音楽日記 ~ロックやジャズの名盤・名曲の紹介とその他の独り言~

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2020年04月29日
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テーマ: Jazz(1978)
カテゴリ: ジャズ
無国籍的現代ジャズの好作


 キム・ハクエイ(Hakuei Kim,金伯英)は、1975年、京都生まれのジャズ・ピアニスト。父は韓国人、母は日韓ハーフという出自で、札幌で育ち、オーストラリアの大学で学んだという。日本・韓国・中国・アメリカと活動の幅を広げたとのことで、筆者はこの人のことをよく知らいないけれど、経歴を見る限り、様々な国において活動を繰り広げているということのようである。

 2005年にインディーズでデビューし、2008年の本盤『シャドウ・オブ・タイム(Shadow of Time)』は3作目の作品である。その後は、2011年にユニヴァーサル・レーベルからメジャー・デビューも果たしている。この第3作は、当初からのオーストラリアのミュージシャンとのトリオ盤であるが、スタンダード曲を題材にしている。そうは言っても、ありきたりな“スタンダード曲集”ではなく、ひと捻りした選曲という風に思う。

 キム・ハクエイのピアノは、一言で表すなら“美しくてエキサイティング”。タッチがはきはきしていて、音が美しいのだけれど、ただそれだけじゃなく、その上で、わくわくさせるようなプレイが身上なのである。どちらかというと激しいドラムおよびベースとの息も抜群。ものすごく奇抜なことは一切していないのだけれど、スタンダードなことをしてその延長線でこうした“奇抜さ”を感じられるというのは、きっとピアニストとして、またアルバムの制作者としての力量ゆえということだろうか。

 収録曲の中で特に注目したいのは、まずは1.「ラウド・ジー」。ピアノが登場するまでに敢えて“タメ”を設け、その後、淡々とピアノを利かせる姿勢に冒頭から好感が生まれる。4.「タイム・オン・マイ・ハンズ」は、妙に余裕のある演奏が聴きどころ。ジャズ・アルバムらしからぬ5.「ドナ・ドナ」はジョーン・バエズで知られるナンバーだが、1975年日本生まれというところにこの選曲は関係しているのだろうか(日本では1960年代にカバーなどもあって知られるようになり、70年代には定番曲となっていた)。T・ダメロン作の7.「レディ・バード」もテクニックとエキサイティングな期待感のバランスが実にいい。ここまで触れなかった曲についても、捨て曲がなく、アルバム1枚通して抑揚があり楽しむことができる。

 ひょんなことから、たまたま聴いてみたピアニストだったのだが、これ1枚で他の盤も試してみたいと思わせてくれる好盤であった。キム・ハクエイの他の盤についても、機会があればいずれ取り上げてみたいと思う。


[収録曲]

1. Loud Zee
2. Elsa

4. Time on My Hands
5. Dona Dona
6. A Hundred Years from Today
7. Lady Bird
8. In the Wee Small Hours of the Morning


[パーソネル、録音]

Hakuei Kim (p), Ben Waples (b), Dave Goodman (ds)

2007(?)年録音。




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Last updated  2020年04月29日 20時37分17秒
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