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先日、TVドラマ『アンメット ある脳外科医の日記』を見ていて、 今日子さんのことを思い出し、未読だった本著を手にしました。 『掟上今日子の鑑札票』に続くシリーズ第14弾ですが、 発行は2022年6月、既に2年近くの月日が経っています。 ***「第1話 掟上今日子の手裏剣」では、ニューヨークのセントラルパークで、手裏剣を用いた殺人事件が発生。ニューヨーク市警・殺人課のリバルディ警部とキャスティズ警部補は、多数の目撃証言があった不審な日本人女性・掟上今日子の居所を訪ねます。事情聴取を終え署に戻った二人は、ボスから応接室に呼び出され、そこでFBIのホワイト・バーチ捜査官から、今日子に捜査協力を依頼するよう勧められることに。そして、今日子が跳弾トリックを見破ると、すぐさま犯人も判明、逮捕されたのですが、今度は、自由の女神のたいまつに、死体が大の字に縛り付けられた凧が引っかかる事件が……。「第2話 掟上今日子の兵糧丸」では、ブロードウェイの舞台の上で、公演中に出演者が栄養失調で亡くなるという事件が発生。被害者の胃から検出されたのは『HYORO-GAN』というサプリメント。今日子が、被害者が死の直前にそれを飲み込んだ理由を解き明かしていきます。「第3話 掟上今日子の不忘術」では、ナイアガラ川にかかる橋の上で今日子が救命措置。その甲斐なく落命した女性の左腕は、刃物で切りつけられた生傷で満たされていました。キャスティズ警部補は、バーチ捜査官から隠舘厄介と面会するよう指示され、彼専用の刑務所へ。そして、今日子の左足の脛全体に巻かれていた白い包帯が、謎を解明する鍵となったのでした。 *** 「いえ、今回は林檎はなしでいきましょう……、ふふふ」 と今日子さんは笑った。 なぜ笑った? 「すみません。今のは日本語で言えば、 とんでもなく面白いジョークが成立していたのです。 しかし、残念ながら英語では洋なしでしたね」(p.88)今回は、こんな感じのジョークが所々で出てきて、とても楽しめました。何気なく、海外を舞台にしているのだということを意識させられますね。それにしても、『五線譜』や『伝言板』は、放置が続いていますね。シリーズ新作の情報もないですし……
2024.04.29
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副題は「家族が家族を殺すとき」。 著者は『「鬼畜」の家』の石井光太さん。 本著は、現在の日本が抱える社会課題が引き起こした親族間殺人事件を通して、 悲劇を繰り返さないためにはどうすれば良いかについて考えさせられる一冊です。 ***1 まじで消えてほしいわ <介護放棄>は、 同居する32歳の長女と30歳の次女が、64歳の母親を介護放棄の末に餓死させた事件。 姉妹が中学生の時に父親が病死、長女はうつ病になった母親からの過度な要求に反発して、 高校の終わりには家庭内別居状態となり、以後は次女が母親の身の回りの世話をしていました。2 父は息子の死に顔を30分見つめた <引きこもり>は、 元中学体育教師の父親が、懸命にその生活を支えてきた40歳の息子を絞殺した事件。 息子は高校2年生時に、病院で強迫観念・妄想・対人恐怖症があると診断され、 以後、買い物依存、窃盗、母親や妻への暴力行為の末に、引きこもり状態となっていました。 3 ATMで借りられなくなったら死ぬしかない <貧困心中>は、 経営難で借金に追われた男が、母親と一緒に心中を図ったものの自分だけ生き残った事件。 幼少期から父親の暴力に苦しんでいた男は、独立後に母親と二人暮らしを始め、 保険金問題で父親と縁を切ったものの、個人タクシー経営に行き詰ってしまいました。 4 あいつがナイフで殺しにやってくる <家族と精神疾患>は、 資産家家族の43歳の次女が、同居する45歳の長女を殺害した事件。 30代半ばで娘を出産後、心を病んで実家に戻ってきた長女の度重なる暴力で父母は大混乱、 次女は、長女の娘の面倒をみるために夫と別れ、北海道から東京の実家に戻ってきていました。 5 元看護師の妻でさえ限界 <老老介護殺人>は、 77歳の元看護師の妻が、懸命に介護を続けていた5歳年下の夫を刺殺した事件。 夫は2度の脳出血で高次脳機能障害を発症、情緒が極めて不安定になってしまっており、 同居する長男は、夫と血縁関係になかったため、介護には一切かかわっていませんでした。 6 夫の愛情を独占する息子が許せない <虐待殺人>は、 34歳の母親が、5歳の息子をマンションの13階の窓から投げ落とした事件。 