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December 9, 2010
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カテゴリ: 歴史・地誌・旅行

【送料無料】葬られた王朝
梅原猛
新潮社 四六上製
☆☆☆☆☆
 この人の説はベースにした歴史推理小説なんかで随分お目にかかったことがあったのだが、著書を読むのはまだこれで二度目。近所の図書館が館内整理で3週間借りられるので借りてきた。本当は「隠された十字架」の方が読みたかったんだけど、そちらを取り寄せてもらう時間がなかったのだ。
 著者がかつてフィクションだとした記紀の出雲神話をなんらかの史実の反映だとする視点に転換することから始まる。自著の「神々の流竄」で出雲神話をフィクションとしたことから批判とのことだ。実際、かつては強力な権力者の存在の証拠となる遺跡がないとされていた山陰地方で、荒神谷遺跡などから多数の銅剣や銅鏡などが発見されたのだ。そしてそれは「神々の流竄」が上梓された後だった。
 この本では、出雲王朝の始祖をスサノオとして、その中興の祖ともいうべきなのが、オオクニヌシという捉え方をしている。スサノオは銅鐸の原型を朝鮮半島で当時の貴族階級が馬につけていた馬鈴ではないかという推測から、朝鮮半島から渡来した君主ではないかと推測している。また、オオクニヌシについては、女性の助けを得易い、白面の(若い頃は)割と人当たりのいい人物だったのではないかとしている。確かにその通りなんだけど、1つの疑問。
 では、オオクニヌシの正妻、スサノオの娘とされるスセリビメの出自は?ということ。兄達の迫害を逃れて根の国(黄泉の国)に行ったスサノオが連れてくるのがスセリビメだ。彼女の出現で、兄達に迫害されるきっかけになった最初の奥さんヤガミヒメは彼女を恐れて(オオクニヌシの不実を怒ってかもしれないけど)国に帰ってしまう。で、スセリビメと一緒に持ってきた武器で兄達を追い出して政権をモノにするわけだ。オオクニヌシを実在とするなら、スセリビメの出自が当然気になる。おそらく彼女の実家の力もあって、オオクニヌシは政権を奪取できたのに、まさか、黄泉の国からきた嫁ってことはないだろう。ゾンビの娘と結婚できるかい。オオクニヌシの相聞歌でも「(征服した各地で)地元妻を作るけど、彼女達の作る服は自分には似合わない、キミの作った服が一番だヨ」とご機嫌とりの歌が残っていて、梅原氏も「正妻の正しい扱い方」なんて書いておられるのだ。でもそれについては、この本、一言も触れてないんだよね。ちょっと気になる。単純に同族の大家ってことも考えられるけど。
 実際にフィールドワークをして書き上げられた本だが、伝説に縁のある各地の神社やその周辺の写真も著者近影も入ってカラーで沢山挿入されているし、文体も平易で私のような素人にもとっつきやすい。
 また、この出雲王朝の姿を古事記の中に巧みに隠して編集したのは誰か?ということになって、稗田阿礼を藤原不比等ではないかと推測し、元明・元正の両女帝の時代に編纂された記紀という日本の歴史書は実際に編集したのは彼だったのではないかとしている。竹取物語の中も不比等の姿があるのではと指摘している。出雲神話についての記載は、似たような記述を今までも読んだことがあったけど、不比等については、ちょっと興味が湧いてきた。つか、ここにも「女の後ろ盾で政権を奪取した男」がいるじゃん。この本の論旨とは真逆だけど、持統・元明・元正の三人の女帝と不比等、オオクニヌシとサシクニワカヒメ(母)・スセリビメ(正妻)他の関係を考えるとちょっと面白いぞ。でも、結局は権力のある女を味方につけた男が一番強いんじゃないのかね。





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Last updated  December 9, 2010 04:14:58 PM
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