オスカー・ワイルド 国書刊行会 223x120mm 並製 ☆☆☆☆☆ 「バベルの図書館」と銘打ったシリーズの中の一冊。このシリーズの詳しいことが分からないのだが、作品の選定はホルヘ・ルイス・ボルヘスが行ったようだ。本の表紙には"La Biblioteca di Babele", "collana di letture fantastichediretta da Jorge Luis Borges" となっている。シリーズ自体は図書館や書店で見かけたことがあったが、本を読んだのは初めて。これはオスカー・ワイルドの短編と童話で表題作「アーサー・サヴィル卿の犯罪」「カンタヴィルの幽霊」「幸せの王子」「ナイチンゲールと薔薇」「わがままな大男」の5編収録。前の2編が(多分)大人向きの短編小説であとの3編は童話。私は正直表題作が一番ワケがわからなかった。上流階級とその神秘主義というか迷信や占いへの揶揄なのかなぁとも思えるがよく分からない。次の「カンタヴィルの幽霊」が一番好きだ。こちらは金に飽かせて英国内の不動産等を買いあさり、即物的なアメリカ人への風刺なんぞもこめられているが、それ以上に所謂イギリスお家芸ともいえそうな「ゴシック小説」を茶化しているのでそちらのが笑える。でもラストはいい感じだ。真っ当といえば真っ当な終わり方だから、多少ヒネリがほしいような気がしないでもない。面白かったことは面白かったが、ジェーン・オースティンの方が風刺が上手いと思う。(彼女はワイルドほど上流階級の風俗を軽蔑してないと思うが) そして後三作の童話のうち、「幸福の王子」は有名だが、次の「ナイチンゲールと薔薇」もストーリーに読んだ覚えがある。「わがままな大男」は初めて読んだ。「幸福の王子」と「ナイチンゲールと薔薇」はなんだか、ワイルドの嗜好を知っている今となっては、あまりに寓意的過ぎて読んでいて微妙な気分だ。ただしそのお陰で、私はもともとこの二つの小説のような主人公が報われない献身の末に儚くなる話は好きじゃないのだが、少し嫌悪感が和らいだかもしれない。「わがままな大男」は逆にほのぼのした童話らしい話だと思う。スレたオバさんの穿った見方をすれば、ワイルドの童話は子供向きにしては毒気が強いが、「わがままな大男」はさほどではない。 ワイルドは「サロメ」しか読んだことがなかったが、他の小説も読んでみたくなった。