母親には窃盗癖や虚言癖が見られ、家事や育児は57歳の父親が担っていました。 やがて、解離性障害や記憶障害も目立ち始め、万引きをくり返し、息子に危害を加え始め…… 7 母は、妹と弟を殺した <加害者家族>は、 社宅で夫や子供たちと4人暮らしをしていた母親が、まだ幼い娘と息子を絞殺した事件。 母親には、もう一人16歳の娘がおり、養子縁組をした母親の姉と一緒に暮らしていました。 その娘は、刑務所収監中から母親と関りを持ち始めますが、やがて絶縁することに。 *** マスコミは警察からの情報でそれを聞きつけ、 資産家の3人姉妹による遺産相続トラブルではないかと報じた。 一時、週刊誌やネットのニュースでも話題になった。 だが、半年後に行われた公判で明らかになった事実は報道とは異なっていた。 そこにあったのは、家族の悲しい物語だったのだ。(p.125)これは、「4 あいつがナイフで殺しにやってくる」の中の一文ですが、2015年に東京郊外で起こった事件ということで、ネットで検索してみると、著者自身によるネット記事だけでなく、当時の記事や書き込み等で、まだ残っているものが多数ありました。その中で、公判前、まだ全貌が明らかでないうちに書かれたものについては、公判後なら、決して書けなかっただろうと思えるようなものもありました。もちろん、こういったことが起こっているのは、残念ながら、この事件だけに限ったことではありません。
2024.04.28
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今回も予告通り、前巻発行から半年での新刊発行。 『アンサングシンデレラ』は、本当に予定通りに発行され、ありがたいです。 さて、今巻は在宅薬剤師となった小野塚を軸にお話が展開。 葵の登場は終了間際でとても短いものですが、その衝撃度はバツグンです。 ***第56話「踏み込み」では、在宅医療特化薬局・笹野薬局に転職して約4カ月の小野塚の、薬局での薬剤師同士のやりとりや、訪問宅での担当患者とのやりとり、多職種連携体制の中での看護師等とのやりとりが描かれていきます。その中で、小野塚は「患者の生活に踏み込む覚悟」の必要性に気付かされるのでした。やがて、小野塚は統合失調症の三倉翔子(54)を担当することに。その翔子を約10年前からずっと世話し続けてきた息子・暁人(23)は、心療内科で代理受診し、そこで処方された薬を、ナカノドラッグで受け取っていました。「自販機」と揶揄されるクリニックの出す処方箋通りに、小野塚は薬を渡していたのです。第57話「自己犠牲」では、医師が翔子の初診訪問時に、統合失調症の症状や留意点を説明。暁人は15年前からの家庭状況を説明し、以後、小野塚が1週間分ずつ薬を届けることになります。小野塚は、親身になって翔子の服薬について説明すると共に、暁人にナカノドラッグでの自らの行動について謝罪、今度こそ彼を助けると心に誓います。第58話「治療の先」では、翔子訪問に同行する前川看護師の訪問看護ステーションで、子ども食堂が開かれることになり、暁人がそのスタッフとして働くことに。その後、暁人の様子に変化を感じた小野塚は、ナカノドラッグで過去の薬歴を調べてもらい、暁人が翔子の眠剤を服用していると気付きます。第59話「距離感」では、小野塚が暁人に精神科を受診するように勧めますが上手くいきません。そんな小野塚に、笹野薬局の仁科は次のように語りかけたのでした。 きみは ひとりで抱えてしまう ところがあると思う 不安や迷いを もっと周りに 打ち明けたほうがいい 共有することで 自分の状況を 整理したり 一緒に考えて 動いてくれる人を 増やしていくのも 大切なことだよ(中略) 患者さんを 支えるためには 医療者にも 支えが必要なんだよ(p.119)そんな時、翔子と暁人との間でトラブルが発生し、翔子が家を出てしまいます。第60話「架け橋」では、暁人から連絡を受けた小野塚が一緒に翔子を捜索、発見に成功します。その後、翔子と暁人は共に平静を取り戻していくのでした。一方、小野塚は葵に会い、前回会った際の自らの態度を謝罪すると共に、自らの過去を吐露。そして、次のように語りかけたのでした。 …実は仁科さんにも 「もっと感情を 周りに打ち明けろ」 って言われて、 難しいな… って思ったと 同時に 葵さんの顔が 浮かんだんですよ(p.163) ***この後は、これまでの『アンサングシンデレラ』の中でも最高のときめきシーンになっています。ぜひ、ご自身の目でご覧ください!!次巻(2024年10月発売予定)が楽しみです。
