「英語のスラングって知っているでしょ? フランス語にも似たようなものがあってGros mots(グロモと発音します)って言うんだけど、その中の一つにこういうのがあるの」 「くたくたに疲れた時に、ラルボ-ル(Ras le bol!って書くのは後で知りました)って言うの。こうやって上司に向かってそうやれば最高よ」 と言って、頭のすぐ上に掌を水平において、それを頭の後ろに勢いよく引きながらラルボ-ル(Raz le bol)と繰り返しました。それも怖い顔をして!
「これをやりながらRaz le bol!って言うと、上司は大喜びよ」 と言って彼女は大声で笑い転げます。まるで私が上司に向かってやっているのを想像しているかのように。
「分かっているとは思うけど、Véroniqueの言ったことを本気にしちゃだめよ。こんなことあなたの上司の前でやったら大事になるわよ。勿論フランス語が理解できればの話だけど」 と言って、こう続けます。 「Ras le bol、正確にはJ'en ai ras le bol! なんだけど、ものすごく不満が溜まってて爆発しそうなときに言う言葉なのよ。だからもし、あなたの上司にこんなこと言ったら、それこそ上司に対する不満をぶつけていることになるから、ものすごくヤバいことになるわよ」
Véroniqueからは会うたびに際どいGros motsを教わったのですが、Ras le bol!以外は何故か全く記憶に残っていません。 その理由の一つに、Ras le bolには独特の動作が伴っていたからだ、と後で気付きました。 やっぱりフランス語は身振り手振りが無いと面白くないし、独特の身振り手振りが伴うRas le bol!こそが、数あるGros motsの中で最高だと自分的には今もそう思っています。