ベルギ-永住ミステリー小僧のブログ

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2023.04.07
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カテゴリ: 恋愛



彼女の家までもうすぐのところまで近づいた時、ちょっと止めて、と彼女が言います。
車を路肩に止めるやいなや、彼女は僕の目をしっかり見つめて、

私たち、会うのを止めたほうがいいと思うの。

​​​​​予感めいたものはありましたが、その言葉は何の前置きもなく、突然聞こえてきました。
語尾が震えていると思ったら、彼女は涙ぐんでいました。
鼻をちょっと啜りながら、


会っても喧嘩ばかりしてるのって、全然楽しくないし、正直、あなたのことどう思っているのか分からなくなってきたの。


彼女が言うまでもなく、同じことを僕も考えていたんです。ただ、一度口に出してしまったら、全ては終わってしまう、と思うと言い出せませんでした。


そうだね。

でも、もう二度と会えないのかな。

分からないわ。今は何とも言えない。

正直、この時の会話の内容については、よく覚えていないんです。何とか思い出そうとするのですが、そこの記憶がすっぽり抜け落ちているかのように、何も思い出しません。

何とか記憶を絞り出して書いた
上の会話からは、二人とも落ち着いているようですが、実際はかなり​​揉めたというか、怒鳴り合いまではいかなくても、どちらも叫んでいたような、決して思い出して気分の良いようなものではなかったと微かに記憶しています。
一つだけ覚えているのは、彼女は何か訴えるような、でも何か諦めているような複雑な表情で僕を見つめていたのを。

この後数か月の間、傷心の日々を過ごすことになる僕としては、この時のやり取りは何としても思い出したくない、記憶から消し去りたいことだったのでは、と考えます。

​​​楽しかった時の記憶は、信じられない程細部まで覚えているのに、身を引き裂かれるような苦しみ悲しみを味わった時の記憶は、まるで肉体が脳がわが身を守るために、故意に自らの手でその忌々しい記憶を奇麗さっぱり消し去っているのでは、と思わせるほど全く記憶がないのです。


その時どんな言い合いをしていたのか分かりませんが、僕がやったことは車を急発進させアクセルをほぼ目一杯踏みしめてから急停車させるという、信じられないほど馬鹿げたことをしでかしたのです。

彼女はその間、 車が急停車するまで
​​​​ ​​​か細い糸を引くような悲鳴を上げていました。
車が完全に停車して何の音も聞こえなくなった時、彼女の喉が鳴る音が車内に響きました。

バカなことをしてしまった

もし対向車があれば、二人の車は大事故にあったかもしれません。自分の馬鹿げた行為が、彼女を命の危険にさらすことになったかもしれないのです。

彼女は何も言いませんでした。いや、恐怖で何も言えなかったんだと思います。

もう本当に最後の時が来たんだ、と覚悟しました。


ごめん、僕は本当にバカなことをした。


そう言ってから、運転席から腕を伸ばして彼女が座る助手席のドアを半分開け、


さようなら、スーリエ


彼女は何も言わずに車を降りて自宅の方へ歩いていきましたが、一度も振り返ることはありませんでした。

僕は、角を曲がって見えなくなるまで目で彼女の姿を追いかけていました。もう二度と見ることは無いかも知れないうしろ姿を。

自宅に帰った僕は自分の部屋に入ると鍵を閉め、机の上のフォトフレームの中で微笑む彼女の顔を見つめながら、呟いたのです。

もう二度と彼女に会うことはないだろう

もう二度と、ス-リエの様に激しく純粋に誰かを愛せないだろう。


そして、彼女の写真を写真立てから取り出し、それを粉々になるまで破りました。





TO BE CONTINUED


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最終更新日  2024.02.16 05:39:35
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