2024.04.21
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今月3日、台湾東部を震源とするM7.2の大きな地震が発生しました。 今年度からの台湾勤務が決まっていた、私がよく知るご夫婦は、 その翌々日、当初の予定通り飛行機で飛び立ちましたが、 着任地が震源から離れていたためか、大きな支障なく過ごしているようです。 そんな彼らを思いながら手にしたのが本著。 台湾の日常を紹介した図鑑で、写真が豊富に掲載されており、見ていてとても楽しい一冊。 part1とpart3が「台湾にまつわるモノ・コト・ヒトのA to Z」の「その1」と「その2」、 part2が「知っておくと楽しい台湾の基礎知識」、part4が「台湾的暮らし方 実践編」です。 もともと見えないものに慎重というか、用心するというか、やたらと怖がるというか。 台湾人には、そうゆうところがある。 体調不良も見えない敵。 すぐに病院に行って薬を飲む。 風が流行れば人に染さないためというより、自分の護身でマスクをよく着ける。 そこに団結力と行動力、政治への関心の高さもあって、 台湾はコロナ対策の優等生になった。(p.106)前述した夫婦が渡航前に言っていた、「台湾の医療水準や医療保険制度はハイレベルなので安心」という言葉を思い出しました。当時の台湾政府によるコロナ対策についても、現地在住者ならではの記述が見られ、台湾や台湾に住む人たちのことをイメージしやすく、大変興味深い内容となっています。 喧嘩した人に周りが気を使っていたら、 当人同士が何事もなかったかのように仲睦まじく目の前に現れる。 気に食わなくてクビにしたはずの人をまた雇う。 もしくはタンカを切って辞めたはずの会社の手伝いをしている。 なぜだか、こんなことが日常的に起こる。 これに対して、文句を聞かされていた側も「何なんだよ」とは思わない。 それは、いつの日か自分も逆の立場になる予定があるから。 予約を忘れるのはどうかと思うが、恨みを忘れるのは素敵だ。(p.112)このおおらかさが、台湾の人たちの温かく包み込むような雰囲気を創出し、日本や日本人に対する姿勢にも表れているのかと、大いに納得。『島国根性 大陸根性 半島根性』や『韓国併合への道 完全版』で見られた他の隣国の姿勢とは一味違うもので、私達も見習いたいところです。さて、巻末には「年表こと、やたら長い著者紹介」というものが、6ページに渡って掲載されており、これが結構面白かったです。(その次の頁には、出版社による定番の著者紹介も載っています)さらに次の頁には「お問い合わせ」についてが掲載されていて、その「ご質問される前に」には、 弊社webサイトの「正誤表」をご参照ください。 正誤表 https://www.shoeisha.co.jp/book/errata/ (p.207)とあったので、早速アクセスして検索してみると、私が付箋を付していたp.91の9行目の誤植が、ちゃんと掲載されていました。(私が読んだのは第2刷です)
2024.04.21
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観測史上類を見ない世界という広範囲に被害を及ぼす地震が発生。 それはルルシア王国が地図から消えた6日後で、世界中の海面が約1m上昇した。 黄猿率いる3万の海兵が乗った100隻の船団が「未来島」エッグヘッドを取り囲む。 その中には、五老星の一人であるジェイガルシア・サターン聖の姿もあった。 ルフィたちは「欲」の拘束に成功し、黄猿に船団の包囲解除を要求すると、 「フロンティアドーム」を解除して、海軍の包囲網突破を目指す。 しかし、エッグヘッド内の様子は、ルッチによって黄猿に筒抜けだった。 エッグヘッド下層に突入した黄猿は戦桃丸を倒し、海軍船団も海獣兵器を撃破して上陸に成功。すると、研究層に移動してきた黄猿にルフィが、ルッチにはゾロが挑みかかる。ベガパンクらは、ボニー救出とパシフィスタ「命令権」奪取のため下層「工場層」へ向かう。「欲の身柄」、その脳である「パンクレコード」、マザーフレイムを生む「融合炉」、この3つを護ることを最優先とする五老星・サターン聖には、ボニーが襲い掛かった。ここで舞台は47年前の南の海「ソルベ王国」へと移り、バッカニア族の血を引くバーソロミュー・くまの誕生と幼少期が描かれる。さらに38年前の西の海「ゴッドバレー」で行われた先住民一掃の「人間狩り」やイワンコフ、ジニーとくまの出会い、名だたる海賊たちの集結、ガープ中将参戦も描かれていく。