和製英語AOR(Adult-Oriented Rock、訳せば「大人向けロック」)という表現は、ボズ・スキャッグスの1988年のアルバム『アザー・ロード』、そこからのシングルカット曲「ハート・オブ・マイン(Heart Of Mine)」を日本国内で売り出す際に普及した表現である。AORの定義や語源には諸説あるけれども、この「大人向けロック」の特徴がポップでメロウな、いわば“甘め”のロックという点はおおむね同意が得られるのではないか。
さて、このボビー・コールドウェルがデビューしたのは70年代末のこと。ところが、初期の曲はそこそこのヒットにとどまったまま、デビューから2作でレコード会社が倒産するわ、ろくにプロモーションもされぬまま、次第に消えゆく人となってしまった不幸な人物である。80年代に入ってアルバムも発表はしていたが、他のアーティストへの楽曲提供でむしろ成功する。そうしたソングライターとしての彼の成功を象徴するのが、ボズ・スキャッグスに提供した本曲「ハート・オブ・マイン」と、ピーター・セテラ(エイミー・グラントとのデュエット曲)がヒットさせた「ネクスト・タイム(原題:Next Time I Fall)」である。