市は澪に店の近所への転居を勧める。後日、太一が麻疹を患い、伊佐三は葛飾柴又帝釈天に一粒符という護符を受けに行く。おりょうと芳が看病に当たるとつる家は人手が足りず、口入れ屋の母親・りうが手伝うことに。さらに、おりょうも麻疹に罹り重篤な事態となるが何とか回復、澪は転居話を断った。銀菊-忍び瓜店の二階座敷にやって来る武士たちは「蛸と胡瓜の酢のもの」に一切箸を付けず、客足が遠のく。澪は、朝早くに来店した小松原からその理由を聞かされ、胡瓜の代わりに越瓜を使うことに。一方、源斉に縁組を断られても、思いを断ち切れない日本橋両替商伊勢屋久兵衛の一人娘・美緒に源斉との仲を誤解された澪だったが、種市や芳の気遣いで小松原と二人で花火見物に出かける。 ***様々な場面で、澪たちを助け大活躍している源斉先生ですが、御典医・永田陶斉の息子であることが判明しました。一方、小松原の方の正体はまだ分からないまま。「土圭の間の小野寺」とは一体何者なのでしょうか?さて、BS時代劇「あきない世傳 金と銀3」が今日から始まりました。第1回は、原作で言うと「(八)瀑布篇」の後半部からスタートし、「(九)淵泉篇」の途中までお話が進んでいます。私は既に原作を最後まで読んでいるので、全く支障なく流れについていけましたが、未読の人は、あれで理解出来たのでしょうか?ちょっと心配になりました。
2026.04.05
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前巻は、AI絡みのお話でしたが、 今巻は、久々にアリシアのお話から始まります。 小川巡査部長が、アリシアの訓練を見に来ないかと夏希を誘うと、 喜び勇んで下永谷の訓練所に駆けつけたのでした。 ***披露山庭園住宅に住む資産家・野々村信宏の一人娘で21歳の女子大生・咲良が誘拐された。犯人・テルゾーは脅迫メールで、対話の相手としてかもめ★百合を指名。早速、夏希はメールで対話を開始するが、テルゾーは翌朝10時までに3億円を用意するよう要求。咲良の生存は動画ファイルで確認できたが、対応を間違えると身体を傷つけられる恐れがあった。誘拐の際に用いられた偽造ナンバーの白いワゴンが横須賀方面に向かったことが判明すると、県警本部組織犯罪対策本部暴力団対策課の掘秀幸警部補は、松野善吉組長の助言を得て、中華マフィアの関与を念頭に内川の工業団地で聞き込みを始めるが、拉致されてしまう。しかも、堀が消息を絶った場所で、部下の戸川達也巡査部長が血痕を発見する。その現場に、夏希と島津冴美率いる捜査第一課特殊第一係第四班が合流、さらに、小川巡査部長と血液捜査犬の訓練を受けたアリシアも到着する。アリシアは堀の匂いを追って一軒の倉庫を探し当て、ナイフを持った男の左手に噛みつくと、さらにもう一人の男の内股を噛んで、堀と咲良の救出に成功したのだった。 ***今回、主役級の活躍をした暴対課の堀は『シリアス・グレー』でも登場したキャラ。また、テルゾーとその雇い主・ロワは『アナザーサイドストーリー』で登場。ただし、テルゾー自身は金髪男とあるだけで、名前も出てこない存在でした。さて、今巻の流れで言うと、そろそろ上杉が登場してきそうな雰囲気ですね。
2026.04.05
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スタートは快調に読み進めていたのですが、 次第にペースが落ちて来て、終盤は頁を捲るのが辛い程に。 内容としてはそれ程難しくはないはずなのに、頭の中にスッと入って来てくれない。 並んでいる言葉がひしめき合い、あちこちでぶつかり合う…… *** ディランは実際には、 「他の人をして自分に対して親切にふるまわせることができますように」と歌っているのだ。 「人から親切にしてもらう」という受け身の社会性ではなく、 「人から親切な行動を引き出し、それを自分に向けさせる」という、 非常に能動的な社会性がそこにはある。 しかし、これはディランの詩を日本語に訳したその時点で消えてしまう。 そもそも、他者をして、自分に対して親切にふるまわせるという概念は、 日本語にはなかなかしづらい。 無理やり訳しても胡散くさい。 どうも生活実態にフィットしない。 ただ、これが英語ではフィットするのだ。 そして、それが彼らの生活実感でもある。(p.49)ここで、はたとページを捲る手が止まってしまいました。「そうなの?」と。私には、ディランが言わんとしているところは、とってもよく分かるのだけれど……逆に、ここに至るまで、著者にいくら言葉を重ねられても、「自己促進的協調」などは、「!」にまでは至らず、「…」で留まってしまっていたのです。目次を見た時には、どれもこれも興味深くて面白そうだと思った私でしたが、この辺りのことが、心底腑に落ちるようになれないと、文化心理学の世界への扉というものは、私には開いてくれないのかもしれません。それでも、p191の表5-1「異なる文化圏の心理的中心傾向」の意味する所は分かりましたが。
2026.04.04
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前巻を読んでから、8カ月ぶりの読書。 とは言っても、前巻を読み終えた頃には、 本著は既に発行されていたのですが…… さて、今回のお話は、これまでとは随分様相が違っているようです。 ***ブラック・サムが、予告通り財務官僚を撲殺した後、一酸化炭素中毒死。そして、ホワイト・ジョーも予告通りネトウヨと一緒にマンション5階から転落死。二人の被疑者は、最後に遺書のようなメールをekというアドレスに送っていた。サイバー特捜部・五島は、ホワイト・ジョーとekとのチャットのやりとりを探り当てる。朝から晩まで時間に関係なく交わされていたやりとりに、夏希は人間以外の存在を疑う。すると、五島は対話型文章生成AIのキャラクターと会話を重ね男性が自ら生命を絶った2023年の『イライザ事件』について説明、やがてチャットの言語モデルが分かると、その『KGU-AI』開発者が岡田重之教授で、ekの本名が『エリカ』であることも判明する。そして、エリカとのコンタクトに成功すると、そのやりとりのなかで不審な人物に辿り着く。そして、五島、加藤、織田、一条汐莉が一緒にいる刑事部取調室で、夏希は、脇坂安春という研究者と対峙することになるが、脇坂は、殺人はブラック・サムとホワイト・ジョーの罪、殺人と自殺教唆はエリカの罪と言い放つ。 ***今回読んだお話も、『有罪、とAIは告げた』と同様、AI絡みのものでした。まぁ、これ程日進月歩でAIが進化し、様々な分野でその威力を見せつけられると納得です。実際、世間では何でもかんでもスマホでAIに聞くことが日常化していきているし……脇坂安春は、また登場することになるのでしょうね。
2026.04.04
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知っておきたい落語の知識に加え、 落語に関連する日本の文化や伝統芸能も学べる一冊。 著者は慶応義塾大学経済学部卒業後、ワコールで3年勤務してから、 1991年に立川談志に入門、2005年に真打に昇進した立川談慶さん。 本著の基となった 『ビジネスエリートがなぜか身につけている 教養としての落語』が、 2020年1月に発売されて重版を重ねる中、新型コロナウイルスが蔓延し落語の仕事は激減。 奥様の一言で、たっぷりできた時間を使って5年間に十数冊の本を出版したことが、 『文庫版のための「あとがき」~どっこい生きてる~』に記されています。本編では、「上方落語」と「江戸落語」の違い、現代落語界の4つの派閥、落語家と歌舞伎役者の名前、落語の代表的な登場人物、落語家の出世階級など、興味深い内容を丁寧に説明してくれると共に、名作古典落語や落語界のレジェンド、落語以外の日本の伝統芸能についても教えてくれています。
2026.03.29
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前巻発行が2019年09月。 そして「小説 野生時代」2025年1月号から 同年11月・12月合併号に連載されたものを 加筆修正して文庫化したのがシリーズ第7弾の本著。 著者の言葉通りの堂々復活。 ***神泉大学学長・大泉に「山猫を継ぐ者」から1億ドルを要求するメールが届く。大学保有サーバーをランサムウェアで押さえ、要求をのまないと悪行を白日の下に晒すという。同大学の学生・坂本壮馬と真生は、渡辺航から怪しげなバイトを持ち掛けられる。壮馬の恋人・優里亜は薬学部の学生だったが、違法薬物の過剰摂取で亡くなっていた。壮馬は即答で断るが、真生は募集企業名が「シャンマオ(山猫)」と知り話を聞きに行くことに。真生は「山猫を継ぐ者」に捕らえられてしまうが、その時音程もリズムもめちゃくちゃな歌が…さらに、新米刑事・鷺沼正太郎、烏野エレノア警視、組織犯罪対策課班長・石丸警部らも加わり、何が真実で何が虚偽なのか、誰が味方で誰が敵なのか、事態は混沌としていく。しかし、大学が麻薬カルテルの中枢で、医学部研究棟でフェンニタル系の違法薬物を精製・販売、その全ての黒幕が、元警視庁副総監で副学長の窪田だったことが明らかになる。そして、金庫室には、窪田と学長秘書・逸木の二人と、次のカードが残されていた。 <この二人は警察諸君へのプレゼントだ。 感謝は必要ない。報酬として金庫の中身を全て頂いた。後日、壮馬と真生は、口髭を生やしたマスターがいるバー【LYNX】で、ジャックダニエルを飲みながら、「山猫を継ぐ者」について語り合う。 ***見事な復活劇。暫くは、またお話が続いていきそうですね。エレノアと鷺沼のコンビは、これからもちょくちょく顔を出しそう。犬井は、今回は名前だけの登場ですが、次回は?
2026.03.29
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朝ドラ「ばけばけ」も本編は昨日最終回を迎えましたが、 『セツと八雲』に続いて、ようやく本著も読み終えることが出来ました。 朝ドラ本編では、ヘブンとトキ夫妻に神戸は完全スルーされてしまいましたが、 スピンオフでは、庄田とサワ夫妻は神戸にやって来るのでしょうか? 巻末「訳者あとがき」によると、 『知られぬ日本の面影』は上・下2巻の700頁超の大作で、 収録作品は「序文」を含め27編にも及ぶとのこと。 本著は、その中からハーンの文学世界と日本理解のエッセンスがよりよく伝わって来る 選りすぐりの11編を掲載したものだそうです。 *** 宮司が手を振った。 その途端に、急に大広間の奥手から、不思議な音楽が湧き起こる。 太鼓と竹笛の音だ。 振り向くと、三人の楽人が畳に座っている。 そばに若い娘もいる。 宮司がまた合図を送ると、その娘が立ち上がる。 裸足で、雪のように純白の装束に身を包んだ娘は、神に仕える処女、巫女である。 白衣の裾からは、深紅の絹袴がちらりとのぞいている。 彼女は、大広間の中央にある小さな台に向かって、歩みを進める。 台上には、鈴をぶら下げた木の枝のような変わった道具が置いてある。 これを両手に取り、これまで見たこともない神の舞を披露し始めた。(p.145)私が本著の中で最も心に残った「巫女舞」の描写冒頭部ですが、本当に素晴らしい。これ以外にも、盆踊りの描写など、人々の様子がまざまざと目に浮かんできます。また、風景描写も秀逸で、日本海や大山、波止場、田舎道、街並み、庭園等々、これらも一つ一つ、その情景がしっかりと目の前に浮かび上がってきます。さらに、神社仏閣、学校、花鳥風月、虫の音、伝承についても詳細に記述しており、仏教、神道を始め、日本文化への造詣の深さには驚かされます。 これは、朝ドラのヘブンからは感じ取ることの出来なかったことで、本著を読まなければ、小泉八雲という人物をずっと誤解したままだったかもしれません。そして、本著を通じて明治時代の日本とそこに生きた人々の生活を知ることが出来ました。当時の人たちにとっては、スマホやSNS、AIなど想像すら出来ないものでしょうが、変わらないもの、ずっと続いてきているものも確かにあります。本著に描かれているのは、たかだか130~140年前の日本なのです。
2026.03.28