そして22年前、後の「革命軍」が「ソルベ王国」の奴隷政策を間一髪で阻止。14年前にジニーが天竜人の妻として攫われると、その約2年後には彼女から別れの通信が。残された一人娘・ボニーは、母・ジニーと同じく難病・青玉鱗を患っていた。その後、「一人革命」という事件を経て、くまは「ソルベ王国」の国王となるが、王座奪還を謀る元国王の船団を壊滅させると海外へ逃亡、海賊として手配されることに。その後、くまはドラゴンの助言でベガパンクに会い、ボニーの治療について相談する。ベガパンクが、代償にくま自身の血液提供とクローン兵製造許可を求めると、すぐさま了承。さらに黄猿は、王下七武海加盟、くま自身の改造手術、一切の思考と自我を捨てることも要求。くまは、ボニー完治まで残り1年となった時、娘ををソルベ王国王太后に託して船出した。 ***本巻は、バーソロミュー・くまの苦難に満ちた日々を中心に描かれていましたが、冒頭には各地で懐かしい面々が登場。途中では伝説級の海賊たちが集結し、最後はかつての王下七武海たち。何とも豪華な圧巻の絵面です。さて、くまは遂に「赤い土の大陸」を登りきり、マリージョアに到達。さらに、赤犬を振り切って前進中ですが、その目指すところは何処なのか?そして、ルフィたちのエッグヘッド脱出は成功するのか?まだまだ目を離せない状況が続きます。
2024.04.14
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小川糸さんのエッセイを読むのは『針と糸』以来2冊目。 今回は文庫オリジナルとして書かれたもので、 2021年1月6日から12月31日までに記された52の文章から構成されており、 7月6日に記された文章のタイトルが、本著表題となっています。 エッセイと言いながらも、著者の日々の生活を描いた日記っぽい一冊で、 かつて私が愛読していた銀色夏生さんの『つれづれノート』シリーズや、 中谷美紀さんの『オーストリア滞在記』のような感じ。 コロナ禍における施策に対し、批判的な主張を綴っている場面も見受けられます。 *** 「健康の秘訣はなんですか?」と別の常連さんが尋ねると、 「まずは、早寝早起き、それと、旬の野菜をたくさん食べること。 あと、人の悪口は絶対に言わない」 なるほどねぇ、とわたしを含む常連3人が、うんうんと頷く。 おそらく鍵は最後の、人の悪口は絶対に言わない。なんだろうな、と思った。 前のふたつは、まぁまぁ実行できることだから。(p.151)これは、9月12日の「秋刀魚と銭湯」に記された、小川さんが通う銭湯での一場面。私も自らの行動を振り返り、改めて自戒することになった一文。 佐野さんのお父様が夕食の際の訓示で何百回もおっしゃったという、 「活字は信じるな、人間は活字になると人の話より信用するからだ」 という言葉にも重みがある。(p.176)これは、11月1日の「いけしゃあしゃあ」に記された、佐野洋子さんに関する記述の一部。SNS全盛の現在にも通じる、蓋し名言です。
2024.04.13
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コナン・ドイルの代表作『バスカヴィル家の犬』。 その作品のバートラム・フレッチャー・ロビンソンによる原稿が見つかった。 ドイルの作品は、他人の作品の丸写しだったのか? 英国内では結論が出ず、マクラグレン教授は真偽分析を海外研究者らに依頼。 『ニュクスの子供たち、そして私』が直木賞候補作になった李奈も、 英国大使館に呼び出され、教授から直々に調査の依頼を受ける。 李奈は、まずベテラン小説家・田中昂然を訪ね、その意見を聞く。 ところが、後日料亭で宴席が催された際、魔犬に襲われてしまう。以後、国際文学研究協会事務局長・美和夕子から、ドイルや翻訳について話を聞き、『週刊真相』の版元・東京如何社の長瀬宏隆社長から、英国取材について話を聞くが、自宅マンションを訪ねてきた那覇優佳と共に、またも魔犬に襲われてしまう。さらに、李奈が打合せをする予定だった講談社にも黒い大型犬が現れたのだった。魔犬襲撃について捏造説や売名説が飛び交い、一度は真贋分析を辞退した李奈だったが、田中昂然から、ロビンソンの原稿の日英同盟に関する記述には疑問が残ることを示唆され翻意。三度目の魔犬襲撃を想定通りに対処し、犯人が勤務する牧場で事件を一件落着させると、帰国前のマクラグレン教授に、原稿真贋に関するブックメーカーの賭けについて問いただす。