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November 13, 2005
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カテゴリ: 日本の小説
谷崎潤一郎訳
中公文庫
☆☆☆☆◎
 柏木~雲隠、匂宮~総角まで。
 柏木~雲隠は、源氏の最晩年。第三巻の栄耀栄華から引き続いてはいるものの、柏木が死に、女三宮が出家する。そして、夕霧の話などが挿入され、紫の上の死去、雲隠と続いていく。
 …にしても、源氏がヤなヤツ。女三宮が結構気の毒なようにも思うが、このヒト、なんだかんだと、(宇治十帖に入ると)幸せに要領よく生きているような気がする。紫の上も完璧な女性と描写されすぎていて、つまらんといえばつまらん。まあ、運がいい女性だったとは思うけれど。
 一番源氏がイヤだったのは、「御法」と「雲隠」の間の「幻」結局自分が下に見ていた女三宮に先に出家されて、「この人でさえ出家しているのに自分は遅れて…」みたいなことを思うのだが、この男、たしか大昔に葵の上が死んだ時もそんなこと思ってなかったか?と突っ込みたくなってくる。結局紫の上が死ぬまで出家できなかった未練の多い人間のくせに#。この男の「出家したい」は相当な空手形だと思う。
 個人的にはこの父親より、真面目な夕霧の方がずっといい。けれど雲井の雁一筋だった彼が、柏木の未亡人落ち葉の宮にのめりこむあたりは、なんだか、生真面目な人がいったん道を外すと…といったところ(苦笑)
 また、結構興味深かったのは、この辺りの巻では琴を弾く場面が非常に多いことだった。特に和琴が多い。最近、雅楽に興味が湧いたが、自分でちょっとなぜか考えてしまった。そういえば、源氏物語のこのあたりに結構、琴の描写が多かったんだっけ。刷り込まれていたかも。


 そして、いよいよ「橋姫」から薫君と匂宮の話が始まる。この匂宮は紫の上がもっとも可愛がった、と前の方にある。
 が、ここからは、源氏の頃とは違って時代の差が否が応にも漂ってくる。橋姫では源氏の弟に当たると思われるのだが、時勢から忘れられ宇治に隠棲している八の宮とその二人の姫君の話から始まるのだが、この八の宮といい、薫といい、厭世的な性格が際立つ。薫が思いを寄せる八の宮の大姫も作中亡くなってしまうが、はっきりしない性格。また、解説を読んでいてなるほど、と思ったのは、源氏の頃の女君たちは殆ど男に姿を垣間見られることもなかったのだが(どちらかというと姿を見られるということは不用意な女性の暗示に使われていた)宇治十帖になってくると、きっとずっと不遇な住居にいる女君たちなので、住宅事情もあるのだろうが割合すぐに姿を垣間見られている。
 そして、ストーリーや描写も複雑さを増しているような気がする。結局、宇治の八の宮がなくなった後、寄る辺なくなった二人の姫君は、薫と匂宮に言い寄られるが、薫の押しが弱く、大姫もトロく、こちらは中途半端。匂宮とできあがった中の姫君も(誤解もあるが)匂宮の不義理を嘆く破目になり、それを心配した大姫は結局死んでしまう(その前から妹より弱々しげな描写はあったが)。が、最初は匂宮と中の君の仲を渋っていた明石中宮(匂宮の母…だよな)の手助けで、二条に移ることになりそうだ、というところで四巻は終了。
 それにしても、宇治十帖の裏には栄華を極めた「望月の欠けたるもなきと思えば…」の時代から男皇子が生まれず、徐々に衰退していった時代の影を感じずにはいられない。そういえば、宇治の平等院が建てられたのって、この時代か? もう少ししたら最終巻を読み始めるだろうが、どうなっていくことか。





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Last updated  November 14, 2005 12:48:28 AM
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