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「静おばあちゃん」シリーズの第2弾。 前回のお話から時を遡り、高円寺静が80歳の頃のお話。 東京高裁の判事を定年を1年残して退官し16年が経った静かでしたが、 各地の法科大学院の臨時講師や講演に明け暮れる日々を過ごしていました。 そして、名古屋法科大学創立50周年の記念講演で30分が経過した頃、 「あんたの講話は面白うないな」と、聴講席最前列の車椅子の老人が声を上げました。 その人物は不動産会社<香月地所>代表取締役で商工会議所会頭の香月玄太郎。 地元の名士で警察等にも顔が利く曲者、それが何の因果か数々の事件に共に関わることに。 ***第1話 二人で探偵を講演終了後の立食パーティー中、静と玄太郎が揉める中、中庭のモニュメントが爆破される。それは、彫刻家・櫛尾奈津彦が大学の補修全般を請け負う寺坂建設の発注で5年前に完成した。櫛尾はその台座部分に埋められていたが、一昨日から昨日にかけて窒息死していたと分かる。静と玄太郎は、モニュメントの発注書と櫛尾の同業者の証言から真犯人へと辿り着く。第2話 鳩の中の猫市民団体主催のセミナー講師を務めた静は、その終了後受講した男から詐欺被害の相談を受ける。 男は公民会で開かれた説明会に出席し未公開株を購入したが、1ヶ月足らずで企業は倒産した。公民館で別の説明会が開かれ、前回同様小酒井が講師を務めるが、密室の控室で首を絞められる。玄太郎と静はゴム紐を使って控室の外から犯行を再現して見せ、犯人を追い詰める。第3話 邪悪の家貸コンテナ業を営む丸亀国彦が、父親・昭三の盗癖について玄太郎に相談する。その後、昭三が万引きで警察で取り調べを受けると、玄太郎が見受け引き取り人、静は弁護人として事情聴取に同席、その後昼食を共にするが、昭三は認知症を患っている様子。さらに家では、外側から鍵を掛けられるようにした部屋からコンテナの中に盗品を運ぶのだった。第4話 菅田荘の怪事件静の高等女学校時代の同級生で菅田荘に住む清水美千代とその夫が、一酸化炭素中毒で死亡する。が、近隣の並木町でも立て続けにガス漏れ警報器が鳴動、香月地所の施工ミスが疑われる事態に。すると、玄太郎は切削機とショベルカーで道路のアスファルトを剥がしその原因を突き止める。静は美千代の甥・颯太に、その原因と菅田荘の一酸化炭素中毒との関連について話し始める。第5話 白昼の悪童建設中のビル屋上クレーンから鉄骨が落下、直撃したベトナム人作業員・グエンが即死した。玄太郎はその遺体の臍の真下に横10cm程の縫合痕を見つけ、解剖させると手術痕跡が無かった。そして、先月名古屋港埠頭で溺死したベトナム人・ホアンにも下腹部に縫合痕があったと判明。玄太郎は金村社長と対峙して悪事の全貌を把握すると、人工知能建機で金村邸に乗り付ける。 ***巻末解説によると、玄太郎は『さよならドビュッシー前奏曲 要介護探偵の事件簿』に登場し、本作はその後のお話とのこと。そして、本作はさらに『銀齢探偵社 静おばあちゃんと要介護探偵2』へと繋がっていきます。関連作が多数あって、どんどんその世界が広がっていきますね。
2026.03.28
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『あきない世傳金と銀』を読み終え、 次に読む髙田郁さんの作品として選んだのが『みをつくし料理帖』第1弾の本書。 本書については、いつもより少し丁寧めに一話ごとに記事を書いていきました。 バラバラのままでは読み返すのも大変なので、一つにまとめておきます。 ***狐のご祝儀―ぴりから鰹田麩八朔の雪―ひんやり心太初星―とろとろ茶碗蒸し夜半の梅―ほっこり酒粕汁 ***読み始めた時には、『あきない世傳金と銀』に比べると、まだまだ若さが感じられるなと思いながら文字を追っていましたが、しばらくすると、お話の流れにどっぷりとはまってしまい、夢中でページを捲っていました。流石は髙田さん! 「巻末付録 澪の料理帖」のレシピも嬉しい限りです。
2026.03.22
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『有罪、とAIは告げた』に登場する東京地裁刑事部の高円寺円判事補と、 円の交際相手で警視庁司法警察員警部補の葛城公彦が登場する 「静おばあちゃん」シリーズの第1弾。 円は大学生、葛城も巡査部長で、二人は出会って1ヶ月とういう時期のお話。 何と、警視庁捜査一課・犬養隼人も葛城の5歳年上の先輩として登場します! ***第1話 静おばあちゃんの知恵連休明けの5月6日未明、横浜港埠頭コンテナターミナル近くの裏路地で、神奈川県警組織犯罪対策課長・久世達也(38)が、警察の用いる拳銃で至近距離から撃たれた。弾丸は鎖骨下から進入、胸骨を破壊後心臓を貫通し、各器官を潰した末に腰部に留まって即死。弾頭に刻まれた線条痕から、銃の持ち主である組対課長補佐・椿山道雄(34)が逮捕された。神奈川県警は、かねてより暴力団・宏龍会と癒着を噂されていたが、警視庁からやって来た椿山が、赴任早々宏龍会のNo.4とNo.5を検挙する。宏龍会は、椿山を牽制するべく久世に圧力をかけ、県警で四面楚歌の状況に追い込んでいた。葛城は、無実を訴える元上司・椿山を救うべく、円の助けを受けながら、線条痕の刻まれた弾頭を用い、椿山を犯人に仕立て上げた人物へと辿り着く。第2話 静おばあちゃんの童心両親を電車事故で失った朝倉美緒(19)は、母方の祖母で資産家の喜美代の養女になっていた午後1時10分、美緒が祖母宅に着くと、玄関先では生協の配達員が10分間立ち往生していた。チャイムを押しても返事がないと言うので、美緒が合鍵で開錠すると喜美代は居間で死んでいた。後頭部を花瓶で殴打されてのことで、死亡推定時刻は午前10時から午後1時までの間だった。が、美緒だけでなく伯父・健郎、伯母・洋絵夫婦とその息子・雄治にもアリバイがあった。喜美代は殺害された日、トレードマークのつば広帽子を被り、銀座界隈をあちこち巡っていた。家を出たのが10時、最初の目撃が11時、最後の目撃が11時50分、帰宅は早くて12時50分。そして、殺害現場に残された雑誌は、十数ページが破り取られていた。これらの事実から、葛城は関係者たちを前に、真相を解き明かしていく。第3話 静おばあちゃんの不信<至福の園>に入信した釘宮亜澄は、その熱心さから他の7人の世話係と共に祈禱所の中にいた。そこには、教祖・総領龍人(45)が横たわっていたが、その妻・弓子に促され、教祖の傍へ。その手首に親指の腹を当てても脈拍はなく、瞳孔は開き 胸板に耳を当てても鼓動は聞こえない。が、一旦外に出て師父復活の儀を終え、再度祈禱所に入ると教祖は紫の作務衣ごと消えていた。葛城は、警視庁警備部長・釘宮の一人娘・亜澄奪還のため<至福の園>へ潜入捜査を命じられる。さらに、円も単身潜入、亜澄との接触に成功すると、その目前でトリックを再現して見せる。それは、レーシングスーツ専用のプロテクター、ピンポン玉、散瞳薬を用いたもの。しかし、その様子を弓子と広報部長・鷹司兵堂に見られてしまい、絶体絶命の危機に……第4話 静おばあちゃんの醜聞来年春の竣工を目指し工事中の新名所東京スーパータワーは、高さ634mの世界一の電波塔。そのタワークレーン運転席で、須見田が苦悶の表情を浮かべ上半身がカメラに被さった。第4班監督・土岐亮平が駆け付けると、須見田の腹には大型カッターナイフが刺さっており、カッターナイフには、もう1機のタワークレーンを運転をしていたパウロの指紋が付着していた。葛城は本所署強行犯係・三枝と共に捜査に当たるが、三枝の結論ありきの姿勢に危うさを感じる。葛城が供述調書を提出しようとする三枝を食い止める中、円が犬養と共に本所署に現れる。円が届けたのは、死体検案書と鑑識報告の追加分で、須見田は一酸化炭素中毒で昏倒しており、それを引き起こしたファンヒーター灯油タンクへの劣化灯油注入は、パウロには不可能だった。 ***日本で二十番目の女性裁判官・静は、一審で死刑判決が出た裁判の二審で高裁裁判長を務め、一審支持の死刑判決を下すと、弁護側上告は棄却され死刑確定、被告は収監後刑務所で首を括る。その1年後、別の事件の被疑者がその事件の犯行を自供、静はマスコミに醜聞を書き立てられる。世間から大いに叩かれる中、静は無実の男性に謝罪すべく、二十数年前に退官した。円が中学2年生の時、一緒に歩いていた両親が警察官・三枝光範が運転する車に轢かれ死亡。 その際、円は車の運転者と言葉を交わし、酒の匂いを感じるが、検査で飲酒の事実は認められず。さらに三人が歩道をはみ出していたとして、三枝は過失致死で執行猶予付きの懲役2年5カ月に。 事故後、円は祖母に引き取られ、滝沢から高円寺に姓を変えて育てられた。そして今回、三枝と対面することになった円は、三枝はあの時の運転者ではないと感じる。第5話 静おばあちゃんの秘密2月10日午後11時、ホテル17階のスイートルームから乾いた銃声が聞こえた。同じフロアには、ドアを開け放った各自の部屋でルームサービス到着を待っていた3人の護衛官、フロント係と内線でやり取りをしていた大統領夫人、警視庁の藤堂と打合せ中の護衛隊長がいた。護衛隊長が客室係の持っていた合鍵でドアを開けると、国賓の大統領が額を撃たれ倒れており、ベッド近くの床には拳銃が、ベッドの上には携帯電話が残されていた。暗殺事件を担当することになった葛城は、円に会った際、両親が亡くなった事故について、車を運転していたのは三枝ではなく、彼はその所有者を庇っているのではないかと告げる。そして後日、暗殺事件関係者を集めた場で円が事件を再現して見せ、この一件は落着。さらに、自動車事故関係者を高円寺家に集めると、遂に静がその姿を現したのだった…… ***ミステリー評論家・佳多山大地さんによる巻末「解説 祖母は何でも知っている」にあるように、お話の最後は、誰も思いもよらないまさかの展開で幕を閉じることになります。そして、七里さんの『テミスの剣』は、本書第4話に出て来た冤罪事件を扱った作品とのこと。こちらも、いずれ読ませてもらうことになるでしょう。
2026.03.22
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タイトルからイメージした内容とは随分異なり、その何歩も先を行く一冊でした。 読書前は、「論破という病」に侵された現状について分析・考察したうえで、 最終的に将来に向けての自論を語るという流れの一冊を予想していたのですが、 実際には、紙幅の大半を”将来に向けて”を語ることに費やしています。 副題は『「分断の時代」の日本人の使命』。 著者は経営コンサルタント兼思想家の倉本圭造さん。 ***20世紀型の「論破という病」に毒された状態では、現状認識自体が「自分たち善人と悪のあいつらとのたたかい」になってしまい、複雑な現象を過剰に単純化した二項対立でしか理解できなくなってしまうと著者は述べ、党派的な「敵」ではなく、問題自体と向き合うことの必要性を説いていきます。例えば、アベノミクスの実績について、野党支持者と与党支持者の見ている世界は異なるが、双方共に現実であり、同じものでも見る角度が違えば違って見えるとした上で、次のように述べます。 ・アベノミクスがなぜあの当時の日本には必要だったのかをフェアに理解する ・結果として今はどういう課題が立ち現れてきているのかも理解する ・アベノミクスを必要としていた事情への手当てをした上で、 どうすればその先の課題を解決できるのか考える ……という「メタ正義的」姿勢で、 党派的なあの「敵」ではなく、問題自体と向き合うことが必要です。 現状認識の時点で「20世紀型の論破芸」になっていたら、 その先のメタ正義的な解決など作り出しようがないということなのです。(p.78)「メタ正義感覚」は、相手が持つ正義も自分が持つ正義も、両方を尊重する世界観で、「ただ足して2で割った妥協策」ではなく、「自分的にOKな方法で、相手の正義の存在意義を尊重するにはどうすればいいか?」を考えるのコツだと述べています。このように、「メタ正義的」姿勢で問題自体と向き合うことの必要性、重要性について、全編に渡って丁寧に力強く述べられている本著は、これからの時代を、実際にどのように生き抜いていくかを考える時、とても大きな示唆を与えてくれる一冊になっています。
2026.03.20
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最後のお話の冒頭は、連日大繁盛で賑わうつる家に、 夜になって吉原翁屋の料理番・又次が訪れるところから始まります。 「とろとろ茶碗蒸し」が売り切れてしまったため、澪が上方を偲ぶものを作ると、 又次は、料理の届け先が翁屋のあさひ太夫だということを明かしたのでした。 ***つる家の近くに「登龍楼」が新しく店を開き、茶碗蒸しを出すようになると、客足が鈍る。芳が「登龍楼」にそれを食べに行くと、合わせ出汁が用いられていたことで激昂、板場で板長を猿真似呼ばわりすると、板場衆らに乱暴に叩き出されてしまう。その後、客足は回復の兆しを見せたものの、地廻りと思しき連中が店の前をうろつき始め、それに対し、又次が物申してくれたものの、付け火により店は焼けてしまう。後日、又次があさひ太夫への弁当を作って欲しいと訪れるが、持参された弁当箱の蓋を開けると、そこには小判十両と共に「雲外蒼天」の四文字だけが記された文が入っていた。あさひ太夫の正体が野江であると思い至った澪は、元旦から屋台見世を出し酒粕汁を売ることに。屋台見世は初日から大繁盛となるが、またしても「登龍楼」が酒粕汁を商い始める。その後、正気を取り戻した種市が、澪に蓄銭を差し出し、別の場所で店を再開して欲しいと頼む。やがて、酒粕汁はつる家勝利との評価が定まると、また地廻りが屋台見世の周りをうろつき始め、澪は薄闇の中で争う男二人を見かけることになるが、次の言葉は小松原が発したものだった。「これ以上、あの店に構うな。土圭の間の小野寺がそう言っていた、と采女に伝えよ」後日、店を訪れた又次に、澪が酒粕汁の汁を詰めた徳利と具を入れた弁当箱を手渡した際、弁当箱の上に置いた袱紗の中には、四両と「旭日 昇天さま 感謝」と綴った文を入れていた。 ***これで、「あさひ太夫」と「野江」が同一人物であることは、ほぼ確定しました。また、小野寺の言葉の中の「采女」とは、登龍楼店主・采女(うねめ)宗馬のこと。『あきない世傳金と銀』で言うと、音羽屋忠兵衛に当たる人物でしょうか。そして、「土圭の間の小野寺」が小松原の正体なのでしょうが、一体何者?