李奈は英国に渡り、大英博物館の報道記録室で1901年当時の新聞記事を片っ端から閲覧、日英同盟の可能性を報じたものがないことを確認し終えるが、号外に記事があったと知らされる。しかし、李奈は、ダートムア・チャグフォード・ホールで行われる学術発表の場に、通訳の小笠原莉子を伴って現れ、号外の記事が書かれたのは1902年以降だと立証する。 ***最後は、直木賞受賞結果を伝える電話に、李奈が出たところで終了。次巻、松岡さんはどういう結果からスタートさせるのでしょうか?さて、私が今巻の中で印象に残ったのは、ベテラン小説家・田中昂然と李奈との次のやりとり。少々長くなりますが、お許しください。 「私も海外旅行に行ったもんだが、 欧米で常々感じるのことには、とにかく日本のニュースをやらない。 たとえば日本人は、大リーガーとして活躍しとる大谷翔平を、 アメリカでも有名だと思っとる」 「ちがうんですか」 「ちがうな。ではきくが、杉浦さんは知っとるのか。 中日のアキーノ、巨人のウォーカー、ヤクルトのオスナ、広島のマクブルーム……」 李奈は当惑を深めた。「あ、あの。野球には詳しくなくて」 「だろ?プロ野球のファンなら知っとるだろうが、国民全体からすれば限定されとる。 しかし、日本国内においては、大リーガーになった日本人の名は、 野球好き以外にもことさら喧伝される。 だからアメリカで知られて当然と思い込む。 ところが向こうでも外国人助っ人選手の名はそんなに報じられん。 政治や経済分野の話題もそうだ」(p.178) そうなんだろうと思います。「ことさら喧伝される」の部分については、もう頷くしかありません。今回の米上下両院合同会議で行った首相演説も、どれ程の扱いなのでしょうか。
2024.04.13
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有名な「エッグヘッド事件」前日、 麦藁の一味は、ルッチやカク、ベガパンクの分身たちと共に 研究所のあちこちで、セラフィムたちと死闘を続けていた。 そして、そのセラフィムたちを動かしていたのは「欲」だった。 ウォーランド”エルバフ”では、シャンクスがキッド海賊団を壊滅させ、 新世界・勝者島では、黒ひげがローの率いるハート海賊団を破り、 新世界・カライ・バリ島では、バギーが”ひとつなぎの大秘宝”奪取を宣言し、 海賊島・ハチノスでは、ガープ中将がSWORDらと共にコビー大佐を救出すべく青キジと対峙。天竜人の象徴を破壊し宣戦布告、奴隷たちの解放とくまの奪還、神々の地の食糧庫破壊。聖地マリージョアでのサボたちの行動は、8つの国での革命成功へとつながっていく。そして、カマバッカ王国に帰還したサボは、仲間たちにコブラ王暗殺の真相を語る。その原因となったのは、800年前に「世界政府」を作った20人の王たちの存在だった。20人の王たちは平等で、独裁者を生まぬよう誰も座らない空の玉座をあえて作っていた。彼らは世界の創造主として一族でマリージョアに移り住み、”天竜人”と呼ばれるようになったが、ネフェルタリ家の女王・リリィだけは”天竜人”にならず、アラバスタに戻ったとされていた。コブラ王は五老星に面会した際、リリィの本当の動きを確認、さらに”D”とは何かを訊ねる。すると、玉座に突然姿を現したイムが、”D”とはかつて我々が敵対した者たちの名で、リリィの失態によって”歴史の本文”が世界中に散らばってしまい、現在の混乱が生じたと答える。イムがコブラ王に対し、800年前にアルバスタに届いた手紙の送り主の名を問い返すと、コブラ王は「女王の名はネフェルタリ・”D”・リリィ」と答えたのだった。その言葉の直後、コブラ王は強烈な一撃に襲われるが、救出に駆けつけたサボに対し、ルフィとビビに「我々も”D”である」と伝えるよう依頼し、さらに、リリィの手紙に記されていたメッセージの内容を伝えたのだった。捕らわれていたビビはワポルが救出、サボもルルシア王国経由でカマバッカ王国に帰還する。しかしその後、ルルシア王国は五老星が使用した「マザーフレイム」で消滅してしまう。一方、海賊島・ハチノスでは、ガープ中将と青キジの壮絶な闘いが繰り広げられていた。SWORDたちは苦境に陥るが、ガープ中将の奮闘とコビー大佐の”実直拳骨”で活路を見出す。海賊島・ハチノスから脱出を果たしたコビー大佐たちを、ガープ中将は一人見送るのだった。 ***世界政府、天竜人、歴史の本文、そして”D”。これらの関係が少しずつ明らかになり、お話もいよいよ核心に迫ってきました。「ひとつなぎの大秘宝」についても、やがて明らかになることでしょう。その時、長く続いたお話も遂に大団円を迎える?
