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December 26, 2009
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テーマ: 本日の1冊(3712)
カテゴリ: 海外の小説

サンディトン
ジェイン・オースティン
鷹書房弓プレス 四六上製
☆☆☆☆☆◎
 未完の短編を含む短編集。表題作「サンディトン」も未完だ。
 ↓に書いたレジナルド・ヒルの「死は万病を癒す薬」には、どうもこの作品のパロディ的な要素があるように思い、図書館で検索したところ読めるようだったので、読んでみた。
 ヒルの「死は~」の第一部の書き出しはまんまこのジェイン・オースティンの未完の絶筆(?)の冒頭と同じ。が、ヒルの作品では登場人物の描写がヒル流かつ現代的になっている。また、各章の冒頭にはこの「サンディトン」からの一文が引用されている。が、この本の訳文とはちょ~っと違っていたけれど…。
 前置きが長くなったが、以前オースティンの代表作「高慢と偏見」のストーリー紹介を読んでつまんないな~とか思っていたが、聞くところによると英語圏では「ジェイン・オースティン・ブッククラブ」なるものもあったりなんかするようだし、人気があるらしい。この理由が分からなかった。が、このサンディトンはじめ、この本に掲載の「イヴリン」、「キャサリンあるいは東屋」(未完)、「ある小説の構想」(これはネタ書きみたいな感じ)、「ワトソン家の人々」(未完)などを読んでみて、理由が分かった。彼女の生没年は1775-1817。(日本では、種馬的業績(?)で「オットセイ将軍」とか言われる11代将軍徳川家斉の生年が1773年)今からおよそ200年前に作品が発表されていることになる。彼女は非常に早熟で10代の頃から作品を身内の人に読ませていたようで、今回私が読んだ未完の小説の幾つかはその頃のもののようだが、どのみちその描写はとても日本の江戸時代に書かれた小説という感じがしない。イギリスの中流階級の女性の生態の描写がシンプルな文章の中に巧みに描写されていて、ストーリーはつまらなく感じるが、登場人物の描写が非常に面白く読んでいて飽きない。まだ代表作を読んでいないのでなんともいえないが、お稽古事だけ真面目にやってあまり物事を考えない「アタマの緩い」女と読書などが好きできちんと教育を受けている比較的思慮深い女の対比が面白いが、後者も所詮若い娘のことで、若い好みのタイプの男が絡むと思慮深さも?という感じがした。(ヒルの作品ではそれが時代の違いとともにもっと顕著にあらわれている。そして読んでいるときは気づかなかったが、彼女は「姉」に詳細なメールを書くという設定にしてるのもオースティンが主に姉にあてて作品を見せていたことを連想させる)当時女性の地位は低く、結婚できなければ一生父か兄弟の世話になるか、相手の好みはさておいて婿探しにインドにIターンするか、上流家庭の子女の子守女になるか、くらいしか生活の糧を得る方法がなかった時代だ。作中でもそうした不幸な状況にある友人を思いやる女性の描写とその不幸な女性に不幸な進路においやった上流階級の無情な人々に憧れる娘とが出てくる。(キャサリンあるいは東屋)まあ、某巨大匿名掲示板的な表現を借りれば18世紀末から19世紀初頭のイギリス中産階級のリア充と喪女の生態の克明な描写が面白い、というところ。
 著者が偶然にか意図的にか時代的な要素を作品から一切排し、自宅の周囲のことだけを作品にしているため、読んでいて人物描写の精細さが逆に際立ち、それだけで読ませてしまう。ストーリーなどある意味どうでもいいので、未完でも読める。代表作である長編も読んでいきたいと思う。





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Last updated  December 26, 2009 05:57:59 PM
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