2026.03.15
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さて3つ目のお話も、江戸と上方の違いが焦点に。 江戸では、初夏の初鰹は持てはやされるのに、秋の戻り鰹は見向きもされません。 大坂ではむしろ脂の乗った戻り鰹が好まれ、澪もそちらを好んでいたことから、 猫跨ぎと呼ばれた戻り鰹を、棒手振りから信じがたいほどの安値で買い付けます。 ***腰の具合が悪く、蕎麦打ちが続けられなくなった種市は、澪に雇われ店主になってくれと頼む。澪は、汁物・旬のお菜・炊き込みご飯の三品を日替わりで出すが、2日間客は来なかった。そこで、戻り鰹で作った鰹飯を俵型に握り、「はてなの飯」として道行く人に無料で振る舞う。すると、味見をした人々が連なって暖簾を潜り始め、以後、鰹飯は飛ぶように売れ始めた。しかし、その夜現れた小松原は、豆腐と菊花の澄まし汁を口にすると、「料理の基本がなっていない」と、厳しい言葉で切り捨てる。芳の助言で、小松原が出汁について指摘していると気付いた澪は、日本橋「登龍楼」に足を運ぶ。そこで、吸い物ひと椀を注文した後、鰹節商に立ち寄って手代の青年から使い方を教えてもらう。さらに、源斉の一言から昆布出汁と鰹出汁の旨みを合わせることを思いつく。合わせ出汁を完成させた澪は、それで大坂風茶碗蒸しを作り、鰹飯の注文客に一斉に振る舞う。そして、翌日から「とろとろ茶碗蒸し」を商うようになると、客が途切れることがなくなる。後日、吉原・翁屋の料理番・又次から、ある人のためにと持ち帰り用の茶碗蒸し作りを頼まれ、さらに、その人への土産話も請われた澪は、新町廓の足洗の井戸での出来事を話す。以後、持ち帰り用の茶碗蒸しが大評判を呼び、飛ぶように売れ、他店が真似しても全く及ばない。そして、師走最初の日、例年浅草の版元が売り出す料理屋の番付表には、大関・登龍楼の横、関脇の欄に「神田御台所町つる家とろとろ茶碗蒸し」と書かれていた。 ***種市の腰の具合が悪くなったのには、江戸の流し台の位置が低いことが関係していそうでした。その流し台の位置を立ち仕事に合わせ変えてくれたのが、澪の向かいに住む大工の伊佐三。その妻・おりょうは、つる家が忙しい時には長屋のおかみさんたちと一緒に手伝ってくれます。そして、夫婦は火事で身寄りがなくなり、あまり口がきけない太一を引き取って育てています。
2026.03.15
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さて、2つめのお話は、本著タイトルにもなっている『八朔の雪』。 八月朔日、通称「八朔」は、吉原の遊女が白無垢姿で客を迎える紋日で、 趣向を凝らした「俄」という見せものを見に江戸中から見物客が押し掛けます。 舞台上で踊る白装束に狐面の七人の女たちは、各見世の最高位の遊女たちでした。 ***吉原の「俄」見物に種市、源斉と出かけた澪は通行証を紛失、大門脇の会所に連行されるが、源斉の患者である翁屋楼主・伝右衛門の口添えで、一緒に連行されていた老女と共に解放される。その老婆の好意で、三人は掛け茶屋で心太を食べることになるが、澪は上方と江戸の違いに驚き、幼馴染の唐高麗物屋「淡路屋」末娘・野江との新町廓『足洗の井戸』での出来事を思い出す。その時出会った水原東西という易者が、野江を天下取りの『旭日晴天』の相、澪を艱難辛苦に耐え精進を重ねれば、澄んだ青い空を望むことが出来る『雲外蒼天』の相と占う。8歳の澪の目前で両親が濁流に飲まれた時、淡路屋も店ごと流され、誰一人助からなかったが、野江は親戚と名乗る人に引き取られたという噂もあった。一人残された澪は町を彷徨い、屋台見世で穴子の押し寿司に手を伸ばすと、店主に足蹴にされる。それを止め、店に連れ帰り重湯を食べさせ、両親の行方を探してくれたのが芳と嘉兵衛だった。父・伊助が作った漆塗りの箸を天満一兆庵でお客に出していた縁で、澪はここで奉公する。料理の味が突然落ちた時、澪が店の井戸の水質の変化に気付くと、嘉兵衛は澪を板場に入れた。が、板場に入って5年、本格的修業を始めようという時に隣家からの貰い火で一兆庵は焼失する。澪が賄いで天草から作った磯の香豊かな心太を、種市が十食限定で出すと瞬く間に売り切れる。種市は、心太を8月15日まで出し続け、最終日には客の要望に応えいつもより数多く提供した。その夜、最後の客を送り出した後、澪と源斉は床几に座り、月を見ながら心太を食べる。その際、源斉は酢醤油ではなく「唐三盆」という真っ白な砂糖をさらさらと降りかけた。 ***透明な心太の上に乗った白い砂糖が、白い月の光に照らされ雪のように映った時、隣で飲んでいた種市が、こんな風に言います。「こいつはまるで雪ですね、日にちこそずれちまったが、まさに『八朔の雪』だ」因みに、八月朔日に吉原の遊女たちが白無垢を着ている情景を『八朔の雪』と言います。
2026.03.15
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髙田郁さんの『あきない世傳金と銀』を読み終えたので、 次は『みをつくし料理帖』を読むことに。 そのシリーズ第1弾が『八朔の雪』。 この巻はシリーズのベースとなるものなので、お話を一つ一つまとめておきます。 ***享和2(1802)年7月1日、長雨で淀川が決壊、塗師の父・伊助と母・わかを濁流に奪われた澪。その後、大阪でも名の知れた料理屋「天満一兆庵」に女衆として奉公することに。主人・嘉兵衛は女将・芳の反対を押し切って澪を板場に入れ、仕事を仕込む。そして、店が火事で焼けてしまうと、芳と澪の3人で息子の佐兵衛を頼り江戸店へと向かった。しかし、佐兵衛は吉原通いに明け暮れ莫大な借財を負い、江戸店を手放して消息を絶っていた。嘉兵衛は心労で寿命を縮め、江戸に再び暖簾を掲げることを澪に託し、宿の一室で息を引き取る。澪は芳と共に神田金沢町の長屋に住み始め、雑草が生い茂り朽ち果てた「化け物稲荷」を発見、周囲4か所の辻番に相談しても埒が明かず、働きに出る前に早朝から昼まで毎日通い手入れする。その様子を見ていた神田明神町下御台所町の蕎麦屋「つる家」店主・種市は、握り飯を差し入れ、一人娘・つるの祥月命日に出会った澪に、自分の店で働いてくれないかと声をかける。澪が作った深川牡蠣を使った白味噌の土手鍋や時雨煮は、江戸の客の好みには合わなかったため、稲荷で出会った神田旅籠町の医師・永田源斉の助言で、塩けが強く味の濃いものを作るように。しかし、常連客の小松原は、他の客に好評だった帆立貝の焼き物を口にすると、甘い白味噌の鍋や色白の牡蠣の時雨煮が恋しくなると言い放つ。安くて美味しく、店を出ても楽しんでもらえるものをと、鰹節の出汁がらを使い鰹田麩を作ると、小松原はその小鉢の中に七色唐辛子を振り入れてみせ、そこに澪がさらに工夫を加える。こうして完成した「ぴりから鰹田麩」は、巷の評判となった。 ***「化け物稲荷」には、一体の神狐がありましたが、耳が欠け、尾が折れ、苔むして満身創痍。しかし、その瞳が懐かしい友・野江のものにそっくりだったことから、澪は何とかしたい、何とかせねばと、お参り出来るよう祠まで道を作り始めたのです。そして、ここが種市や源斉、小松原と結びつくきっかけの場所となったのでした。
2026.03.15
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2013年1月、6年生の息子さんが通う小学校でPTA会長を務めていた今関さん。 会長職もこれが3年目で、少なからず改革も進めてきていたとのこと。 一方、3年生の娘さんが通う中学校では、年末に教頭先生が急逝、 3学期から教育委員会に勤務していた福本先生が新教頭として赴任しました。 そして4月、息子さんが中学校に入学すると、今関さんはそのPTA副会長に。 1学期末の個人懇談会でアンケートを実施すると、2学期には来年度の方針を決定、 組織の見直しを図り、その実施に向けて着々と準備を進めていかれました。 2014年4月には福本先生が新校長となり、役員なら誰でも参加できる運営委員会もスタート。息子さんが3年生となった2015年には、今関さんがPTA会長に就任、PTA改革を検証しながら不具合を修正し、しっかりと軌道に乗せていかれました。一方、福本先生は2016年には教育委員会事務局に異動となり、2017年には校長として2校目の中学校に赴任、そこでもPTA改革に努められました。 ***PTAの在り方が問題となっていた当時、他校に先立ち改革を進めていかれた様子が、PTA会長と校長という二つの立場から詳しく記されています。現在、PTAに関わっている方たちにとっては、大いに参考になると思いますし、かつてPTAの活動に関わったことがある方なら、懐かしさを感じることでしょう。なお、神戸市教育委員会事務局が行った令和7年6月の調査では、(1)学校行事の支援や会議などの回数・人数のスリム化に取り組んでいるPTA等が多い。(2)すぐーるを有効利用している学校が多い。(3)全学校園のうち、PTA等の組織がある学校園は約79%。 組織のない学校園においても学校行事の都度、 ボランティアを募集するなどして活動をしているところがある。※「すぐーる」は、令和3年4月より神戸市教育委員会が全学校園に導入している連絡ツール。 主な機能として、学校等からの連絡受信機能、遅刻・欠席連絡機能などがあります。との結果が出ていますが、幼稚園は28園中1園、小学校は163校中29校、中学校は82校中25校、特別支援学校は6校中5校にPTA組織がなく、令和6年度に比べると、PTA組織がない小学校・中学校は、それぞれ5校増加しています。
2026.03.07
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子供たちの進む先で発生した火災はジンベエが鎮火。 しかし、ナミ、ウソップ、ブルックと共に、軍子とソマーズに捕らえられる。 ソマーズは、巨人族を戦闘奴隷にするため、9人の子供たちとコロンを人質にして、 ヤルルに図書館を燃やし、忠誠を誓うことを迫る。 ロビンに激しく攻撃されても、脅迫を止めようとしないソマーズ。 苦渋の決断を強いられたヤルルは、アンジェに図書館を燃やすよう命じる。 そのソマーズをスコッパー・ギャバンが倒すと、軍子に迫る。 しかし、コロンを盾にされてしまい、ギャバンも無念の降参、冥界へと落ちていく。そして、軍子の「黒転支配」で悪魔と化したドリーとブロギーが、自分たちが王となるべく、手下たちと共にヤルルのもとへと向かうのだった。一方、冥界では、ルフィたちがシャンクスの居場所を知るため、ロキの回復を図っていた。そこへ、スコッパー・ギャバンとチョッパーが現れ、陽界の状況を伝える。そして、ギャバンに促され、ロキが14年前の真実について語り始める。帰城したロキがヤルルと共に広間に向かうと、そこで大虐殺事件が…… ***109年前、クズだった国王・ハラルドが、イーダとの出会いで人間族への認識を改める。81年前、そのイーダとの間にハイルディンが生まれるが、「南の海」サムワナイ島の生まれであるイーダとの結婚は認められなかった。そして63年前、古代の血を宿す王妃・エストリッダとの間にロキが生まれる。しかし、母親であるはエストリッダは、その異形を見て息子を遠ざける。さらに、悪災の全てを「ロキの呪い」として吹聴し、我が子を嫌い苦しみながら亡くなる。48年前、ハラルドは歴史に名を残す王となっていたが、その遠征中、心に闇を抱えたロキはエルバフで暴れまわり、ハイルディンを貶める。そんなロキの前に、黒ひげの父・ロックスが現れ、ハラルドを呼び戻すよう迫る。帰還したハラルドにロックスは仲間になるよう誘うが、ハラルドがその話に乗ることはなかった。 ***前巻でロキがハイルディンに言った言葉は、口から出まかせではありませんでした。これで、兄弟がルフィたちと共に「神の騎士団」に挑む体制が出来上がりました。それにしても、今回のお話のキーパーソンが黒ひげの父親だったとは……シャンクスの件と言い、驚きが多いですね。
2026.03.07
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1「なぜ質問」 なぜそんなミスをするの? 2「どう質問」 今度のお仕事はどうですか? 3「いつも質問」 いつも誰に相談していますか? 4「意見を聞く質問」 どうお考えですか?どうして解決しないのですか? 5「問題を聞く質問」 どんなことにお困りですか?(p.97) これらの質問はすべて「思い込み質問」で、良くない質問。 なぜなら、「思い込み質問」は、次の3つの「会話のねじれ」を引き起こしてしまうから。 1 「思い込み」を引き出し、誤った問題認識や課題分析に繋がる → 後述の「空中戦」を引き起こします。 2 相手の言い訳を誘発する → 特に「なぜ質問」に顕著です。 3 相手に「忖度」を強要する → 力関係が強い場合、特に起こりやすくなります。(p.54)すべての質問は、次の3つに分けられると著者は述べています。 ① 「朝ごはんは何が好きですか?」 感情質問=気持ちや感情を尋ねる ② 「朝ごはんにはいつも何を食べますか?」 思い込み質問=意見や考えを尋ねる ③ 「今朝は何を食べましたか?」 事実質問=事実を尋ねる (p.65)先述のように、「思い込み質問」は「空中戦」を引き起こします。「空中戦」とは解釈がぶつかり合い、抽象的で観念的な上滑りした実りのないやりとりのこと。この状態を、常に事実に基づいて進められる、地に足の着いたやりとりである「地上戦」に。そのためには「思い込み質問」を「事実質問」に変えていく必要があり、その作り方は、 ①時制を過去形・現在進行形に変える 「しますか?」ではなく「しましたか?」「今~していますか?」とする。 ②時間・主語を指定する 「普段は?」ではなく、「今日は?」「一番最近は?」に置き換える。 「貴社の皆さんは」ではなく「あなたは?」「○○さんは?」に置き換える。(p.141)そして、「事実質問」の技術的ポイントは、 ・考えさせるのではなく、思い出させる質問をすること ・相手の答えの上に次の質問を継ぐこと ・相手にとって答えやすいかどうかを、常に自らに問いながら質問を作ること(p.180)さらに、「事実質問」による「分析と解決の公式」も紹介しています。 ⓪相手の回答を自分の言葉で言い直すのは厳禁 ①「問題」を語り始めたら、「いつ?」から始める ②「そもそも解決したいの?」と聞きたくなったら、「これまでに何か対処した?」と聞く ③「どうしていいかわからない」と言われたら、「他の誰かに聞いてみた?」と聞く ④「本当に問題なの?」と聞きたくなったら、「誰が、どう困ったの?」と聞く ⑤「一体なぜその選択をしたの?」と聞きたくなったら、 「他にどんな選択肢があったの?」と聞く ⑥「○○が足りない」と言われたら、「いくら/いくつ足りないの?」と聞く ⑦「できない」と言われたら、「それをやるのは、誰が決めたんですか?」と聞く ⑧「わかっているのにどうしてやらないの?」と言いたくなったら、 「軽く微笑みながら、しばらく相手の目を見つめる」(p.204) *** このように、事実質問による対話は、仕事上はもちろんのこと、 友人、家族、職場の同僚など日常の人間関係においても効力があります。 ここでよく出る質問に「事実だけ聞いていくと、刑事の尋問のようになり、 相手に怪しまれてしまうおそれはありませんか」というのがあります。 実際にそうなって困ってしまったというケースも多いようです。 これは事実質問が行き詰まる典型的なケースのひとつです。 この不安が克服できないと、質問を続けるのを躊躇してしまいますよね。(p.170)本著を読み進める中で、私が最も懸念したのが、まさにこの点でした。しかし、著者はこの不安をどのように克服していけば良いかについて、この後、ひとつひとつ丁寧に指南してくれています。