2024.04.13
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アーサー・コナン・ドイル著『バスカヴィル家の犬』のネタバレを含みます 『criture 新人作家・杉浦李奈の推論 Ⅺ』を読み始めると、 目次の次の頁(p.4)に、このように記されていたので、 『écriture 新人作家・杉浦李奈の推論 VIII』の時の 『人間失格』と『グッド・バイ』同様、原作を先に読むことにしました。しかし、読み始めてからしばらくして、あることに気付いたのです。私は、既にこのお話の映画を観ていました!昨年、松山の萬翠荘(旧久松家別邸)を訪れた際、映画の写真パネル等が展示されていたので、家に戻ってすぐに『バスカヴィル家の犬 シャーロック劇場版』を観たのです。ところが、テレビ連続ドラマの劇場版作品として作られたものだったためか、主人公二人やその他の登場人物の関係性が上手く把握できないまま時間だけが過ぎていき、観終わった後、「何だかよく分からなかった……」という印象しか残りませんでした。ただ、睡魔と闘いながらの鑑賞だったのが、こうなってしまった最大の原因だとは思います。 ***チャールズ・バスカヴィル卿が、デヴォンシャーでいつものように夜の散歩に出かけた後、沼沢地へと続く小路で急死、少し離れたところには恐ろしく大きな犬の足跡があった。最初の死体発見者は執事のバリモアで、その妻もバスカヴィル家で家政婦として働いていた。モーティマー医師は、この旧家をヘンリー・バスカヴィル卿が相続することについてホームズとワトスンに相談、ワトスンが同行してヘンリー卿は館に向かうことになる。沼沢地には、プリンスタウンの監獄から逃げ出した人殺し男・セルデンが潜んでいたが、訴訟好きのラフター邸の地主・フランクランドが、望遠鏡を用いて彼を見つけようとしていた。また、寝静まったバスカヴィルの館の中では、女の忍び泣きが聞こえてくるが、翌日には、メリピット荘に住む博物学者・ステープルトンの妹・ペリルが、初対面のワトスンをヘンリー卿と勘違いして、すぐにロンドンに帰るようにと警告してくる。やがて、ヘンリー卿は美しいペリルに思慕の情を抱き、結婚したいと申し出るが、ステープルトンに反対され、ペリルからは危険だからこの地を立ちのくようにと促される。この一件は、翌日には一旦解決したように見えたものの、実はそうではなかった。一方、バリモアが夜中に館内を歩き回っていた理由については、ワトスンとヘンリー卿により解明されるが、石室に潜むもう一人の男については不明のまま。また、チャールズ・バスカヴィル卿が亡くなった夜、彼を手紙で呼び出した女性が判明し、ワトスンが、フランクランドの娘であるローラ・ライオンズ夫人に会うも真相は分からず。ところが、フランクランドが沼沢地で食料を運ぶ少年を発見したことをきっかけにして、ワトスンは自らを付け狙う存在があったことに気付き、沼沢地の石室でその人物と対面する。直後、バスカヴィル卿の服を身に纏ったセルデンが、犬に襲われ崖から落ちて死んでしまう。その現場にステープルトンが現れたこと、そしてバスカヴィルの館に並ぶ肖像画を見て、ホームズは事の真相に辿り着き、ヘンリー卿に一人でメリピット荘に行くよう指示をする。さらに、ローラ・ライオンズ夫人に会ってステープルトンとの関係を聞き出すと、ワトスンとレスレード警部の3人で、メリピット荘の外で待ち伏せをするのだった。すると、濃霧の中からヘンリー卿に襲い掛かろうとする巨大な猛犬が現れた…… ***翻訳者による巻末「解説」によると、この作品はホームズ物語最大の長編で、多くの評者が長編ホームズものの首位に置くばかりでなく、世界探偵小説のベストテンの一つに数えているとのこと。私は家頭清貴の方が、親しみを感じてしまうのですが……
2024.04.08