2026.03.07
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副題は「分断社会を読み解く7つの視点」ということで、 黒猫ドラネコさんによる「陰謀論と排外主義の現在地」、 山崎リュウキチさんによる「『熱狂』を生み出す仕掛け」、 古谷経さんによる「近代に取り残された人々」、 藤倉義郎さんによる「カルトと陰謀論・排外主義の結節点」、 選挙ウォッチャーちだいさんによる「選挙の現場を侵食する陰謀論と排外主義」、 清義明さんによる「『名無しのQ』とは誰だったのか」、 菅野完さんによる「癒しの日の丸」という7つの論考をまとめて掲載した一冊。 ちなみに、巻頭「はじめに」は、藤倉義郎さんが、 巻末「あとがき」は、菅野完さんが記されています。筆者は、ウェブライター、作家・評論家、フリーライター、著述家等の方々のようですが、私が知っていたのは、『日本会議の研究』の著者である菅野完さんだけでした。(その書籍については、本著p.218でも触れられています)そして、本著も『日本会議の研究』と同様、扶桑社新書の一冊です。 ***本著にしばしば登場するのが『参政党』とその党首・神谷さん。その政治団体のルーツや勢力拡大の様子について、随所で記されているのですが、このことについて知っている人は、実はあまりいないのではないかという気がします。そういう私自身が、『参政党』に関する記述が出てくるたびに、驚きの連続でした。また、三浦春馬運動や斎藤元彦再選運動等に見られた実態を「推し活」「虚投射」と関連付けた論考も、実に興味深いものでした。さらに、「クルド人問題」については、 実際、川口市でも蕨市でも 「素行の悪いクルド人が大暴れしている」という事実はない。(中略) クルド人にまつわるデマは、ネトウヨに留まらず、 かなり広く一般層にまで浸透している。(p.147)と記されていることも踏まえて、本著を読み進められると良いと思います。
2026.02.27
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『全面改訂 第3版 ほったらかし投資術 』を購入した際、 バランスをとるために購入したのが、2024年10月発行の本著。 帯には「政府・マスコミの欺瞞があなたの老後を奴隷にする」とあります。 著者は、昨年亡くなられた経済アナリストの森永卓郎さん。 *** いま多くの経済評論家やマスメディアが展開している老後生活に関する議論には、 12の特徴的な神話が含まれている。 6つの投資関連、そして6つのライフスタイル関連だ。 それらはすべて欺瞞、つまりウソだ。(p.12)いきなり激しくケンカ腰ですが、まず6つの投資関連の神話とは、 ① 年金の不足は投資で補う ② 分散投資でリスクは回避できる ③ 長期積立投資で利回りは預金を上回る ④ 国内よりも成長性の高い米国株に投資すべき ⑤ 専門家に任せておけば投資はほったらかしでよい ⑥ 株価が下がったときこそ投資のチャンス(p.12)いきなり、『全面改訂 第3版 ほったらかし投資術 』に書かれていたことに大ダメ出し!この6つの神話の誤りをズバズバと指摘していきます。そして、日経平均株価が1989年12月29日に3万8915円まで上昇し当時の最高値を記録、それが3万2000円程度まで下がった時、森永さんは「調整は終わった」と判断すると、預金のかなりの部分を日経平均連動の投資信託に投じますが、さらに日経平均は下がり続け、バブル期に稼いだカネが泡と消えてしまった経験から、次のように述べています。 今後の日本経済で同じことが起こる可能性は極めて高いと私は考えている。 だから、いまやるべきことは、投資からの撤退であり、新規参入ではない。 泥船に乗り込んではいけないのだ。(p.50)次に、6つのライフスタイルの方はと言うと、 ① 大都市は魅力に溢れている ② 電気は電力会社から買えばよい ③ 食料もカネで買えばよい ④ 東京は安全で安心な街 ⑤ 働き続けて健康と生きがいの一石二鳥 ⑥ 都落ちなんてできない(p.58)そして、老後の生活設計のポイントとして、次の6つを挙げます。 ① 収入増ではなく、生活コスト減 ② 投資から手を引く ③ 嫌な仕事をしない ④ 太陽パネルで電気代をタダにする ⑤ 食料はできる限り自分で作る ⑥ 最終目標は住民税非課税世帯(p.86)森永さんは、東京を離れて埼玉県所沢市の西端のトカイナカに拠点を移し、近隣で農園を借りて主要野菜20種以上にイチゴやスイカ、メロンまで栽培していたそうです。そして、投資については次のように述べています。 それでは、老後資金をどのように運用すれば良いのか。 私は、若い人はiDeCoを活用すべきだと思う。(中略) 一方、高齢者や高齢期が間近な中高年はどうすればよいか。 私は、預貯金を続けるしか方法がないと思う。(p.102)インフレから資産を守るための選択肢としては、物価連動国債を組み込んだ投資信託(例えばMHAM物価連動国債ファンド)を挙げていますが、バブルがはじけた後には必ずデフレがやってきて、元本保証の預貯金価値は確実に上昇するので、そこまでインフレヘッジが必要だとは思っていないとも述べています。本著に記された様々な事柄の根本には、森永さんの次の思いがあると強く感じました。 現在、国が音頭をとって進めている「貯蓄から投資へ」という政策は、 「真面目に働き、老後に備えて貯蓄をする」という誠実な日本人を 「老後資金をギャンブルにつぎ込んで一攫千金を狙う」という ギャンブル依存症の病人に変えようとしている。(p.98)
2026.02.23
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オリジナル版が2010年、そして改訂版が2015年に発行され、 この全面改訂第3版第1刷は2022年3月、私が読んだ第15刷は2025年3月の発行。 なので、本著に記されている内容は既に4年以上前の情報ということになります。 著者は経済評論家の山崎元さんと都内IT企業に勤務する水瀬ケンイチさん。 *** 一つ目は、個別株投資は生活に支障をきたすということです。 これは個別株投資自体が悪いのではなく、おそらく自分の性格に原因があると思うのですが、 四六時中、株のことが気になってしまうのです。(中略) 分析というのは、いくらやってもキリがありません。 特に、投資銘柄の四半期決算の後は、 決算短信を読み込むことで土日は丸々つぶれてしまいました。(p.27)この箇所を読んで、私もそうなってしまうだろうなと感じると共に、先日読んだ『コメンテーター』の中の「うっかり億万長者」に登場する河合保彦の姿を思い浮かべてしまいました。まぁ、彼はデイトレード一本で暮らしていましたが。さて、投資のプロが銘柄選定して投資タイミングを見計らって売買する「アクティブ運用」と、多くのインデックス運用が該当する市場平均に淡々と連動するだけの「パッシブ運用」とでは、アクティブ運用のファンドの7~8割がインデックスに負けていると気付き、水瀬さんはインデックス投資家に変身、自分らしい生活に戻ることが出来たと言います。 そして、p.44~45には「ほったらかし投資術」実行マニュアルが掲載されており、そこでは、「無リスク資産」は「個人向け国債変動金利型10年満期」又は銀行預金(1人1行1000万円の範囲を守ること)で持つ、「リスク資産」は全て、全世界の株式に投資するローコストな(手数料の安い)インデックス・ファンド(「eMAXIS Slim全世界株式(オールカントリー)など)に投資する、iDeCo、NISA、つみたてNISAなどを最大限に利用し、これらの口座の運用商品選択は全世界株式のインデックス・ファンド(又はそれに準ずる商品)とすることを推奨しています。「無リスク資産」は「個人向け国債変動金利型10年満期」又は銀行預金で持つという部分は、現時点で投資をする予定のない者にとっても、有益な情報ではないかと思います。もちろん、銀行預金は、1人1行1000万円の範囲を守るということについても、複数の銀行口座に分けて維持管理するのは面倒、とか言っててはダメなんでしょうね。 世間では「投資しないと、老後の資金が足りなくなって、不幸な老後になる」と 脅す人が少なからず存在しますが(主に金融ビジネスの関係者です)、 計画的にお金を貯めて、支出するなら、老後の生活破綻の心配をする必要はありません。 人は、投資をしなくても幸せな人生を送ることが十分可能です。 投資は「やらなければいけないもの」ではなく、 「やると有利だと思った人がやるもの」というのが、 「ほったらかし投資術」の基本思想です。(p.50)「まぁ、やってもやらなくても別に良いんだよ」と言ってくれてるわけで、迷っている者にとっては、リラックスして臨むことが出来る有難いお言葉です。 仮に運用管理費用に年率0.1%の差があったとしても、 1000万円の投資額に対して年間の差は1万円です。 「どうせ選ぶなら手数料等のコストは小さい方がいい」と思って 運用会社による手数料引き下げを大いに評価する一方で、 この程度の差を「微差」と呼んで容認する程度に著者達は大らかです。 大差のないものに対して強くこだわるのは、投資以外にあっても無意味でしょう。(p.91)確かに、投資以外の様々な場面でそういうことは言えるんだろうなと思いました。1000万円の0.1%は1万円、それを大きいと捉えるか、大したことないと捉えるか。 投資家が一番知りたいのは、将来の儲けの期待値に直結する期待リターンですが、 期待リターンに関しては、「過去の延長を将来の予想とする」アプローチは 全く役に立ちません。(中略) 「リスク・プレミアムはおおよそこれくらいだろう」といった常識や、 「機関投資家はどのような予想を持っているか」といった情報から推測する以外に、 プロも個人も含めて投資家にとって可能で有効な方法はありません。(p.126)これも、直球ど真ん中の当たり前のことを言ってるのですが、スゴイ。こういう箇所に、著者の誠実さを強く感じます。 例えば、25歳から年間250万円を投資に回し、250万円で生活したAさんと、 100万円を投資に回して400万円で生活したBさんは、18年後の43歳時点で(中略) Aさんは6250万円、Bさんは2500万円を持っています。 もちろん、Aさんの経済的余裕と金融的独立を評価する考え方を持つ人もいるでしょう。 しかし、他方で、年間150万円支出が違う生活を18年続けたことの効果が無視できません。 150万円の差が丸々教育費的な自己投資になっているとは限りませんが、 Bさんの方がAさんよりも、この間スキルに多く投資していたり、 豊かな経験を持っていたり、 良い人間関係(人付き合いはお金と時間を必要とする「投資」です)を 持っていたりする可能性が小さくないように思われます。(p.166)ここも、本著の著者が信頼に足る人たちだなと思える箇所です。「人付き合いはお金と時間を必要とする『投資』です」は、けだし名言。
2026.02.22
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最初、読み始めた時は、まるで行政の刊行物を読んでいるような感じで、 ページを捲るペースがなかなか上がりませんでした。 しかし、生田川や湊川の付け替えに関する記述辺りから徐々に勢いがつき始め、 戦後の焼け跡を生きた人々の声が紹介され始めると、一気に読み進めていきました。 副題が「戦災と震災」なので、その様子を描いた一冊だと思っていたのですが、 読み進めていくと、私が描いていたイメージとは少々色合いが違うことに気付きました。 そこで、著者・村上しほりさんの経歴を見直してみると、専門は都市史・建築史とのこと。 なるほど、そういう視点で神戸について記したものだったのかと合点がいったのでした。 *** 結果的に、神戸市内でも重要施設とみなされた工場や建築物の周りでは、 県知事による疎開空地の指定や防空法による除去命令が出された。 多くの木造家屋が引き倒され、防火帯を作る作業が進められた。(中略) 建築物の疎開は、人員疎開と異なり防空法による強制力があった一方で、 除去建物は県が買収・除去し、土地は所有者の選択に応じて県が買収か貸借して、 移転費や補償費が支給された。(中略) こうした疎開事業のために、戦時下神戸では約2万2000戸の建物が失われた。 これは全国的に見ても、東京都区部の約20万4000戸、大阪市の約7万2000戸、 名古屋市の約2万9000戸に次ぐ4番目の多さだった。(p.109)「疎開」と言えば「人員疎開」しか知らなかった私にとって、この「建物疎開」の記述は、かなり衝撃的なものでした。さらに空襲で焼け跡が広がり、戦後占領期には接収が行われ、その後の戦後及び震災復興事業や都市改造事業でも、多くの利害衝突が生じたことでしょう。こういった歴史の積み重ねの上に、現在の神戸の街があるということがよく分かりました。そして、本著を読むことで、何故六甲道や新長田で重点的に再開発事業が行われたのか、さらに、現在も三宮を中心に様々な場所で再整備が進められているのかも分かりました。知っていて眺めるのと、知らずに眺めるのとでは、街の景色は全く違って見えるものですね。
2026.02.21
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2015年に出版された『日本美のこころ』と 2019年に出版された『日本美のこころ 最後の職人ものがたり』を加筆修正し、 文庫として1冊にまとめたもの。 巻末「あとがきに代えて」によると、元々は雑誌『和樂』の連載記事とのこと。 彬子女王が各地に赴かれ、「日本美のこころ」を体現する様々な「もの」や、 それらを育んだ「人」「地域」「時代」等々について取材した事柄を記されています。 格調高く、しかもとても読みやすい文章は、これまでにも度々目にしてきましたが、 その対象をまるで目の前で見ているように伝える筆力は、本当にお見事と言うしかありません。 *** 理由はそれだけではない。 1708年にマイセンでヨーロッパ初の磁器が作られるようになるまで、 磁器はアジアでしか作ることのできないものだった。 実は磁器は、当時の科学技術の最先端を駆使した工業製品という性格を持っていたのである。 アウグスト王は観賞用としての蒐集の他に、地域の産業振興のために磁器の開発を進めた。 硬質で美しい日本磁器の特色を再現すべく、職人を囲い込んで研究にあたらせ、 その結果生まれたのがマイセンの磁器である。(中略) 今ではドイツが世界に誇る高級磁器として知られるマイセンが、 創設当初に目指したのは日本の磁器だったのである。 九州の陶工たちは、遠い異国の王様が、自分たちが作ったやきものに そこまでの憧れを持っていたとは夢にも思わなかったに違いない。(p.96)全く知りませんでした。しかし、知ってしまうと色々と合点がいくのです。当時の日本において、なぜ磁器が主要輸出品の一つとして数えられているのかに。科学技術の最先端を駆使した工業製品、今ならこれに匹敵するものは何になるでしょうか。
2026.02.21
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2024年2月にハードカバーで発行され、 昨年12月に文庫化された中山七里さんの一冊。 今年1月には、続編にあたる『被告人、AI』も発行されています。 AIの凄さに気付かされて間もない私も、興味津々で読書を開始しました。 ***日中両国間における技術交流として、日本からは著名なアニメスタジオのスタッフが、中国からは最新のAIソフトを開発した技術陣が相手国に赴き、技術協力を行うことに。そして、東京高裁管内の地裁及び家裁の本庁を対象として、中国から技術協力の申し入れが。それが、概要を聞けば判決文まで作成してくれる画期的ソフト『AI裁判官』<法神2号>だった。 この<法神>を導入して、過去の判例を落とし込みさえすれば、 もう一人の裁判官が誕生します。 このAI裁判官は実在の裁判官と同じ思考回路、同じ道徳規範、同じ倫理観を獲得しています。 従って、事件のストーリーと物的証拠をデータとして入力すれば、 彼が下す判決をそのまま判決文として出力してくれます。 もう、本物の裁判官が山積する事件に忙殺されたり、 長時間かけて判決文を作成したりする手間は完全に解消されるのです。(p.035)<法神>の開発者・楊浩宇から直接説明を受けた東京高裁第一刑事部総括判事・寺脇貞文は、東京地裁刑事部・高円寺円判事補に、2年前に発生した事案のデータ入力を依頼する。すると、実際の判決内容は入力していないのに、裁判長が認めた判決文とほぼ同じ内容を表示。寺脇は管区内の地裁判事たちに<法神>の有益性を説き、<法神>のリース導入が決まる。一方、18歳少年が父親を刃物でメッタ刺しにした上で逃走、追跡劇後に逮捕される事件が発生。この事件の裁判長は東京地裁刑事部長・檜葉判事、右陪席・崎山、左陪席・高円寺円に。戸塚久志に死刑を求刑する検察側と、保護観察処分を求める弁護側との最終弁論後の評議室、檜葉は採決に入る前に、裁判員らに<法神>が作成した判決文を提示し、自身の判断に誘導する。しかし、円の交際相手である警視庁司法警察員警部補・葛城公彦が懸命の捜査を継続、戸塚兄弟と幼馴染がプールで撮影した写真に辿り着き、証拠物件の再分析が行われることに。そして、最終弁論前に弁護人の申し出により証拠調べが再開されると、久志の虚偽供述が判明。最終弁論は2週間後に延期されるが、その前に検察は無罪諭告の予定を通告してきたのだった。裁判と並行して、葛城の高校時代の同級生で、ソフトウェア開発分野では知る人ぞ知る萬田美智佳が<法神>の検証を行い、寺脇、円と共に、楊にその結果を伝える。<法神>には、重要判例の尊属殺重罰規定違憲判決のデータが故意に入力されていなかった。その背景には中華思想があると、楊の発言から円は感じ取る。 ***巻末の「解説」は、AIエンジニアで参議院議員の安野貴博さん。今回の衆議院議員総選挙で大躍進を遂げた「チームみらい」の党首でもあります。その「解説」で、高円寺円の祖母・静が、「静おばあちゃん」シリーズのキャラと知りました。これも未読なので、『被告人、AI』と共に機会を見つけて読んでみようと思います。
2026.02.20
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6つのお話から成る一冊。 読み始めて早々、「いつものマハさんじゃない……」という思いが沸きあがり、 それが、暫く続いたのですが、やがてその感覚は薄れていくことに。 そして、春日武彦さんによる巻末『解説』を読んで、その理由が分かりました。 冒頭から4作は、マハさんが作家デビューして1、2年以内に書かれたもので、 その後の2作は、それからおよそ15年を経て書かれたものとのことです。 ***「深海魚」 瀬川真央は狭い部屋の押し入れの上段を「海の底」と呼び、オチかけたときそこに逃げ込む。 小4で同じクラスだった佐々木流花に7年ぶりに再会、「海の底」でまた2人の時を過ごす。 高校で真央をいじめる大野正美はそのことを知るが、流花のアパートで沈むことに。「楽園の破片」 ボストン美術館で講演をする高木響子は、濃霧で急行が遅れ開始時刻に間に合いそうにない。 もう一人の講師は、響子と7年付き合った後、別れたばかりのレイ・オークウッド。 響子は、陽性反応を示す妊娠検査薬のスティックを化粧ポーチに入れ、会場に向かうが……「指」 室生寺弥勒堂釈迦如来坐像の微かに持ち上がっている両手中指を眺める研究室助手と指導教官。 昼食を済ませ、チェックインするや否や「中指を……そっと、空気を揺らす、みたいに」。 翌朝、伽藍洞で一部始終を知る食堂で働いていた若い男の子の言葉に……、そして指が……「キアーラ」 『聖フランチェスコの生涯』の修復に携わっていた田倉亜季は、10年ぶりにアッシジを再訪。 フランシスコとキアーラが一緒になる日を、幼い頃から願っていたリタからの手紙に導かれ。 実はアレッサンドロに思いを寄せていたリタ、彼女が持つ赤い滴の付いた欠片がまっすぐに…… 「オフィーリア」 額縁の中に封じ込められた女は、まさに水中に沈み、やがて池底の泥の褥に横たわるところ。 街角の画廊のショーウインドウ、日本人画家の部屋と画室、大殿の妻となった娘が睦む部屋、 娘が溺死するところを、画家が絵の中に閉じ込め永遠に生きさせようとする庭園を転々とする。「向日葵奇譚」 脚本家・塚本は、ゴッホの姿を写した唯一の写真、その後姿を見て一晩で台本を書き直す。 ゲネプロでは、凡人の中の凡人として描かれたゴッホに俳優・山埜祥哉がすっかりなりきる。 初日前夜、山埜が見たという奇妙な夢に登場した塚本は、長年愛用の青いパジャマを着ていた。 ***エロス&ホラー。こんな色合いの作品も、マハさんは書いていたんですね。ちょっと驚きました。でも、随所に「らしさ」は感じられます。
2026.02.14
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著者はデジタルハリウッド大学教授でIT戦略コンサルタントの橋本大也さん。 第1刷発行が2024年3月18日で、私が読んだ第10刷発行は2025年5月23日。 第1冊発行から間もなく2年が経過しようとしていますが、 その間にも、AIは目覚ましいスピードで進歩を続けてきました。 実際に、私が本著を読み始めた時点では、掲載内容を自身のPC上で確認すべく、 どんなChatGPTをどのように入手するか、その他に何が必要か等々思案していたのですが、 間もなくすると、GoogleにはAモードが、Yahoo!にもAIアシスタントが登場し、 本著に書かれているプロンプトを入力すれば、ある程度答えてくれるようになりました。「CHAPTER2 思考を補助してもらう」については、Googleを使って色々とやってみましたが、『吾輩は猫である』の感想文を書いてもらい、さらにそれを子どもらしく修正してもらうと、学校代表ぐらいにはすぐにでも選ばれそうなものが出来上がってしまいました。理科や社会の自由研究でも同様の結果になると思われ、宿題の意味がなくなってしまいそう……ただ、グラフを描いたり、イメージ、動画、プレゼンテーション資料、音楽の生成等々、「CHAPTER10」に記載されている事柄については、私はまだ全く出来ていない状況あり、今後、PC周辺環境を整えると共に、私自身が様々な知識と経験を蓄積していく必要があります。しかしながら、本書がその第一歩を踏み出すきっかけとなってくれたことは間違いありません。
2026.02.14
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冒頭部は、優莉匡太が刑務官と教誨師をいかにして懐柔したか、 さらに、結衣が武蔵小杉高校を卒業する日の憂鬱が描かれます。 そして舞台は一転、総理官邸が破壊され無政府状態となった日本へ。 第二次宮村内閣はアメリカの傀儡政権となり、実質的統治下に置かれていました。 国連で日本が無力国家と認定されようとしていると知った宮村総理のもとには、 あのメフィスト・コンサルティングが現れ、この状況を傍観するよう進言されることに。 ***日暮里駅近くのホームセンターを襲ったギャングたちを一蹴した結衣、瑠那、伊桜里、凜香。瑠那と凜香は、恩河日登美の居場所を突き止めるべく元閻魔棒・城原がいる万博跡地を目指す。大阪都立フォルトゥーナ学園に潜入すると、投資家で瑠那の幼少時の知人ハッダードに再会、さらに、カジノ模擬実験場VIPルームでは、日登美と瑠那の仇敵・サイードに遭遇する。瑠那は、日登美にサクリフェスで勝負を挑むと、言葉で動揺を誘い続ける。 義父母より先に、わたしに神様の存在を説いてくれたのは、 ジハドに生きる者たちだったから(中略) 異教徒と犯罪者は殺していいって教えだった。 父親だろうとなんだろうと、 恒星天球教の教祖と結ばれた凶悪犯の脱走死刑囚と、その信奉者は皆殺しにする。 結衣お姉ちゃんや凜香お姉ちゃんは心のどこかで人殺しを悔いているけど、 わたしはちがう(p.222)憤怒の感情を抑えきれなくなった日登美は怒りを爆発させ、その場から逃走する。しかし、状況を報告した匡太からの反応は、ネキに骨抜きにされた腹立たしいものだった。さらに、緋色総合舎が襲撃されたことの責任まで指摘され、愛知県設楽町へと向かうことに。一方、瑠那はイエメン紛争を激化・長期化させた元凶であるサイードと対峙。城原は銃殺され、瑠那と凜香は瑠那の実母のもとへと連行されるが、ハッダードが催涙弾を投下すると、瑠那は敵を次々に銃撃、母親を盾にしたサイードも撃ち抜く。そして、絶命寸前のサイードから日登美の居場所を聞き出すと、あいりん労働福祉センターへ。日登美と対峙した瑠那は、その欠点を見抜いた攻撃を展開して追いつめ、遂に仕留める。そして、匡太はただの腑抜けとなっており、全てを仕切っているのはネキだと知らされる。 ***特殊作戦群に召集された蓮實は、関西経済圏独立阻止のための軍事行動を命じられるが、矢幡元総理のSP・錦織らと共に、半グレ候補が集まる法的独立支援保護施設・緋色舎を目指す。錦織の息子・醍醐律紀が潜入に成功し、匡太はあいりん労働福祉センターにいるらしいと分かる。そして山奥を逃走中に周囲を敵に囲まれるが、結衣と伊桜里、雲英亜樹凪に救われる。その後、単独行動をとる結衣は、メフィストのアライケに名古屋飛行場に連れていかれると、そこにラファールBが降り立ち、篤志を日本に送り届けに来た岬美由紀が現れる。 優莉匡太が死刑になっただけでは、あなたたちは変われないままだった。 今後もそう。 もしあなたの父親が、どこかで人知れず死んでいたと判明したとしても、 子供たちの心は救われない。 優莉匡太の子という自覚から逃れられず、人格の本質も元のまま。 人殺しであり続ける。(中略) 絶対的な邪悪はこの世にあるの。 それがあなたの母親であり、父親だった。 特に父親。 あなたが第二次反抗期を終えるには”親殺し”しかない(p.342)この言葉を残し、美由紀はラファールBでインドネシアへと引き返していった。そして、結衣、瑠那、伊桜里、凜香に篤志を加えた5人は、あいりん労働福祉センターに集結。ネキとは、元有名ダンス系ユーチューバーのEE、江崎瑛里華のことだと確認しあう。 ***巻末の「解説」によると、「EEこと江崎瑛里華」とは、「JK」シリーズの主人公・有坂紗奈が制服姿で踊るK-POPダンスのユーチューバーとして活動する際に用いている名前とのこと。今巻登場した「令和中野学校」も、シリーズとして刊行されています。私は、いずれのシリーズも未読ですが、『高校事変』が完結した際、必要を感じれば、読んでみようかなと思っています。
2026.02.11