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先月末、TVアニメが幕を閉じましたが、 本著帯には「TVアニメ第2期制作決定!」の文字が。 それよりも驚きは「シリーズ累計3300万部」の方。 「※電子版含む」と添えられていますが、本当にスゴイですね。 ***猫猫は投薬実験に関わる者を選ぶ試験に合格し、宮廷一大きな薬の保管庫に異動。帝が盲腸炎を患い、投薬で治る気配がなければ外科処置が必要だと知ることに。壬氏から見せてもらった復元中の『華陀の書』には、盲腸炎手術の腑分け図と共に、伝説の麻酔薬「麻沸散」の原材料として『曼荼羅華』が記されていました。そこで、猫猫は阿多の下で匿われている翠苓を訪ね、投薬実験への協力を要請します。猫猫の働きによって、玉葉后やその父・玉袁の手術に対する理解を得ることに成功、さらに、現皇帝・僥陽の母・安氏の兄・豪(ハオ)も以前ほど反対しなくなりました。が、帝自身が手術に難色を示したため、皇帝・壬氏・阿多・猫猫の4人で一席設けることに。帝は壬氏に、もしもの場合の皇位継承について意思を確認しますが、壬氏は了承しません。帝は、一連の事実を何も告げないまま壬氏と猫猫を退室させ、阿多と本音を語り合うのでした。後日、予定より開始時刻が早まったり、劉医官が執刀出来なくなったりしたものの、羅門や王医官、天祐、猫猫らの活躍で手術は無事成功。術後の経過も良好で、合併症もなく、主上は半月ほどで公務に戻ったのでした。「ならないでくださいね」「なりたくないな」最後は、壬氏と猫猫のこれまでにないほど甘くてほのぼのとしたシーンで締めくくられます。
2024.04.07
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著者は、自らも発達障害当事者であるフリーライターの姫野桂さん。 「第1章 発達障害とはどのようなものか」で、その概略を確認した後、 「第2章 高学歴発達障害が抱える不条理」では、 10人の当事者が、それぞれの実体験を語っていきます。 その10人は、早稲田大学の政治経済学部(2名)、法学部、国際教養学部、 慶應義塾大学の文学部、経済学部、青山学院大学の文学部、上智大学の理工学部、 大阪大学の外国語学部、東京大学の法学部を卒業した人たちですが、 その歩んできた道筋や現状は実に様々で、個々に格段の違いがありました。職場では、学歴によるハードル上昇で苦しんだり、周囲の同級生との違いに落ち込んだり、発達障害に気付いて障害者手帳を入手、障害者雇用の求人に応募する人も。そこに至るまでの道のりは、想像を絶するほど厳しいものがあったことでしょう。しかも、その結果、辿り着いたところでは、次のような現実が待ち受けているのです。 早稲田卒で清掃の仕事をやっているなんて当然現場の人は知らないので、 軽度知的障害だと思われているようです。 子どもに対するような態度をとられたり、 本来なら自分できる仕事まで横取りされてしまって、地味に傷ついています。 配慮は求めているんですけれど、でもその配慮が苦痛になっているんです。 健常者として25年生きてきて早稲田を卒業したプライドもあるので……(p.035)「第3章 発達障害当事者の大学准教授が見た大学」では、京都府立大学の横道誠准教授が、認知行動療法や自助グループ、現在の大学のあり方について、「第4章 アイデンティティと現代社会と発達障害」では、精神科医の熊代亨さんが、高学歴ゆえにアイデンティティが負い目に変わったり、自己像に沿った支援を受けることが難しかったりする現状について語っています。また、「第5章 当事者に対する支援の取り組み」では、筑波大学ヒューマンエンパワメント推進局の佐々木銀河さんが、合理的配慮について、株式会社Kaien代表取締役の鈴木慶太さんが、発達障害支援サービスについて、それぞれの立場から、それぞれの取り組みについて語っています。 ***本著の中で、私が特に考えさせられたのは、まず、第3章の「無意識のうちの差別」における次の部分。 また、最近では、発達障害は「ニューロ・ダイバシティ」(脳の多様性)であるという 捉え方も広まりつつある。 ニューロ・ダイバシティとは、発達障害を「障害」として捉えるのではなく、 「神経系の多様なあり方」として捉えて尊重していく考え方である。 