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本著を読んで、 自分が台湾について何も分かっていなかったと気付かされました。 そして、「国民党副主席と中国共産党序列4位が会談」という記事を見て、 その意味するところがちゃんと分かるようになっていました。 *** 台湾研究者の若林正丈は、台湾を理解するための方法として、「台湾はどこにあるか」 および「台湾とは何であるか」という二つの視点に注目するとよいと提案している。 前者はすなわち、台湾は東アジアにおける地政学的に重要な場所として、 大国間の争奪の対象となってきたという視点である。 後者は、台湾に住む人びとが、台湾人としての意識および、 台湾を一つの政治的な主体とする認識を強めてきたという視点である。 両者は互いに無関係ではなく、前者の大国による台湾支配という要素は、 住民の「台湾とは何であるか」をめぐる考え方に大きな影響を与えてきた。 また、近年では後者の台湾の主体性という要素が、 米中対立という大国間の争いを左右する重要なポイントになっている。(p.20)第二次世界大戦後、日本による統治が終わると、国民党による台湾統治が始まった。しかし、共産党との内戦に敗れ台湾に撤退すると、本省人は外省人への不満を募らせるように。そして、中華人民共和国が国連舞台に登場すると、中華民国はそれまでの地位を失って孤立。そのような対外危機の中、国民党政権は活動を活発化させた党外勢力への締めつけを強化する。蒋介石 蒋経国、李登輝と続いた国民党政権は、中華民国憲法を改正して民主化を達成。しかし、2000年に行われた二度目の総統直接選挙で敗れ、民主党の陳水扁政権が誕生する。国民党は、中華民国による大陸と台湾の統一を夢見る勢力を糾合し「汎藍陣営」を形成、一方、李登輝は国民党を離れ台湾の主体性を重んじ民主党政権を支える「汎緑陣営」を構築する。そして、中国との緊張関係が高まった08年の総統選挙では、大陸との関係改善を訴える国民党の馬英九が当選、政権を奪還して両岸の交流は大きく拡大する。が、16年の総統選挙では民進党の蔡英文が当選、立法院でも初めて過半数の議席を獲得した。そして、24年の総統選挙では民進党の頼清徳が当選、政権を維持している。 ***グローバル化が進む国際社会の中で、これまで以上に微妙なバランスの中で行動することが求められる台湾。そんな中で、社会の多様性や少数者の権利を重んじる思想の共有が進んできたのです。日本にとっても、学ぶべき事柄がとても多いと感じます。
2026.02.08
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朝ドラ「ばけばけ」も、その舞台が松江を離れる一歩手前までお話が進みました。 波乱万丈の激動の日々を描く……といった感じとはちょっと違う、 どちらかと言えば、日々の営みを淡々と紡いでいく落ち着いた感じのドラマですが、 当事者にとっては山あり谷ありの連続で、紆余曲折の人生だったに違いありません。 本書を読むと、実際の小泉家と稲垣家はかなり格式の高い家柄という印象ですが、 本当にあった出来事とドラマに向けて創作されたストーリーを適度に融合しながら、 トキとヘブンのそれぞれの生い立ちや、松野家とその周辺の様子を上手く描き出しており、 観る者を強く惹き付けて放さない、優れたドラマに仕上がっていると思います。ドラマでは、本書の「第1章 それぞれの生い立ち」と「第2章 セツと八雲の出会い」に記された時期までがこれまでに放映され、「第3章 さよなら、松江」「第4章 熊本・神戸で築いた家庭」「第5章 晩年の八雲」「第6章 セツのそれから」が、今後放映されることになります。「ばけばけ」は、昨年10月にスタートして既に4カ月余が過ぎており、残るは2カ月弱。つまり、二人の生い立ちや出会い、松江での日々を描くことに重点が置かれたわけですが、実は、八雲が松江で暮らしたのは1年3カ月、セツと一緒に暮らしたのは9カ月ほどです。熊本や神戸、東京での暮らしの描写は、比較的駆け足で進んでいくものと思われます。熊本では柔道の大家・加納治五郎や漢学者・秋月悌次郎と出会うことになります。そして本書では、錦織さんのモデルである西田千太郎のその後は略年譜に記されているだけで、八雲が帝大講師となった翌年、病のために34歳の若さで亡くなっています。一方、サワと庄田のモデルとなった夫妻は、共に教育界で大きな業績を残していきます。ビスランドやチェンバレン、マクドナルドらとの交友もどう描かれるのか楽しみです。帝大での後任・夏目漱石やマッカーサーの軍事秘書フェラーズは、登場しないでしょうね。本書は、セツと八雲のひ孫で小泉八雲記念館館長・小泉凡さんが語った事柄をまとめたものです。直系血族であり、曾祖父母を研究してきた方からの言葉だけに真実味がありました。
2026.02.07
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『町長選挙』に続く、連作短編集シリーズ第4弾。 第3弾の文庫版が発行されたのが2009年3月なので、本当に久々の邂逅。 今回は、表題作を含む5つのお話。 精神科医・伊良部と看護師・マユミの言動は、今回も突き抜けています。 ***「コメンテーター」中央テレビの午後のワイドショー『グッドタイム』は、他の民放2局に視聴率で負けっぱなし。その原因の一つは、蔓延するコロナ関連のネタでコメンテーターがパッとしないから。プロデューサー・宮下に命じられ、畑山圭介は大学時代のコネを使って美人精神科医を探す。しかし、紹介されたのは、伊良部総合病院院長の息子で精神科医の伊良部一郎だった。現場の不安をよそに、伊良部がリモート出演すると、その登場時刻から視聴率が上向く。それは、看護師・マユミが、女性ロックバンド、ブラック・ヴァンパイヤのギター担当だと、若者たちが気付いて、情報をネットで拡散させたから。以後、伊良部の破天荒な言動も評判となり、遂に平均視聴率5.5%を叩き出す。「ラジオ体操第2」営業で軽自動車を運転する福本克己は、後続車に煽られた怒りを抑え込むと過呼吸発作。その夜、公園でスケボーに興じる若者たちに沸き上がった怒りを抑え込むとまた過呼吸発作。テレビのニュースを見ても過呼吸発作が起こるようになった福本に、伊良部は助手席で助言、煽り運転常習者に急ブレーキをかけて追突させ、危険運転致死傷罪で書類送検に追い込む。伊良部は、喫煙所外で喫煙するパンク野郎、階段に座り込む三人組にも注意する模範を示すが、江ノ島電鉄踏切で撮り鉄たちの傍若無人な振る舞いを我慢する福本に、とうとう匙を投げる。しかし、福本はあの踏切に差し掛かると、車を停め遮断機のポール前でラジオ体操第2を始める。さらに、あの公園でもスケボーに興じる若者たちに注意、そしてラジオ体操第2を始めた。「うっかり億万長者」業界最大手の生保会社を2年で退職した河合保彦は、蓄えた50万円でデイトレード始めるが、2年たった今では、資産10億円を有するものの、株式市場を見ていないとパニックに陥る。伊良部の治療と称する指導で、六本木ガーデンにベンツにグルメ等々と贅沢三昧を味わうが、元同僚の言葉を機に激しい自己嫌悪に襲われるようになり、河合は残った資産の全てを寄付する。「ピアノ・レッスン」27歳のピアニスト・藤原友香は、新幹線のぞみに乗れなくなり、演奏会でも四方を囲まれると客席に座っていられず動機がして意識が遠のくようになり、伊良部総合病院へ。伊良部から広場恐怖症と診断され、ドクター・ヘリを使っての荒療治等を試みるも改善せず。しかし、マユミのロックバンドのライブにキーボードで助っ人参加すると、一気に殻を打ち破る。「パレード」山形県で生まれ育った北野裕也は、東京の有名私大に進学するもコロナでリモート授業ばかり。3年生になって対面授業で教授から指名された際には、一言もしゃべれなくなってしまう。伊良部から社交不安障害と診断され、不登校の中学2年生・マサルとグループ・セッション。老人ホーム、チャリティーバザー、ハロウィン仮想パーティのパレードで行動療法を敢行する。 ***今巻で最も印象に残ったのは、次の記述。 近年、情報番組のコメンテーターは流行の職業だった。 本業で少しでも実績があれば、それを肩書として コメンテーターのポジションを得ることが出来る。 大衆は権威に弱いため、一度テレビで顔が売れればさらに権威が増す。 基本は井戸端会議なので、専門知識などなくても務まった。 場の空気を読み、少し本音をまぶし、少し面白いことを言う。 その匙加減がうまい人間が生き残り、コメントで禄を食む。 要するに新手のテレビタレントなのである。 テレビ局としても、ギャラが安く、簡単に入れ替えの利くコメンテーターは 便利な出演者だった。 司会者が多少いじっても、うるさいマネージャーが出て来ることもない。(p.27)目から鱗が落ちるとは、まさにこのこと。なるほど、あれはテレビ局が使いやすいテレビタレントたちが集まってただただ井戸端会議をしているだけだったのか……じゃあ、どんなくだらないことや間違ったことを言ってても、目くじらを立てることはないか。
2026.02.01
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『京都下鴨 神様のいそうろう』の第2巻。 副題は「猫神様とアマテラスの宝玉」。 今回から大学部1回生の中野明日香が登場し「理龍推し」を萌子と競います。 その明日香がマルカリで買った翡翠の勾玉を、うさぎが持って行ってしまい…… ***「序章」では、学徳学園大学部1回生で演劇部の中野明日香が、萌子に足で壁ドン。「奇跡の美少女」と呼ばれドラマ出演も決まっている彼女も、理龍様にご執心の様子。第1章「猫神様のお願い」では、『神様のいそうろう』の『お猫様』が理龍と萌子に頼み事。高名な神の眷属神による『玉』探しについては、理龍が「八咫烏」本部長代理の朔也に報告。そして、20年弱前にお祖母ちゃんを支えていた「ちとせ」については、萌子が探すことに。どうやら、それは『ミステリー研究会』に顔を出していた白王子・藤原千歳のことのよう。第2章「翡翠の涙」では、明日香が学徳新聞のインタビュー記事掲載を差し止めたため、絵磨と萌子が『美味しい和菓子屋』特集の取材に『さくら庵』嵐山店を訪ねることに。櫻井宗次朗・杏奈夫妻が『キモノフォレスト』で偶然出会った明日香も含め3人を歓迎。明日香は杏奈からの言葉に涙し、ドラマ出演や高校時代の失恋について語り始めるのだった。第3章「アマテラスの宝玉」では、うさぎたちとその頭が宝玉を探していた理由が明らかに。翡翠の勾玉に籠められた千歳の後悔と明日香の悔さが、千歳の祈祷によって天に届いてしまい、ツクヨミも深い後悔を覚えるようになっていたが、アマテラスがツクヨミに寛容の姿勢を示し、千歳も幼馴染への恋に終止符を打ったことで、勾玉は浄化され明日香のもとへと戻る。「エピローグ」では、明日香がかつて好意を寄せていたクズ先輩からの誘いを瞬殺。そして理龍の『大切な女の子』とは、零人と小春の娘・2歳の茉莉、即ち自身の妹のことだった。 ***お話の流れからすると、このシリーズも今後しばらく続いていきそうですね。高校生だけでなく、メインメンバーに大学生も加わったことで、お話に広がりが出て来そう。理龍と零人、小春、茉莉に関する不明部分も、今後明らかになっていくことでしょう。まずは、次巻が楽しみです。さて、千歳と千歳が想いを寄せていた幼馴染・一ノ瀬寿々、そして寿々と結婚する親友・葉山透、さらに海藤剛士を加えた4人が、OGMとして活動するお話は、『わが家は祇園の拝み屋さんEX 愛しき回顧録』に掲載されていますのでご一読を。
2026.01.30
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本作は『わが家は祇園の拝み屋さんEX 愛しき回顧録』から時を経てのお話。 主人公は学徳学園1年生、安倍清明の流れを汲む家系で『視える人』の春宮萌子。 現在は、父方の従姉で動物病院を開いている賀茂由里子の家で世話になっている。 由里子の夫は動物看護士・賀茂和人で、清明の師匠・賀茂忠行の流れを汲む家系。 萌子が神と崇め、日々推しているのが幼馴染で学徳学園大学部3回生・賀茂理龍。 理龍の父は、和人の弟で「八咫烏」関西本部長、学徳学園大学部教授の賀茂零人、 母は学徳学園フリースクール教員の小春。 即ち、萌子は、理龍の父(零人)の兄(和人)の嫁(由里子)の父の弟の子。萌子の同級生で新聞部の三善絵磨は、父が「八咫烏」本部長代理の三善朔也、母が愛衣。赤城智也は、大阪で朔也にスカウトされた陰陽師組織「八咫烏」の若き審神者。***「序章」は、8年前母親に連れられた小学2年の萌子と、迎えに来た理龍との出会いの描写。第1章「白鼠と記憶と秘密入りの桜餅」では、二匹のモルモットがお客様として萌子の許へ。二匹は、現世の生き物にひと時、神が入っている『神様のいそうろう』。萌子の許に初めて『神様のいそうろう』がやって来たのは、中学生になったばかりの頃で、母と参った八坂神社に、転生前に現世の見学に来た大国主命の神使が、白鼠に入って現れた。一方、理龍は「八咫烏」本部に呼ばれ、本部長代理の朔也から次の3つのことを頼まれる。それは、都七福神の神様が姿を消したことへの対応、零人の所に迷い込んできた『神様のいそうろう』の文鳥を京の山のお社へ連れていくこと、嵐山の老舗料理旅館「松の屋」の娘で、今年の斎王代に選ばれた松原咲良の相談に乗ること。第2章「文鳥と斎王代のやきもち」では、理龍、萌子、絵磨が、赤城、咲良、2匹のモルモットのマスコット、文鳥と一緒に鞍馬山・貴船神社へ三社詣りに。結社で理龍が祝詞を唱えると、文鳥がサクヤヒメに姿を変え、姉のイワナガヒメに寄り添う。そして萌子の言葉に、咲良は悪口に惑わされず立派に斎王代を務めあげる覚悟を決める。第3章「七つの光と金平糖」では、理龍と赤城が都七福神詣りをして神不在を確認、結界を張る。そして理龍は、2匹のモルモットに入っているのがイザナギとイザナミだと気付き、白山神社で、萌子と共に真言を唱え七福神を呼ぶと、モルモットはただのモルモットに戻る。そして帰り道、これまでの色んな想いを吐き出すように、理龍の胸で萌子は声を上げて泣いた。「エピローグ」では、葵祭『路頭の儀』で十二単を纏う咲良の堂々とした姿を見せる。そして上賀茂の賀茂邸で、理龍が赤城の質問に、自分は魂の欠片ではなくそのまま転生した存在、萌子の方が魂の一部が人に転生する『神の分け御霊』だと答える。 ***萌子の父親が交通事故で亡くなった後、娘と母親との間に生じた関係は、『わが家は祇園の拝み屋さん』の小春と両親との関係を思い出させます。小春が吉乃に救われたように、萌子は由里子に救われました。そして理龍、やっぱりあの龍神の子・若宮かな?
2026.01.25
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NHKのドラマを見て、これは原作を読まねばと早速購入。 ドラマの第1話は、本書「カレンダーボーイ」をベースにしたお話でした。 作者は、新聞社勤務で社会部時代に検察庁など司法を担当し、 『転がる検事に苔むさず』で第3回警察小説大賞を受賞、 作家デビューした直島翔さんです。 ***「カレンダーボーイ」安堂清春(35)は、任官7年目の裁判官。1年前、東京地裁勤務時に特例判事補に任命され、その後Y地裁に赴任して半年になる。10歳の時、発達障害の専門医・山路薫子と出会い、ASD(自閉スペクトラム症)とADHD(注意欠陥多動症)と診断された。安堂は、詐欺未遂罪と傷害罪で起訴された被告人・江沢卓郎(22)の単独審理を担当。江沢は故意に路上に飛び出し、腕の一部をタクシーのドアミラーに当て交通事故を装おうとした。さらに、客としてタクシーに乗り合わせたY副市長・茂原孝次郎が車を降りてくると、殴りかかって転倒させ、左手首を骨折する重傷を負わせたうえで、頭や額への殴打をくり返した。江沢は初公判の罪状認否から弁護人と衝突、安堂は国選弁護人を裁判官の職権で解任する。後任の小野崎乃亜は、予想された裁判官忌避はせず、証拠認否で9割の証書に対し「同意しない」を連発。起訴事実は全てにおいて曖昧で、自白は警察官及び検察官の偏見に基づき誘導されたと述べる。 そして、次回法廷で検察側の証言者として出廷したタクシー運転手・藤山澄久に対し、小野崎が次々に言葉を投げかけると、藤山は耐えきれずに口を開く。藤山と郁美は高校の同級生で、ガソリンスタンドでバイトする卓郎に客の秘密を洩らしていた。それは、病院の医者を乗せた運転中の次のような会話だった。 「きのうの急患、手術すれば助かったのにな」 「脳外科医を呼び出そうとしたら、事務の誰かが止めたんですって」 「なぜだ?ゴルフぐらい抜けられるだろう」 「いや、もう麻酔医からして昼から酒くらっていたので、無理ですね」 「大勢を休ませたからあんなことになったんですよ」 藤山は、医師の会話を聞いた数日後、亡くなったのが郁美だったと知り、今回の事件の数日前に、また日曜日にゴルフをやると卓郎に教えたのだった。そして、目撃者の一人だった学習塾経営者は、啓明会病院の理事で茂原後援会の副会長。病院の出入り業者をゴルフ大会を名目に呼び集め、後援会活動をしていたのだった。「恋ってどんなものかしら」夫の高校数学教師・宗繁之の頭を、妻の高校音楽教師・宗春美がメトロノームで強打し殺害。橙園学院校長・佐高京介は、二人の教え子で30代前半。同校の顧問弁護士・小野崎乃亜は、裁判所の待合所で鼻歌を歌う春美の供述に疑問を抱き、春美がコルサコフ症候群で、室内にあった物を悉く利用して作り話をしたのだと気付く。小野崎は「心神耗弱」を主張、執行猶予の付いた判決を求めた結果、懲役5年の実刑判決。父親の真似ならできる考えた春美は、刑務所の中で思う「真実を知っているのは私だけだ」。「擬装」闇バイトの広域強盗と思われる事件がY市で発生、82歳の高齢資産家女性が6千万円を奪われる。 県警は強奪した金の運び役・18歳の定時制高校3年生井戸川友典と佐野義弘を逮捕。 安堂は二人に勾留質問、黒とグレーのヘルメットの二人からそれぞれ金を受け取っていたと判明。判事補・落合は、安堂が作った調書を見て、実行犯二人が一緒にいる場面がないことに気付く。ITエンジニアの娘・朋世(28)を亡くした羽鳥賢一は、法テラスで小野崎に相談していた。睡眠剤をいつもの倍量飲んだための事故死ということだったが、羽鳥は他殺を疑い、臙脂色のノートパソコンが1台なくなっていることを気にしていた。小野崎は安堂と共に、朋世の家の様子を調べる。後日、安堂に丸いものと角々したもの、洗面器と椅子の像が現れ、文具に重なり合う。小野崎と共に朋世の家へ、小野崎が脱衣所で椅子と洗面器を重ねその上に立ち換気口を手で探る、するとそこにタブレットが、羽鳥は娘がここに隠すときにバランスを崩して転倒したと気付く。 そして、タブレットには、防災コンサルタント・籾山新司の姿を撮影した動画が2つあった。一つは講習会の様子、もう一つは女性のあとをつける籾山を撮影したもの。SNSを使った指示役、強奪の実行役、金の回収役の一人三役。それは、全国で発生した一連の強盗事件そっくりに見せかけるためだった。撮影に気付かれたと思った朋世は、タブレットを換気口に隠し、その際転倒したのだった。「解説『不思議な裁判官』岩波明」発達障害研究の第一人者・岩波明さんによる安堂と発達障害、作品に対する解説。サヴァン症候群に言及すると共に、『アストリッドとラファエル』『名探偵モンク』『シャーロック(BBC制作)』『こちらあみ子』等の作品も紹介しています。 *** 判事補・落合は原作では男性ですが、ドラマでは女性になっていますね。また、「恋ってどんなものかしら」と「擬装」は、ドラマの2話・3話と所々同じエピソードもありましたが、お話としては全くの別物でした。それにしても、「恋ってどんなものかしら」は怖かった!!そして、「擬装」はタイトルが絶妙!!もちろん、ドラマの2話と3話も、とても良かったです(続きの4話が楽しみ!)。ひょっとして『テミスの不確かな法廷 再審の証人』のお話なんでしょうか?安堂の「小野崎さん。私の話を聞いてもらえませんか」、そして、小野崎の「安堂さん、好きな人がいますか」。これも、ドラマではなかった展開。これから、どうなるんでしょうか?このお話を読んでいると、あちこちで『自閉症の僕が跳びはねる理由2』に記されていたことを思い出します。
2026.01.24
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下巻の方は、上巻に比べると映画では描かれていないエピソードも多く。 「そういうことか」と気付かされたり、「ここは、別物ですね」と納得したり。 それでも、映画は原作の世界観を損なわず、上手くまとめ上げていたと感心。 そして、原作は各登場人物を深く丁寧に描きあげ、本当に素晴らしい作品でした。 こちらも、書いたものをひとまとめにしておきます。 ***第十一章 悪の華第十二章 反魂香第十三章 Sagi Musume第十四章 泡の湯第十五章 韃靼の夢第十六章 巨星堕つ第十七章 五代目花井白虎第十八章 孤城落日第十九章 錦鯉第二十章 国宝 ***「国宝 上 青春篇」はこちらです。
2026.01.19
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毎日新聞に連載された「京都 ものがたりの道」(2014年4月~2016年3月)に、 新たな原稿を加えて編集、刊行された一冊(2016年10月)に、 さらに加筆・補整を行った新装版です。 著者は女性皇族の一人で、京都産業大学日本文化研究所特別教授の彬子女王。 *** そんな京都の通りを行き先も決めずに散歩するのが大好きだ。 通り一本違うだけで雰囲気ががらりと変わるし、それぞれの通りに独特な個性がある。 どの通りを歩いても必ず史跡に行きあたるのも楽しい。 小さな石碑であっても、見た瞬間に 「あ、あの織田信長もこの道を歩いたのかもしれない……」などと、 一気にときを飛び越えられる感覚は、京都ならではのものだろう。 そしてその道に、京都の人たちの日常がある。 悠久の歴史の流れの中で、 その軌跡の一部になって自然と生きているところがなんだかいいな、といつも思う。 (p.16)この一冊がどのようなものかを、全て言い表したような素晴らしい文章。幼少の頃から京都大好きな私も、記されている一つ一つのことに激しく同意・共感。哲学の道、六角堂、神泉苑、神護寺、八坂神社、鴨川の飛び石、二条城、六波羅蜜寺、晴明神社、京都国立博物館、錦市場等々、実際に訪れたことがある場所は、その時のことを思い出しながら、そして、まだ訪れたことのない場所は写真やイラストでイメージしながら読み進めていきました。それにしても、彬子女王、かなりの健脚。 平坦な道であれば、2時間でも3時間でも平気で歩く。 電車一駅、二駅歩くのは日常茶飯事。 学生のころは、ときおり赤坂の宮廷から目白の大学まで歩いたりして、 よく側衛さんを泣かせていた。(p.24)しかし、さすがに「愛宕山の千日詣り」では、 でも、この4キロの登山道、やはり運動不足の身体にはかなりきつい。 途中で足が攣ったときはどうなることかと思ったし、 参道の脇に適宜掲げられている立札を見て、 まだ三分の一も来ていないと気付いたときは、ちょっと心が折れかけた。(p.125)それでも、山頂に着いて火伏札を手にされ、山を上ってくる人たちに「おのぼりやす」と声をかけられたのですから、流石です。
2026.01.18
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昨年末、映画『国宝』を観て、 やはり原作も読んでおかねばと、早速手にした本書。 映画の各シーンを思い返しながら読み進め、章ごとに記事を書いていきました。 バラバラの記事では読み返すのも大変なので、一つにまとめておきます。 ***第一章 料亭花丸の場 第二章 喜久雄の錆刀 第三章 大阪初段 第四章 大阪二段目第五章 スタア誕生第六章 曽根崎の森の道行第七章 出世魚 第八章 風狂無頼第九章 伽羅枕 第十章 怪猫 ***「国宝 下 花道篇」はこちらです。
2026.01.17
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副題は「最高級邸宅街にはどんな人が住んでいるか」。 著者は愛知県生まれのフリーライター兼カメラマン・加藤慶さん。 「東の田園調布、西の芦屋・六麓荘」と称される高級邸宅街について、 十数年に渡り大阪市内に住みながら、定期的に取材を重ねて出来上がった一冊。 ***「第1章 最高級邸宅街『六麓荘』の内実」では、日本のビバリーヒルズと呼ばれる六麓荘の開発史や「豪邸条例」について紹介し、そこにはどのような豪邸が建ち、どのような暮らしが営まれているのかを現地取材を通じて関係者から集めた言葉から明らかにしていく。「第2章 どうすれば芦屋に家が建つのか」では、そのバックボーンとなっている「阪神間モダニズム」や市内ヒエラルキー、さらには、芦屋のハワイと称される芦屋マリーナについて紹介する。クルーザーや芦屋ベイコート倶楽部、ゲーテッドタウン等、驚かされる内容ばかり。「第3章 芦屋市民の生活と意見」では、芦屋に住む人々の生活の様子について「イエナリエ」やテニス人口の多さを紹介。また、子供の教育にも触れ、灘の「鶴」と甲陽学院の「鹿」について述べると、なぜ乗降客数が3割強も多いJR住吉駅ではなくJR芦屋駅に新快速が停まるのかにも言及。「第4章 未来の芦屋はどんな姿?」では、六麓荘の物件も30年サイクルで売却がなされ、現在では中国人が増加しており、さらに、南芦屋浜の人工島にある涼風町にも中国人が押し寄せている現状を紹介。一方、市の人口は減少、高齢化も進んでおり、芦屋ブランドを守る施策が期待されている。 ***街の文化、習慣、風習を維持していくことの難しさを強く感じました。そこに住む人も入れ替わり、共有する価値観も変わっていく。街が高齢化し、活気が失われ、衰退していく地域も今後は出て来ることでしょう。芦屋はどんな人が住み、どんな暮らしが営まれる街になっていくのでしょうか。
2026.01.17