そして、定型発達の人でも多かれ少なかれ凸凹がある以上、 ニューロ・ダイバシティという概念はあらゆる人々を包含するものだ。 全ての人の多様性が尊重される社会をめざすキーワードと言えるだろう。(p.133)私は「ダイバシティ」と聞いて、先日読んだ『正欲』のことがすぐさま思い浮かんだのですが、あの作品を「ニューロ・ダイバシティ」という語をキーワードに据えて読むならば、誰もが「なるほど」と、スッキリした気分になれるような気がしました。続いて、第4章の「コモディティ化した現代の生きづらさ」における次の部分。 人間のコモディティ化(一般化)が進んで、 誰もが誰とでもコミュニケーションできるあり方を要請されるようになりました。 同時に、社会通念や習慣のレベルでも、横並びからのはみだしは良くない、 あるいはイレギュラーなことには容赦しない方向に年来傾いてきたのが 先進国社会の基調だと思うんですよね。 社会において少しはみ出してしまう人は、 かつて昭和時代の頃は大きな問題にならなかったかもしれない。 けれど、この令和時代においては、 そのままでは会社や学校にいてはいけない問題のある人として クローズアップされるようになってしまいました(p.152)私は、この部分を読んで「不適切にもほどがある!」をすぐに思い浮かべました。「横並びからのはみだしは良くない」「イレギュラーなことには容赦しない」令和の時代に、「寛容」さを求めることは、許されないことなのでしょうか。最後に、同じく第4章の「産業構造と発達障害」における次の部分。 ただ、産業構造が変わって、例えばサービス業などの第三次産業の割合が増えれば、 ADHDやASDの人が農業や漁業といった職に就ける確率は減っていきますよね。 そういう人たちでもデスクワークをしなければならなくなる。 第三次産業が台頭していくにつれて人間同士のコミュニケーションをする必要が出てきて、 どんな職場においてもうまく溶け込まなければならないといった要請が 労働者の側に立ち上がってきます。 そうなると、発達障害の方々はこの新しい状況についていけなくなりやすい。 こうしてASDの人は自分にぴったりの リピート作業を奪われていった経緯があるのではないでしょうか。(p.158)昨今の状況では、「職業差別」と糾弾されてしまいそうな危うさも感じてしまいますが、この主張が出来ないような世の中になってしまう方が、よほど不健全かと。熊代さんの『健康的で清潔で、道徳的な秩序ある社会の不自由さについて』は、近々読んでみたいと思っています。
2024.04.07
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冒頭の一文はあまりに唐突で、読む者を大いに混乱させるもの。 その意味するところは、p.288まで読み進めなければ全く分かりません。 続く2019年7月×日配信の特集記事は、 小学校非常勤講師・矢田部陽平(24)と国公立大3年・諸橋大也(21)、 大手食品会社勤務・佐々木佳道(30)の3人が、 男児のわいせつ画像を撮影した容疑で逮捕・送検されたことを報じるもの。以後、一人息子・泰喜が不登校となっている検事・寺井啓喜、岡山駅に直結するイオンモール寝具店で勤務する桐生夏月、金沢八景大学の学祭実行委員として活動する神戸八重子と、順々に視点を変えながら、お話は進んでいきます。その中で、桐生夏月は佐々木佳道と、神戸八重子は諸橋大也と深く絡んでいくことに。そして、p.291からは、佐々木佳道、諸橋大也、寺井啓喜の3人視点のお話に移行し、途中、わいせつ被害を受けた児童の父親で佐々木佳道の上司・田吉幸嗣の視点を挟んでから、最後は神戸八重子視点のお話で終幕を迎えます。「水を出しっぱなしにするのがうれしかった。」このお話の中で、肝となる言葉。「ダイバーシティ」を推し進めることは、そう簡単なことではないことを思い知らされるお話でした。
2024.04.07
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