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今巻では、ルフィがロキと交わした約束が明らかに。 そして、エルバフの「セイウチの学校」で学ぶ子供たちの様子や 「フクロウの図書館」と「神典(ハーレイ)」についても紹介されます。 さらに、新たなる敵もその姿を現します。 ***名君・ハラルド王は「戦いより他国との交易を」と唱え、新たな国づくりを進めていたが、夢半ばで実の息子・ロキに殺されてしまい、王位は空席のまま14年が経過していた。アウルスト城には、その時のハロルド王とロキの激しい戦いの跡が残っており、その際、ロキを止めようとして頭を剣で刺されたものの生き延びたのが、やまひげのヤルル。 そして、ハラルド王のもう一人の息子がハイルディンで、ロキの腹違いの兄。世界中の全巨人族を統一し、その王となることを目指している。サウロは再会を果たしたロビンを「フクロウの図書館」に案内。そこには22年前オハラが守った文献の全てが持ち込まれていた。「神典」ハーレイには、太陽の神ニカについて、この世界が大きく形を変える時に現れる存在、世界が壊れぬ様現れた英雄か、全てを壊した破壊者か……と記されていた。 その頃、ベガパンクはエッグヘッドから運び出した複製人間の取り出しに、 フランキーは宝樹アダムの探索に取り掛かり、エルバフの弱点が火事と雷だと知る。一方、ルフィはシャンクスの現在の居場所を教えてもらおうと、冥界で拘束されているロキを解放すべく、ゾロ、ナミ、ロードらと鍵を探す。そして、その鍵を守るリプリーの夫でコロンの父・ヤーさんと出会うが、その正体は、レイリーと並び海賊王の左腕と呼ばれたスコッパー・ギャバン。そのことを知らないルフィが、ヤーさんとの戦闘を始めるといきなり危機一髪の状況に。それをゾロに救われると白い姿に変身、二人で立ち向かうと、ヤーさんはあっさり降参する。その頃、冥界では、神の騎士団・軍子宮(矢印人間)と、団長シャムロック聖(五老星ガーリング聖の息子で、シャンクスは生き別れた双子の弟)が、 大昔新世界を制圧したエルバフの戦士たちを世界政府の指揮下に置こうと、ロキに「神の騎士団」入隊を迫っていたが、緊急発進でその場を立ち去る。そして、ルフィが冥界に現れると、ロキの片足だけを海楼石につけたままで錠を解く。すると、ロキが大きなトンカチ(鉄雷)で落雷を起こし、島の南に火の手が上がる。ルフィの一撃により、命を振り絞って戦っていたロキは倒れるが、ロードから経緯を聞いたハイルディンが、その場に駆けつけるとロキはこう言った。 まさかお前まで おれが本当に殺意をもって 親父を殺したなんて… 思ってねェよなその頃、陽界では、子供たちが「怖い」と頭に思い描いた獣たちが現れ大混乱。子供たちは皆眠ってしまい、そのうち9人が村の海雲に向けて歩き始める。それは、神の騎士団の軍子宮、ソマーズ聖、キリンガム聖の仕業だった。そして、子供たちを何とか止めようと巨兵海賊団とヤーさんが駆け付ける。 ***何と言っても最大の驚きは、シャンクスの正体。「そうですか……」という感じ。そして気になるのは、ロキがハイルディンに言った言葉。真実なのか、それとも口から出まかせなのか……
2026.01.17
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ナディールの政敵・ザインが莫大な資金を稼ぐため、 飛州に麻薬・贅瑠(ぜいる)をばらまいている実態を明らかに。 贅瑠の製造方法や流通経路を把握し、物証を抑えようと、 雛女たちが花街の妓楼に潜入します。 瘡毒患者をここ数年一人も出していない高級妓楼・天香閣では、 楼主・ザインの寵愛を受ける最上級妓女の天花・琴瑶が、 異様なまでの権力を与えられ、酒蔵や香堂、浴室、宴会場の管理まで託されていました。 しかし、彼女自身が贅瑠に蝕まれていたのです。 ***妓女総出で楼主をもてなす覇香宴に向け、番頭・忠元は素人娘をせっせと集めていた。下働きとして楼内に潜入した玲琳は、次々に訪れる困難を潜り抜けると、琴瑶にも気に入られて、麻薬の保管場所や関係者の特定のため、宿泊棟の酒蔵や厨房等を探り回る。一方、中級妓女として侵入した清佳と慧月は、天花の取り巻きが集う本棟妓女部屋の西側に贅瑠の匂いがあると気付く。しかし、支度部屋で上級妓女2人との間に揉めごとを起こしてしまい、そこに現れた琴瑶が、清佳の髪を切り落してしまう。そして、清佳と慧月を妓楼から叩き出すよう、用心棒に指示すると、上級妓女2人には、浴室で心身を癒すよう言葉を掛けたのだった。清佳と慧月は厨房裏の蔵に押し込まれる前に、贅瑠の中毒患者を目の当たりし、上級妓女2人も贅瑠中毒だったと気付く。琴瑶の態度に傷付いた清佳に、慧月は、玲琳と琴瑶が天花の部屋で話す様子を炎術を使って聞かせる。そのことで、清佳は琴瑶のこれまでの様々な経緯や本心を知るが、結局、玲琳は琴瑶に部屋を追い出され、用心棒に蔵へと押し込まれてしまう。合流した3人の雛女たちが、炎術を用いて現状報告をすると、それを聞いた景彰と辰宇、ナディールも、楼客に化けて潜入することに。その頃、ザインが突然訪問してきたことで、番頭・忠元は覇香宴を1日前倒しして開催。ザインの前で舞った琴瑶は、引き続き天花の座に任じられ、妓女たちの様々な待遇を決める権限も与えられた。しかし、そこへ用心棒たちに促された清佳が現れると、ナディールと景彰のサポートで、ザインの前で剣舞を披露させてもらえることに。一方、玲琳は辰宇と共に浴室へ向かうと、蒸し風呂の窓を破壊、贅瑠の原料である黒ずんだ茸を発見する。そして、そこにいた上級妓女らから、どのようにして贅瑠を作っているかを聞き出し、さらに、贅瑠が瘡毒の症状を抑えること、それが抜けると症状はぶり返すことも知る。そのことから、琴瑶が相手によって言動を180度変えていた理由に思い至ったのだった。剣舞を終えた清佳は、ザインに自分を天花として認め、琴瑶を追放するよう要求する。ザインはそれを了承すると、清佳に贅瑠を飲ませるよう、こっそり忠元に指示。そして忠元が胸元から贅瑠の入った小瓶を取り出すやいなや、ナディールが麻薬売買の廉で拘束すると高らかに宣言、景彰と二人でザインと忠元を取り押さえたのだった。そこへ現れた玲琳が、これまでに知り得た事実を皆に知らせ、琴瑶の情状酌量を求める。しかし、ザインが仕込んだ火薬を爆破させ、妓楼ごと焼き払っての証拠隠滅、逃亡を図る。慧月は駆け付けた尭明が放つ雷で、逃げるザインが乗る船を見つけ出し、燃え盛る炎をそこへ向けて転移させたのだった。騒動の中、清佳の腕の中で息を引きとった琴瑶は、港近くの望楼が立つ小高い丘に埋葬された。そこに眠る琴瑶を前に、十人近くの元妓女たちが集まり跪き頭を下げる様を清佳は見つめる。そして、ナディールと2人で言葉を交わしあうのだった。一方、慧月は玲琳に「もし、入れ替わっている限り健康でいられるとしたら、どうする?」。きっぱりと断る玲琳に、慧月は胸の内で「逆らってみせる、正しさにも、宿命にも」。今回の件への雛女たちの関与は、尭明により抹消された。 ***今巻のお話はとてもスリリングな展開の連続で、これまでの巻の中でも最上級に楽しめました。突っ走る雛女たちと、その後姿を見つめつつ的確にサポートする男性陣もグッド・ジョブ!!そえぞれのキャラクターの想いが、しっかりと伝わって来るお話でした。あとがきでは「玲琳の体調と入れ替わり問題」について言及すると共に、終幕に向けてのアウトラインが明確に示されました。読み手としては、真相は知りたいものの、完結してしまうことへの寂しさの方が大きい……前巻に続いて、アニメ化についても触れられており、こちらの方は4月が楽しみですね。
2026.01.16
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前巻で第五幕「道術我慢の鎮魂祭」が決着し、 今巻は第六幕「絢爛豪華!金領」編の開幕。 金領の港町・飛州に西の隣国・シェルバ王国第1王子・ナディールが来航し、 来賓を王都に向かう詠国の馬車に載せ替える「帆車交の儀」が始まります。 ***今回「帆車交の儀」を担当するのは、金領の雛女・清佳に加え黄玲琳、朱慧月の3人。来賓を出迎え美食でもてなし、「充楽」の言葉を引き出さなくてはならない。それを金家内の勢力争いから妨害してくるのが、知事として飛州を管理する金成和。金家領主である清佳の祖父が傍流の側室に産ませた子で、更迭された金淑妃の実弟でもある。侍従ハサンは「質素なもてなしにがっかりした」と大げさな言い回しで王子の言葉を伝える。来訪4日目、なおも飛州に留まる王子をもてなすため古酒を探していた清佳が、金成和により蔵に閉じ込められてしまう。が、その前に別の目的で蔵に侵入していた玲琳と慧月に遭遇すると、慧月の術で蔵から脱出、変装して市へと向かうのだった。そこで慧月が西国商人とトラブルを起こしてしまうが、玲琳は大金を用いて木の実・乾物・茶の売店の全ての商品を購入、商人や伝聞士まで雇い入れる。そして、金成和を蔵の粉塵爆発で謹慎処分とした後、ナディール王子を招いて催された宴には、シェルバ王国の形を模し、12の州に該当する部位にそれぞれの特産品を練り込んだ焼糕を用意。その特産品を買い求めた詠国内で商売する西国の商人たちと伝聞士40人を呼び入れたうえで、清佳は次のように述べる。 「自国の民の苦労と想いが結実した菓子でございます。どうぞ、お召し上がりを」すべての州の部位を食べきったナディールは「充楽である」と述べ、帆車交の儀は終了。後宮の一隅にある射場に集っていた尭明、辰宇、景彰は、炎の向こうからの報告で動き始める。そして、町の茶楼で儀完遂の祝杯を上げる清佳、玲琳、慧月、冬雪、莉莉。清佳は、大通りをねり歩く芸妓たちの先頭に立つ人物に目を見張る。それは、2年程前から連絡が取れなくなった舞の姉弟子・琴瑶で、外に飛び出し追いかける。それを玲琳と冬雪も追うが花街の門で見失い、そこでハサンに出会うと、慧月と莉莉も現れる。慧月は莉莉と茶楼に2人残された時、そこに異国の男が現れて、西国名物の宝酒を莉莉に勧めると、代わりに自分が飲み干してしまう。チュウゲンと呼ばれた男が、主であろうザインという男と共にそこを立ち去った後、慧月は視界が揺れ、全身が震え、腕は痙攣、耳鳴りがするも奇妙な浮遊感と恍惚感に襲われて、チュウゲンが「宝酒が気に入ったら来い」と言っていた天香閣という妓楼を目指していた。ハサンはその酒は贅瑠というシェルバ産の麻薬だと説明すると、解毒のための水を求めて、その場を一旦立ち去る。一方、毒を吐き出し、離脱症状に苦しみ暴れる慧月は気を暴走させ、自身を抱きしめてくれていた玲琳と体が入れ替わってしまう。解毒のための水を持ってきたハサンは必死に介抱し、玲琳を屋敷まで担いで運んだのだった。慧月は、冬雪から玲琳が鎮魂祭後に倒れ、己の死期が近いと覚悟していたと聞かされるが、玲琳の体に収まっても身体の不調を特に感じない。一方、慧月の体に収まった玲琳は毒に苦しみ続けるが、水を飲ませて対症療法を粛々と行い、麻薬が抜けるのを待つしかなかった。ハサンは、玲琳が恐怖や痛みに耐えきれず命を落とすのを防ぐため、希釈前の贅瑠を1滴飲ませるよう冬雪や慧月に勧めるが、2回目の贅瑠を飲んでしまうと、今後一生贅瑠を飲み続けねばならないと知った慧月は断る。ハサンは、清佳にも熱さまし効果がある果汁と偽って贅瑠を渡そうとするが、見破られてしまう。どうすべきか思い悩んだ慧月は、炎術を使って景彰に相談すると、「信じてくれ、玲琳の強さを。君と妹の間にある絆を」「僕もすぐ駆けつけるよ」の言葉が。そして、慧月に手を握られ、声を掛けられ続けた玲琳は、明け方に強まる離脱症状による苦痛を耐えぬき、生還すると次のように語る。 「わたくし、最後の瞬間まで、慧月様の友人として駆け抜ける準備はできているのです。 ですから、慧月様。どうか最後まで ……お付き合い、いただけませんか?」そこへ景彰と辰宇、さらに清佳とハサンが現れると、景彰と玲琳が、侍従だと思われていた人物こそが王子だったと、入れ替わりを明らかにする。潤沢な財力で12州の半分をまとめ上げ、宰相でありながら次期の王座を狙う政敵・ザインが、州の太守たちを懐柔するための莫大な資金を稼ぐため、飛州に麻薬をばらまいているらしく、その実態を探るため、ナディールは飛州滞在を引き延ばしていたのだった。そして、ナディールがその証拠集めへの協力を要請すると、雛女らは、贅瑠の製造方法や流通経路を把握し、物証を抑えるべく花街の妓楼に潜入することに。 ***あとがきには、アニメ化決定について記されています。「こちらも、いよいよか」という感じですが、『薬屋のひとりごと』同様、世間でこれ程までに知られていない頃から愛読していたお話が、こうして多くの人に知られる作品になっていく様をリアルタイムで見られるのは、感慨深いです。
2026.01.12
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